労働生産性向上にむけて見直すべき4つのポイント
それでは、労働生産性向上にむけて、どのような部分を見直していくべきでしょうか。大きく4つのポイントについて、見直すべき理由と具体的な見直し方を説明します。
1.業務プロセス・業務フローを見直す
まずは、業務プロセス・業務フローを見直すことから始めましょう。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査によると、約6割の企業が業務の見直しによる、生産性向上や人手不足対応への効果を感じていることがわかります。
▼見直しに向けた取り組み例
・不要業務、重複業務の見直し
・業務の平準化、マニュアルの作成
・業務の見える化
・業務の再分化、業務分担の見直し
・アウトソーシングの活用 など
既存の業務を洗い出し、可視化することで、不要な業務や重複している業務が明確になり、労働生産性向上につながります。
既存の業務プロセス・フローの見直しは現場の負担も高く、コンフリクトが発生する可能性があります。「何を、なぜ是正していくのか」を周知することを心がけましょう。
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2.労働時間を見直す
長時間労働が課題となっている場合は、労働時間を見直しましょう。パーソル総合研究所の調査によると、残業時間が増えると健康への影響が顕著にあらわれることがわかりました。
従業員のパフォーマンスが下がった状態では生産性が低下し、さらに残業が増えるという悪循環に陥ってしまいます。
また、テレワーク環境下では、隠れ残業が増える傾向がみられています。日本労働組合総連合会の調査によると、約4割の人がテレワークで時間外・休日労働を行うことがあったと回答しています。
▼見直しに向けた取り組み例
・ノー残業デーの設定
・労働時間を適正に管理するツールや仕組みの導入
・柔軟なはたらき方の推進 など
労働時間を見直し長時間労働を是正することができれば、従業員のモチベーション向上やストレス軽減に繋がり、生産性向上が期待できます。
また、社内で労働時間の是正方針を周知することで、「なぜ残業が発生してしまっているのか」「就業時間内で終わらせるのにはどうしたらよいか」といった議論を活発化させるきっかけにもなるでしょう。
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3.ITツール・システムを見直す
多くの企業が業務のさまざまな場面でITツールやシステムを活用していることでしょう。システム導入から時間が経っている、システム化していない業務がある場合は、ここから見直しを進めましょう。
「2020年版ものづくり白書」によると、自社の労働生産性が3年前と比較して「向上した」と回答した企業、人材の定着状況が「よい」と回答した企業は、デジタル技術を活用している企業が多いことがわかりました。
▼見直しに向けた取り組み例
・ITツールの導入・見直し
・電子署名の導入
・ペーパーレス化 など
システムの導入やリプレイスを検討すべきなのは、システムを導入しているのに手作業が発生している業務や、付加価値を生み出さない業務です。こうした業務にデジタル技術を活用することで、本来注力したい開発や企画、営業といったコア業務へ専念できる時間が創出できます。そうすれば、必然的に生産性も向上するでしょう。
4.育成・評価制度を見直す
生産性向上には育成・評価制度の見直しも欠かせません。育成や評価は、従業員のモチベーションに影響するためです。
パーソルホールディングスの調査によると、自社の人材育成の環境・制度に満足していない人は全体の約3割に上ることがわかっています。
また、株式会社識学の調査では、評価に対して不満を感じている人のうち、一番多くの理由として「評価の基準が不明確」と挙げられています。
▼育成・評価手法の例
育成)リカレント教育、OJT、eラーニング など
評価)OKR、360度評価 など
透明性が高く、納得のいく人事評価制度を策定することで、従業員一人ひとりのスキルとモチベーションが向上し、生産性向上につながります。
また、人事評価は、人が人に対して行うため、ともすれば個人の感情や主観が入ってしまいがちです。評価のブレを防ぐために、制度の設計と併せて、評価者の育成も行いましょう。
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