従業員58万名を誇るイオンが挑む、グループ一体での採用活動の革新とは?

人材派遣・採用支援 アウトソーシング 流通・小売 5,001名~

イオン株式会社 / 業種:小売 / 設立:1926年

営業収益は日本の小売業No.1の約8兆5千億円、グループ総従業員約58万名を抱え、国内外に約2万2千店舗/箇所を誇るイオン。同グループは時間給社員の労働力確保と採用強化を目指し、パーソルと共にグループ横断での「グループ合同採用センター」(以下、合同採用センター)を立ち上げた。今回はこの取り組みを推進するイオン株式会社 執行役 人事・管理担当 兼 リスクマネジメント管掌 渡邉 廣之氏と、合同採用センターを活用するユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社 経営管理本部 人事総務部長 石田 重樹氏に、導入前の課題と合同採用センターの導入に至るまでの経緯、そして実際の効果と今後の展開について聞いた。

経営課題としても重要性が高まる労働力確保に向けたお取り組みについて教えてください。

イオン株式会社
執行役 人事・管理担当 兼
リスクマネジメント管掌
渡邉 廣之 氏

“お客さま第一”の理念を掲げるイオンの根本は人です。

そして、全店舗で働く従業員のおよそ8割を占める人が、我々がコミュニティ社員と呼ぶ時間給社員で構成されています。

労働人口の減少で、流通・小売業界は特に時間給社員の採用が難しくなっており、2020年に営業収益10兆円の目標達成を目指す我々にとって、労働力の確保および育成は重要な経営課題として顕在化しています。その中で当社は現場の活動を担う時間給社員にも、能力と成果に応じた公正な処遇を実現したいと考えています。

そのためには人事制度の見直しに加え、AIをはじめとする最新技術の導入、ビジネスプロセスの改善を通じた生産性のさらなる向上を図る必要があります。ここをいま、グループとして重点的に取り組んでいます。

時間給社員における採用活動において、どのような課題があったのでしょうか。

これまでの個社による時間給社員の採用活動は、募集、面接など店舗側の業務負荷が高く、その結果どうしても応募者へのタイムリーな対応に欠けていました。それでは、現在のスピーディーさが問われる採用マーケットに対応できません。

イオンには昔から「人事は採用に始まり採用に終わる」という言葉があります。当社の根本である人の採用は特に重視しているのですが、現場業務の忙さに追われ、人員にも限りのある現場任せでは、即時対応も丁寧に応募者の方を面接する余裕もないという実情がありました。また、採用活動における工程ごとの課題が見えづらいことも懸念となっていました。さらに、同エリアで個社が個別に利用する媒体コストなどにも無駄が生じます。

グループ各社をまたぐ採用活動の一元化に対し、どのような期待がありましたか。また、懸念などはありましたか。

正社員については、過去にグループの金融事業会社で合同の新卒採用活動を行ったことはありましたが、時間給社員については初めての試みとなります。合同採用センターで募集から面談セッティングまでの業務をグループ一括で行うメリットは魅力的でしたし、タイムリーな対応やコスト削減、店舗側の業務負荷軽減、採用工程ごとの課題の可視化など、課題解決に向けた高い期待がありました。

グループとして母集団を多く持つことで将来的にバリエーションに富んだ人材を本人の希望に合わせて各社、各店舗に振り分けできるメリットもあります。グループ全体の発展のため、他に先んじていま取り組むべき、必要な施策であると考えました。

グループにはもともと経営体制や賃金・制度など採用方法が異なる会社がありますので、その点でこれまで一元化が難しかったことは事実です。また前述した通り採用を重視する文化であるが故に、他社に委ねることに不安を抱く声もありました。

しかし、雇用環境が大きく変化する中でこれまで通りのやり方で良いのか、母集団形成の仕方や、どのようなコミュニケーションをすべきかなど、変化に対応してやり方を変えるべきではないのか、という点を議論しました。これからの時代、内製化でありながらも外部の力を有効に活かすことがあらゆるところで求められます。

そこで人材に関するプロであるパーソルに対し、丸投げの委託ではない、良きパートナーとしてプロの知見とリソースを活用する、そしてどこよりも早く実施することが重要である、と判断したわけです。

初の試みへの懸念や不安を、どのように払拭されたのでしょうか。

それには成功を示すしかありません。これまでのように皆が賛同してから始める、では時間がかかってしまいますから、まずは小規模でのトライアルを実施し、数値をもって検証してみようと考えました。

人事などの管理部門では、新しい施策の失敗するリスクを抑えるため、念入りに作り込んでからリリース、というのが常でしたが、環境変化の激しい時代にはその考え方を変える必要があると思います。創業以来、革新し続ける企業集団であるイオンとして、いかに早期に実施するかを重視しました。

トライアルは2018年5月から、首都圏のスーパーマーケット5社でスタート。面接の設定率、参加率、合格率、採用率、採用単価などをKPI目標に設定し、効果を測定した結果、多少のばらつきはあるものの、各項目で目標数値を上回る成果がありました。トライアルでこの成果を出せたことが、本格的な導入への足掛かりとなりました。

実際に展開されてみて、効果をどのように評価されていますか。

当初の期待通り、応募に対するクイックレスポンスが実現し、面接の設定率、入社数も増加しています。併せて、グループ一括集中購買による媒体コスト低減など、コスト削減にもつながっています。今後、さらに合同採用センターの活用をグループ全体に広げ、採用から定着化支援、教育へとつなげていくことがグループ全体の競争力アップにつながると考えています。

イオンの強みはリテール、ディベロッパー、金融などさまざまな業種業態を持っていることです。この取り組みは求職者の方にとっても就労機会の拡大につながり、「教育は最大の福祉なり」と捉えるイオンで働いていただくことで、ご本人の労働市場での価値も高まり、結果として日本の労働マーケットへの貢献にもつながると考えています。

パーソルは長きに渡り、イオンリテールの採用センターの構築や運用だけでなく、人事制度設計や方針策定の支援などにおいても多くの実績があり、我々の理念についても深く理解いただけていると感じます。個人情報の管理や媒体のバイイングパワー、採用工程ごとのPDCAも明確で、一方で個社対応なども柔軟に行ってくれました。何より、パーソル側のチームとイオン側とがONEチームとなって、活動してくれる。このスキームは各社に貢献できると確信しています。

今後はグループ全体への拡大を目標に、積極的に展開していきたいと考えています。小売の現場ではセルフレジの普及や、技術革新によりチェッカー業務は大幅に縮小されていきます。また、スマートフォン等の活用が進むにつれて銀行の単なる窓口業務も減っていくでしょう。

しかし、お客さまに対して提案を行うことや、お客さまの困りごとを解決するための知識やノウハウの提供、人対人のコミュニケーションは何ものにも代替されず、人の大切さはより増していくと考えています。ゆくゆくは新卒採用の割合を減らし、時間給社員の正社員への登用なども視野に入れ、多様な働き方のニーズに応えていきたい。パーソルには、これまでの実績や人材サービス業界のリーダーとしての知見を活かし、引き続き協働していただきたいと思います。

最初にこの計画を知った際、どのような印象をお持ちになりましたか。

ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社
経営管理本部
人事総務部長
石田 重樹 氏

続いて、この取り組みにいち早く参画したグループ企業を代表して、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社 経営管理本部 人事総務部長の石田 重樹 氏にお話を聞いた。ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社はマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東の首都圏スーパーマーケット3社の共同持株会社として2015年に設立された。グループ店舗数は523(2019年11月29日現在)。

石田氏はホールディングスの立場で各社の強みを活かしつつ、個社で解決できない課題に対する解決策を企画立案・実行を担当する。

トライアル結果を見て最初に魅力に感じたことは、採用活動の定量的な数が把握できることでした。求人倍率が高まり、特に地方の流通業界は競合店も多く採用難であることが表面化していました。

しかし、従来の個社最適、店舗ごとの採用活動では応募者数、面接数などプロセスごとの数値が把握できず、課題が掴みづらかった。そこが可視化できれば仮説が立てやすくなりますし、ホールディングス側だけでなく各社の採用担当、店長など当事者全員にとっても非常に有効な取り組みだと感じました。

媒体選定もこれまでは各担当者の経験に頼りきりで新しい打ち手も出にくい状況でしたが、一元化することでコストを下げ、プロフェッショナルであるパーソルが媒体を選定することで、より高い採用効果も期待できるのでは、と考えました。そこで、参画を決意したのです。

まずは各事業会社の経営層に対して、採用担当者と店長の業務負荷が削減されること、採用数の増加を見込めること、定量化によりPDCAを高回転できること、という経営目線でのメリットを伝えたところ、賛同が得られ、導入が決定しました。

合同採用センターの導入効果について教えてください。

採用にかかるコストは媒体費や管理費など多岐にわたりますが、導入前に比べ3割程度削減できています。また、各社の業務負荷については、媒体出稿に関わる確認業務が一本化されましたので、媒体社と個社、個社と店舗間でのチェック工数がすべてなくなり、全体として大きく削減されました。加えて、店舗別の採用情報は共通プラットフォーム上で店舗別に数値化され、いつでも確認することができるようになりました。これまでは紙で、それも採用結果だけのレポートでしたので、店舗や媒体、プロセスごとの費用対効果の可視化という観点でも大きな効果があります。

当グループでは2018年11月に合計100店舗でスタートし、採用人数が180%向上する効果がありました。その後、3か月単位で更新し、最大で420まで参画店舗が増えました。効果を実感した店長達の間での口コミ効果や各社人事のリーダーシップもあり、参画する店舗が徐々に増加していきました。採用担当者が一堂に会し、各社の考え方や強み、課題への対応策の共有を行えるようになったことも、シナジー効果かもしれません。

グループ合同採用センターのスキーム

合同採用センターという武器をより良いものにするために、パーソルとの連携はかなり密に行いました。各社からどんどん要望を出してもらい、パーソルには個別要望もたくさん吸い上げてもらい、トライアンドエラーで検証してもらいました。同じ目標に向かって協働してもらったことで、1年を経て、かなり高いレベルになったと実感しています。

例えば、各店舖からの要望で、採用には記載しきれない細かな採用条件をコールセンター側で面接設定時にスクリーニングする、といったことです。この部分は今後、チャットボットによる実施も計画しています。

今後の展開と、パーソルに期待することを教えてください。

採用は”採って終わり”ではなく、働き続けていただくことが重要です。長く雇用できれば習熟度も生産性も向上し、双方にとってメリットがあります。もちろん現状も各社での教育は行っていますが、働き方が多様化する中で新しい課題も見えてきています。

今後、グループ各社と役割分担しながら、ホールディングスとして各社を横断した定着支援、人材開発教育などの補完プログラムを強化していきたいと考えています。パーソルにはプロの視点で、採用にとどまらず定着と人材育成をいかに仕組化するか、という点でもアドバイスをもらいながら、引き続きよいパートナーシップを築いていければ、と期待しています。

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