採用力を強化できる
RPOを提供する企業は採用領域に関する深い知見やナレッジを持っているため、外部ノウハウを活用することで、採用力の強化につながります。
例えば、これまで中途採用の実績が少ない企業も、RPOを導入することで、中途採用のノウハウを学ぶことができます。
また、採用のミスマッチや内定率の低下に課題を抱える企業の場合、客観的な視点からのアドバイスや市場・競合他社の状況を踏まえた上での改善案をもらえる可能性があります。結果、自社だけでは思いつかない、より効果的な手法や戦略で採用活動を進めることができるようになります。
コストを削減できる
採用領域のノウハウをもった企業へ委託することで、人件費や採用コストの削減が期待できます。採用担当者を自社で新たに採用したり、育成したりする必要がないためです。
また、委託先企業のノウハウを活用できるため、自社で進めるより効率が良く、結果的にコストがおさえられることがあります。
必要な業務に従業員を配置することができるでしょう。
RPO(採用代行)のデメリット
採用業務の負担軽減や採用力の強化が期待できる一方で、以下のデメリットもあります。
社内に採用ノウハウが蓄積されない
委託先に採用業務を丸投げしていると、自社に採用ノウハウが蓄積されない可能性があります。
せっかく得たノウハウが社内に定着しなければ、いざ自社で運用をしようと思った時に自走できなくなってしまいます。
RPOを導入する場合は、委託先に任せきりにするのではなく、委託した採用業務のマニュアル化やフローの標準化を行い、いざ自社で運用していく時に自走できる仕組みを整えることが求められます。
業務の実態を把握できない
採用業務を委託した際の連携が不十分だと、双方の認識のズレによって採用のミスマッチが起こるリスクも考えられます。そのため、委託先と業務フローの共有や進捗の報告など、綿密なコミュニケーションを行い、委託業務の全体像を把握しておくことも忘れてはいけません。
情報漏えいのリスクがある
採用候補者の情報や人事情報など、機密性の高い情報を外部企業と共有する必要があります。多くのアウトソーシング企業では、個人情報の保護について厳しいルールを設けていますが、万が一、これらの情報が流出し、顧客が損害を被った場合、自社に大きな責任が問われる恐れがあります。
アウトソーシング先の選定時に、機密情報の扱いに関して厳しいルールを設けているかをチェックしておきましょう。
また、「SLA(サービスレベルアグリーメント)」を締結し、情報の取り扱いに関して明確なルールを自社と委託先の間で取り決めておくことで、情報漏えいのリスクを最小限に抑えることができます。
RPO(採用代行)の業務内容
RPOで委託できる業務には大きく「コンサルティング」と「アウトソーシング」の2種類があります。採用プロセスは多岐にわたるため、自社の業務体制や課題、目的に応じて、委託する範囲を決定することが大切です。
ここでは、代表的な業務をご紹介します。
面接選考
「面接選考は自社で担当したい」と考える企業が多いこともあり、RPOでは「面接日程の調整」「選考結果の通知」など、面接選考の周辺業務のアウトソーシングに対応しているケースが大半です。
しかし、中には「面接代行」や「合否決定」などのコンサルティング部分を委託可能な会社もあります。そのようなケースでは、1次面接のスクリーニングをRPOに委託し、最終面接は自社の役員と人事部門が担当するなど、選考のフェーズによって役割を変えることもあります。
コンサルティング |
・面接官トレーニング、研修の企画、運営 ・面接マニュアルの作成 など |
アウトソーシング |
・適性検査、面接日程の調整 ・面接当日の受付、案内 ・適性検査の結果や面接結果の管理 ・選考結果の通知 など |
採用計画・採用戦略立案
採用計画・採用戦略では、中期経営計画や事業計画を基に、プロセスの一部代行であるアウトソーシングだけではなく、長期的な視点で採用の方向性や軸を決定していくためのコンサルティング部分を委託することも可能です。
コンサルティング |
・採用計画の立案補助 ・予算案作成の補助 ・人材要件の定義作成 ・採用プロセスの設計 ・採用ブランディングの企画立案 ・採用市場の調査 など |
母集団形成
母集団形成(自社に興味や関心を持っている人材を集めること)に関わる領域では、採用手法の選定と企画などのコンサルティング部分のほか、採用イベントの受付、案内のためのアウトソーシングなど、幅広い業務を委託することができます。
コンサルティング |
・採用手法の選定と企画 ・求人広告の企画、運用 ・採用ホームページやオウンドメディアの立ち上げ、コンテンツ企画 ・各種採用イベントの企画、運営 ・エージェント管理 ・求人票案のご提案 など |
アウトソーシング |
・企業説明会やインターンシップへのエントリー対応、リマインド作成 ・各種イベントの受付、案内 ・採用サイト、SNSの情報更新 など |
応募受付・書類選考
RPOでは、「採用候補者への連絡」や「応募書類の管理」などの事務的な作業のためのアウトソーシングのほか、書類選考プロセスの改善提案などのコンサルティング部分を依頼することも可能です。
コンサルティング |
・選考基準のアドバイス ・書類選考プロセスの改善提案 など |
アウトソーシング |
・応募書類の回収、管理 ・選考結果の通知 など |
内定対応
職業紹介では、人材紹介や採用支援までを業務対象とすることが一般的ですが、RPOでは、面接選考以降に発生する、内定者に関わる業務を委託することもできます。
コンサルティング |
・内定辞退者へのヒアリング、個別面談 ・内定者研修、説明会の企画、運営 ・内定者向けイベントの企画、運営 など |
アウトソーシング |
・内定書類の送付、回収 ・入社前書類の送付、回収 など |
RPO(採用代行)の費用相場
採用代行の費用相場は、料金体系や雇用形態、委託する業務の範囲によって大きく異なります。例としては以下のようになります。
雇用形態別
新卒採用や中途採用、パート採用など雇用形態によって採用相場が異なります。
例として、以下のような費用相場になっています。
新卒採用 |
月額5万円〜70万円 |
中途採用 |
月額10万円〜70万円 |
パート・アルバイト採用 |
月額1万円〜30万円 |
業務のなかで「ノンコア業務を含むか、含まないか」によっても費用相場は変わってきます。ノンコア業務というのは、応募者の情報入力や面接日程調整など、直接的に合否や採用に影響がない業務のことです。
一方で、採用計画の立案や面接実施など、採用に影響のある「コア業務」を含めて委託する場合、費用は上がります。
このように業務内容や範囲によってRPOにかかる費用は大きく変動します。そのため、企業を選定する前に、まずは「採用活動業務の洗い出し」と「ボトルネックになっている箇所」を洗い出すことから始めましょう。
RPO(採用代行)導入のポイント

RPOの導入ポイントは、以下の4点です。
導入範囲は採用KPIに基づいて決定する
RPOは採用業務の負担軽減や採用力強化といったメリットのあるサービスですが、導入範囲を決める際には「採用担当のリソースが足りないから」といった理由でRPO企業に業務を丸投げすることは避けましょう。なぜなら、RPOは企業が抱える以下のような採用課題を解決するために導入すべきであり、課題によって最適なRPO導入範囲が異なるためです。
-
- 想定していた採用人数を確保できない
- 応募者が集まらない
- 応募者はいるものの、内定辞退者の割合が多い
- 企業が求める人材を獲得できない
- 求職者に企業が認知されていない
以下は、一般的な採用プロセスにおける、成果指標(KPI)例をまとめたものです。

このように一連の採用フローをKPIツリーに落とし込むことで採用のボトルネックを浮き彫りにすることができます。
例えば、面接突破率に対する「応募数」が十分でない場合は、採用活動を強化する必要があります。一方で「応募数」は確保できているものの「内定受諾率」が低迷している場合は、採用決定までのフローを通して企業の魅力を候補者に伝えてきれていないか、企業に対するイメージと現実の乖離が生じている可能性があります。
こうした採用課題をまずは自社で整理し、どの範囲でプロの知見が必要なのか明確にすることができて初めて、RPO委託時に適切な導入範囲を見極めることができます。
繰り返しますが、RPO導入の本質的な目的は決して、採用リソースを拡大することではありません。スカウトメールの作成や求人サイトの管理といった定型業務を部分的にRPO企業に委託する代わりに、自社内では内定者と密なコミュニケーションを取る・内定者同士や社員との交流会を開催するといった採用フォローに時間を割くなどして採用成果を最大化することが目的です。
委託する業務を事前に決めておく
RPOを導入する際には委託する範囲と自社が担当する範囲は明確にしておくことがポイントです。
委託する範囲と自社の担当範囲が不明確なまま業務を依頼してしまうと、業務の抜け漏れや重複が発生する可能性があります。採用業務の工数がさらに増大してしまう原因にもなるため、まずは委託業務を洗い出してからRPO企業に依頼するようにしましょう。
また、RPO企業の提供するサービスによっては委託できない業務もあります。契約の締結時に、個々の業務に関して対応が可能かどうかを確認するようにしましょう。
代行業者の選定を行う
RPO導入時は、採用代行業者に問い合わせを行う前に、以下の内容をリサーチしておくことをおすすめします。
・累計導入社数と年間導入社数
累計導入社数や年間導入社数の多さは、採用データ量とスキルの指標と言えます。
・従業員数
従業員数は、安定したパフォーマンスが期待できるかなどを判断する指標となります。
・セミナーを開催しているか
セミナーや相談会を開催するには、採用に関する専門知識や蓄積されたデータが必要です。開催の実績があるかで、信頼度やレベルを測ることができます。
・得意分野
RPOは、企業によって「新卒採用」「中途採用」など得意分野が異なるケースがあります。自社の業務範囲と、委託先の得意領域がマッチしているかを確認しておきましょう。
こまめに認識をすり合わせる
業務範囲の線引きを明確にすると共に、こまめな情報共有を怠らないようにしましょう。記事内でも解説した通り、企業間の人材獲得競争は激化しています。そのため、求める人材に対して、迅速かつ適切なアプローチを取る必要があります。
しかし、RPO企業との情報共有や認識がずれていると、求める人材へのアプローチが遅れてしまう、そもそもリストに入っていないといった問題が生じてしまいます。
「採用計画の共有ができているか」「スケジュール通りに計画が進んでいるか」「進捗に問題はないか」など、双方に認識のずれが発生しないように心がけましょう。
RPO(採用代行)の許可基準を確認する
RPOは、労働者の募集を第三者に委託する「委託募集」に該当するサービスです。事前に厚生労働大臣や都道府県労働局長の許可が必要な業務になります。
許可を得ているかわからない場合や、許可基準を満たしていない疑いがある場合、「違法業者」の可能性があります。RPOの代行企業を探すときは、委託先側が届け出を提出し、国から許可を得ているかを必ず確認するようにしましょう。
RPO(採用代行)の活用事例
イオン株式会社様|媒体コストを削減し、面接の設定率・入社数が増加
ここからは、実際にRPOを導入することで採用課題を解決した事例を紹介します。
国内外に2万2,000店舗を構え、総従業員約58万名を抱えるイオン株式会社では、全店舗ではたらく従業員のおよそ8割が時間給社員で構成されています。しかし、時間給社員の採用活動はグループ各社や各店舗で対応していたため、募集や面接など店舗側の業務負担が大きく、応募者へのタイムリーな対応ができないといった課題を抱えていました。
そこで同社では、労働力の確保と育成を重要な経営課題として位置付け、グループ各社をまたぐ採用活動の一元化を決定。合同採用センターを設置することで、募集から面談セッティングまでをグループ一括で実施する施策を展開しました。
合同採用センターの構築・運用においては、パーソルグループの知見とリソースも活用。面接の設定率や参加率、合格率、採用単価などをKPIに設定し効果を測定しました。
業務の一部を委託したことで、応募に対する素早い対応が実現し、面接の設定率や入社数が増加。さらに、グループ一括集中購買による媒体コストの削減にも繋がっています。
【無料ダウンロード】RPOベンダーを選定する4つのポイントを公開中
採用業務のアウトソーシング(RPO)を検討する際には、ベンダー選びが何よりも重要です。
・RPOベンダーの違いが分からない
・RPOベンダーが何をしてくれるのかいまいちわからない
そのような方に向けて、ベンダー選定前に必ず確認すべき点や注意点をまとめた
「採用代行ベンダー選定における4つのポイント」を公開しています。
RPOに関する情報を集めたい方はぜひご一読くださいませ。
まとめ
本記事ではRPOとは何かといった基礎知識や業務内容、費用相場などについて解説しました。
RPOは、人事担当者の業務負担の軽減に繋がるだけでなく、人材のプロフェッショナルの知見やナレッジを外部から取り入れることで採用力の強化をもたらします。
しかし、導入時には決して業務を丸投げするのではなく、認識のすり合わせや、こまめな情報共有を欠かさずに行いましょう。
よくあるご質問
Q1.RPOとは?
A1.RPOとは、「Recruitment Process Outsourcing(リクルートメント・プロセス・アウトソーシング)」の略称で、企業の採用活動の一部もしくは全てを外部企業に委託することを指します。
>>RPO(採用代行)とは
Q2.RPOはどのような採用業務を委託できる?
A2.採用計画の立案からスカウトメールの作成・管理、インターンシップや説明会の開催、応募者との面接、内定者との連絡や各種調整などさまざまな採用業務を委託可能です。
>>RPO(採用代行)の業務内容
Q3.RPO導入時の注意点は?
A3.自社が抱える採用課題に基づいて、導入範囲を決めることが重要です。採用活動にかけるリソースの拡大だけを目的とするのではなく、定型的な業務を委託し、自社では何に注力していくかを明確にしましょう。
>>導入範囲は採用KPIに基づいて決定する