コスト削減のアイデア
では、どのようにしてコスト削減に取り組めば良いのでしょうか。本章では、効果が出やすいコスト削減のアイデアを4つのカテゴリに分けて紹介します。
1.人件費・経費の見直し
人件費とは、従業員にかかる給与や賞与、社会保険料、福利厚生費などを指します。コストのなかでも一番多くを占めているため、コスト削減と考えると一番に思い浮かぶでしょう。ただし、前述のとおり、安易な削減は厳禁です。
▼人件費・経費の見直し例
・業務フローの見直し、効率化
・長時間労働の是正
・オンライン会議の活用で出張回数の削減
・アウトソーシングの導入
業務を洗い出し、無駄な業務を減らすといった業務フローの見直しによって、一人ひとりの業務効率を高めることができます。限られたリソースでも業務を遂行できる体制を整えていきましょう。
また、長時間労働を是正することで、残業代が削減されます。しかし、ただ「残業を減らしてください」と依頼しても長時間労働の是正にはつながりません。人員配置を再検討したり、前述した業務効率化を図ったりすることで、工数削減を図りましょう。
出張回数の見直しも有効です。出張には交通費や宿泊費、出張手当といった経費がかかります。オンライン上で完結できる業務であれば、オンライン会議システムの活用で代替してみることも一つの手です。
なお、業務を見直すなかで、「自社で行う必要がない」という業務があればアウトソーシングを活用してみるとよいでしょう。
人件費の見直し成功事例|製造業A社様
A社様では、経理業務を派遣スタッフが行っていました。しかし、業務の繁閑にかかわらず固定費がかかること、管理や教育のための担当社員の負担が課題になっていました。
そこで、業務を委託するアウトソーシングに切り替えたところ、閑散期の余剰人件費を削減することができました。
加えて、手作業が発生していた業務システムの見直しも行ったことで、業務の無駄や出力帳票も整理でき、業務改善も実現しました。
【参照】パーソルワークスデザイン株式会社「 導入事例|製造業 A社様」
2.採用・教育コストの適正化
求人広告の掲載費、自社採用ページの制作費といった採用にかかるコストは、採用業務や手法を見直すことで適正化できる可能性があります。
▼採用・教育コストの適正化例
・採用手法の見直し
・採用業務の効率化
・離職率の改善
具体的には、RPOの検討や、自社のターゲットに合った求人広告媒体の見直しなどが考えられます。また、リファラル採用やダイレクトリクルーティングといった新しい採用手法を取り入れるのも有効です。
採用担当者の業務負荷が高いのであれば、採用業務の効率化を図ってみましょう。例えば、ツールを導入して応募受付時の返信や選考結果通知を自動化したり、カレンダーツールを利用して面接のアポイントメントを自動化したりといった工夫が考えられます。採用担当者の工数が削減され、採用戦略の立案に注力できます。
なお、就職みらい研究所「就職白書2020」によると、2019年の一人あたりの平均採用コストは、新卒採用が93.6万円、中途採用が103.3万円です。
そのため、離職率が高い場合は福利厚生の見直しや長時間労働の是正など、従業員がはたらきやすい環境を作ることで結果的にはコスト削減につながるでしょう。
採用コストの見直し成功事例|イオン株式会社様
イオン株式会社様では、全店舗ではたらく従業員のおよそ8割を占める、時間給社員の採用および育成に課題を抱えていました。従来は個社で採用活動を行っており、募集や面接など店舗側の業務負荷が高く、タイムリーな対応に欠ける状態でした。
そこで合同採用センターを立ち上げ、グループ一括で募集から面談セッティングまでの業務を行う体制を構築しました。
その結果、応募に対するクイックレスポンスが実現し、面接の設定率、入社数が増加しました。併せて、グループ一括での集中購買による媒体コスト低減など、コスト削減にもつながりました。
3.オフィスコストの削減
コロナ禍の影響で、テレワークを導入する企業が増えました。パーソル総合研究所の調査によると、ワクチン普及後の第6波の感染が拡大した2022年2月における正社員のテレワーク実施率は、全国平均で28.5%となっています。
2020年3月〜2021年7月のテレワーク実施率の推移(正社員ベース)
【参照】株式会社パーソル総合研究所「第六回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」
また、多くの企業がペーパーレス化を推進しています。
ペーパーレス化を「積極的に行った」は31.3%、「ある程度行った」は41.0%
【参照】ペーパーロジック株式会社「ペーパーレス化に伴う2022年度予算」に関する調査」
出社を前提としないといったはたらき方の変化や、書類など紙を保存するスペースの縮小にあわせて、オフィス規模を見直すこともおすすめです。
▼オフィスコストの削減例
・ペーパーレス化
・通信費の見直し(契約プランの見直し、不要なオプションの解除)
・出社人数に合うオフィスへの見直し など
4.エネルギーコストの削減
総務省の調査によると、テレワークの実施やフリーアドレス化、間引き消灯などの取り組みを行うことで、オフィス全体の電力消費量は一人あたり43%削減可能と試算されています。
【参照】総務省「平成22年度次世代のテレワーク環境に関する調査研究」
▼エネルギーコストの削減例
・LED電球・人感センサーのものに変える
・テレワークで出社を抑制する
・エアコンの設定温度を見直す
・クールビズを推奨する など
エネルギーコストは一番効果が大きく、成果が見えやすいです。そのため、これからコスト削減に着手する場合は、足がかりとして取り組むとよいでしょう。
しかし、コスト削減を意識するあまり、はたらく環境が悪化してしまわないよう注意が必要です。例えばエアコンの設定温度が適切でないと、従業員のモチベーション・パフォーマンスも低下してしまいます。現場の意見を尊重しながらコスト削減に取り組んでいきましょう。