リテンションとは?人材流出防止の具体的な施策とポイントを解説

リテンションとは、自社にとって必要な人材の流出を防止するための施策のことを指します。

人材の流動化が進む中、多くの企業にとって人材不足が問題となっており、今後も人材獲得競争は激化していくことが予想されます。

リテンションに取り組み、社員にとって魅力的な企業となることで、定着だけでなく採用への好影響も期待でき、優秀な人材の維持・確保につながります。

本記事では、リテンションの概要や具体的な施策、効果的にリテンション施策へ取り組むためのポイントについて解説します。

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人材やはたらき方が多様化し、「組織マネジメント」の重要性が高まっています。

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目次

リテンションとは

リテンションとは「維持・保持」を意味する言葉で、人事領域においては自社にとって必要な人材の流出を防止するための施策を指します。具体的には、報酬や福利厚生の充実、はたらきやすい環境作りなどがあげられます。

労働人口は減少の一途を辿っており、株式会社パーソル総合研究所の「労働市場の未来推計2030」によると、2030年には644万人の人材が不足するとされています。

【出典】株式会社パーソル総合研究所「労働市場の未来推計 2030

人材不足の深刻化と同時に、個人の仕事に対する意識やはたらき方に対する価値観は多様化しており、人材の流動性も高まっています。株式会社マイナビの「転職動向調査2022年版」によると、2021年の正社員転職率は7.03%と、過去6年間で最も高い結果となりました。

【出典】株式会社マイナビ「転職動向調査2022年版

人材流出が続くと、採用・育成のコストがかかるだけではなく、ノウハウやネットワークの流出にもつながります。そのため、リテンション施策を通じて社員の帰属意識を高め、「この会社で長くはたらきたい」「持てる力を伸ばし、発揮することでともに社会へ貢献していきたい」と思ってもらうことが重要となります。

リテンション強化により期待できること

リテンションを強化することで、具体的には以下の3つのメリットが期待できます。

    1. 採用や育成にかかるコストの削減
    2. 生産性の向上
    3. 採用競争力の強化

1.採用や育成にかかるコストの削減

リテンションは、採用・育成コストの削減につながります。

株式会社リクルートキャリアの「就職白書2020」によると、新卒採用にかかるコスト平均は93.6万円、中途採用にかかるコスト平均は103.3万円となっています。採用活動における広告費や人件費だけではなく、入社後の育成や定着施策にも多くのコスト・工数がかかります。

リテンションに取り組み、離職率が改善されることで、採用・育成コストなどが削減できるでしょう。

2.生産性の向上

リテンションにより社員が定着することで、社員が保有するノウハウや人脈などが継続的に活かされるため組織全体の生産性の向上につながります

また以下のような施策を実施することで、モチベーションの向上も期待できます

▼施策の例

  • 育児や介護をしながらでもはたらけるように、時短勤務を取り入れるなどはたらき方の選択肢を増やす
  • 社員のスキルアップを支援するために、研修などによるスキルアップ機会を提供する
  • 各自の専門領域や強みを一覧化し、相互支援が行える環境を構築する

関連記事「モチベーションマネジメントとは|低下する原因と具体的な改善施策」を見る

3.採用競争力の強化

リテンションは採用競争力の強化にもつながります。

労働人口の減少に加え、多くの企業が採用を増やしていることから、企業間での人材獲得競争は既に激化しています。自社が求める優秀な人材とマッチングするためには、企業の魅力を高め、多くの候補者から選ばれる存在となる必要があります。

リテンションを行うことで今いる社員だけでなく、入社予備軍でもある求職者にとっても魅力ある企業となり、結果的に採用競争力の強化が期待できます。

リテンションの種類と具体的な施策

リテンションの施策は、大別すると「金銭的報酬」「非金銭的報酬」の2つに分けられます。

重要なは、金銭的報酬と非金銭的報酬をバランスよく取り入れることです。

社員への報酬というと、給与の増額や賞与を思い浮かべる方が多いかもしれません。実際に退職理由としても「給与への不満」はよく挙げられる要因の一つです。しかし、給与以外の不満も同等に挙げられています。

パーソルキャリア株式会社の「退職理由に関するアンケート調査」によると、退職理由として「給与への不満」に加え、「業務過多・労働環境に不満」「人間関係への不満」「雇用形態や勤務時間などの働き方を変えたい」といた項目が挙げられていました。

【出典】パーソルキャリア株式会社「退職理由に関するアンケート調査

金銭的報酬には一定の効果がありますが、提供には限界があります。また金銭的報酬のみでは、他社がより高い給与やインセンティブを提示する可能性もあります。そのため、一定の金銭的報酬をすでに備えている企業にとっては、「非金銭的報酬」をバランスよく取り入れることが重要です。

非金銭的報酬の具体的な施策として以下のような施策が挙げられます。

はたらきやすい環境づくり ・福利厚生の充実
・人事評価制度の見直し
・自己申告制度の導入
・テレワークの拡充
・フレックスタイム制の導入
・複業の促進
・残業時間の削減
・各種休暇取得の促進
スキルアップ支援 ・資格取得の支援
・研修の実施
キャリア形成支援 ・チャレンジ制度
・社内インターン
・社内FA制度
・メンター制度
社内コミュニケーションの活性化 ・定期面談
・フリーアドレス制の導入
・社内SNS
・飲み会、ランチ補助制度

リテンション施策の検討プロセス

このようにリテンションの施策は複数存在しますが、重要なのは採用した施策がターゲット層に対して効果的な施策かどうかです。施策を検討・採用するためのプロセス解説します

Step1.自社の離職率や離職理由の分析

社内に蓄積されている人事・人材データを分析し、「どういった人」が「どのような理由」で「どの程度」退職しているのかを把握します。ここでは、量的データだけでなく質的データも重視します。

Step2.自社にとって重要社員群を設定し、施策を検討

離職者を一律に扱うのではなく、自社にとって辞めてほしくない人材とはどういう人材なのかを具体化することが重要です。重点的に対応すべき群(ペルソナ)を設定し、その群を詳しく知ることで効果的な対応策がおのずと見えてきます。

例えば、対象となるペルソナを分析した結果、「30代の女性が仕事と育児を両立できず退職してしまう」といった問題が浮かび上がればことで、育児休暇の取得促進や時短勤務などの導入といった制度を拡充していくことが考えられます。ペルソナの分析にあたっては、退職者に退職理由を直接ヒアリングできることが最善ですが、難しい場合も多いため、職場内で近しい同僚から話を聞き、情報を得るといった方法が採られたりします。

Step3.効果検証

実施した施策が効果を発揮しているか検証を行います

退職理由には社会環境なども大きく影響するため、実施施策が十分な効果を上げていないように感じることがあります。よって、結果としての離職率・数だけを見るのではなく、その先行指標となる「モチベーション」「エンゲージメント」といった調査結果などもあわせてみていく必要があります。 

これらStep1~3を行うには、人事・人材データの一元管理が重要となるため、タレントマネジメントシステムの活用などをあわせて検討する必要も出てきます。

関連記事「タレントマネジメントシステムを徹底解説|選定・導入のポイント」を見る

まとめ|リテンション施策で社員・候補者に選ばれる企業

人材不足や人材の流動性の高まりなどを背景に、多くの企業でリテンションが重視されています。効果的なリテンション施策を行うことで、離職率の改善や生産性の向上、採用・育成コストの削減などさまざまなメリットが期待できます。

まずは自社にとって必要な人材像を明らかにし、その人材がはたらきやすい環境づくりを行うことで、社員から選ばれる企業となることを目指しましょう。

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人材やはたらき方が多様化し、「組織マネジメント」の重要性が高まっています。

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採用・離職、上司・部下の認識ギャップ、キャリアなどに焦点を当て、 組織マネジメントにおける課題や取り組みについてまとめたものです。

組織作りやマネジメントに課題を抱える経営・人事の方、管理職の方のご参考になれば幸いです。

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よくあるご質問

Q1.リテンションとは?

A1.リテンションとは「維持・保持」を意味する言葉で、人事領域においては自社にとって必要な人材の流出を防止するための施策を指します。例えば、離職防止に向けた取り組みや、はたらきやすい環境作りなどです。

人材が流出すると、採用や育成コストがかかるだけではなく、ノウハウやネットワークの流出にもつながります。そのため、リテンションにより自社の社員から選ばれる企業となることが重要です。

>>リテンションとは

Q2.リテンションの強化で期待できることは?

A2.リテンションの強化により、以下3つのメリットが生まれます。

  1. 採用や育成にかかるコストの削減
  2. 生産性の向上
  3. 採用競争力の強化

>>リテンション強化により期待できること

Q3.具体的なリテンション施策にはどのようなものがありますか?

A3.以下のような施策があげられます。

  • はたらきやすい環境づくり(福利厚生の充実、人事評価制度の見直しなど)
  • スキルアップ・キャリア形成の支援(研修の実施など)
  • 社内コミュニケーションの活性化(定期面談、フリーアドレス制の導入など)

>>リテンションの種類と具体的施策

インタビュー・監修

株式会社パーソル総合研究所

組織力強化事業本部 組織力強化コンサルティング部 コンサルグループ

内田 智之

情報システムを扱う商社にて、新規市場の調査や開拓営業、特許出願などを経験したのち、コンサルティング業界へ転身。日本能率協会コンサルティングやSMBCコンサルティング、トランストラクチャといった複数のコンサルティングファームに在籍し、組織診断やコンサルティング(組織風土変革、人事制度設計、教育体系策定、教育システムの導入など)、各種研修業務に従事。また、所属企業の中で組織開発研究所(現在は閉鎖)を立ち上げ、主席研究員として運営にも携わってきた経験を持つ。上記業務・活動を推進する一方で、自らのビジネス領域に関係する調査・研究を行い、研究結果の現場活用に取り組んでいる。2019年10月より現職。

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