業務改善とは?
業務改善とは「原則として現状のプロセスを維持したまま、物事をより良くするための創意工夫を行うこと」です。
既にある工程や作業を、時代や社会状況の変化に合わせて改善し、より良い状態に持っていくことを指します。具体的には、業務の中で発生する「ムリ・ムダ・ムラ」を洗い出し、非効率な業務を改善することで、企業全体の生産性向上を目指します。
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業務改善をご検討中の方はぜひご活用ください。
業務改善における「QCD」とは
業務改善に役立つ考え方として「QCD」があげられます。QCDとは以下3つの要素の頭文字を合わせた言葉です。
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- Quality:品質
- Cost:コスト
- Delivery:納期
3つの要素はトレードオフ関係にあるため、1つを向上させることで、別の要素に影響がでることが少なくありません。「品質の向上」「コストの維持・削減」「納期の厳守・短縮」という3つの要素のバランスを保つことで、最適な業務プロセスが構築されます。
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業務改善はなぜ必要なのか
業務改善は企業全体で取り組む施策です。業務改善が必要な理由として「生産年齢人口の減少」「はたらき方の多様化」など、外部環境の変化があげられます。
生産年齢人口の減少
経済産業省によると、2050年には日本の人口は1億人を下回り、さらに生産年齢人口の比率はピーク時の約50%にまで落ち込むと予測されています。
労働力の減少は特定の業界に限ったことではなく、多くの企業が抱える課題です。人員採用の難しい状況のなか、企業は少ない人員で成果を上げる仕組みを構築することが求められています。
業務改善では非効率な業務を排除し、業務フローを最適化することで、企業の生産性向上を目指します。
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日本の市場において人材不足は深刻な課題です。2030年には約600万人以上の人材が不足すると予測される中、企業が今から取り組むべき施策を具体的に解説します。
はたらき方の多様化
コロナ禍を機にテレワークをはじめとした新しいはたらき方が普及したことで、「これまで行っていた業務は本当に必要なのか」「今までの仕事のやり方がベストなのか」と考えるきっかけが生まれました。
パーソル総合研究所の調査によると、テレワーク実施者のテレワーク継続意向は8割を超えていることがわかっています。
テレワーク実施者のテレワーク継続希望意向推移
こうした流れを受け、テレワーク対応を含むはたらく個人の変化への対応やリスクマネジメントの強化という観点から、業務改善への必要性が高まっています。コロナ禍以降の新たな動きといえるでしょう。
長時間労働の是正
長く日本企業の課題となっている長時間労働ですが、慢性化すると従業員の心身に不調を引き起こし、欠勤・休職の増加や離職率の向上、生産性の低下につながります。
長時間労働の原因として「業務量の多さ」がよく挙げられますが、原因を細かく見ていくと、不要不急な業務が累積している場合が多くあります。
業務改善は既存の業務を見直し、無駄な業務を削減したり自動化したりすることで、従業員の業務負担を減らす取り組みです。長時間労働の是正につながるため、業務改善のニーズも高まっています。
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業務改善の効果やメリット
業務改善に取り組むことで、次のような効果やメリットが期待できます。
1.コスト削減
業務改善は、人件費やオフィスコスト、エネルギーコストなどを削減する効果があります。
業務改善により、残業が削減されることで、人件費や高熱費が抑制できたり、ペーパーレス化が進むことで、紙代やインク代の削減につながったりするでしょう。
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2.生産性の向上
業務改善により、業務の見直しやシステム化が進むことで、業務が効率化し、生産性が向上します。生産性が向上することで、限られた人員で大きな成果をあげられるようになり、企業にとっても大きなメリットといえます。
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3.従業員のスキル向上
業務改善で生まれた人員的・時間的な余裕は、新規事業の開拓のようなクリエイティブな仕事、戦力アップのための人材育成などへ投入できます。
従業員のスキルが向上したり、モチベーション高くはたらけるようになったりすることで、組織全体の成長が見込めます。
業務改善の進め方|基本の5つのステップ
業務改善は、以下の図のような5つのステップが基本となります。各ステップの具体的な作業内容を、実施時のポイントとあわせて解説します。
業務改善の流れ
ステップ1.関係各所からのヒアリング、業務の可視化
まず、改善しようとしている業務を徹底的に可視化しましょう。以下のような項目について、業務の洗い出しを行います。
・どのような業務があるか
・誰が担当しているのか
・業務に対し、どれくらいの人員が必要か
・所要時間、工数はどれくらいか など
業務を洗い出す際、業務に関わる従業員から業務内容に関するヒアリングを行いましょう。ここで得られた情報は、その後の全てのステップに大きな影響を及ぼします。誰が何の作業を行っているのか、業務はどのようなフローで進んでいるのかなど、細かく、徹底的に聞き出すことが重要です。
ヒアリングを成功させるポイントは次の2点です。
・先入観を排除する
問題の裏側にある根本的な問題を見つけるには、「こうだろう」という先入観を排除することが重要になります。ヒアリング相手への敬意と共感は保ちつつ、第三者的な視点を忘れずに、冷静に話を聞きましょう。
・公平な立場の人物を聞き手にする
さらに、「誰がヒアリングを行うか」というのも重要なポイントです。自分の上司や経営層に不満を伝えるというのは、従業員にとってハードルが高いものです。ヒアリング対象者やその現場との利害関係がない人物を選ぶなど、人選にも配慮しましょう。業務改善チームを組み、中立の立場を保てる立場の人々を主体に業務改善を行うのもおすすめです。
ステップ2.課題整理、方針策定
ステップ1の結果をベースに、課題を整理します。目に見えている課題だけでなく、それを引き起こしている「根本的な課題」を見つけ、対処を考えましょう。
改善・解決案を考える際には「改善の8原則」を基に検討します。次の1~8を順に問いかけながら改善・解決案を考えていきます。
改善の8原則
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- 廃止「やめてしまうことができないか」
- 削減「回数や量、頻度を減らせないか」
- 容易化「もっと作業がしやすいよう、簡単にできないか」
- 標準化「ルール化して、統一できないか」
- 計画化「もっと、計画的に短い時間でできないか」
- 分業分担「仕事の負荷や、スキル・経験は適正か」
- 同期化「もっと平準化し、まとめてできないか」
- 機械化「デジタル化・自動化できないか」
まずはその作業をやめてしまうことはできないか(1.廃止)、やめられないのであれば減らせないか(2.削減)、もっと簡単にできないか(3.容易化)というように、1から順に検討を進めていくことがポイントです。
ステップ3.実行計画の策定
ステップ2で決めた方針に基づき、実行計画を作ります。具体的にはタスクの洗い出し、実行スケジュール、実行するための体制構築などを行います。
実施時のポイント
実行時の動きを徹底的にリアルにイメージしながら、実施に際してやるべきことを全て洗い出しましょう。
例えば、体制決めであれば、人材をどこからアサインするか、アサインするためには事前にどのような準備が必要で、誰にどのような情報を伝えておくべきか、誰に許可を取るのかといったことまで細かく決めておきましょう。
そして、現実的に実行可能かも検証することも重要です。入念に想定を行うことが、実行時になってからの計画の頓挫や不備の発生を防ぐことにつながります。
ステップ4.計画実行
ステップ3で立てた計画に沿って、システム活用、工程の自動化、外部委託などを実行します。PDCAを回すことを前提に、現場に無理が出ないように進めましょう。
ステップ5.振り返り
計画実行の結果を振り返り、PDCAサイクルを回していきます。業務改善の振り返りは必ず行いましょう。そして、必要があればステップ2や3に戻り、改善を繰り返します。
改善活動は、「一度で完璧にする」と思わず、長期的目線を持って行うことが大切です。繰り返しの中で少しずつ理想の形に近づけていくことを意識し ましょう。
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業務改善では、現状を日常の実態レベルで書き出すことが重要です。本資料にて業務改善のコンサルタントが、業務を書き出す手順を詳しく解説します。
業務改善を進める上での注意点3つ
業務改善活動の全体を通して、留意したいことがあります。以下の3つを心がけましょう。
1.業務改善の意図を徹底的に伝える
業務改善を行う際には、従業員一人ひとりのマインドセットをしっかり整える必要があります。
当事者意識が生まれないと、ヒアリングをしても問題についての核心的情報がなかなか出てきません。また、「やらされ感」を抱き、改善活動に非協力的な態度をとることもあります。
従業員に業務改善を自分事と思ってもらい、関わる人々の目標を統一する努力を継続しましょう。トップが業務改善の意義や、実行への強い意志を示すのはもちろん、業務改善を社内プロジェクトとし、社内コミュニケーションを強化することも有効です。