2023年06月19日
2023年10月12日
年々深刻化している人手不足問題。株式会社帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)」によると、人手不足と感じている企業の割合は51.4%と高水準が続いています。コロナ禍で人手不足は一時的に緩和したように見えていましたが、経済の回復とともに右肩上がりの傾向が続いています。
本記事では、何が人手不足を引き起こしているのか、その原因に加え、企業が取り組むべき対策と事例を解説します。
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人手不足が顕在化する「2030年問題」が目前に迫っており、事前に対策を進めておくことは企業活動において非常に重要です。
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目次
企業における「人手不足」とは、業務を行う上で必要な人材が集まらず、業務に支障が出ているような状態を指します。人手不足に陥る企業の割合は年々増加しており、コロナ禍以降に顕著化しています。
人手不足に陥る原因は、大別すると「少子高齢化」と「人材のミスマッチ」の2つが挙げられます。
日本は世界的に見ても、急速に少子高齢化が進行している国の一つです。日本の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年をピークに、総人口も2008年をピークに減少に転じています。
総務省の推計によれば、生産年齢人口の比率は2020年:2065年で100:70もの差が生じるという結果が出ています。
また、パーソル総合研究所の「労働市場の未来推計2030」によると、2030年には7073万人の労働需要に対し、見込める労働供給は6429万人であり、644万人もの人手不足になると予測されています。
推計の通りに人手不足が進行した場合、2017年には1,835円だった実質賃金(時給)は、2030年には2,096円にまで上昇するとされています。こうした人口減少、特に若者世代の減少は社会全体に大きな影響をもたらすと考えられています。
就労・産業などの大きな構造変化が、社会全体ないし職場内での人材のミスマッチを生んでいることも人手不足の要因と考えられます。
下の表は厚生労働省が発表した職業別の有効求人倍率の一部です。有効求人倍率は、有効求職者に対する有効求人数の割合であり、求職者よりも求人が多いとき(人手不足)は1を上回ります。
職業 | 有効求人倍率 |
---|---|
職業計(全体) | 1.32倍 |
土木の職業 | 5.60倍 |
介護関係職種 | 3.38倍 |
サービスの職業 | 2.82倍 |
職業 | 有効求人倍率 |
---|---|
職業計(全体) | 1.32倍 |
一般事務の職業 | 0.35倍 |
会計事務の職業 | 0.67倍 |
運搬・清掃・包装等の職業 | 0.77倍 |
土木・介護・サービスに関する業種は人手不足が著しい一方、一般事務や会計事務、運搬・清掃・包装等の職業は人材の余剰が発生しています。
「求人を出しても採用できない」と困る企業がある一方で、「仕事を探しているのに見つからない」と悩む求職者がいる。企業と求職者の間で求める能力や資格、労働条件などのミスマッチが生じていることに起因する「構造的失業」といえます。
労働力不足と構造的失業のダブルパンチが、慢性的な人手不足という事象を引き起こしています。
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人手不足はどの企業にも共通の課題であるものの、その度合いには業界・業種で差があります。厚生労働省のデータによれば、「医療・福祉」「建設業」「運輸業・郵便業」の3業種が特に人手不足感の強い業種であることが分かります。
では、それぞれの分野ごとに、人手不足の原因や特徴を確認していきましょう。
医療・福祉分野の中でも特に介護分野において、人手不足が顕著です。
団塊の世代が75歳に達する2025年の介護サービス量は、2017年に比べて、在宅介護で24%、居住系サービスで34%、介護施設で22%増加すると見込まれています。ニーズは増加する一方、賃金水準がなかなか上がらず、法人や事業所の理念や運営、キャリアパスの整備など雇用管理の不十分さなどを理由に人手不足が続いています。2025年における需給ギャップは、約55万人ともいわれています。
高度成長期以降に整備したインフラは、今後一斉に老朽化すると見込まれています。2030年頃までの間に、建設後50年以上が経過した施設の割合は加速度的に高くなっていき、労働力の需要もそれに比例して上がっていきます。
しかし、休日が取りづらいことなどを背景に、工事の直接的な作業を行う技能労働者のなり手は少なく、高齢化が進行している上に高齢の技能労働者の大量退職も迫ってきています。2025年における技能労働者の需給ギャップは47〜93万人といわれています。
宅配便の取り扱い数は短期間の間に飛躍的に伸びていますが、ドライバーは減少の一途をたどっており、現役ドライバーは高齢化が進んでいます。2030年におけるドライバーの需要ギャップは、8.6万人と推計されています。
慢性的な人手不足の状態が続くと、企業に大きな悪影響を及ぼします。
人手不足が会社経営に影響を及ぼしている企業は、全体の7割を超えており、事業の縮小や倒産のリスクも懸念されます。「現在はそれほど影響がない」と思っていても、事態が深刻化する前に対策を取ることが重要です。
【参考】厚生労働省「人手不足が企業経営や職場環境に与える影響について」
人手不足の最も有効な対策は、直接的な要因を解消することです。
しかし、ステークホルダーの協力が不可欠ですぐには難しかったり、企業が単体で改善するのは難しい課題も多かったりするのが現実ではないでしょうか。長時間労働など労働環境の改善や業務効率化による生産性向上が、人手不足解消のキーワードといえます。
ここでは、企業が取り組むべき6つの対応策を挙げ、それぞれ解説していきます。
働き方改革は、生産性向上に結びつくとともに、人材の採用・定着にもつながります。制度を見直すことも大切ですが、特にフォーカスしたいのが女性やシニア層のはたらきやすい環境づくりです。
中小企業庁の調査によれば、1995年から生産年齢人口が減少し続けているにもかかわらず、労働力人口はさほど減っていません。これには、65歳以上のシニアや女性の労働の参加率上昇が関係しています。
しかし、女性は出産などのライフイベントに伴い離職を余儀なくされたり、シニアは体力的に「短時間での雇用」を希望してもそれを許容してくれる仕事に就けなかったりなど、はたらきたくてもはたらけない人が多くいます。
つまり、フルタイム以外のワークスタイル(産休や育休、時短勤務、復職制度、テレワーク制度など)の許容や長時間労働の改善は、女性やシニア、場合によっては外国人の登用促進につながり、優秀な人材獲得の可能性を高める原動力になります。
ただし、新たな人材の受け入れには、社内体制の整備が必須ですが、いきなり大きく体制を変えると、かえって現場を混乱させることもあります。目指す体制構築までのロードマップを作り、少しずつ整備を進めながら、受け入れる人材の幅を広げていくことが重要です。
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兼業・副業を許可すると以下のようなメリットがあり、はたらく人の働きがいや意欲の向上、企業の人手不足解消が期待できます。
はたらく個人の目線
・収入源の増加
・自己実現
・スキルアップ など
企業目線
・第三者目線での意見やアイデアなどが生まれ、イノベーションにつながる
・自社をよく知る社員の雇用を維持できる
・短時間での雇用を希望する人など幅広い人材を確保できる など
終身雇用が当たり前の時代には、兼業・副業は原則禁止という企業が多数派でしたが、現在では能力や本人の希望に適した柔軟なワークスタイルが広がっており、兼業・副業を許可する企業も増えつつあります。
時代の移り変わりとともに、社員に求められるスキルや能力は変化していきます。特に近年は変化の速度が速く、変化についていけなくなってしまう、ということも少なくありません。
今いる人材のスキルや能力を十分に引き出すことは、企業にとっても、はたらく個人にとっても、やりがいや意欲の面でメリットがあります。これに役立つのが、「学び直し制度」「リスキリング」の検討です。
学び直し(リカレント)制度 … 周期的に教育を受け続けていく仕組み
スキルアップ研修で時代に即した知識や技術を身につけ、既存業務で改めて力を発揮してもらったり、新たな能力を獲得するための研修を行い、別業務でも力を発揮してもらったりといったように本人の適性を考慮しながらの実施は、能力と業務とのミスマッチを減らすことにつながります。
リスキリング…異なる職務や新たな分野のスキル獲得
リスキリングは、成長領域において新たなビジネスを創出し、より付加価値の高い職務を担える従業員を育成するために、人材戦略の一環として行われます。
人手不足が深刻化する一方で、デジタル技術による自動化・機械化の進展に伴い、一部の職種では人材過剰となる可能性も指摘されています。担当業務が失われつつある従業員に対し、新たなスキルを取得させ配置転換を行うといった点でもリスキリングが注目を集めています。
日本企業の特徴として挙げられているのが「過剰品質」です。お客さま第一の丁寧な対応を心掛けるうちに、必要以上に手をかけすぎてしまっていたという事例は、どの企業にも1つや2つはあるのではないでしょうか。
人手不足が深刻化する中、少ない人員で多くの成果を創出することが求められます。業務効率化を推進し、業務プロセスから「ムリ」「ムダ」「ムラ」を省き、非効率な業務を改善することが必要です。
工数や経費がかかりすぎている作業や工程は、方法を変えるか、勇気を出してやめてみましょう。コスト削減は、競争力強化にもつながります 。
業務プロセスを見直す際は、現状の業務フローを可視化し、改善方法や改善箇所を決めていきます。改善箇所が洗い出せない場合は、社外の人材に自社の業務フローについて意見をもらうなどの機会をつくると、思いつかなかったような課題や問題点、その解決方法を指摘してもらえることがあります。
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アウトソーシングとは、社内の業務の一部を外部に委託することを指します。自社に不足している人材やサービスを外部から調達することで、企業の生産性向上や競争力強化に寄与します。
アウトソーシングの対象となる主な業務は、各種事務業務や受付、コールセンター、営業など非常に多岐に及びます。
アウトソーシングは、委託先企業の専門的な知識やノウハウを活用できるため、業務品質の向上にもつながります。改善対象の業務が「必要ではあるが、社内で行う必要はない」と判断できる際に有効な手法です。
DXとは、デジタル技術によって業務やビジネスモデルを変革し、企業価値を高めるための取り組みを指します。
DXの推進は生産性向上につながり、人手不足の対応策として効果的です。例えば、手作業で行っていた業務をデジタル化すれば、パソコンなどによる自動処理が可能になり、従業員は付加価値の高い業務に集中できます。業務のスピードや精度の向上は、顧客満足度や業務品質の向上にもつながるでしょう。クラウドシステムや各種ITツールなどでテレワーク体制を構築すれば、柔軟なはたらき方が可能になり、ワークライフバランスの向上も期待できます。
DXには、従業員のモチベーション向上や離職率の低下、多様な人材の雇用促進など、人手不足解消につながる多くのメリットがあります。
人手不足解消の成功事例として、西洋フード・コンパスグループ株式会社の取り組みを紹介します。
全国約1,600の店舗で社食運営や病院・老人ホームでの食の提供を行う西洋フード・コンパスグループ株式会社(以下西洋フード・コンパスグループ)では、現場の人手不足が課題になっていました。そこで人手不足を解消すべく、RPAを導入。
店舗で行っていた請求書作成やメニュー表作成業務を本社に集約し、RPAで自動化したところ、店舗の負担が軽減しました。フルタイム10人分に相当する時間をRPAで削減することに成功し、残業削減にもつながりました。
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今後も人手不足が続くことが予想される中、企業が競争力を強化するために人材獲得は企業の生き残りの生命線です。採用のみならず、ITツールやアウトソーシングなどを活用し、業務の効率化・省力化を進め、生産性向上を図ることも人材不足の解消につながります。
まずは自社でできることとして、人を魅きつける魅力的な職場づくりや業務フローの改善などから、取り組んでいきましょう。
A.業務効率化を推進し、業務の「ムリ」「ムダ」「ムラ」を省く必要があります。まずは現状を分析し、自社の課題を整理した上で、どのような方法で効率化していくか、具体的な解決策の検討に移ります。
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A.少子高齢化による労働人口の減少と人材のミスマッチが大きな原因と考えられています。特に若者世代の減少は社会全体に大きな影響をもたらすと考えられています。
>>日本における人手不足の原因と背景
A.以下の業界は特に人手不足の傾向が顕著です。
・建設業
・運輸業・郵便業
・医療・福祉
>>人手不足が特に深刻な業界