生産性向上のために中小企業が取り組むべきことや注意点、活用可能な助成金

業務改革(BPR) 経営者・役員 人事

少子高齢化による労働力人口の減少、長時間労働の見直しなど働き方改革が進む中、改めて生産性向上が注目されています。業務効率化との違い、生産性向上の方法、取り組む際の注意点、活用できる助成金や補助金などをやさしく解説します。

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目次

生産性向上を実現するために知っておくべき4つのこと

(1)生産性向上とは

「生産性を上げていかないと企業の未来はない」「日本の生産性は低い」といった言葉をよく耳にします。国を挙げて「働き方改革」が推進されている昨今、「生産性向上」は確かに重要なキーワードです。一方でこの言葉の正しい意味を知らない人も少なくないようです。

総務省が平成30年に発表した「情報通信白書」によると、「『生産性』とはその効率性を指す概念であり、これを定量的に表す指標の一つとして『労働生産性』が用いられている」と書かれています。

労働生産性とは「1人当たりの付加価値額」のこと。つまり、「生産性向上」は「従業員数や労働時間数に対してどれだけの成果が出せたか」を表す指標です。

生産性はほかにも「物的生産性」や「付加価値生産性」がありますが、日本では「労働生産性」のことを指すことがほとんどです

「1人当たりの付加価値額」の計算の仕方

 

【出典】経済産業省「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」より作成
※ほかにも資本生産性・全要素生産性などがありますが、日本では通常、生産性は労働生産性を指します

(2)生産性向上に取り組むべき理由とは

では、なぜ労働生産性をあげて生産性向上を図ることが企業の課題なのでしょうか。

大きな理由の一つに「労働力人口の減少」があります。高齢化が進む日本では、最もはたらき盛りの30歳以上は減少の一途をたどり、2000年には4,686万人だった人口が2030年には4,501万人になると予想されています。

多くの業界・企業で、人材不足が起きることは明白で、今までと同じはたらき方をしていては、衰退していく一方です。

労働力人口の推移

 

【出典】厚生労働省「平成29年版厚生労働白書」より作成

もう一つの理由は「国際競争力の低下」です。日本生産性本部の「労働生産性の国際比較2020」では、日本の一人当たりの労働生産性は81,183ドル(約824万円)で、OECD加盟37カ国中26位と発表されています。激化するグローバル競争で勝ち残っていくためには生産性を上げなければ、国内の市場シェアさえも、あっという間に海外企業に独占されかねません。

また、近頃は「働き方改革」の促進によって、ワークライフバランスを実現したはたらきやすい環境を従業員が求めるようになっています。生産性向上への取り組みが進んでいない企業ほど、従業員の総労働時間が減らない傾向にあり、ここから脱却しないことにはいずれ人材の確保が難しくなるのは間違いありません。

このような背景から、一人ひとりの生産性を上げることが、近年さらに重要なテーマとなっているのです。

(3)生産性向上のための指標

生産性(労働生産性)を上げるためには、2つの方法があります。「効率の向上」と「付加価値の向上」です。時間や工程を効率化し、革新的なビジネスを創出するなどサービスの価値を増大させることができたときに、生産性向上が実現します。

生産性向上の基本的な考え方

 

【出典】総務省「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)より作成

「生産性向上」はしばしば「業務効率化」と混同されますが、この2つは厳密には異なります。 生産性向上は「成果」を重視しているのに対し、業務効率化は時間や費用のコストを下げるなど「改善」に向けた取り組みを指しています。上の図を見ても分かるとおり、業務効率化は労働投入量(従業員数もしくは労働時間数)の効率化につながるため、いうなれば「生産性向上を達成するための手段の一つ」と認識すべきでしょう。

(4)生産性向上は利益向上にもつながる

生産性向上は、企業に大きなメリットをもたらします。まず、時間や工程の効率化により、コスト削減だけでなく短時間かつ少人数で業務を進められるようになります。既存製品やサービスの付加価値向上が売上増加につながる可能性も大いにあるでしょう。つまり、これまでよりも低コストで利益が得られるようになるのです。

また、AIやRPAの導入による生産性向上は、人材不足の解消につながると考えられます。これまで人が関わってきた仕事を自動化できれば、従業員は「人にしかできない仕事」に集中でき、限られた人材でも効率良くはたらけるようになるのです。残業時間の削減によって労働環境も改善され、従業員のモチベーション向上にもつながります。

では実際に、どのようなことに注意すれば生産性を上げられるのでしょうか。

生産性向上の心得

生産性向上に取り組む前にチェック

「効率の向上」と「付加価値の向上」が生産性を上げるとはいえ、やみくもに実行してしまうとかえってマイナスの結果を生み出しかねません。ここからは、生産性向上に取り組む際に押さえておくべきことを経済産業省の「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」(平成27年1月)を参考に見ていきましょう。

1 自社の理念に立ち返る

自社が何を目的とする会社なのか、自分たちが提供しているサービスは何のためにあるのか、今一度その理由を考えてみましょう。このとき、消費者視点に立って「それは社会のニーズに沿っているのか」に注意することも大切です。

2 事業コンセプトを再構築する

自社の理念が明確になったあとは、事業コンセプトに目を向けましょう。ここで重要なのは①「誰に」②「何を」③「どのように」提供するのかを考え、常に一貫させること。どれか一つでもズレてしまっていたら、生産性向上にはつながりません。具体的な考え方は以下です。

① 「誰に」を考える
自社のサービスや商品の特徴を見極め、顧客層を特定します。同時に潜在的な顧客の顕在化にも目を向けると、サービスや商品の提供範囲が広がり、生産性向上につながります。

② 「何を」を考える
「誰に」が定まったら、顧客のニーズに合ったサービスを考える必要があります。自社が過去に提供していたサービスや他社との差別化要素もしっかりと見つけておきましょう。顧客の期待価値を上げることは、生産性向上に欠かせないプロセスです。

③ 「どのように」を考える
「誰に」「何を」提供するかが決まったら、どのように実行に移すかを考えます。例えば、どんなサービスを提供しているのか情報をしっかりと開示することは重要でしょう。それを見て、顧客は自分のニーズと合致しているかが判断できるため満足度が上がります。

以上のことを考えた上で生産性向上に取り組みましょう。

生産性向上に取り組む際の注意点

とはいえ、生産性向上はすぐに変化が表れるものではありません。研修を導入したりマニュアル化したりとコストだけかかって一向に効果が出ないと不安に感じることもあるでしょう。

しかし、「こんなことをやっても意味がないから、予算は別に回そう」と諦めないことが肝要です。生産性向上のための投資は長期的視点で取り組む姿勢が大切です。また、中小企業でもIT設備など成長のための投資を惜しまない企業は、効果を発揮しやすい傾向にあります。

例えば、決裁において何人ものハンコの確認が必要などアナログなやり方を変えないと、生産性は下がっていく一方です。変化を恐れずに新しいものを取り入れる姿勢も、生産性向上には欠かせません。

生産性向上を実現した企業の取り組み事例

助成金をうまく使いこなそう

厚生労働省や各自治体は、生産性向上に取り組む企業に向けたさまざまな助成金制度を設けています。一つひとつ簡単に確認してみましょう。

・ものづくり補助金

補助額:100万~3,000万円(一般型は最大1,000万円、グローバル展開型は最大3,000万円)/補助率1/2(原則)

新商品やサービスの開発といった経営改革や生産性向上に関連する設備投資に関して支援が受けられます。①付加価値額+3%以上➁給与支給総額+1.5%以上/年③事業場内最低賃金(1人当たりの時間給)地域別最低賃金+30円の要件を満たす3~5年の事業計画を策定・実施する企業なら誰でも応募可能。過去には「複数形状の餃子を一度に製造できる餃子全自動製造機」の開発のために補助金を活用した企業もあります。

・持続化補助金

補助額:上限50万円/補助率:2/3

店舗の改装やチラシの作成、広告掲載など、ブランド力を高めて販路開拓を目指す企業が対象。提出する事業計画期間で「給与支給総額が年率平均増加」「事業場内最低賃金を地域別最低賃金より増加」を見越していることが必須条件です。この補助金を活用し、外国語版ウェブサイトや営業ツールを作成した旅館は問い合わせ件数が倍増したという成功例もあります。

・IT導入補助金

補助額:30万~150万円未満(A類型)、150万~450万円(B類型)/補助率:1/2

業務効率化や顧客獲得など生産性向上につながるITツールの導入を支援。いずれも事業計画期間で「給与支給総額が年率平均1.5%以上向上」「事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上」を満たすことなどが加点要件となります。例えばとある企業は人材に限界を感じ「長年の勘」からの脱却を図るべく販売管理システムを導入。売上の高い得意先の需要予測や仕入れ単価の推移の見える化により、売上増加を可能にしました。

・業務改善助成金

助成上限額:20万円~100万円/助成率:事業場内最低賃金900円未満の場合は4/5、生産性要件を満たした場合は9/10、事業場内最低賃金900円以上の場合は3/4、生産性要件を満たした場合は4/5

中小企業・小規模事業者が生産性向上のための設備投資を実施し、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合に費用の一部を助成します。この制度を活用して勤怠管理システムを導入した企業は、報告業務の効率化が図れたことでこれまでの勤怠管理報告作業が月平均6時間削減しています。

このように、現在では国が企業の生産性向上をさまざまな角度からサポートしているので、ぜひ活用してください。

生産性向上のヒントを事例に学ぶ

では、どのような企業が生産性向上に取り組んで成果を上げているのでしょうか。以下は厚生労働省が平成31年1月にまとめた「生産性向上の事例集」から抜粋した事例です。

事例1 食品製造販売業A社
ベルトコンベアの導入による弁当の盛りつけ作業の効率化

新潟県にある食品製造販売業者は、弁当製造の際の盛りつけ時間を削減したいという課題を抱えていました。これまでは配膳台の周りを従業員が移動して盛りつけていたため、非効率なはたらき方になっていたのです。そこで助成金を活用してベルトコンベアを導入したところ、盛りつけ時間が2時間から1時間30分に短縮。作業時間の削減により、28人の従業員の時間給(事業場内最低賃金)を30円引き上げることに成功しています。

事例2 船具・船舶用塗料販売業B社
販売管理ソフトの導入で在庫管理を適正化

熊本県の船具・船舶用塗料販売業者は、販売管理ソフトと連動した在庫管理による適正な仕入れと販売管理時間の削減を目指し、助成金を活用。一連の業務にかかる時間が30分~1時間削減できたことで生産性が向上しました。結果、1人の従業員の時間給(事業場内最低賃金)を124円、事業場内最低賃金以外の従業員の賃金の引き上げも実施できました。

生産性向上とは労働生産性の向上。人材不足解消や国際競争力アップに必須

生産性向上は企業の成果を高めることはもちろん、社員の満足度にも直結しています。健全な労働環境を実現するためにも、生産性向上に取り組むことは重要です。社会構造や社会制度が大きく変わっている今、じっくりと向き合ってみましょう。

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