エンゲージメントサーベイとは?目的やポイント、設問例を紹介

リモートワークをはじめ、はたらき方や価値観が多様化し、企業と従業員の「つながり」に大きな変化が訪れています。そこで、従業員がはたらきやすいと感じる環境づくりを行うために、注目されているのが「エンゲージメントサーベイ」です。

本記事では、エンゲージメントサーベイの意味や目的、実施するにあたってのポイント、設問例などを解説します。

成果を上げ続ける組織づくりを支援するエンゲージメントサーベイ

多様なバックグラウンドを持つ人材が集まり、外部環境の変化に柔軟に対応していくことが不可欠となっている昨今の組織において、従来的なモチベーション向上策を打ち出すだけでは組織の力を高め新しい価値を生み続けることが難しくなっています。

企業の競争力を高めるために、従業員と事業成長との相乗効果が発揮されている状態、つまりエンゲージメントの高い状態へと個と組織が変わっていくことが求められています。

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目次

エンゲージメントサーベイとは?

「エンゲージメントサーベイ」とは、従業員のエンゲージメント、つまり、企業との心のつながりを可視化するための調査です。 従業員が会社や自社が提供している商品・サービスに対して、どれくらい熱意や愛着を持っているかを測定できます。

「従業員満足度」との違い

エンゲージメントと似た言葉に、「従業員満足度」があります。従業員満足度は会社の制度や労働環境に対する満足度であり、職場の居心地の良さの尺度です。

一方、企業や組織に対するエンゲージメントが高まることで、企業の生産性向上や業績向上が期待できます。従業員満足度は業績に結び付きにくい点が、エンゲージメントとは大きく異なります。

エンゲージメントサーベイが注目される背景

エンゲージメントサーベイが注目されるようになった背景には、従業員と企業の関係性の変化があげられます。

かつての日本は終身雇用に代表されるように1つの会社に定年まで勤めることが一般的でしたが、昨今は個人の価値観やはたらき方に対する考え方は多様化し、転職も当たり前の時代になっています。

そのような中で「弱くなってしまった企業と従業員の結びつきを強固にしたい」「会社の理念に共感して熱意を持った人材がほしい」と願う企業が増えたことで、注目されるようになったのが、エンゲージメントサーベイです。

また、米ギャラップ社の調査「State of the Global Workplace:2022 report」によると、日本では熱意あふれる(エンゲージメントの高い)社員の割合はわずか5%で、アメリカの35%やグローバル平均の22%と比較しても低い数値となっています。この結果からも、日本企業はエンゲージメントを高める必要があることがわかります。

エンゲージメントサーベイの目的

エンゲージメントサーベイを実施する目的は大きく以下の2つがあげられます。

組織課題を見える化する

エンゲージメントサーベイでは、ビジョンの浸透度合いや上司や同僚など周囲の関係性など、従業員が組織に抱いている期待と現状のギャップが把握できるため、組織の課題が明確になります。

加えて、職場の人間関係の悪化やモチベーションの低下など、隠れた組織課題の早期発見にもつながります。

データを人事施策に活かす

エンゲージメントサーベイのデータを人事施策の実施・改善に活かすことができます。

定期的にサーベイを実施し、従業員への理解を深めると同時に、実施した施策の効果を確認するといったサイクルを繰り返すことで、従業員のエンゲージメントが高まり、結果的に企業全体の業績向上につながるでしょう。

エンゲージメントサーベイで期待できる効果

エンゲージメントサーベイを活用し、組織課題の分析と改善に取り組むことで、以下のような効果が期待できます。

離職率の低下

エンゲージメントサーベイは、従業員のエンゲージメントを数値化するため、定期的に実施することで、モチベーションの低下や職場環境への不満などが発見できます。

サーベイの結果を元に、組織ごとに対話の機会を設けたり、職場環境を改善したりすることで、エンゲージメントを高めることができます。

エンゲージメントが高まると、会社はもちろん一緒にはたらく仲間に対しても愛着が生まれ、意欲的に仕事に取り組めるようになります。結果、定着率の向上や離職率の低下が期待できます。

生産性の向上

組織のエンゲージメントが高まると、従業員が意欲的にはたらけるようになります。エンゲージメントの高い従業員は自主性が高く、自分の役割以外の業務も積極的に行います。多忙な同僚をサポートするような行動が増えれば、組織全体の生産性も向上していき、顧客満足度の向上、顧客保持にもつながります。

また、エンゲージメントサーベイの結果を踏まえ、意欲がある従業員に対して責任あるポジションに抜擢するといった人事施策に活かすことで、生産性も向上するでしょう。

エンゲージメントサーベイ実施の7ステップ

エンゲージメントサーベイは以下7つのステップで実施しましょう。それぞれのステップについて解説します。

 

エンゲージメントサーベイの7つのステップ

1.実施目的の共有
エンゲージメントサーベイを実施する目的を、社員にあらかじめ共有します。調査の意図を説明し、共感を得ることで、回答回収率がアップします。

2.サーベイの設問決定
社員に回答してもらう質問を決定します。設問決定については、次の章で詳しく説明します。

3.サーベイの実施
エンゲージメントサーベイを実施します。

4.調査結果分析&課題の洗い出し
エンゲージメントサーベイの結果を分析し、課題を洗い出します。

5.課題解決に向けた施策決定
結果によって導き出された課題に対して、解決するための施策を決定します。

6.施策の実施
どの課題から解決すべきか優先順位をつけ、施策を実行します。

7.サーベイの再実施
実施した施策については、効果があったかどうか検証することが重要です。効果が見られなかった場合は、別の施策を実施します。

このようなPDCAを回すことで、課題を抽出し解決に導きます。

エンゲージメントサーベイの質問項目例

サーベイの設問項目は、分析やフィードバックがしやすいよう、テーマが絞り込まれた、かつシンプルなものが望ましいとされています。また、回答は記述式ではなく、5段階や10段階で評価する方が定量化しやすくなります。参考例として、2つの質問例を紹介します。

ギャラップ社の設問例

アメリカの調査会社ギャラップ社では、12個の設問をエンゲージメントサーベイの最適な設問としています。ミッション・ビジョン・バリューの浸透や自己承認、上司や同僚との関係といった項目について5段階で評価します。

Q1:あなたは職場で自分が何を期待されているのかを知っている
Q2:仕事を正しく行うために必要な環境を与えられている
Q3:職場で自分のベスト尽くす機会を毎日与えられている
Q4:この1週間のうちに、よい仕事をしたと認められたり、褒められたりした
Q5:上司や同僚は、自分をひとりの人間として気にかけてくれている
Q6:上司や同僚が自分の成長を後押ししてくれる
Q7:自分の意見が尊重されている
Q8:会社の使命や目的により、自分の仕事は重要であると感じている
Q9:同僚が真剣に質の高い仕事をしようとしている
Q10:職場に親友がいる
Q11:この6カ月のうちに、職場の誰かと自分の進歩について話した
Q12:この1年のうちに、成長する機会があった

【参考】ギャラップ社「Q12

ベイン・アンド・カンパニー社の設問例

「eNPS」は、アメリカのベイン・アンド・カンパニー社が開発した指標をApple社が応用したものです。「自社ではたらくことをどの程度親しい人に勧めたいか」というシンプルな質問に対し、以下のように0~10点で評価します。

0点~6点:批判者
7点~8点:中立者
9点~10点:推奨者

eNPSは、少ない設問項目で構成されているため、改善ポイントが分かりやすいというメリットがあります。

エンゲージメントサーベイの実施ポイント

エンゲージメントサーベイを実施する際、ポイントとなるのは実施後です。実施後に気をつけるべきポイントは以下の2つです。

調査結果は必ず共有し、会話する

エンゲージメントサーベイを実施して、データを収集したらすぐに分析を行い、回答者である従業員に共有することが大切です。

エンゲージメントサーベイは、そのときの部署やプロジェクトチームに関する回答となるため、フィードバックの前に部署やプロジェクトチーム再編がないように注意しましょう。部署やプロジェクトチームが抱える課題が明らかになったら、関係者全員で話し合い、課題の解決を目指しましょう。

今後のあるべき姿を描く

関係者全員で課題について話し合う上で、データの解釈に違いが生まれることもあるでしょう。まずは、その違いを互いに受け入れることが重要です。受け入れた上で、部署やプロジェクトチームが、将来どのような位置にいるべきか、何をしているべきか、どのような存在になっているべきかを前向きに話し合いましょう。

対話を繰り返しながら、将来のストーリーを描いていくことが大切です。

エンゲージメントサーベイの活用事例

最後に、エンゲージメントサーベイを効果的に取り入れた企業の事例を紹介します。

習慣的な調査で組織体制の変化にも対応

業種:IT
従業員数:1,000人以上
資本金:400億円以上

とあるIT企業は、短期間で組織を拡大し、社員が急増しました。また、成長分野では組織内外の環境がどんどん変化するため、チーム編成も目まぐるしく変わっていました。そのような状況下でも組織の健全な状態を保つために、エンゲージメントサーベイのフィードバックに力を入れ始めました。

・サーベイは3ケ月に1度の実施
・数日間で集計と分析を行って経営会議で発表してフィードバックをもらう
・フィードバックを各部署のミーティングでアクションプランに落とし込む

PDCAを素早く回すことで、社員のエンゲージメントの変化にいち早く気づいて手を打つことができ、「会社が働きかけてくれた」と社員からの評価を得ることができました。結果を具体的なアクションにまで落とし込むことを徹底したのも、サーベイの効果的な運用のポイントです。

心理的安全性を確保して、本音で語り合う環境づくり

業種:電機メーカー
従業員数:20万人以上
資本金:2,500億円以上

国内有数の電機メーカーでは、社員のはたらきがいを向上させるために、意識調査を年に一度実施して職場の状況を可視化しています。サーベイを効果的に活用するには、定量的なデータから課題が見えたあとに本音でディスカッションをすることが大切だと考えられています。「自身の力で会社・組織を動かせる」ことを社員に実感してもらうために、フィードバックの場では上司を交えて本音で語り合える心理的安全性の確保を徹底しました。

・自分の経歴や興味や特技など、パーソナルな情報を話す場をつくる
・入社後から現在までの浮き沈みをライフラインチャートにして、まず同僚や上司、部下のことを知る

これらの施策で、他者のことを「知ろう」というスタンスで話し合うことができ、心の距離を縮めています。また、サーベイのフィードバックは課題だけではなく、ポジティブなことを出し合うことも重視して実施しています。

【出典】『「データと対話」で職場を変える技術 サーベイフィードバック入門』(PHP研究所)

まとめ|価値観が多様化する現代に高まる、エンゲージメントサーベイの重要性

個人の価値観が多様化し、個人と組織の関係性が変化した現代社会において、エンゲージメントサーベイは急速に注目を集めています。エンゲージメントサーベイを実施し、その結果を有意義に活用することは、人材の流出を防ぐだけではなく、必要な人材を安定的に獲得することにつながります。

ただし、エンゲージメントサーベイを実施するだけでは意味がありません。サーベイの結果をもとに分析し、改善策を打つことにより、より良い職場環境の構築につながります。

エンゲージメントサーベイの目的を理解し、効果的なサーベイを実施しましょう。

成果を上げ続ける組織づくりを支援するエンゲージメントサーベイ

多様なバックグラウンドを持つ人材が集まり、外部環境の変化に柔軟に対応していくことが不可欠となっている昨今の組織において、従来的なモチベーション向上策を打ち出すだけでは組織の力を高め新しい価値を生み続けることが難しくなっています。

企業の競争力を高めるために、従業員と事業成長との相乗効果が発揮されている状態、つまりエンゲージメントの高い状態へと個と組織が変わっていくことが求められています。

パーソル総合研究所の「エンゲージメントナビ」は、調査だけではなく、課題の明確化とアクションプラン策定までご支援するツールです。詳しいサービス資料は以下よりダウンロードいただけます。

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よくあるご質問

Q1.エンゲージメントサーベイとは?

A1.「エンゲージメントサーベイ」とは、従業員のエンゲージメント、つまり、企業との心のつながりを可視化するための調査です。従業員が会社や自社が提供している商品・サービスに対して、どれくらい熱意や愛着を持っているかを測定できます。

>>エンゲージメントサーベイとは?

Q2.エンゲージメントサーベイの目的は?

A2.エンゲージメントサーベイは、組織の課題を見える化し、データを人事施策やチーム運営に活かすことが目的です。定期的にサーベイを実施することで、組織に対するエンゲージメントの変化が分かるため、モチベーションの低下や周囲との関係性の悪化などに気が付きます。サーベイの結果をもとに改善に向けた対策を打つことにより、人事施策やチーム運営に活かせます。

>>エンゲージメントサーベイの目的

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