RPAとは?活用するためのポイントと注意点を徹底解説

RPA(ロボティックプロセスオートメーション)とは、請求書や注文書の伝票作成、各種伝票の入力作業など、パソコン上で行われる定型業務をソフトウェアで自動化するツールです。RPAの導入により、業務効率化や人材不足解消、労働時間・人件費削減など多岐にわたるメリットが期待できます。

本記事では、RPAの基礎知識や導入のポイント、具体的な活用方法など、実際の導入事例を交えながら詳しく解説していきます

【お役立ち資料】RPAの導入準備に欠かせない4つのポイントとは?

RPAを導入してみたがうまくいかないといった課題を多く耳にしますが、導入後の成否を分けるポイントはいったい何なのでしょうか?

パーソルグループでは、RPA導入支援のプロフェッショナルが、導入前の準備に欠かせない4つのポイントを解説し、資料にまとめました。

RPAの導入を検討している皆さまはぜひご覧ください。

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目次

RPAとは

RPAとは「Robotics Process Automation」の略語で、ロボットにより業務を自動化するツールです。「ロボットによる業務自動化」そのもの、または、それを実行するためのソフトウェア、の両方を指す場合もあります。

RPAでは、定型業務だけでなく、一部の非定型業務も自動化が可能です。定型業務とは、手順やフローが明確に定まっている作業を指します。定型業務の具体的な例には、以下が挙げられます。

    • 帳簿入力
    • 伝票作成
    • ダイレクトメールの発送
    • 経費チェック
    • 顧客データの管理 など

一方、非定型業務は手順が固定されておらず、状況に応じて異なる対応が求められる作業です。近年では、AIと組み合わせることで、音声や画像、動画などの非構造化データの取り扱いが可能となり、一部の非定型業務も自動化できるようになりました。たとえば、手書きや印刷された文字を読み取りデジタル文字コードに変換するOCR(光学文字認識)技術にAIを活用することで、読み取り精度が向上しています。
RPAはAIと連携することで、これまで人間にしか対応できなかった業務を代行するツールへと進化しています。

RPAには3つの段階がある

RPAには、業務の自動化レベルに応じて「クラス1」から「クラス3」までの3段階が存在します。クラスが上がるほど、より高度な業務の自動化が可能になります。

クラス 主な業務範囲 具体的な作業範囲や利用技術
クラス1:RPA
(Robotic Process Automation)
定型業務の自動化 ・情報取得や入力作業、検証作業などの定型的な作業
クラス2:EPA
(Enhanced Process Automation)
一部非定型業務の自動化 ・RPAとAIの技術を用いた一部非定型作業の自動化
・自然言語解析、画像解析、音声解析、マシーンラーニングの技術の搭載
・非構造化データの読み取りや、知識ベースの活用も可能
クラス3:CA
(Cognitive Automation)
高度な自律化 ・プロセスの分析や改善、意思決定までを自ら自動化
・ディープラーニングや自然言語処理

【出典】総務省「情報通信白書 令和2年版 RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)」

AIのような自律的な判断力を備えた「クラス3」のCAは、業務プロセスの分析や改善、意思決定までを自動化することも可能です。しかし、現在、日本の企業が導入しているRPAの多くはクラス1に該当しており、クラス3の完全自律型RPAが普及するには、さらなる技術革新と時間が必要と考えられています。

RPAの導入状況

RPAの導入は、当初、複雑で定型的な事務作業が多い金融業界(銀行・保険・証券など)で先行しました。その効果が認知されるにつれ、製造業、サービス業、行政機関など、さまざまな業種で導入が進んでいます。

スターティアレイズ株式会社が2024年に実施した「RPAツールの導入・活用に関するアンケート調査」では、国内企業全体のRPA導入率は13.04%と報告されています。企業規模別に見ると、大企業(年商50億円以上)では27.69%、中小企業(年商50億円未満)では8.51%と、大企業での導入が顕著に進んでいることがわかります。
RPA導入後の満足度については、「大変満足」が16.6%、「満足」が56.8%と、合計で73.4%の企業が導入に満足していると回答。一方で、「ロボを作成できる人が限られている」「RPAが社内で横展開できない」「費用対効果が測れない」などの運用面での課題があることも報告されています。

RPA導入が進む背景

RPA導入が進む背景には次のことが考えられます。

    • 少子高齢化の進展による労働力不足
    • 働き方改革の進展
    • 国際競争力の低迷

それぞれについて詳しく解説します。

少子高齢化の進展による労働力不足

日本では少子高齢化が進行し、生産年齢人口の減少が深刻な課題となっています。
パーソル総合研究所の調査「労働市場の未来推計2035」によると、外国人の労働参加により2035年にかけて就業者数は増加するものの、1日当たり1,775万時間(384万人相当)の労働力不足が見込まれています。こうした背景の中、労働力不足を補う手段として注目されているのが、新たなテクノロジーの導入です。RPAにおいては、定型業務を自動化し、生産力を高められる技術として導入が進んでいます。

【出典】パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2035

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働き方改革の進展

政府主導で始まった「働き方改革」は、多くの企業に浸透しつつあります。

その中で、労働力不足を補いながら生産効率を上げるためのさまざまな施策が講じられています。テレワークの推進や、フレックスタイム制の導入といったワークスタイルの多様化だけでなく、ICTの高度活用による業務効率改善などがその例です。とくに、単純作業を効率化するRPAは、従業員の負担を軽減し、より創造的な業務に集中できる環境を整える手段として期待されています。

今後も、労働時間の短縮や生産性向上を目的とした取り組みが進む中で、RPAの活用はさらに拡大していくと考えられます。

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国際競争力の低迷

日本の国際競争力は低下傾向にあります。スイスのIMD(国際経営開発研究所)が発表した「世界競争力年鑑 2024」によると、日本の競争力ランキングは過去最低の38位となりました。同調査の中で、国際競争力低下の要因として浮かび上がっているのが「ビジネスの効率性」です。この領域に関しては、調査対象の国・地域の中で51位と、調査対象67の国・地域の中で依然として低水準にとどまっています。

日本の国際競争力の推移

【出典】IMD World Competitiveness Ranking 2024 をもとに作成

この背景には、労働生産性の低迷やデジタル化の遅れがあると指摘されています。日本の生産労働人口が減少する中で求められているのは、限られた労働力を最大限に活用し、競争力を向上させることです。その解決策のひとつとして、業務プロセスの自動化を推進し、少ない労働人口でも効率性を高めるRPAが注目されています。

RPAの得意な業務

RPAが効果を発揮するとされているのは、ルールやプロセスが固定された定型的かつ繰り返しの作業です。RPAが適用可能な業務としては、以下が挙げられます。

RPAが適用可能な業務

・キーボードやマウスなど、パソコン画面操作の自動化
・ディスプレイ画面の文字、図形、色の判別
・別システムのアプリケーション間のデータの受け渡し
・社内システムと業務アプリケーションのデータ連携
・業種、職種などに合わせた柔軟なカスタマイズ
・条件分岐設定やAIなどによる適切なエラー処理と自動応答
・IDやパスワードなどの自動入力
・アプリケーションの起動や終了
・スケジュールの設定と自動実行
・蓄積されたデータの整理や分析
・プログラミングによらない業務手順の設定

【出典】総務省「情報通信白書 令和2年版 RPA(働き方改革:業務自動化による生産性向上)

事務作業

RPAは、定型的な事務作業の自動化に適しています。例えば、データ入力、ファイルの分類・整理、メールの自動送信、帳票の作成・送付などの業務を自動化することで、作業時間の短縮やミスの削減が可能です。とくに、複数のシステムを横断して処理を行うような業務では、RPAの導入により大幅な効率化が期待できます。

情報収集

企業活動において、競合分析や市場調査、顧客データの収集など、多くの情報収集業務が発生します。RPAを活用すれば、Webサイトやデータベースから必要な情報を自動的に収集し、整理・分析することが可能です。これにより、手作業による情報収集の負担を軽減し、より迅速かつ正確な意思決定を支援できます。

ルールに基づいたチェック

業務においては、請求書の金額チェックや契約書の確認、在庫管理、経費精算の承認フローなど、ルールにもとづく確認作業が多く発生します。RPAは、こうしたルールベースの業務をミスなく迅速に処理できるため、人的な確認作業の負担を軽減し、業務の正確性を向上させます。また、異常値の検出や不正の発見などにも活用でき、業務の品質管理やリスク低減にも貢献します。

RPAの苦手な業務

RPAは、あらかじめ設定されたルールや手順に従って業務を自動化するツールです。そのため、人間の判断が必要な業務や、頻繁に手順が変わる業務には適していません。

RPAに適さないとされる業務には、以下があります。

ルール化されていない非定形業務

ルールや作業手順が明確に定まっておらず、状況に応じて人間の判断が必要となる非定型業務は、RPAによる自動化が難しくなります。

例えば、顧客からのクレーム対応や問い合わせ対応業務は、その内容が多岐にわたるため、画一的な処理ができません。相手の感情や状況を踏まえた柔軟な対応が求められるため、単純なルールの適用だけでは対応できないのが特徴です。このような業務は、RPAではなくAIチャットボットやオペレーターの判断と組み合わせたハイブリッドな対応が求められます。

問題解決を目的とした業務

問題解決を目的とした業務には、人間による判断や思考が必要となります。そのため、問題を分析して解決策を考え、適切な判断を下すといった業務も、RPAが苦手とする分野です。

例えば、業務の改善を目的としたプロセス分析では、現状の課題を洗い出し、最適な解決策を検討する必要があります。改善策を考えるなどの思考や創造力を要する作業は、RPAが単独で対応するのは難しく、人間の判断が不可欠です。RPAは、既に決められた手順に基づく業務を効率化するツールであるため、問題解決そのものを担うことはできません。

急な仕様変更が生じる業務

業務プロセスが頻繁に変更される場合、RPAの設定もその都度見直しが必要になり、結果として運用負荷が増加する可能性があります。

例えば、法規制の改正による業務手順の変更や、社内システムのアップデートによる操作フローの変更が頻繁に発生する業務では、RPAが適応できなくなることがあります。そのたびに設定を変更する必要があるため、導入のメリットが薄れ、かえって負担が増えるケースも考えられるでしょう。
RPAは一定のルールのもとで繰り返し実行される業務には適していますが、柔軟な対応が求められる業務や変化の激しい業務には適していません。導入にあたっては、業務の特性を十分に理解し、適用範囲を見極めることが重要です。

RPA導入のメリット

RPA導入のメリットは、企業にとっての業務効率化だけでなく、従業員の負担軽減にも貢献します。

1.人材不足の解消

RPAは「デジタルレイバー(Digital Labor=仮想知的労働者)」とも呼ばれ、人が行ってきた業務を代替・自動化できます。RPAは、24時間365日稼働できる上、高精度な作業が可能なため定型かつ繰り返しの業務では、人よりも優れたパフォーマンスを発揮します。

活用シーン 具体例
請求書処理 請求書の処理業務をRPAツールの導入で工数削減。ミス防止にもつなげられる。
仕訳入力 四半期ごとの仕訳入力作業をRPAツールの導入で工数削減。繁忙期の残業時間削減にも貢献できる。

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2.人件費の削減

人が行っていた業務をRPAに代替させることで、人件費を削減する可能です。一般的に、RPAの運用コストは人件費より低く、自動化を進めるほど人件費の削減効果が期待できます。

活用シーン 具体例
事務作業 毎日のデータ入力や報告書作成などの事務業務の代替。RPAで自動化することで必要な人員を削減し、人件費を削減・コスト効率を向上できる。
カスタマーサービス 顧客からの問い合わせを自動化。24時間365日対応可能なバーチャルアシスタントが基本的な問い合わせに対応。
カスタマーサポートスタッフの数を削減し、人件費の削減を行える。

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3.業務時間の短縮

RPAの導入により、業務効率を向上させ、作業時間を大幅に短縮できます。
例えば、京都府が行政事務にRPAを導入した結果、作業時間が52時間から11時間へ短縮(78%削減)、別の作業では14時間から1時間へ(91%削減)と、大幅な業務効率化が実現されました。

活用シーン 具体例
行政事務 老人医療補助金の実績確認や、決算統計様式確認/健全化法様式確認の業務を自動化。また、統計データのオープンデータ化とオープンデータポータルサイトへの登録作業も自動化。

【出典】神奈川県 政策研究センター「行政サービスの高度化、業務効率化に資するICT利活用事例等」(2020年2月)

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4.高付加価値業務に集中

RPAが定型業務を代替することで、従業員は企画立案や業務改善などの、人にしかできない付加価値の高い業務に集中できるようになります。例えば、企画や業務改革プランの作成といった創造的な業務です。また、業務時間の余裕が生まれることで、スキルアップや学習の機会も増え、組織全体の生産性向上にもつながります。

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5.人為的ミスの低減

一般的に、人の手による業務は、工数に比例してミスが発生しやすくなると言われています。RPAは設定されたルールに従い作業を実行するため、人為的ミスを大幅に削減可能です。人為的なミスの発生率を抑えられれば、業務品質の向上が期待できます。

6.従業員満足度の向上

RPAは24時間365日稼働可能です。単純作業や繰り返しの業務をRPAに任せることで、従業員の負担を軽減し、ストレスを低減できます。長時間労働の削減にもつながるため、ワークライフバランスの向上にも期待できるでしょう。

RPA導入のデメリット

RPAの導入には多くのメリットがありますが、適切な管理しなければいくつかのリスクが伴います。具体的な導入のデメリットは以下のとおりです。

1.業務のブラックボックス化

RPAで自動化された業務の内容が担当者に共有されていないと、担当者の異動や退職時に後任者が業務内容を把握できず、業務がブラックボックス化する可能性があります。

ブラックボックス化が進むと、業務プロセスの変更やシステム更新時に適切な対応が困難になるため、導入後も適切な情報管理と引き継ぎが必要です。

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2.業務停止のリスク

RPAはシステムの一部として機能するため、システム障害やバグが発生すると業務が停止する可能性があります。例えば、サーバーの処理能力を超えるような動作を実行するとサーバーがダウンし、データ損失につながる可能性があります。RPAの安定運用には、IT部門との連携やシステム監視体制の構築が欠かせません。

3.情報漏洩のリスク

RPAのロボットの使用権限やアクセス権限が不適切に管理されると、データの流出や改ざんのリスクが生じます。また、社外ネットワークと接続している場合は、外部からのサイバー攻撃の対象となる可能性もあります。

RPA導入時には、情報セキュリティ対策を徹底し、アクセス管理を適切に行うことが重要です。

4.現場からの抵抗に対する懸念

RPAの導入により、業務の進め方が変わることで、現場の従業員から抵抗を受けるケースもあります。とくに、「業務が奪われるのではないか」といった不安が生じる可能性があるため、導入時には十分な説明と理解を得ることが必要です。

慣れた業務やシステムに変更が生じる際は、現場や従業員の不安や疑念、抵抗が起こりうるものとして認識しておきましょう。

RPAを導入する前のポイント

RPAを効果的に活用し、業務効率化を実現するためには、導入前の準備が重要です。スムーズな導入を実現するために、あらかじめ検討しておくべきポイントを解説します。

導入計画の策定

RPAの導入を成功させるためには、事前に明確な計画を立てることが不可欠です。「どの業務を」「何の目的で」自動化するのかを具体的に定め、導入の流れを可視化しましょう。

このプロセスを怠ると、ロボットの設計・設定段階で手戻りが発生し、導入に際する余計な時間やコストなどの負担が大きくなる可能性があります。スムーズな展開を実現するためにも、事前の計画策定を徹底することが重要です。

対象アプリケーションが扱うデータ形式の統一

RPAは、業務の処理手順を設定すれば、複数のアプリケーションを横断しての作業が可能になるため、入力データの形式が統一されていることが前提となります。

異なるフォーマットのデータが混在していると、システム間で情報の不整合が発生し、RPAの開発工数が増大するリスクがあります。導入前に、対象業務で扱うデータ形式を整理し、可能な範囲でフォーマットを統一することが重要です。

対象業務とプロセスのマニュアル化

RPAを導入する際には、業務のブラックボックス化を防ぐために、対象業務のプロセスを明確にし、マニュアル化することが重要です。導入当初の担当者から次の担当者への引き継ぎを確実に行うために、RPA化された業務フローやRPAの運用方法などをマニュアル化しておきましょう。作成したマニュアルは、内容に変更があった際はすぐに更新し、常に最新の状態にしておくことも大切です。以下のステップで、業務プロセスの可視化と標準化を進めることをおすすめします。

STEP1.業務プロセスの把握、洗い出し

まず、RPAの導入対象となる業務プロセスを詳細に把握し、洗い出すことが重要です。現場の担当者と協力しながら、どの業務が自動化に適しているのかを分析し、業務の流れを明確にします。

    • 現在の業務フローを可視化(フローチャートや業務マップの作成)
    • 繰り返し発生する定型業務を特定(データ入力、帳票作成、照合作業など)
    • 業務のボトルネックを分析(手作業によるミスが多い工程、時間のかかる作業など)

STEP2.業務プロセスの標準化とマニュアル作成

業務の標準化を行い、RPA導入後の運用をスムーズにするためのマニュアルを作成します。

    • 作業ルールの統一(入力フォーマットの統一、処理の手順化)
    • エラー発生時の対応フローの整備(トラブルシューティングガイドの作成)
    • ロボットの設定・運用方法のドキュメント化(操作マニュアル、メンテナンス手順など)

このマニュアルは、RPA運用を担う担当者だけでなく、関連部門やIT部門とも共有し、必要に応じて内容を更新することが重要です。

STEP3.業務の再編成とマルチタスク化

RPAによって自動化された業務がブラックボックス化しないように、業務の再編成とマルチタスク化を進めます。

    • 複数の担当者が業務を理解できる体制を構築(特定の担当者に依存しない仕組み)
    • 業務の属人化を防ぐためのローテーション導入(定期的な業務担当の変更)
    • RPAの活用状況を可視化し、継続的に改善(導入後の効果測定とフィードバックの実施)

上記のように、業務のマニュアル化と標準化を徹底することで、RPA導入後も安定した運用を維持し、業務効率化の効果を最大限に高めることができます。

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RPA導入とBPR推進を同時に

RPAの導入効果をより高めるためには、BPR(Business Process Re-engineering:業務改革)と連携した取り組みが不可欠です。

一部の業務を効率化するだけではなく、全社的な業務プロセスの見直しと改革を進めることで、持続的な成長につなげることができます。BPRの推進には業務の可視化が欠かせませんが、RPAの導入プロセス自体が業務フローの整理や標準化を伴うため、両者は密接に関係しています。RPAによる部分的な業務の自動化にとどまらず、企業全体の生産性向上を目指すには、BPRの視点を取り入れた包括的な改革が重要です。

【関連記事】【動画付き】BPRとは?取り組みステップやポイントをわかりやすく解説

RPA導入時の留意点

RPA導入時には、社内での推進体制の構築を検討すると良いでしょう。ここではRPA運用の際の組織体制構築について解説します。

推進体制の検討

導入の目的や企業の業務特性に応じて、適切な組織体制を選択することで、スムーズな運用と持続的な効果を得られます。主な推進体制として、「中央集権型」「現場主導型」「ハイブリッド型」の3つのモデルが挙げられます。

中央集権型組織

RPAの管理や運用をIT部門や専門のチームが一元的に行う体制です。統制が取りやすく、標準化されたルールに基づいてRPAを展開できるため、ガバナンスの強化や全社最適を図りやすい点がメリットに挙げられます。一方で、現場の個別ニーズに迅速に対応しづらいという側面もあります。

現場主導型組織

各部署や現場の担当者が主体となり、RPAの導入・運用を進める体制です。現場の業務に即した形で柔軟な運用が可能になります。また、業務効率化のスピードを高めやすいのがメリットです。ただし、全社的な管理が難しくなり、部署ごとにバラバラなルールや運用方法になってしまうリスクもあります。

ハイブリッド組織

中央集権型と現場主導型のメリットを組み合わせた体制です。全社的な統制を維持しつつ、各部署にも一定の裁量を与え、柔軟な運用を可能にします。例えば、RPAの基本方針やルールは中央で策定し、実際の導入・運用は現場が行うといった形が考えられます。バランスの取れたアプローチですが、適切な役割分担と運用ルールの整備が成功のカギとなります。

テスト導入の実施

RPAの導入にあたっては、小規模で実践し効果を検討する「スモールスタート」を検討しましょう。導入しやすい部門や業務を選定し、RPAの効果を見極めた後に展開するプロセスを経ると、全社的な導入を成功させやすくなります。

効果の見極めにあたっては、

    • どの業務がRPAで自動化しやすかったか
    • 自動化できるという想定は正しかったか
    • 自社内でロボットを作成できるか

といった点を評価します。

導入により想定した効果が得られない場合は、対象とする業務範囲やロボットが行う業務の手順などを見直します。その後、テスト導入と検証を繰り返すPDCAサイクルを回しながら、導入部門を拡大していきます。

社内RPA人材の育成

RPAの導入には、現場とIT部門の連携が不可欠です。しかし、すべての企業にIT部門があるとは限らず、外部のITベンダーが関与するケースも少なくありません。ロボットの運用が始まると、RPAのメンテナンスは負担の比重が現場に偏りがちになります。そのため、社内でRPAを扱える人材を育成し、継続的な運用体制を構築することが重要になります。

IT部門だけに依存せず、現場の担当者もRPAの基本的な知識を習得することで、スムーズな運用が可能になるでしょう。継続的な教育やスキルトレーニングを行い、社内のRPAリテラシーを高めることが求められます。

安定運用のための野良ロボット対策

「野良ロボット」とは、適切な管理がされずに放置されたRPAロボットのことを指します。

野良ロボットが発生する原因は、いくつか指摘されています。例えば、テスト導入時に作成されたロボットが使われないまま放置されたり、ロボットの開発・運用ルールが不明確であったりしたために、管理されないロボットが増殖するケースが挙げられます。

また、管理されていないロボットは、業務プロセスの把握が困難になり、異常が発生しても気づかれないまま稼働し続ける可能性があります。その結果、システムへの負荷や情報漏洩リスクの高まりが懸念されます。RPAの安定運用を実現するためには、ロボットの管理ルールを明確化し、定期的な棚卸しや使用状況の確認を行うことが不可欠です。

ロボットの権限管理

RPAの適切な運用には、ロボットごとの使用権限を明確にし、IDやパスワードの管理を徹底することが重要です。これにより、どのロボットがどの業務や部門で使用されているかを一元的に把握でき、不適切なアクセスを防ぐことができます。ロボットの権限管理を適切に行うことで、セキュリティリスクを低減し、RPAを安心して活用できる環境を整えることができます。

RPA活用事例

RPAの活用事例を2社紹介します。自社で取り組む際のご参考にしてください。

パーソルグループ

パーソルグループでは、働き方改革を促進するべく、2017年5月、グループ社内にRPA推進室を新設。業務を自動化するRPAの導入検討および導入を推進し、約1年で年間約17.5万時間の業務自動化を実現しました。

その後、さらなる推進を行い、2019年5月には、グループ内でのRPA運用は年間約300案件となり、約30万時間の業務を自動化しています。これに伴い、グループ内でRPA人材の育成も進んでおり、パーソルテンプスタッフ株式会社では社員6名がRPA開発専任者としてキャリアチェンジやキャリアアップを実現しています。また、自部署にてRPAを導入している社員約50名についても、RPAに関する講座を受講しRPA業務に携わっています。

 【RPAによる自動化対象業務例】

    • 請求書作成、対象者への送付
    • Webサイトや基幹システムからのデータ取得
    • 派遣契約における契約延長、契約終了処理などの契約関連業務
    • メール送付やデータの抽出
    • メール仕訳などの業務
    • 労働マネジメント業務や人事業務上の処理業務
    • 交通費申請の運賃検索や社員のセキュリティカード発行、携帯電話登録などの総務業務ほか

【出典】パーソルホールディングス株式会社「パーソルグループ、RPA活用促進により社員のキャリアアップも グループ内で約300案件・年間約30万時間の業務を自動化

ニチレイロジグループ本社

ニチレイロジグループ本社では2016年からRPAを導入し2021年10月時点では年間で約30万時間の業務自動化・業務改善を達成しました。

RPA事務局を本社に設置して、全体のRPAを統括し幅広くRPA推進の取り組みを実施しています。役割は操作研修や問い合わせ対応、自習会の開催などの人材育成からRPA関連のイベント企画やTeams運用など多岐にわたります。 RPA推進で生み出された時間を付加価値創出時間と位置づけ、推進しています。

今まで事務処理にあたる従業員の多くは入力業務に従事していましたが、RPAの業務効率化によって時間や心に余裕を生み出しリソースシフトを実現しました。

RPAの導入により、以下のような付加価値を生み出す時間の創出に寄与しています。

    • コミュニケーションの強化
    • ホスピタリティの向上
    • 新たな付加価値の創造
    • ワークライフバランスの向上

【出典】パーソルホールディングス株式会社「RPA導入成功の秘訣は事前準備にあり! 「パーソルのRPA」が教える 導入準備に欠かせない4つのポイントとは?

まとめ|RPAとはオフィスの定型業務を自動で行うプログラムのこと

RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)は、プログラミングの知識がなくても比較的手軽に導入でき、オフィス業務の自動化を実現するツールです。コストを抑えながら業務効率を向上させる手段として、多くの企業で活用が進んでいます。

導入によるメリットとして、業務効率化による労働時間や人件費の削減、人為的ミスの低減、さらには人材不足の解消も見込めます。しかし、管理されていない「野良ロボット」の発生やセキュリティリスクといった課題への対策が不可欠です。

また、RPAの導入効果を最大化するには、単なる業務の自動化にとどまらず、BPR(業務改革)と組み合わせた全社的な業務プロセスの見直しが重要です。まずはスモールスタートで導入し、段階的に運用を拡大することで、持続可能な成功へとつなげていきましょう。

【お役立ち資料】RPAの導入準備に欠かせない4つのポイントとは?

RPAを導入してみたがうまくいかないといった課題を多く耳にしますが、導入後の成否を分けるポイントはいったい何なのでしょうか?

パーソルグループでは、RPA導入支援のプロフェッショナルが、導入前の準備に欠かせない4つのポイントを解説し、資料にまとめました。

RPAの導入を検討している皆さまはぜひご覧ください。

資料をダウンロードする(無料)