2025年01月22日
人材不足が深刻化し、採用難が続く中、従業員の生産性やパフォーマンスを高めるべく、モチベーションマネジメントの重要性が高まっています。
モチベーションマネジメントは従業員の仕事に対するモチベーションを高める(強める)ための動機づけを行うマネジメント手法です。しかし、どのようにモチベーションを把握し、どのように働きかけるのか、手探りで行っている企業も多いのではないでしょうか。
ワーク・モチベーションは置かれている環境や思い描いているキャリア、価値観などに大きく依存するため、一人ひとりに目を向けることが重要です。
本記事では、モチベーションマネジメントの基礎知識から、ワーク・モチベーションが低下する原因、どのようにマネジメントすべきかまで解説します。
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社員のモチベーションを高めるには、制度や評価だけでなく、現場での関わり方や対話の質が欠かせません。
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目次
モチベーションマネジメントとは、対象となる従業員の仕事に対するモチベーションの源泉を把握し、それを高めることを目的に個々人へ適切にかかわるマネジメント手法の総称です。従業員の離職防止や、意欲・能力の向上に寄与するといわれています。
「モチベーション(動機)」は一般的によく使われている言葉ですが、実は自明の概念ではなくこれまで数多くの研究者によってさまざまな定義付けがなされてきました。たとえば、組織心理学者のC.C.Pinderはワーク・モチベーションを「個人の内部、もしくは外部から発生し、特定の行動の強度、方向、持続性を規定する活動力」と定義しています。
モチベーションは大きく分けて、個人の内部から発生する「内発的動機づけ」と、外部との関係から発生する「外発的動機づけ」の2種類に分類できます。
内発的動機づけとは、本人の内なる要因から生まれる欲求で、具体的には以下のようなものがあげられます。
・ 仕事にやりがいを感じる
・仕事を通じての成長実感がある
内発的動機づけは個人の内部から発生するため、モチベーションが維持されやすいという特徴があります。
外発的動機づけとは、評価や報酬などの外的要因から生まれる欲求で、具体的には以下のようなものがあげられます。
・ 上司や同僚からより高い評価を受けたい
・収入や役職を上げたい
外発的動機づけの場合、評価や収入を得た時点で満足してしまい、長期的にモチベーションが維持できないケースも多くあります。
したがって、モチベーションマネジメントでは、意欲の向上に直結する「内発的動機づけ」を重視すべきです。
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では、なぜモチベーションマネジメントが必要とされているのでしょうか。
パーソル総合研究所の調査によると、2030年には644万人の人手が不足すると予想されています。
今後も人材不足が深刻化し、採用難が続くことが予想されるため、企業には従業員一人ひとりが最大限のパフォーマンスを発揮できるような環境を整えることが求められています。その解決策の一つとしてモチベーションマネジメントの必要性が高まっています。
【関連記事】なぜ今人手不足なのか?業界別の現状と企業が取るべき10の対策を解説
そもそもモチベーションはどのような理由で低下するのでしょうか。
学校法人産業能率大学総合研究所の「第7回マネジメント教育実態調査 報告書」によれば、ビジネスパーソンのモチベーションが弱まる(下がる)理由として、「業務が忙し過ぎて疲れるから」「将来の方向性が見えないから」といったものが挙げられています。
順位 | 理由 |
---|---|
1位 | 業務が忙し過ぎて疲れるから(63.1%) |
2位 | 将来の方向性が見えないから(50.0%) |
3位 | 頑張っても処遇に反映されないから(31.8%) |
4位 | 会社の業績が低迷しているから(23.8%) |
5位 | やりがいのある仕事を与えてもらえないから(22.4%) |
モチベーション低下の要因として挙げられている項目には、制度の見直しなどで改善できるものもありますが、従業員とのコミュニケーションを通じて改善すべき項目が多く含まれています。また、「業務の多忙さ」が最も大きな要因の人もいれば、「仕事に対してやりがいを感じない」ことが最も大きな要因となる人もおり、回答の平均値を表している調査結果だけから最適な施策を検討することは難しいでしょう。
そのため、モチベーションマネジメントでは、全従業員に向けて一括のアプローチをするのではなく、一人ひとりに目を向けることが重要です。コミュニケーションを通じてモチベーション向上を妨げている要因を明らかにし、個々に向けた施策を行いましょう。
モチベーションを向上させるための具体的な手順に関して、以下3つのステップに分けて解説します。
現状把握ではモチベーションサーベイなどを行うことが多いです。モチベーションサーベイは多くの企業が提供していますが、実施前に仮説の設定を行うことが重要です。
「自社のワーク・モチベーションは現状どういった状況か?」「ワーク・モチベーションの変動には何が影響していると考えられるか?」など自社固有の状況も加味しながら事前検討し、そこから見出された仮説が検証できる調査を選択する、もしくは新たに調査を設計するといった事が求められます。
また、調査においては、会社単位や部門単位など組織全体での課題を把握するとともに、どのように一人ひとり(もしくは対象群)に落とし込むのかが重要です。
その対応策検討のために、量的調査に加えて、インタビュー等の質的調査も同時に行うことがあります。対面のインタビュー等で本音を聴きだすことで、対象となる従業員(群)のワーク・モチベーションに対する解像度が高まり、より実態に即した解釈が可能となります。
最近では、質的調査を兼ねて1on1ミーティングを実施する企業も多く見られます。1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行う面談です。従業員の悩みや課題などを傾聴スキルによって引き出し、気づきや改善を支援することを目的としているため、個人のモチベーションに関する情報を引き出す機会としても活用できます。
【関連記事】1on1とは?目的や話す内容・面談との違い
STEP1でみえた現状を踏まえて、具体的な施策を検討し、実行します。このとき、「ハードアプローチ」と「ソフトアプローチ」の2つの側面をバランスよく取り入れることを考えましょう。
ハードアプローチとは、人事評価制度・就業規則・福利厚生・罰則規定など、目に見えるものに変更を加えることでワーク・モチベーションを改善する施策です。
▼ハードアプローチ例
一方ソフトアプローチとは、従業員の心理や意識、上司や同僚との関係性や職場の雰囲気など、目に見えないものを改善していく施策です。
▼ソフトアプローチ例
企業においては、分かりやすいハードアプローチ単体の施策にばかり目が向きがちですが、ハードのみの施策には限界があります。例えば、「有給制度はあるが、実際は使われていない」「産休制度を新設したが、気軽に使える雰囲気ではない」といったことはよく聞かれる話です。また人間の欲求には際限がない言うことも重要なポイントです。
制度や仕組みを変えることがゴールではないため、それらが実際に運用されるように社内の雰囲気や心理を変えるなど、ソフトアプローチと組み合わせた総合施策を考えましょう。
また、社員のモチベーションを向上させるためのプログラムが組まれたモチベーション研修を活用することも効果的です。新入社員・若手社員から、中堅・シニア層の社員まで、それぞれの世代にあったプログラムがあります。若手社員は自ら設定した目標の達成を通してモチベーションを向上させる考え方、管理職は部下のモチベーションマネジメントへの向き合い方について学びます。
【関連記事】モチベーション研修とは?目的やプログラム例、ポイントを解説
モチベーションマネジメントは実行して終わりではありません。
STEP1で行った調査を再度行い、そこから得られた結果(前回結果との比較を含む)をもとに効果検証を行うことで、得られた経験を次の活動へとつなげられます。
STEP2では目標とする状態へ変化することを期待して施策を講じているはずです。そう考えたときに、結果として想定通りだったのか、否かを環境要因なども加味して考察する必要があります。
変化の着眼点としては以下2点です。
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社員のモチベーションを高めるには、制度や評価だけでなく、現場での関わり方や対話の質が欠かせません。
パーソルグループでは、社員のモチベーションが高まらない理由をひも解きながら、現場での関わり方や対話の質に焦点を当て、モチベーションマネジメントの実践ポイントについてまとめた資料を公開しています。
チームの活力を引き出し、成長し続ける組織をつくりたい方はぜひご活用ください。
モチベーションマネジメントが効果的に作用すると、従業員の意欲・能力の向上に加え、良好な組織風土の醸成による企業の持続的な成長が期待できます。
一人ひとりの意欲を高めるためにも、まずは現状把握としてモチベーションサーベイやインタビュー、1on1を通じて個別に見きわめることから取り組みましょう。
株式会社パーソル総合研究所
組織力強化事業本部 組織力強化コンサルティング部 コンサルグループ
内田 智之
情報システムを扱う商社にて、新規市場の調査や開拓営業、特許出願などを経験したのち、コンサルティング業界へ転身。複数のコンサルティングファームに在籍し、組織診断やコンサルティング(組織風土変革、人事制度設計、教育体系策定、教育システムの導入など)、各種研修業務に従事しながら新サービスや変革技術の開発を行ってきた。専門は組織行動論(指導教官:城戸康彰 産業能率大学名誉教授)であり、その源流にあたる心理学の各種理論を取り入れた組織や個人の変革・成長支援を強みとしている。また、データ分析にも強く、多変量解析を駆使した現状分析なども手掛けている。
所属企業内に組織開発研究所(現在は閉鎖)を立ち上げ、主席研究員として運営にも携わってきた経験を持っており、上記業務・活動を推進する一方で、自らのビジネス領域に関係する調査・研究を行い、研究結果の現場活用にも取り組んでいる。
●ICMCI (国際公認経営コンサルティング協議会) コンサルタント
●公益社団法人全日本能率連盟 マスター・マネジメント・コンサルタント
●MBA & MSc
●公益社団法人日本心理学会 認定心理士
A1.モチベーションマネジメントとは、従業員の仕事に対するモチベーションを高めるための動機づけを行うマネジメント手法のことです。
>>モチベーションマネジメントとは
A2.モチベーション低下の理由として、業務過多やキャリアの不透明性、評価制度への不満といった要素がよく挙げられます。とはいえ従業員のモチベーションが弱まる要因は、一概に決められるものではありません。置かれている環境や思い描いているキャリア、価値観などに大きく依存します。
>>従業員のモチベーションが低下する理由
A3. 従業員のモチベーションを向上させるためには、以下のサイクルを回していきましょう。
STEP1.現状把握
STEP2.施策の検討・実施
STEP3.効果検証
>>従業員のモチベーションを向上させる3つの手順