慢性的な人手不足から脱するために。企業が取り組むべき対策を解説

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年々深刻化している人手不足問題。人手不足は、少子高齢化だけでなく、いくつかの要因が絡み合って生じているといわれています。何が人手不足を引き起こしているのか、その原因と解決策を解説します。

コロナ以降の人事戦略2021最新動向レポート

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目次

日本における人手不足の現状

日本は世界的に見ても、急速に少子高齢化が進行している国の一つです。日本の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年をピークに、総人口も2008年をピークに減少に転じています。

日本の人口推移

 

【出典】総務省「情報通信白書 平成29年版」

総務省の推計によれば、生産年齢人口の比率は2015年:2060年で100:60もの差が生じるという結果が出ています。こうした人口減少、特に若者世代の減少は社会に大きな影響をもたらすと考えられています。

パーソル総合研究所が、中央大学経済学部の阿部正浩教授と共同開発した「予測モデル」による2030年の推計では、「7,073万人の労働需要に対し、見込める労働供給は6,429万人であり、644万人もの人手不足となる」という予測がなされました。推計の通りに人手不足が進行した場合、2017年には1,835円だった実質賃金(時給)は、2030年には2,096円にまで上昇するとされています。

2030年に想定される労働人口



 

【出典】パーソル総合研究所「労働市場の未来推計2030」

人手不足が起きる要因は、単なる従業員数の不足だけではありません。就労・産業などの大きな構造変化が、社会全体ないし職場内での人材のミスマッチを生んでいるという要因もあります。

「中小企業白書」のデータを見ると、事務的職業、運搬・清掃・包装などの職業では有効求職者数が有効求人数を大きく上回っているのに対し、販売・サービス・介護関係の職種では逆の状況が続いていることが分かります。

職業別有効求職者数と有効求人数の差

 

【出典】中小企業庁「中小企業白書 2017」

「求人を出しても人が来ない」と困る企業がある一方で、「探しているのに職が見つからない」と悩む求職者がいる。企業と求職者の間で求める能力や資格、労働条件などのミスマッチが生じていることに起因する「構造的失業」といえます。

労働力不足と構造的失業のダブルパンチが、慢性的な人手不足という事象を引き起こしています。

人手不足が著しい業界とは

人手不足はどの企業にも共通の課題であるものの、その度合いには業界・業種で差があります。厚生労働省のデータによれば、運輸業・郵便業、サービス業、医療・福祉、宿泊業・飲食サービス業、建設業の5業種が、特に人手不足感の強い業種であることが分かります。

産業別人手不足感

 

【出典】厚生労働省「人手不足の現状把握について」

では、それぞれの分野ごとに、人手不足の原因や、特徴を確認していきましょう。

運輸分野

宅配便の取り扱い数は短期間の間に飛躍的に伸びています。つまり、労働力の需要が大きく伸びているといえます。しかし、ドライバーは減少の一途をたどっており、現役ドライバーは高齢化が進んでいます。2030年におけるトラックドライバーの需要ギャップは、8.6万人と推計されています。背景には、労働時間が長い傾向にある一方、給与水準が高くないこと、また“きつい仕事”というイメージの強さが挙げられます。

宿泊、飲食を含むサービス分野

コロナ禍で現在の状況は変わっていますが、外国人旅行者の増加を追い風に、観光分野を中心に需要が大きく伸び、それに伴い、人材が多く必要となりました。一方で、特に中小企業においては離職率が高いのが特徴です。休暇の取得しづらさ、賃金の低さなどが原因と考えられます。

医療・福祉分野

特に介護分野において、人手不足が顕著です。団塊の世代が75歳に達する2025年の介護サービス量は、2017年に比べて、在宅介護で24%、居住系サービスで34%、介護施設で22%増加すると見込まれています。ニーズは増加する一方、賃金水準がなかなか上がらず、法人や事業所の理念や運営、キャリアパスの整備など雇用管理の不十分さなどを理由に、人手不足が続いています。2025年における需給ギャップは、約55万人ともいわれています。

建設分野

高度成長期以降に整備したインフラは、今後一斉に老朽化すると見込まれています。2030年頃までの間に、建設後50年以上が経過した施設の割合は加速度的に高くなっていき、労働力の需要もそれに比例して上がっていきます。

ところが、休日が取りづらいことなどを背景に、工事の直接的な作業を行う技能労働者のなり手は少なく、高齢化が進行している上に高齢の技能労働者の大量退職も迫ってきています。2025年における技能労働者の需給ギャップは、47〜93万人といわれています。

人手不足解消に向けて今取り組むべき対策3つ

人手不足の最も有効な対策は、直接的な要因を解消することです。しかし、ステークホルダーの協力が不可欠ですぐには難しい、また、企業が単体で改善するのは難しい課題も多いのが現実ではないでしょうか。業界は違っても、長時間労働など労働環境の改善、また業務効率化による生産性向上が、人手不足解消のキーワードといえます。

企業が取り組むべき対応策を3つ挙げ、それぞれ解説していきます。まずは自社でできることとして、人を魅きつける魅力的な職場づくり、また人員は少なくてもしっかりと業務を回していけるような仕組みの構築から、取り組んでいきましょう。

<人手不足の対応策>
(1)働き方改革や人事制度の見直し
(2)学び直し制度の実施、副業の許可
(3)業務の抜本的見直し、ロボットやアウトソーシングの活用

(1)働き方改革や人事制度の見直し

働き方改革は、生産性向上に結びつくとともに、人材が集まり、離れていかない職場づくりの一歩になります。フルタイム以外のワークスタイルの許容や長時間労働の改善は、女性、シニア、場合によっては外国人の登用を促進する効果もあります。これまではたらくことのできなかった優秀な人材獲得の可能性を高める原動力になります。

なお、中小企業庁の調査によれば、1995年から生産年齢人口が減少し続けているにもかかわらず、労働力人口はさほど減っていません。これには、65歳以上のシニア、そして女性の労働の参加率上昇が関係しています。

以下に挙げた「年齢別・男女別就業率の変化(1997年~2017年)」を見ると、シニアと女性の就業率の上昇が明白です。特に、「M字カーブ」と呼ばれた20代から40代女性の就業率は近年著しく向上しているのが分かります。しかし、現在に至っても全体的な就業率には男性と15〜20ポイントの差が生じています。

女性は出産などのライフイベントに伴い離職を余儀なくされることがあります。しかし、優秀な人材の離職は、企業にとって大きな損失です。産休や育休、時短勤務や復職制度、テレワーク制度などの整備は、すでに福利厚生ではなく企業経営の観点から取り入れるべき施策になりつつあります。そのことを経営層が意識するとともに、社内に周知することが、働き方改革においては非常に重要です。

労働力人口と生産年齢人口の推移

 

【出典】中小企業庁「中小企業白書 2018」

年齢別・男女別就業率の変化(1997年~2017年)

 

【出典】中小企業庁「中小企業白書 2018」

シニアに関しては、2021年4月から、高年齢者雇用安定法により、70歳までの雇用延長努力が義務化されました。パーソル総合研究所「労働市場の未来推計2030」によると、現在でも60代の半数がはたらいており、そのうち8割が70歳を超えてもはたらき続けることを希望しています。

一方で、仕事をしたいと思いながら仕事に就けなかったシニアが挙げた理由として最も多いのは「適当な仕事が見つからなかった」というものでした。特に「短時間での雇用」を希望している人が多く、今後は雇用条件や職場環境の整備が必要といえそうです。

このように、新たな人材の受け入れには、社内体制の整備が必須です。いきなりがらりと体制を変えると、かえって現場を混乱させることもあります。目指す体制構築までのロードマップを作り、少しずつ整備を進めながら、受け入れることのできる人材の幅を広げていくことが重要です。

(2)学び直し制度の実施、副業の許可

時代の移り変わりとともに、社員に求められるスキルや能力は変化していきます。特に近年は変化の速度が速く、変化についていけなくなってしまう、ということも少なくありません。

今いる人材のスキルや能力を十分に引き出すことは、企業にとっても、はたらく本人にとっても、やりがいや意欲の面でメリットがあります。これに役立つのが、「学び直し制度」の検討です。スキルアップ研修で時代に即した知識や技術を身につけ、既存業務で改めて力を発揮してもらうもいいですし、新たな能力を獲得するための研修を行い、別業務でも力を発揮してもらうのもいいでしょう。本人の適性を考慮しながらの実施は、能力と業務とのミスマッチを減らすことにつながります。

また、副業を許可するのも一つの手です。終身雇用が当たり前だった時代には、副業は原則禁止という企業が多数派でしたが、現在では能力や本人の希望に適した柔軟なワークスタイルが広がっており、副業を許可する企業も増えつつあります。

はたらく個人にとっても、副業は収入源の増加や自己実現、スキルアップなどのメリットもあります。企業にとっても、第三者目線での意見やアイデアなどをもたらしてくれる存在が社内にいることでイノベーションの可能性が高まる、自社をよく知る社員の雇用を維持できるメリットもあります。副業にはデメリットもありますが、上手に活用すれば、今いる人材に、今以上に力を発揮してもらうきっかけを作ることができます。

(3)業務の抜本的見直し、ロボットやアウトソーシングの活用

日本企業の特徴として挙げられているのが「過剰品質」です。お客さま第一の丁寧な対応を心掛けるうちに、必要以上に手をかけすぎてしまっていたという事例は、どの企業にも1つや2つはあるのではないでしょうか。

社外、もしくは他業界の人に、自社の業務工程について意見をもらうなどの機会をつくると、思いつかなかったような課題や問題点、またその解決方法を指摘してもらえることがあります。時間や人手、経費がかかりすぎている作業や工程は、方法を変えるか、勇気を出してやめてみましょう。コストカットは、競争力強化にもつながります。

また、直接利益を生まないノンコアといえる業務は、外部委託したり、システム化したりすることもおすすめです。経費精算や事務作業などの処理サービスや自動化システムは数多く登場しています。こうした分野から、ロボットやAIを活用したシステムの利用、アウトソーシングサービスの利用を検討するのもよいでしょう。

もっとも、一律にシステム化できる業務分野というものはありません。例えば、経理を社内で人が行うことで、戦略づくりなど経営にプラスの効果が出ており、業績向上につながっているならその業務は企業にとってコアといえます。大切なのは、自社にとってのコアとノンコアを適切に分け、重要な部分に対して人材をアサインするために、ノンコアの業務を省力化することです。

生産性向上が、新たな人材を引き寄せるカギ

人材獲得は企業の生き残りの生命線ですが、超高齢社会において、数のみに頼っていては、業務はうまく回りません。効率化・省力化、能力のある人材を柔軟に受け入れられる仕組みや新たな能力の獲得を支援する仕組みの構築を両輪で進めることで、人材確保の間口が広がります。そしてその取り組みは、自社を多くの求職者から「選ばれる会社」へと変革することに、結びついていくのです。

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