なぜ業務効率化が進まないのか?正しい進め方と成功事例を紹介

利益に直結しないノンコア業務の効率化を実現することで、従業員がコア業務に集中できるようになり、生産性向上や競争力強化につながります。しかし、業務効率化の施策を行うにしても、何から取り組めばいいか分からず、うまく進められないケースも少なくありません。また、長く運用してきた業務フローを変えることで、社内から反発が起こるリスクもあるでしょう。

本記事では、業務効率化を実現するための進め方や具体的なアイデアやツール、成功事例を解説します。

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業務の効率化を検討する前に、まずは既存の業務フローを可視化し、正しく整理することで効果を高めることができます。

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目次

業務効率化とは

業務効率化とは、業務プロセスから「ムリ」「ムダ」「ムラ」を省き、非効率な業務を改善することを指します。業務の自動化やITツールの導入、フローの見直しなどの施策を行うことで、業務の効率化につながります。

少子高齢化が進む日本では、人材不足が深刻な課題です。そのため、業務効率化を進め、限られた人員で多くの成果を創出することが求められます。業務効率化により従業員が重要度の高い業務に集中でき、空いた時間で自己研鑽を行えるようになれば、スキルやモチベーション向上が期待でき、結果的に成果の創出につながります。

企業全体の組織強化や生産性向上を実現するために、業務効率化は不可欠といえます。

業務効率化と生産性向上の違い

「業務効率化」と似た意味の言葉として「生産性向上」が挙げられます。生産性向上とは、従業員数や労働時間数に対して成果が出ている状態を指す言葉です。

業務効率化は、生産性を向上させて成果や利益を上げるための施策のひとつとして捉えられます。業務効率化によって既存の業務にかけられていた労働時間が削減できれば、余った労働時間で新たな成果を生み出すことができ、結果的に生産性向上へとつながります。

【関連記事】生産性向上とは?メリットや6つの施策とポイント、事例を解説

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業務効率化のメリット

具体的に業務効率化を果たすことでどんなメリットがあるのでしょうか。主に挙げられるのが以下の3点です。

1.生産性向上

業務効率化により、手作業や重複作業が削減され、これまでよりも少ない時間で多くの業務をこなすことが可能になります。その結果、生産性が向上し、限られたリソースでより大きな成果を生むことができます。

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2.コスト削減

業務の無駄がなくなることで、従業員が本来必要としていた作業時間を短縮できます。これにより、残業や人員追加が不要となり人件費が削減されます。

また、RPAなどによる自動化や標準化を進めることで人的ミスが減り、ペーパーレス化やデジタル化の推進によって物品の購入費や運用コストが削減できるでしょう。

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3.従業員のモチベーション向上

業務効率化によって、煩雑な作業や時間がかかる作業を効率化することで、従業員はより価値のある業務に集中できるようになります。結果として、従業員のストレスが減少し、満足度やモチベーションの向上につながります。

【関連記事】モチベーションマネジメントとは|低下する原因と具体的な改善施策

業務効率化の進め方|4つのステップ

業務効率化を進める上では、段階を一歩ずつ着実に上っていく計画を立てることが大切です。状況把握、課題認識、改善実行、効果検証のフローをきちんと順序よく行うことで、より高い効果を発揮することが期待できます。

    1. 業務を可視化する
    2. 改善箇所の優先順位を決める
    3. 改善方法を決める
    4. 効果検証を行う

1.業務を可視化する

業務効率化を図る上では、現状の業務フローを可視化することが出発点となります。以下の情報を整理し、業務の棚卸を行います。

  • どのような業務があるのか
  • 誰が担当しているのか
  • 業務に対し、どれくらいの人員が必要か
  • 所要時間、工数はどれくらいか など

業務を可視化できれば、不要または重複しているプロセスを発見できます。業務を可視化し、課題を明確にすることで、課題に対してどう改善していくのか、具体的な取り組みが見えやすくなるはずです。可視化ができていないまま改善に踏み切ると、既存のプロセスをそのまま簡略化したり、現行のシステムをそのままリプレイスしたりといった、既存のやり方に囚われた業務改善になりがちなリスクがあります。

【お役立ち資料】業務可視化の方法と平準化のステップ

業務可視化は、属人化を解消し従業員の負担を減らすために実施されます。本資料では、業務可視化のステップに加えて、業務の割り振り方やマニュアル化のコツなども詳しく解説します。

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【関連記事】業務可視化とは?進め方を3ステップで解説【フォーマットあり】

2.改善箇所の優先順位を決める

課題を発見したらすべての作業に一斉に着手するのではなく、必ず優先順位をつけましょう。あるべき姿を目指すにあたり、時にはドラスティックな改革が必要なこともありますが、業務の改変は大きければ大きいほど現場の抵抗も受けやすく、また新たなマニュアルやシステムの整備にも時間や手間がかかります。

そのようなリスクを最小限に抑えるためにも、改善箇所の優先順位を決める際は、以下の2点を軸に考えましょう。

  • 現状の工数
  • 影響範囲(当該業務の改善により、ほかの業務の効率化にもつながるか)

3.改善方法を決める

優先度が高いと判断された業務に対し、改善の8原則をもとに改善方法を決めましょう。上から順番に業務を振り返りながら、最適な方法を考えます。

原則 改善内容
1.廃止 やめることができないか
2.削減 回数や量、頻度を減らせないか
3.容易化 もっと作業がしやすいよう、簡単にできないか
4.標準化 ルール化して、統一できないか
5.計画化 もっと計画的に、短い時間でできないか
6.分業分担 仕事の負荷や、スキル・経験は適正か
7.同期化 もっと平準化し、まとめてできないか
8.機械化 デジタル化・自動化できないか

改善したい業務を見つけても、いきなりツールを導入するのではなく、まずは「業務そのものを減らせないか」「業務にかける時間を減らせないか」という視点から検討しましょう。その上で、フォーマットに状況を記載し、現状の課題や工数と、それらに対する改善案を可視化します。

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4.効果検証を行う

業務フローに変化を加えたら、実際にどのような効果が出たのか検証しましょう。場合によっては、思うように効果が出ず、元の方法に戻したほうがよいケースもあります。もし効果が出ている場合でも、一度改善したら終わりではなく、業務の可視化と分析を繰り返すことが重要です。改善のサイクルを回すことで、現場にも効率的な業務を常に考える習慣が根付いていきます。

業務改善の効果を正しく把握するには、数値で測定できる「定量的効果」と、モチベーションや雰囲気に代表される「定性的効果」の両方をバランスよく測定することが重要です。また、短期的な数値だけでなく、長期的な職場環境の変化にも注目しながら、最適な業務プロセスを追求しましょう。

定量的効果と指標例

定量的効果では、改善前後のデータを比較し、どれだけの時間短縮ができたのか、生産性が向上したのか、具体的な成果を数値として示しましょう。これにより、客観的な評価を基に取り組みの効果を明確に判断できるだけでなく、さらなる改善の方向性も見えてきます。

定量的効果を測る指標の例

    • 作業時間の削減率(業務プロセスの見直しにより、1タスクあたりの所要時間が何%短縮されたか)
    • 生産性向上率(1人あたりの業務処理件数や生産量がどれだけ増えたか)
    • エラー・不良率の低下(ヒューマンエラーやミスの発生率がどの程度改善されたか)
    • 納期遵守率の向上(業務プロセス改善によって納期を守れる割合が増加したか)
    • 労働時間の最適化(業務効率化によって残業時間がどれだけ削減されたか)
    • コスト削減効果(業務改善によって人件費や運用コストがどの程度削減できたか)

こうした指標を定期的にモニタリングし、数値に基づくフィードバックを得ることで、さらなる業務改善の機会を発見できます。

定性的効果と指標例

業務効率化の効果は、単に数値で測れるものだけではありません。職場の雰囲気が良くなった、従業員のやる気が向上した、チームの連携が強化されたといった「定性的効果」も重要な評価ポイントです。これらは直接数値で表しにくいものの、組織のパフォーマンスや持続的な成長に大きな影響を与えます。

定性的効果を測る指標の例

    • 従業員満足度の向上(アンケート調査やヒアリングを通じて、働きやすさや仕事へのモチベーションを測定)
    • チームワークの強化(業務の円滑化により、コミュニケーションの改善やコラボレーションの活性化が見られるか)
    • ストレスレベルの変化(業務負担の軽減によって、従業員のストレスがどの程度減少したか)
    • イノベーションの促進(業務の効率化が、新しいアイデアや改善提案を生み出す文化につながったか)
    • 顧客満足度の向上(業務改善がサービス品質の向上につながり、顧客からのフィードバックに変化があったか)

定性的効果は、従業員アンケートをはじめとするエンゲージメントサーベイを通じて定期的に確認することで把握できます。数値化が難しいため、定性的なデータと定量的なデータを組み合わせながら評価することが重要です。

【関連記事】エンゲージメントサーベイとは?目的や効果、実施のポイントを解説

業務効率化のアイデアと役立つツール

業務効率化において業務フローの改善は欠かせません。無駄を省き、最適な業務フローを確立した後は、便利なツールやサービスを活用することで、さらなる効率向上が期待できます。具体的な業務効率化のアイデアと、支援ツールについて紹介します。

業務プロセスの見直し

業務プロセスの見直しは、効率化の第一歩です。現行の業務フローを可視化し、どこに無駄があるのか、どの作業が重複しているのかを洗い出します。その上で、不要なプロセスを削減し、業務の流れを最適化することで、作業時間の短縮やコスト削減につながります。

また、手作業で行っている業務の一部をツールで自動化することで、よりスムーズな業務運営が可能になります。業務の優先順位を明確にし、重要度の高い作業に集中できる環境を整えましょう。

業務マニュアル・フローチャートを作成する

業務の標準化と属人化の解消を目的として、業務マニュアルやフローチャートを作成することが有効です。業務手順を明確に記述し、誰でも同じ品質で作業ができる環境を整えることで、業務の効率化が図れます。

また、フローチャートを活用することで、業務の流れが視覚的に理解しやすくなり、新しい従業員の研修や引き継ぎもスムーズになります。デジタルツールを活用して、常に最新の情報を共有できるようにしておくとよいでしょう。

ペーパーレス化の推進・ファイル管理ツールを導入する

紙の書類をデジタル化することで、書類の検索や共有が容易になり、業務効率化につながります。また、物理的な保管スペースも不要になり、印刷コストや郵送費、紙の消耗品費なども削減できます。

さらに、データ管理システムを活用することで、アクセス権限の設定やセキュリティ強化ならびにバックアップも容易になり、情報漏洩のリスク低減にもつながります。

パーソルグループのファイル管理ツール「AUTOMETA」

AUTOMETAは、AIによるビジネス資料の整理・検索・活用に特化したBPaaSです。クラウドストレージと連携するだけで、AIが自動でファイル整理を行い、検索工数の削減に貢献します。

タグ検索や全文検索、AIチャットボット検索を活用することで、必要な資料を素早く見つけられるのも、AUTOMETAの特徴です。加えて、AIと会話するだけでスライド資料を作成できる「HanashiAI」機能も搭載しており、資料作成の手間も削減できます。

導入時には操作説明会やシステム設定のサポートもあり、スムーズな運用が可能です。ユーザー数無制限で月額50,000円から利用できるAUTOMETAの導入を、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

【関連記事】BPaaSとは?概要や導入メリット・活用事例について解説

タスク管理ツールを導入する

タスク管理ツールを導入することで、個々のタスクやプロジェクトの進捗状況をリアルタイムで可視化でき、情報共有がスムーズに行えます。タスクの割り振りや期限の設定、優先順位の整理が容易になり、各メンバーが自分の役割を明確に把握できるため、混乱やタスクの重複を防げます。

また、リマインダー機能によって重要な締め切りの見逃しが減り、作業の抜け漏れを防止できます。効率的なタスク管理により、時間管理が最適化され、生産性の向上とプロジェクト全体の円滑な進行を実現できるでしょう。

パーソルグループのタスク管理ツール「Bizer team」

Bizer teamは、クラウド型の業務管理ツールです。シンプルで使いやすいインターフェースで、タスク管理や進捗状況の可視化、そしてチームメンバー間の円滑なコミュニケーションを可能にします。

個別のタスクやプロジェクトを登録し、進行状況をリアルタイムで共有することで、全員が最新の情報にアクセスでき、業務の抜け漏れや遅延を防ぐことができます。

また、チームのスケジュール管理やリマインダー機能も備わっており、期限の厳守が容易です。さらに、クラウドベースで動作するため、場所やデバイスを問わず、どこからでもアクセスできます。

「誰がどの作業を担当しているのかわからない」「進捗管理が属人化している」といった課題をお持ちの方はぜひサービス紹介動画をご確認ください。

サービス資料をダウンロードする

コミュニケーションツールを導入する

無駄な会議やメールのやり取りを減らし、コミュニケーションを効率化することで、業務が円滑に進むだけでなく、意思決定がスピーディーになります。

特に、リモートワークの増加に伴い、リアルタイムでのコミュニケーションを可能にするチャットツールやビデオ会議ツールの活用が一般的になりました。これにより情報共有や進捗管理がスムーズになり、コミュニケーションのタイムロスを防ぎます。

自動化ツールやRPAで業務を自動化する

定型的かつ反復的な業務は、自動化ツールやRPAを活用して処理することで、作業時間の短縮と人的ミスの削減が可能になります。

RPAは「Robotic Process Automation」の略で、PC上で行う業務をロボットで自動化するテクノロジーです。例えば、データ入力や請求書の処理、メールの送信など、時間がかかる業務を自動化すれば、従業員はより付加価値の高い仕事に集中できるようになります。

また、自動化により業務の標準化が進めば、品質のばらつきも減少します。これにより、業務のコスト削減や生産性向上が期待でき、結果として企業全体の競争力を高められます。RPAはPCやクラウド上で動くソフトウェアを指しており、以下のデータ処理を得意としています。

    • データ入力・データ転記
    • 帳票・請求書処理
    • メールの自動送受信・分類
    • 顧客管理
    • データ収集・レポート作成
    • 経理・財務業務の自動化
    • 在庫管理・発注処理
    • ITシステムの運用・監理
    • 人事・労務関連の自動処理 など

【関連記事】RPAとは?活用するためのポイントと注意点を徹底解説

アウトソーシングを活用する

アウトソーシングとは、社内業務を外部の専門企業に委託する経営手法を指します。自社に不足している人材やサービスを外部に委託することで、従業員がコア業務に集中できる環境を整えられるため、企業の生産性向上につながります。アウトソーシングの対象となる業務は、各種事務業務や受付、コールセンター、営業など多岐に及びます。

アウトソーシングの対象業務

アウトソーシングは、委託先企業の専門的な知識やノウハウを活用できる点が魅力です。また、特に事務作業やカスタマーサポートなどの業務は、アウトソーシングの活用によってコスト削減にもつながります。

自社で対応する場合、従業員の給与や福利厚生に加え、オフィススペースや設備の維持費などが発生しますが、業務を外部に委託すれば、こうした固定費を大幅に削減できます。さらに、業務量の変動に応じて契約を調整できるため、必要なときに必要な分だけリソースを確保できるなど融通が利く点もメリットです。

新たな人材の採用や研修にかかるコストも抑えられ、マネジメントの負担も軽減されるため、企業はコア業務により集中できる環境を整えやすくなるでしょう。

【お役立ち資料】アウトソーシングで業務を改善!成功事例と15のチェックポイント

アウトソーシングは業務を社外へ委託するサービスで、業務効率化の手段として注目を集めています。本資料では、アウトソーシングの基礎から部門別の成功事例まで解説します。

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【関連記事】アウトソーシングとは?意味や導入のメリットを簡単に解説
【関連記事】【動画付き】BPOとは?アウトソーシングとの違いや対象業務、導入事例を解説

1つではなく複数のアイデアを組み合わせる

業務効率化を成功させるためには、1つの手法だけに頼るのではなく、複数の施策を組み合わせることが大切です。例えば、業務プロセスの見直しを行いながら、タスク管理ツールや自動化ツールを導入することで、相乗効果が生まれます。

また、短期的な効果だけでなく、長期的な視点での継続的な改善を意識することが重要です。企業の成長とともに業務内容も変化するため、定期的に見直しを行い、効率化のための最適な手法をアップデートしましょう。

既存業務を見直す際の3つのポイント

業務効率化が順調に進むこともあれば、思うような成果が出ないこともあります。順調でない場合はやり方を見直すことも大切です。軌道修正の際に押さえるべき重要なポイントは、大きく分けて3点です。

1.現在の課題は明確になっているか

業務効率化を推し進めても、現在の課題が明確でなければ、本質的なボトルネックは特定できません。その結果、部分的な改善に留まり、本来重要ではないポイントに注力してしまう恐れがあります。

まずは業務の可視化を行い、現状を分析しましょう。一人ひとりの作業を細かく分析することで「ムリ・ムダ・ムラ」を発見し、的確な改善につなげられます。

2.効果について仮説を立てられているか

「この手法やツールを導入することで、何をどれだけ効率化できるのか」という仮説を立てることが重要です。例えば、データの自動処理を検討している場合、「現在○分かかっている業務を△分短縮できる」「一人当たりの作業工数が○分削減できる」のように、具体的な数値で仮説を検証できると理想的です。

闇雲に業務効率化の手法やツールを取り入れても、本質的な改善につながらないケースがあるため、導入前にしっかりと仮説を立てましょう。

3.実行したままになっていないか

施策を実行しただけで満足してしまい、その後の効果検証を怠ると、期待した成果が得られないことがあります。例えば、工数を削減するために一部の業務フローを変更した場合は、以下のポイントをチェックしましょう。

    • どれだけ工数を削減できたか
    • 現場の従業員はどのような意見を持っているか
    • 別の業務に支障が出ていないか

施策は「実行して終わり」ではなく、定期的に効果を検証し、現在の業務方法が最適化されているかどうかを確認することが重要です。

業務効率化を進めるうえで重要な2つのポイント

業務効率化を成功させるための、特に重要なポイントは2点です。

1.ロードマップを策定する

業務効率化のおおよその方向性が見えたら、まずは業務効率化に向けたロードマップを作成しましょう。その業務の目的を果たすために、どのような手順を踏めば効率的なのかを整理し、理想の業務フローを明確にした上で進めることが大切です。

よくある失敗として挙げられるのが、ムダやムラのある業務に対して、局所的にシステムを導入することです。「多額のコストをかけてシステムを導入したが、そもそも、その作業自体が不要だった」というケースはしばしば見られます。例えば「可視化・改善のためのKPTミーティング(※)を月に一度実施する」など、“改善し続ける姿勢”を持つことが大切です。

「目下の工数やリソースが多くかかっている作業だからシステムを導入する」という発想ではなく、目指すべき理想の形を更新し続け、それに適したシステムを選択するようにしましょう。

※KPT=現状を見直す際に、「Keep(継続すること)」「Problem(課題)」「Try(解決策)」という3項目を書き出し、今後の対策を考える手法。

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2.ターゲット部署を巻き込んで推進する

業務効率化は、実際にターゲットとなる部署の従業員や、部門のトップを巻き込んで進めることが重要です。業務効率化の推進により、これまでの業務フローが変わるため、現場の従業員は一から仕事のやり方を覚え直さなければならず、「面倒くさい」「わざわざ導入しなくても」といった感情が生まれがちです。このような不満が高まると、モチベーションの低下や離職のリスクにもつながるため、できる限り現場でのコンフリクトが生じないように業務効率化を推進しましょう。

最近では、多くの企業がDX推進部などを設けて全社的な業務効率化を進めるケースが増えています。成功している企業を見ると、現場のトップがプロジェクトの目的や有用性をしっかり理解し、従業員へ浸透させている傾向にあります。

業務効率化が自社の成長にどのように寄与するのかを伝え、不安を解消しながら進めていきましょう。

【部門別】業務効率化の成功事例

業務効率化を成功させた企業の事例を参考にするのも、有効な手段のひとつです。パーソルグループが支援し、業務効率化に成功した企業事例を紹介します。

【経理】属人化していた業務を標準化し、運営体制を改革

ある大手情報通信会社の経理部では、社員数の減少に伴い業務の属人化が進み、業務量の全体把握ができていないという課題を抱えていました。そのため、業務の繁閑に応じた適切な人員配置が難しく、業務負担の偏りが発生していました。

そこで、パーソルのコンサルタントによる業務調査を実施し、属人化している業務内容を洗い出しました。その結果を基に、業務のマニュアルやFAQなどを作成し、業務の標準化を推進。誰が担当しても同じクオリティで業務を遂行できる環境を整えました。

また、共通業務・類似業務を明らかにしたのち、経理部と財務部の各業務を一体化した業務運用を導入。一方の部署が忙しい時期にもう一方の部署が業務を手伝うなど、スタッフのマルチタスク化が進みました。結果として、業務負担の平準化が実現し、より柔軟な業務運営が可能となりました。

【総務】AI-OCR×RPAを導入し業務工数を75%削減

ある電子部品メーカーの総務部では、業務の属人化と作業負担の多さが課題でした。業務改善の必要性は認識していたものの、具体的な進め方が定まっておらず、効果的な対策を打てていない状況でした。

そこで、業務改善部門とのディスカッションを行いつつ、各部署が自律的に業務改善を行うための方法論を整理・検討。その方法論を検証し、課題の抽出を行いました。

また、抽出された課題を解決すべく、手書きの書類や帳簿を読み取ってデータ化するAI-OCRや、業務プロセスを自動化するRPAを導入することで、業務量削減につなげました。業務の削減効果は約75~80%と推定され、現場を主体にした業務改善の促進、継続を実現できています。

【IT】アウトソーシングの活用で業務工数を月320時間削減

ある人材サービス会社では、従業員に支給する社用モバイル端末の発注や支払いなどの管理業務や、紛失時のデータ消去といった作業に多くの工数が必要でした。これらの業務は総務部と情報システム部が分担して対応していましたが、組織をまたぐ業務のため非効率が生じていました。

そこで、パーソルにモバイル管理業務を委託。納品、管理、解約、廃棄、請求支払といったライフサイクル管理を一括でアウトソーシングしました。結果として、アウトソーシング導入前と比較して約30%の業務工数削減に成功し、月320時間の作業時間を削減することができました。これにより、社内のリソースをより重要な業務に集中させることが可能となり、全体的な業務効率の向上にもつながりました。

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業務の効率化を検討する前に、まずは既存の業務フローを可視化し、正しく整理することで効果を高めることができます。

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まとめ|業務効率化は現場を巻き込もう

業務効率化は、業務フローのムダやムラをなくし、企業の成長を後押しする重要な取り組みです。しかし、既存の体制を変える際には、現場からの反発が生じることも少なくありません。

経営層だけでなく、現場の従業員を巻き込みながら進めていくことが、業務効率化を成功させる鍵となります。適切な施策を講じ、企業全体の生産性向上を目指しましょう。

インタビュー・監修

パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
プロダクト統括部 Bizer team部 ゼネラルマネージャー 兼
Bizer株式会社 代表取締役

畠山 友一

富士通、リクルート、ネウスウェイ、グリーを経て2013年10月にBizer株式会社を設立。2019年1月にパーソルプロセス&テクノロジーに株式譲渡。「Bizer team」を活用し、数多くのバックオフィス改革や成長し続けるチームの支援に従事。