2022年10月11日
2025年02月19日
活性化している組織に所属する社員は、組織ビジョンに自身の思いが内包されているため、「やらされ感」を持たずにはたらいています。多くの社員は、”自分ゴト化”された組織ビジョンの実現に向けて、自らやるべきことを見出し、能動的かつ主体的に取り組む姿勢を持っています。また、組織内では相互に助け合う「ソーシャルサポート」が自然に生まれています。
こうした活性化された組織を考えるうえでは、組織風土は自然と形成されるものではなく、意図を持って、戦略的に実現するものであるという観点が重要です。
本記事では、組織活性化の定義や、組織を革新させるためのステップ、実際に活性化を実現した事例について詳しく解説します。
組織活性化につながる最適な人員配置の施策とは?
最適な人員配置を実現し、社員一人ひとりが活躍できる環境を作ることは、組織活性化の鍵といえます。しかし、実際にどのように人員配置をすれば効果的なのかは多くの企業にとって悩みの種ではないでしょうか。
そこでパーソルグループでは、組織活性化につながる最適な人員配置を実現するための視点と施策についてまとめた資料を無料で公開しています。
組織の活性化や人員配置について課題をお持ちの方は、ぜひご活用ください。
目次
「組織活性化」とはどのような状態を指すのか、統一された定義は存在しないため、本記事では以下のように定義します。
互いに認め合い、建設的な議論を行いながら、組織と共有している目的・価値を能動的に実現していこうとする状態
人材不足が深刻化し、採用難が続く中、企業が持続的に変化・成長していくためには、今いる社員一人ひとりのパフォーマンスを最大化しつつ、組織として総合力が発揮できる状態をつくることが求められます。
しかし、ビジネス成果のみに焦点をあて短期的な成果を急いでしまうと、社員の心的負荷が高まり、相互援助がなされない”ギスギスした職場”へと変わってしまいます。重要なのは、持続的に成果を生み出せる組織基盤の構築であり、その組織を形づくる社員一人ひとりが幸福感を得ながらはたらけることだといえます。
活性化している組織では、上司と部下、あるいは部下同士の相互理解が進んでおり、気軽なコミュニケーションや本質的な議論が多くなされています。このような関係によって社員の職場に対する帰属意識が高まり、離職率が低くなるといった効果が生まれます。
活性化された組織をつくり上げるにあたり、どのような組織・チーム状態を目指していけばよいのでしょうか。本章では組織を活性化し、成果を生み出すためのステップとして、「SDモデル」を紹介します。
SDモデルとは、組織が永続的にビジネス成果を生み出せる状態へと変化・成長していく過程を「Search」「Satisfaction」「Spin」「Design」「Development」の5つのステップで示したものです。ここからは各ステップについて解説します。
組織で他者と効果的な関わりを持つためには、まず自分自身のことを深く理解しておく必要があります。このステップでは、セルフコーチングなどを通じて、自己概念の表出化や自己呈示などを行います。
例えば、以下のような問いに答えることで、自己理解が進みます。
自分自身を深く知る行為を通して、相手を知るためのポイントも明確となり、相手に対する興味・関心も生まれます。
このステップでは、”ワイガヤ”や”ガチ対話”が求められます。しかし、多くの職場では心理的安全性が担保されていないことから、不安が生まれ、ホンネで話すことはできません。
心理的安全性が低いことで発生する4つの不安
無知だと思われる不安 | 業務遂行上の不明点を確認したいが、「この程度のこともわかっていないのか」と思われてしまいそうで不安になり、必要な質問ができなくなってしまう。 |
---|---|
無能だと思われる不安 | 担当業務がうまく進められないときに、「こんなこともできないのか」「使えない人だ」と思われないか不安になり、ミスの報告や必要な支援要請ができなくなってしまう。 |
ネガティブだと思われる不安 | 目の前の議論を聞いていて、懸念点があるから指摘したいが「ネガティブな人だ」「否定的な発言で和が乱れる」と思われないか不安になり、反対意見が出せなくなってしまう。 |
邪魔をしていると思われる不安 | 意見があっても、「ここで発言すると、収束しかけた考えが、また発散してしまうのではないか」「皆の邪魔になってしまうのでは」と不安になり、せっかく思いついた考えが述べられなくなってしまう。また他者にフィードバックの依頼も遠慮してしまう。 |
そのため、最初に「この場は何か意思決定したり、評価をしたりするのではなく、分かり合うことが目的」であると明示します。そのうえで、それぞれの思いや価値観、考え方が異なるのは当然のことと確認し、対話を通して相互理解を進めましょう。一人ひとりが異なる存在であることを理解し、その違いを認め、受け入れあうことがポイントです。
このステップでは、各人のビジョンを紡ぎ合わせ、組織やチームのビジョンをつくり上げていきます。
チームビジョンを紡ぎあげるダブルループ活動
ここで作られる「チームビジョン」には、メンバーの思いやビジョンが反映されているため、「我々が尊重されたチームビジョン」として捉えやすくなり、「実現に向けて共に頑張ろうという意欲」が職場に芽生えます。これが、チームビジョンの“自分ゴト化”プロセスです。
このプロセスにより、各人の能動的・主体的な行動を引き出すことができます。
このステップでは、チームビジョンの実現に向けた具体的な進め方を設計します。
ここでは、チームビジョンの背景や目的、目標をチーム内で改めて共有し、実現に向けた課題などを事前に洗い出し、各人の負荷なども考慮しながら計画を立てていきます。
最後は、設計された計画に沿って実行し、振り返りを行います。
目の前の業務にどう対応するかのみ考えるのではなく、常に目的を意識します。あわせてチームメンバーの成長に自身が寄与する(ソーシャルサポート)ことも考えながら計画に落とし込んだ業務に対応します。
自身の思いが取り込まれたチームビジョンのもとで、信頼できる仲間と共に協働し、日々の業務を通して自身が成長できること。また、仕事を通して成果を生み出せることは幸せな状態であると言えます。
SDモデルは、このような組織の状態変化を表しています。
組織活性の度合いは、各企業や職場で設定される目標によって大きく変わりますが、以下のような考え方が可能です。
組織活性化により求められる成果は、「ビジネス目標の達成」と「人材や組織における状態目標の達成」という2軸に分かれます。しかし、多くの企業ではどちらか一方しか見られていません。
持続的に成果を生み出すためには、焦って短期的な業績を追求するのではなく、土台となる組織基盤を整えることが重要です。無理なく成長し続けられる状態をつくることが、企業にとっても社員にとっても理想的な状態と言えるでしょう。
プロジェクトの開始時と完了時に調査を行い、変化を見ます。このとき、量的調査(アンケートやサーベイなど)だけではなく、質的調査(インタビューなど)もあわせて実施することが望ましいでしょう。
質的調査を実施する理由は、量的調査のみでは得られる情報に限界があるためです。実際に質的調査だけでは、以下のような問題点が考えられます。
組織活性化の取り組み後に量的調査を実施すると、プロジェクト後に数値が下がっていることが多々あります。施策を講ずることで値が上がると思われがちですが、必ずしもそうではありません。なぜなら、施策を通して回答者の判断基準が変わってしまうことがあるためです。
例えば、開始前によく考えずに答えていた項目も、組織風土改革などのプロジェクトを通して”自分ゴト化”され、「私たちはもっと出来るのではないか?」と考えるようになり、基準を知らず知らずのうちに上げてしまうといったことがあります。
回答者の判断基準の変化は集計数値から判断することができず、単純に数値が下がり「成果が出なかった」というとらえ方がされてしまいます。これを防ぐために質的調査を実施し、数値からは見えない意識の変化を捉えていきましょう。
量的調査だけでは、抽象化された値しか読み取れず、組織の実態が見えづらいという問題点もあります。
例えば、4人の人が5点スケールで評価する量的調査を実施した場合、以下のようなどちらの場合でも「平均3点」という同一の結果になってしまい、違いが検証できません。
標準偏差を算出し、ばらつきを捉えることもできますが、選択値がばらついている理由までは分かりません。このような結果を回答者の属性などから推測し、仮説を設定し、質的調査で検証していきます。
このように、量的調査だけでは見落とされる要素が多いため、質的調査をあわせて実施することで、組織の変化や成果をより立体的に捉えることが可能になります。量的調査で明らかになった結果に対して、「なぜそのような結果が出たのか」という理由や背景を仮説として設定し、質的調査で検証するプロセスは正しく評価するうえでも重要です。
組織を活性化させるための施策は数多く存在しますが、ここでは「ハード的アプローチ」と「ソフト的アプローチ」に分けてそれぞれ2つずつ施策を紹介します。ハード的アプローチは前述のSDモデル全体に影響を及ぼしますが、ソフト的アプローチは特定フェーズの状態変容を意識したアプローチとなっています。
自社の組織の現状や目指したい姿に合わせて、効果的な施策を選択することが重要です。
社員は自身の役割を主に人事制度(等級定義、役職定義、評価項目およびその基準など)から理解するため、人事制度が組織の活性化に繋がるよう改定し、社員に浸透させていく必要があります。
具体的には、自社が理想とする組織の状態と現状を比較し、以下のような問いをたてながら手を打つべきポイントを精査し、人事制度に組み込みます。
・社員の言動に、会社の理念やチームビジョンが反映されているか?
・健全な対立や心理的安全性を意識した関わりが職場で意識されているか?
・自ら進んで他者を支援するような動きが職場でとられているか?
制度改定後は、その意図や社員に対する期待、目指すべき組織の姿などを伝え続けることで浸透を図り、社員の意識変革や行動変容に繋げていきます。
コミュニケーションの量と質を改善するために、コラボレーションツールやタレントマネジメントシステムといったシステムの導入が有効です。
コミュニケーションをとるうえで、相手の価値観や思考・コミュニケーションタイプ、得意領域などが事前に分かっていると心理的なハードルが下がり、“最初の一歩”が踏み出しやすくなります。これにより、異なる職種や部署、雇用形態の社員との接点が増えることが期待できます。
また、社員の特性を考慮した異動やチーム編成を行うことで、より本質的なコミュニケーションがなされ、組織の活性化に繋がります。
相手に自分を知ってもらうためには、まず自分自身についてよく理解していなければなりません。自分自身に対する探求を通して、自己理解を深め(自己概念)、認識された内容を相手に伝えることを自己開示と言います。自己理解を深めるためには、自身の価値観や思考・コミュニケーションタイプなどを見つめ直すことが大切です。
一方、自己呈示とは、自分の本来の姿に対して、相手にどう見られたいかという希望や期待などの意図を込めて伝えたり、自身が目指したい姿を相手に伝えたりする行為です。
これらは、SDモデルの「Search(探索)」や「Satisfaction(充足)」など、初期フェーズで使用される施策です。
職場には様々なルールがあり、明文化されたルールと暗黙的なルール(社会規範)に分けられます。特に暗黙的なルールは、意識せずに守っているため分かりづらく、ルールが生まれた背景について誰も知らなかったり、組織が目指している状態に即したものでなかったりするケースも多々あります。
そのため、暗黙的なルールを見える化し、目指す状態を実現するために必要な考えや行動とはどういったことなのかをチーム内で話し合うことが大切です。そして、価値観や判断基準と合致しないルールを改善し、共通認識を醸成することが求められます。
これらは、SDモデルの「Satisfaction(充足)」や「Spin(つむぐ)」のフェーズで使用される施策です。
組織活性化の事例として、パーソルグループがご支援した事例を紹介します。
流通・サービス業のA社では、中核となるモデル店舗の活性化に課題を感じていました。現場の社員を育成し、店舗の品質を高めるべく、パーソルとの取り組みをスタートしました。
組織活性化において重要なポイントは、各人の”思い”を大切にすることです。
一人ひとりが自身の内面と向き合い、あわせてチームメンバーとホンネで語り合う。その“場づくり”と、各自の思いが込められたチームビジョンの設定、具体的な計画立案などを計画的・体系的に進めていくことが求められます。
組織活性の評価は、量的指標だけでなく質的指標もあわせて見ることで、施策前後の適切な効果測定が可能となります。効果を測定することは活動をより良いものへと進化させるための糧となります。
組織活性化を実現し、企業の恒常的成長へとつなげましょう。
組織活性化につながる最適な人員配置の施策とは?
最適な人員配置を実現し、社員一人ひとりが活躍できる環境を作ることは、組織活性化の鍵といえます。しかし、実際にどのように人員配置をすれば効果的なのかは多くの企業にとって悩みの種ではないでしょうか。
そこでパーソルグループでは、組織活性化につながる最適な人員配置を実現するための視点と施策についてまとめた資料を無料で公開しています。
組織の活性化や人員配置について課題をお持ちの方は、ぜひご活用ください。
株式会社パーソル総合研究所
組織力強化事業本部 組織力強化コンサルティング部 コンサルグループ
内田 智之
情報システムを扱う商社にて、新規市場の調査や開拓営業、特許出願などを経験したのち、コンサルティング業界へ転身。複数のコンサルティングファームに在籍し、組織診断やコンサルティング(組織風土変革、人事制度設計、教育体系策定、教育システムの導入など)、各種研修業務に従事しながら新サービスや変革技術の開発を行ってきた。専門は組織行動論(指導教官:城戸康彰 産業能率大学名誉教授)であり、その源流にあたる心理学の各種理論を取り入れた組織や個人の変革・成長支援を強みとしている。また、データ分析にも強く、多変量解析を駆使した現状分析なども手掛けている。
所属企業内に組織開発研究所(現在は閉鎖)を立ち上げ、主席研究員として運営にも携わってきた経験を持っており、上記業務・活動を推進する一方で、自らのビジネス領域に関係する調査・研究を行い、研究結果の現場活用にも取り組んでいる。
●ICMCI (国際公認経営コンサルティング協議会) コンサルタント
●公益社団法人全日本能率連盟 マスター・マネジメント・コンサルタント
●MBA & MSc
●公益社団法人日本心理学会 認定心理士
A1.流通・サービス業を手掛けているA社では、モデル店舗の活性化に課題を感じていました。現場の社員を育成し、店舗の品質を高めるべく、取り組みをスタートしました。取り組み終了後には、売上向上や検定・試験合格率の向上、組織活性度サーベイの上昇という成果を得られました。
>>組織活性化の事例|流通・サービス業A社
A2.組織活性化とは「互いに認め合い、建設的な議論を行いながら組織と共有している目的・価値を能動的に実現していこうとする状態」です。
組織を変革する際、成果を早急に求めてしまう傾向がありますが、成果だけを追い求めてしまうと組織への負荷が高まり、人材が離れ、結果的に組織の崩壊に繋がりかねません。
重要なのは直接的な成果を導き出すために組織の基盤を整えることであり、組織を形づくる社員一人ひとりの状態がより良いものになることです
>>組織活性化とは?