2022年02月08日
2025年03月12日
働き方改革の推進やコロナ禍の影響を受け、多くの企業が業務の見直し・改革に取り組んでいます。特にバックオフィス部門は、会社全体の運営に関わる役割を担うため、DX推進による会社全体の変革が期待されます。
本記事では、バックオフィス部門におけるDXに関して重要な考え方はどのようなことでしょうか。必要とされる背景や推進の方法について解説します。
バックオフィスのDXを推進するためのノウハウガイドをご覧いただけます
テクノロジーの進化が、あらゆる業界に変革をもたらしており、企業の競争力維持・強化のためにも、DXによるビジネスの変革と新たな価値創出が求められています。DXを推進するためには、まずは既存業務のプロセス可視化・効率化が必要です。
しかし、バックオフィスにおいては、属人化やアナログ業務の残存といった特有の課題により一筋縄ではいきません。これを解決するためには、問題を切り分け、具体的に解決すべき事項を明らかにし、打ち手を対応する必要があります。
パーソルグループでは、バックオフィスのDXを推進するための方針と行うべき打ち手、ソリューションについてまとめた【バックオフィスのDXを推進するためのノウハウガイド】を公開しています。
バックオフィス部門の皆様はぜひご活用ください。
目次
バックオフィス業務とは、顧客と直接やりとりを行わない業務のことを指します。代表的な職種には以下が挙げられます。
これらの業務は、企業の業績に関わる直接的な利益をもたらすわけではありませんが、企業経営を管理する重要な役割を担っています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、データやデジタル技術を活用して、企業の製品やサービス、ビジネスモデル、業務プロセスなどを変革し、競争力を高める取り組みです。経済産業省は2018年に発表した「DXを推進するためのガイドライン」にて、DXを以下のように定義しています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
ここで注意したいのが、単なるデジタル化=DX、ではないという点です。DXとは本来、データやデジタル技術を通じて新たな価値を生み出し、企業の競争力を強化するために行われます。AIやツールの導入などデジタル技術への関わりを増やすだけの対応はDXの本質ではなく、「どのような価値を生み出すか」といった革新的な視点を持つ必要があります。
つまり、バックオフィスにおけるDXとは、経理や人事、総務、法務といったバックオフィス業務を、デジタル技術の活用によって変革し、企業の競争力を強化することを意味します。
【関連記事】DXとは?意味や必要とされている背景、進め方、事例を解説
パーソルグループが実施した調査によると、企業のDX推進状況は部門ごとに異なる傾向が見られます。中小企業では営業部門が最もDXを推進しており、23.6%が取り組んでいるとされています。一方、超大手企業や大手・中堅企業では、IT・情報管理部門が30%以上でトップとなり、次いで営業部門、製造・開発部門が続いています。
バックオフィス部門に関しては、特に労務・経理・法務の分野でDXの取り組みが進んでいることが明らかになりました。これらの部門では、クラウド型会計システムや電子契約システム、勤怠管理ツールの導入が進み、デジタル化による業務効率化が積極的に推進されています。
この調査結果からもわかるように、バックオフィス業務においてもDXへの意識が高まりつつあり、企業全体の変革に向けた動きが加速していることがうかがえます。
なぜバックオフィスにおいてDXが求められているのでしょうか。その背景には、いくつかの重要な理由があります。
働き方改革を推進するべく、厚生労働省は2019年に「働き方改革関連法」を策定し、柔軟なはたらき方を選択できる「フレックスタイム制」の拡充を規定しました。また、コロナ禍を機にテレワークを導入する企業も増え、はたらき方の多様化が進んでいます。
しかし、2020年にアイティメディア株式会社が行った「アフターコロナのバックオフィス業務に関する読者調査」によると、バックオフィス業務に携わる社員の4人に1人が、テレワークを行えず、出社していることが明らかになりました。特に、紙ベースの業務と、電話対応などの外部とのコミュニケーションが必要な業務では、一定の出社が不可避となるケースが多いようです。
また、日本オラクル株式会社の「職場におけるAI調査」によると、現在職場でAIを活用していると回答した日本の割合は26%で、調査対象11カ国の中で最下位(平均50%)となっています。世界的にはバックオフィスにおけるAI活用が当たり前になりつつある一方で、日本ではまだ遅れが目立っている状況です。
ただし、同調査によると、AIツールへの投資を加速すると回答した人は、経営者層では63%、部長クラスは58%にのぼり、多くの企業がデジタル技術の導入を検討していることも伺えます。
このことから、バックオフィスのDX化にいち早く取り組むことで、新たなはたらき方への適応がスムーズになり、柔軟な業務環境の構築につながるでしょう。
バックオフィス部門は企業の根幹を支え維持するのに欠かせない業務を行いますが、多くの人員や時間を必要とする点が課題となっています。労働人口減少に伴って人手不足に拍車がかかっている現代において、非効率な業務に多くの時間がかかると、本来注力すべき業務が後回しになるだけでなく、より深刻な人材不足を招きかねません。
DXを推進することで、これまで人が行っていた業務の効率化が可能となり、結果的に人件費が削減できるだけでなく、家賃や事務用品費のような経費といった間接コスト圧縮の実現にも近づきます。業務のデジタル化が進むことで、リモートワークの導入もしやすくなり、オフィススペースの縮小による固定費削減も期待できるでしょう。
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「2025年の崖」とは、2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」で指摘された、日本企業が抱えるITシステムの課題を表す言葉です。具体的には、老朽化した基幹システムを放置し続けることで、データ活用の遅れや競争力の低下を招き、年間最大12兆円の経済損失が発生するリスクがあるという警鐘を鳴らされています。
多くの経営者が、将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出・柔軟に改変するDXの必要性について理解している。しかし、
・ 既存システムが、事業部門ごとに構築されて、全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズがなされていたりすることにより、複雑化・ブラックボックス化
・ 経営者がDXを望んでも、データ活用のために上記のような既存システムの問題を解決し、そのためには業務自体の見直しも求められる中、現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれを実行するかが課題となっている
→ この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性がある
バックオフィス部門には、比較的DXが進めやすい定型的な業務が多く存在します。しかし、DXを進める必要性について理解しているものの、具体的な取り組みには至っていない企業も少なくありません。また、デジタル技術の導入と、それをしっかりと運用・定着させて「変革し競争力を強化する」というDX本来の目的の達成は別問題です。
このような課題から、バックオフィス部門のDXは、多くの企業においても急務となっています。今後、DXを進める企業とそうでない企業との間で、業務効率や競争力に大きな差が生まれる可能性があるため、早期の対応が求められるでしょう。
【お役立ち資料】バックオフィスのDXを推進するためのノウハウガイド
DXを推進するためには、まずは既存業務のプロセス可視化・効率化が必要ですが、バックオフィスにおいては、属人化やアナログ業務の残存といった特有の課題により一筋縄ではいきません。本資料では、バックオフィスのDXを推進するための方針と行うべき打ち手、ソリューションについて解説しています。
【関連記事】2025年の崖とは?定義や問題点・必要な対策をわかりやすく解説
バックオフィスのDXを推進することで、コスト削減と生産性向上のほか、多様なはたらき方の実現や業務の正確性向上など、企業活動においてさまざまなメリットが生まれます。
業務の自動化やデジタル化は、人件費や固定費などのコスト削減につながります。
例えば、紙媒体メインとした業務では、書類の印刷代や保管費用といった固定費に加え、稟議承認のための書類の受け渡しや押印にも担当者の工数がかかります。ペーパーレス化を実現することで、こうした固定費の削減が可能になります。
【関連記事】コスト削減とは?メリットや具体的なアイデア、成功事例を解説
バックオフィス業務の効率化は、企業の生産性向上に寄与します。
例えば、従来は手作業で行っていた経費精算に関するデータ入力作業がある場合、自動化することによって、1時間かかっていた業務を10分で終わらせられるかもしれません。
このように、作業時間の短縮が実現すれば、担当者はほかの業務に集中できるようになり、業務全体の効率化につながるでしょう。
【関連記事】生産性向上とは?メリットや6つの施策とポイント、事例を解説
紙ベースでのバックオフィス業務を行っている場合、押印などの対応のためにはオフィスに出社する必要があります。しかし、バックオフィスDXにより業務のデジタル化ができれば、従業員のテレワークも可能になります。テレワークにより多様なはたらき方が実現すれば、優秀なバックオフィス人材の獲得もしやすくなるでしょう。
実際に、会社のWebサイトの中途採用ページに「テレワークを導入している」と掲載すると、ライフステージに合わせて多様なはたらき方ができる企業として認識され、優秀な人材の確保につながるという声が挙がっています。
人が手作業で行う業務には、ミスが発生するリスクがあります。しかし、お金や個人情報を取り扱うバックオフィスの業務は、いずれも重要度が高くミスが許されない領域です。
バックオフィスDXを推進し自動化を進めることで、ミスが発生するリスクを大幅に削減し、業務の正確性を向上させられます。
バックオフィス業務の多くは専門知識を必要とするため、属人化しやすい傾向にあります。しかし、特定の担当者しか業務が分からない状態では、事故や休職、退職が出た場合業務が滞るリスクが高まります。
バックオフィスDXを進め、業務の標準化とマニュアルのデータ化を行うことで、この属人化によるリスクを解消できます。これによりスムーズな引き継ぎが可能になり、企業の業務継続性が向上します。
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ビジネス環境の変化に対応し、企業の競争力を高めるために、DXは不可欠な取り組みとなっています。自社の現状を把握し、取り組みやすい領域からスタートさせることが、バックオフィスDXの成功への第一歩となります。
DXを成功させるためには、まず「なぜDXを推進するのか」といった目的を明確にすることが重要です。企業によってDXの目的は異なりますが、代表的な例として、以下のような目的が考えられます。
DXは単なるデジタルツールの導入ではなく、企業の変革を促す手段です。そのため、経営層と現場が共通の目的を持つことが欠かせません。DXの方向性が明確であれば、現場の従業員も納得感を持って取り組むことができるでしょう。
【関連記事】DX推進とは|取り組み方やポイント・事例を徹底解説
次に、社内の業務を棚卸しし、現状の業務フローやシステムの課題を整理します。具体的には、以下のような点を確認しましょう。
課題を明確にすることで、DXを進めるべき優先度の高い領域を特定し、適切な対策を講じられます。
DX推進には、適切な人材の確保と社内の協力体制が必要です。スムーズに進めるために、以下の2つのポイントを押さえましょう。
DXを進める上で、データ分析やシステム開発の知識を持つ人材が不足しているケースは少なくありません。社内でのIT人材確保が難しい場合は、外部の専門家やコンサルタントを活用するのも有効な手段です。
特に、AIやRPA(ロボティックプロセスオートメーション)、データ分析などの技術領域は専門性が高いため、必要に応じて外部リソースを活用することで、DXの実現スピードを高められるでしょう。
【関連記事】RPAとは?活用するためのポイントと注意点を徹底解説
DXの推進には、経営層と現場をつなぐプロジェクトチームの設置が不可欠です。チームは経営陣の意向を正しく現場に伝え、DXに対する理解を促す役割を担います。
また、DXによって業務の進め方が変わることに対する現場の反発を抑えるためにも、権限を持つチームを組織し、従業員が納得できる体制を整えることが重要です。
DXの取り組みは多岐にわたるため、すべてを一度に進めるのは困難です。そのため、どの業務を優先的に推進するかを決定する必要があります。
DXによるメリットの大きさや実現可能性、業務のボトルネックとなっている部分などを見極めて着手することで、DXの成功体験を積み重ね、社内の理解と推進力を高めましょう。
DXは導入がゴールではなく、継続的な改善が不可欠です。そのため、PDCA(Plan、Do、Check、Act)サイクルを回しながら、施策の効果を検証し、必要に応じて調整を行いましょう。
DXは中長期的な取り組みであり、すぐに成果が出るとは限りません。そのため、短期的な効果を期待するのではなく、継続的に試行錯誤を重ねながら、業務の最適化を進めることが成功の鍵となります。
バックオフィスのDXを推進するためには、具体的な施策を検討することが重要です。バックオフィスのDXを推進する3つの方法を紹介します。
1つはペーパーレスの実現です。会議のプレゼン資料、取引先との契約書、物品発注の際の請求書など、日々の業務を切り取ってみると、多くの場面で紙ベースでの情報のやり取りが行われています。
以前は、書類に法的効力を持たせるために、紙媒体が必須とされており、アナログでのやり取り以外に選択肢がありませんでした。しかし、2021年に「デジタル改革関連法案」が制定されたことにより、電子契約やデジタルでの手続きが法的に認められるようになりました。
ペーパーレスによって、以下のようなメリットが期待できるでしょう。
ノンペーパーに関する取り組み事例|株式会社野村総合研究所様
▼取り組み前の課題
業務上作成する紙資料が机上に山積みとなり、キャビネットも書類で溢れる状態でした。多くの社員が、大量の紙を使用することが日常化しており、使用量についても無頓着になっていました。
▼取り組み
使わない・残さない、ではなく、紙にとらわれないはたらき方の構築により、業務の効率化を図りました。紙で保管する必要のないものは電子化したり、ノートPCを全社員に配布しどこでも仕事ができる体制を整えたり、会議資料もプロジェクターやスクリーンを活用したりという変革を実行。結果的に、環境整備だけでなく意識改革にもつながり、紙にとらわれないはたらき方を実現しました。
【関連記事】デジタル化とは?意味やIT化との違い・進め方を具体例付きで解説
バックオフィスのDX推進に向けて検討できる手段として、アウトソーシングの活用が挙げられます。バックオフィスには定型的な業務が多く存在します。例えば、電話やメール対応といったカスタマーサポートや、データ入力といった業務をアウトソーシングすることにより、社内のリソースを本来注力すべき業務に集中させることが可能になります。
また、RPAを活用すれば、データ入力・分析、社内のQ&Aチャットボットなど、定型的で単調な業務を自動化できます。アウトソーシングとRPAの組み合わせによって、バックオフィス業務の負担を軽減することも、DX推進の大きな一歩となるでしょう。
【お役立ち資料】アウトソーシングで業務を改善!成功事例と15のチェックポイント
現場の課題感からアウトソーシング導入後の効果、改善のプロセスさまざまな部門ごとのアウトソーシング導入事例をまとめた資料を公開しています。アウトソーシングをご検討の方はぜひご活用ください。
【関連記事】アウトソーシングとは?意味や導入のメリットを簡単に解説
バックオフィスのDXを実現するにあたり、クラウドサービスの利用も重要なポイントです。経費精算や勤怠管理などは、クラウドサービスによって自動化ならびに簡略化できます。
また、ネットワーク環境さえあればどこでも利用できるのも、クラウドサービスのメリットでしょう。従来であれば出社しなければできなかった作業もリモートで対応できるようになるため、テレワークの推進や多様なはたらき方への柔軟な対応が可能になります。
最後に、バックオフィスのDXをスムーズに進めるために押さえておきたい、2つのポイントを紹介します。
バックオフィスのDXを推進するにあたり、新しいシステムの導入を検討する企業も多いのではないでしょうか。しかし、システムにはさまざまな種類があるため、導入前に慎重に検討しなければ、思わぬ失敗を招く恐れがあります。
日本トレンドリサーチの「社内へのシステム導入に関するアンケート」によると、社内へのシステム導入において25.7%の人が「失敗したことがある」と回答しています。理由の1つに、既存システムとの互換性による失敗が挙げられています。例えば、会社のフローにマッチしていなかったり、新たに導入したシステムが社内システムとの統合ができず断念してしまったり、といったケースは代表的な例と言えるでしょう。
また、システムの導入=ゴールではない、という点についても忘れてはいけません。システムはあくまで業務効率化の手段です。
といった不本意な結果を招かないためにも、導入の目的を明確にした上で、システムの精査を行いましょう。
DXの取り組みを体系的に進めるために、2018年に経済産業省が発表した「DX推進指標」を活用するのも有効な手段です。
DX推進指標は、以下の2つの観点から企業のDX推進状況を評価できる指標です。
指標の項目には以下のような種類があり、企業は自己判断を行います。指標はそれぞれ「未着手の状態」から「競争を勝ち抜くことのできるレベル」までの6段階評価となっています。
この指標を活用することで、自社のDXの進捗状況や課題を可視化し、次に取り組むべきアクションの優先順位を明確にできます。また、DX推進に不可欠となる経営者と現場の意識のすり合わせにも活用できるため、企業全体で共通認識を持って方向性を整理するための手助けとなるでしょう。
【お役立ち資料】DXを成功に導く採用・育成・組織設計と成功事例
DXの具体的な施策は企業ごとにさまざまですが、どの場合にも共通して重要なポイントがあります。本資料では、DX推進を成功に導くステップやDX人材の採用・育成についてまとめた資料を無料で公開しています。これからDXに取り組む・DXにお悩みの方はご活用ください。
【関連記事】DX推進指標とは?活用方法や自己診断で陥りやすい間違いを解説
バックオフィス部門のDXを推進する方法として、ペーパーレス化やアウトソーシング、クラウドサービスの活用などが挙げられます。また、DX推進を成功させるためには、既存システムとの適合性について検討したり、DX推進指標を活用したりすることも有効です。
企業の競争力を強化させるためにも、今一度バックオフィス部門の業務を見直してみてはいかがでしょうか。自社の業務特性に合った施策を選定し、段階的にDXを推進しましょう。