2023年08月29日
2023年10月12日
業務標準化を行うと、誰でも同じように業務ができるようになり、属人化の解消や業務品質の向上につながります。業務標準化を成功させるには、業務を細かく洗い出し、標準化できる業務を振り分けることが重要です。本記事では、業務標準化のメリットや導入時の具体的な進め方、成功させるためのポイントを解説します。
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人材不足が深刻化している現代において、社員一人ひとりの生産性を向上させることが企業に求められています。
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業務標準化とは、従業員全員が同じ成果を出せるように業務の流れを決め、設定したルールに沿って業務を実施することを指します。一部の従業員に業務が依存している状態(属人化)を解消し、従業員の負担を軽減します。
業務が標準化されている状態とは、「再現性」と「代替性」の2つが満たされている状態を指します。
また業務標準化の目的は、誰もが同じ成果を出せるようにすることです。誰がどんな業務を実施しているか徹底的に整理し、共通の手順マニュアルやルールを策定することが求められます。
業務が標準化されると、属人化を解消することができます。例えば、担当者に急な体調不良やトラブルが発生したとしても、別のメンバーが肩代わりするなど、会社として適切に対応することができるようになります。
ここでは業務標準化による3つのメリットについて詳しく解説します。
業務標準化により、業務の属人化を解消し、従業員の負担が軽減されます。標準化によって業務の全体像が把握できるようになり、タスク量に偏りがある場合でも空いている人にタスクを振ることができ、業務負担を均等化できます。チーム全体での負担が軽減されるだけでなく、働き方改革やコミュニケーションの改善にもつながります。
また業務標準化では、引き継ぎ業務の負担も削減できます。業務に関するノウハウを可視化し、いつでも確認できる状態にしておくことで、新入社員や異動してきた社員に対してすぐに業務を引き継ぐことができます。
業務標準化では、業務を洗い出す過程で業務内容の見直しもできるため、作業の無駄が削減されます。無駄をなくし改善された作業手順に切り替えると、作業時間の短縮にもつながります。
標準化した業務を社内全体で共有することで、業務のブラックボックス化の解消にもつながります。手順書・フローなどが全員に共有されていつでも確認できる状況になっていると、担当者以外であっても業務を同じように行うことができます。標準化によって作業者によらず品質を維持することが可能です。
業務標準化では、誰でも同様に業務を行い、同じ成果が出せるようになるため、品質が安定し顧客満足度の向上につながります。従業員はマニュアルでいつでも作業手順を振り返ることができるため、作業工程の抜け漏れが発生しにくくなります。
業務標準化は、現在の業務を可視化することから始めます。既存の業務を見直さずに業務標準化を進めてしまうと、無駄な作業を残した業務フローが完成してしまいます。これでは業務負担の軽減にはつながらず、生産性の向上や負担軽減にはつながりません。
業務フローを最適化するために、まずは自社の業務内容を洗い出して自社の課題を確認することが重要です。不要な作業を改善してから、業務フローの最適化に着手しましょう。
ここでは、業務標準化の進め方についてステップ別に紹介します。
業務標準化を進めるにあたり、まずは目的を決定します。企業によって標準化する目的は異なります。「引き継ぎをスムーズにして教育コストを削減する」「組織が蓄積してきたナレッジや資産を使えるものにする」など、標準化で何を実現したいのかを最初に決めましょう。
目的を定めたら、実際にどの部門で行うのか、どの業務を標準化の対象にするかを決めます。次のステップで業務を徹底的に洗い出すため、業務の対象範囲をこの段階で絞り込む必要があります。
業務を絞り込んだ後、業務をできる限り細かく分解して洗い出します。例えば「入社手続き」などといっても、1つの業務の中にはいくつもの細かな手順があります。実際にどのような手順で進めているかを細分化して書き出します。
どこまで業務を分解するかについては「他の人が作業できるレベルかどうか」を基準に考えましょう。例えば、入社手続きに関して「内定条件の提示」という作業を洗い出したとしても、この情報だけでは業務を代行することはできません。「内定条件の提示」をさらに細分化して「労働条件通知書の作成」「上長確認」「内定者へ労働条件通知書を提示」といった要素まで分解することが必要になります。
膨大な業務を可視化するため、業務の洗い出しは1ヵ月や2ヵ月といった期間では終わらないことが多いです。しかしながら、業務の可視化は業務標準化において最も重要なステップです。メンバーのモチベーションを重視するあまり作業量を減らしてしまうと、業務標準化の目的が達成されない懸念があります。時間をかけてでも、業務を徹底的に洗い出しましょう。
洗い出した業務を「感覚型」「選択型」「単純型」の3種類に分類します。以下の表を参考に、業務を分類していきましょう。
振り分けた3つの型のうち、標準化できる業務は「選択型」と「単純型」の2つです。しかし、分類を行う際、業務のほとんどを「感覚型」に割り振ってしまうケースがよく見られます。このように自社の業務は標準化が難しいと思っている人はとても多いです。
しかし業務の87%は標準化できるという調査結果もあり、多くの業務は標準化が可能です。専門的な知識が必要な業務以外は標準化できると考え、積極的に選択型や単純型へ業務を割り振りしていきましょう。
業務を分類したら、業務手順をもう一度見直し、最適化を行いましょう。不要な業務はないか、効率化できるものはないかを確認します。
業務を整理したら、業務フローを再設計します。業務の整理を行ってからフローを設計することで、不要な業務を削減した状態でマニュアルに落とし込むことができます。業務フローには、誰が見ても業務の手順が理解できるレベルまで詳しく記載しましょう。
再設計されたフローをもとに、作業手順を記したマニュアルの作成も行います。マニュアルがあれば、業務の手順などを容易に理解できるようになるため、品質維持や従業員の引き継ぎ負担軽減などにつながります。
マニュアルには、業務手順だけでなく、資料の格納場所やリンクなど、補足的な情報も含めて詳細に記載しましょう。一つの場所に全ての情報を含めることで、閲覧者は素早く欲しい情報にアクセスすることができるようになります。
業務フローを設計した後は現場で実際に使用しましょう。業務標準化では業務フローやマニュアルを見直し、更新し続けることが重要です。最初に設計した業務フローも、実際に使用すると業務がスムーズに進められないケースや、次第に情報が古くなり、実態にそぐわない内容になってしまうケースがあります。定期的にフローやマニュアルを更新しましょう。
業務フローの見直しでは、KPT法というフレームワークの使用がおすすめです。KPT法は、業務改善に用いられる手法で、良かった点と課題点を洗い出したのち、解決するための改善方法を検討します。
フレームワークなどを活用し、定期的に見直しを行うことで、標準化の維持に努めましょう。
業務標準化に取り組む際には、組織の管理者側にあるマネージャーが先導しましょう。通常、現場レベルのメンバーは業務標準化に意欲的でないことが多いです。これは、日常的な業務では、属人化していても業務に支障を来さないことが起因しています。
しかし個人が持つ業務のノウハウは、組織の資産でもあります。組織全体を俯瞰しているマネジメント層が「なぜ自社にとって標準化が資産になるのか」「標準化することで現場にどんなメリットがあるのか」を伝え、現場メンバーを巻き込む必要があります。
ここでは業務標準化を成功させる3つのポイントを紹介します。マネジメント層が積極的に現場へはたらきかけ、実践していきましょう。
業務標準化は、業務の現状を把握するところから始まり、フローの再設計、見直しなどさまざまな取り組みが必要なため、成功するまでには時間がかかります。取り組みを開始するとすぐに標準化が完了し、効果が現れるといったものではありません。あせらず適切に進めることで徐々に標準化の効果は現れます。
長期化する取り組みを成功させるためには、現場の従業員が標準化に向けた意欲を持ち続けられる体制作りも重要です。マネジメントレイヤーが主導し、目的に向けて従業員と取り組みを続けていく、長期的な目線をもって実施することが成功につながります。
業務を担当する全ての従業員に対して標準化の必要性や目的を共有することも、成功させるためのポイントのひとつです。作業時間の削減、業務品質の向上、業務の属人化を防ぐなど目的を明確に定めて、事前に従業員へ周知しましょう。
業務の標準化には、定期的な見直しが欠かせません。業務フローやマニュアルの使いやすさを向上させるには、現場の状況を確認して意見を取り入れることが大切です。標準化した業務をさらに改善するために、見直し・更新の担当者を決め、現場のヒアリングを行ってフローなどを定期的に見直しましょう。
他社における業務標準化の成功事例を、業務標準化の手順や抱えていた課題感、成功のポイントを踏まえて紹介します。自社における業務標準化への取り組みの参考としてください。
河村電器産業株式会社の総務部労務課では、製造業の改善フレームを用いた業務標準化により、労務課の人員が6名から4名に変更となり、給与計算も従来かかっていた日数の1/3に短縮するなど、業務の改善に成功しました。
現場メンバーにヒアリングを行い、繰り返し発生する「定常業務」と、再現性の低い「非定常業務」に分類。定常業務に絞って業務を洗い出しました。その後、PERT図を使ってクリティカルパスを改善しました。
クリティカルパスとは、タスクの所要時間のうちパス(経路)が最長になるものを指します。例えばこの図では、工程の5~9がクリティカルパスです。ベテランのメンバーしか作業ができず、担当者が休んでしまうとその後の作業が全て滞ってしまう状態になっていました。そこで役割分担を見直し並列化。工程8~9では、ベテラン以外の社員でも行えるよう整理を行いました。
全体のタスク数は減っていないものの、クリティカルパスを変えることで、リードタイムを短縮し業務全体を効率化させています。また、クリティカルパス以外にも各作業の効率化やシステムの導入などによって作業の効率化を図りました。最終的には稼働状況を把握することによって、稼働が多くなる時期は予定しているタスクをずらすことができないか調整を行い、チームとして業務負荷バランスの改善ができました。
業務標準化によって業務全体の把握が容易になり、全体を通した作業負担の軽減に成功しています。
ある大手情報通信会社では、経理部と財務部における人材の出入りがなく、業務の属人化が進んでいました。さらに若年層の従業員が少ないことにより、10年から20年を見据えた業務継続性への不安を課題感として抱えていました。また経理部と総務部ではそれぞれが独立して派遣採用を行っているため、片方の部署が忙しくても、片方の部署の人員は手が空いているといった業務量に対して人員のバランスが合っていない状況が散見されていました。
このような状況を改善するために、担当者へのヒアリングや業務調査を行い、業務をコア業務とノンコア業務に分類を。ノンコア業務に関して属人化している業務の洗い出しを行い、マニュアルやFAQ作成により業務標準化を進めました。
また、財務部・経理部を一体運営することにより、コア業務に関しては担当の社員が行い、ノンコア業務は2つの部を横断してアウトソーシングのスタッフが対応する体制を構築しました。アウトソーシングのスタッフが財務・経理の作業を横断的に行うようになり、業務が効率化。また業務内容を整理したことで、業務量に応じたアウトソーシングの人員の増減を行うことができるようになり、作業量の無駄を無くすことに成功しました。
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人材不足が深刻化している現代において、社員一人ひとりの生産性を向上させることが企業に求められています。
・業務を標準化して生産性を上げたい
・業務を改善して、全体の効率化を図りたい
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業務標準化では、現在の業務を見直して改善、再構築を行います。標準化を実施すると、業務の属人化が解消され、見直しによって業務が効率化、生産性の向上や業務品質の安定化などさまざまなメリットが生じます。業務フローの可視化・共有により誰でも一定以上の業務品質を維持できるようになり、顧客からの信頼獲得も実現できます。
新入社員の育成や異動時の社員育成にも、業務の標準化は役立ちます。定期的な見直しと改善を続けることで、組織パフォーマンスの維持・向上が図れます。業務の属人化や品質に課題を感じている場合は、ぜひ業務標準化に取り組んでみてください。
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
プロダクト統括部 Bizer team部 ゼネラルマネージャー 兼
Bizer株式会社 代表取締役
畠山 友一
富士通、リクルート、ネウスウェイ、グリーを経て2013年10月にBizer株式会社を設立。
2019年1月にパーソルプロセス&テクノロジーに株式譲渡。「Bizer team」を活用し、数多くのバックオフィス改革や成長し続けるチームの支援に従事。