生産性を上げる「業務改善」とは?実施時のポイントを解説

業務改革(BPR) 経営者・役員

「業務改善」は、企業活動継続の上で重要なキーワードです。さらに、コロナ禍でテレワークへの対応など社会環境の変化で、あらためてその必要性に迫られる企業も増えています。本記事では、実践的な業務改善活動の進め方やポイントを、成功例も交えて解説します。

目次

業務改善とは?取り組むべき理由は?

最初に、業務改善とはどのような取り組みかを振り返っておきましょう。 混同されがちな言葉に「業務改革」がありますが、業務改善と業務改革は考え方が異なります。両者の違いを理解すると、業務改善の方向性も定めやすくなります。

業務改善とは?業務改革と比較しながら解説!

業務改善とは「原則として現状のプロセスを維持したまま、物事をより良くするための創意工夫を行うこと」です。既にある工程や作業を、時代や社会状況の変化に合わせて改良(リファイン)し、より良い状態に持っていくことを指します。業務改善は、アプリの更新のように、1から2へバージョンを上げるというイメージです。

対して、業務改革は「今あるプロセスの一部または全部を破壊して、まったく新しくプロセスを作ること」を指します。すなわち、業務改革とは抜本的な改革であり、0から1をつくる作業です。

企業活動を見直す際のポイントに、QCD(「Quality:品質」「Cost:コスト」「Delivery:納期」)という視点があります。業務改善も業務改革も、この3つの視点が基本にあることは共通しますが、業務改革はより大きな変化を伴うものであり、関わる従業員への影響も大きくなるということがいえるでしょう。

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今、業務改善が注目されている理由とは?

業務改善は、多くの企業が一度は取り組んだことのある活動ではないでしょうか。取り組みのきっかけでよくあるものは、「人が辞めたタイミングで業務の属人化が明らかになった」というものです。また、「なんとなくやり続けている仕事」が増え、それが従業員への過大な負荷やコストとなってきた状況を変えるために行うというケースも多く見られます。

近年ではさらに、社会的な環境変化への対応という目的も増えています。経済産業省は、2050年には日本の人口は1億人を下回り、さらに生産年齢人口の比率はピーク時の約50%にまで落ち込むと予測しています。労働力の減少は特定の業界に限ったことではなく、人員が少なくても業務がスムーズに進む仕組みの構築が多くの企業にとって喫緊の課題となっています。打開策として、システムの利用や業務の自動化が進められ、それに伴い業務改善に取り組むケースが増えています。

【出典】経済産業省2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について」

そして、コロナ禍でさらなる変化が生まれています。テレワークをはじめとした新しいはたらき方の普及で、人々が「これまでしていた作業は本当に必要なのか」「今までの仕事のやり方がベストなのか」と、考えるきっかけが生まれています。

実際にテレワークを行うと、平時でもテレワークを続けたいと考える人が増えています。パーソル総合研究所の調査では、テレワークを経験した人のうち5割超の人が、今後もテレワークを継続したいと答えています。

新型コロナ収束後のテレワーク継続意向

こうした流れを受け、テレワーク対応を含むはたらく個人の変化への対応やリスクマネジメントの強化という観点から、業務改善へのニーズが高まっています。コロナ禍以降の新たな動きといえるでしょう。

業務改善の効果

業務改善の効果について解説します。

(1)コスト削減、時間の確保

業務改善により業務内容が可視化されたり、システム導入が行われたりすることで、業務効率はアップします。これは、残業による人件費や光熱費などの経費削減につながり、経営にプラスの効果を生みます。

(2)従業員のスキル向上やキャリア形成による組織内でのシナジー創出、採用力強化

業務改善で生まれた人員的・時間的な余裕は、新規事業の開拓のようなクリエイティブな仕事、戦力アップのための人材育成などへ投入できます。これにより、組織全体の成長が見込めます。

いわゆるZ世代と呼ばれる若手層は、個人の能力開発や成長に関心が高いという傾向があります。業務改善活動は、長期的には採用力の強化につながるとも考えられるでしょう。

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業務改善は5つのステップで進めよう

業務改善は、以下の図のような5つのステップが基本となります。各ステップの具体的な作業内容を、実施時のポイントとあわせて解説します。

業務改善の流れ

ステップ1 関係各所からのヒアリング、業務の可視化

まず、改善しようとしている業務を徹底的に可視化しましょう。そのために、業務に関わる従業員から、現状についてのヒアリングを行います。ここで得られた情報は、その後の全てのステップに大きな影響を及ぼします。誰が何の作業を行っているのか、業務はどのようなフローで進んでいるのかなど、細かく、徹底的に聞き出すことが重要です。

実施時のポイント

このステップが最も重要、かつ難しいステップです。

問題の裏側にある根本的な問題を見つけるには、「こうだろう」という先入観を排除することが重要になります。しかし、社内の人間同士でヒアリングを行う場合は、業務内容が推測できることから、自分の思い込みに気づけなかったり、掘り下げた質問がはばかられ、表層的な聞き取りになったりしてしまいがちです。ヒアリング相手への敬意と共感は保ちつつ、第三者的な視点を忘れずに、冷静に話を聞きましょう。

さらに、「誰がヒアリングを行うか」というのも重要なポイントです。自分の上司や経営層に不満を伝えるというのは、従業員にとってハードルが高いもの。ヒアリング対象者やその現場との利害関係がない人物を選ぶなど、人選にも配慮しましょう。業務改善チームを組み、中立の立場を保てる立場の人々を主体に業務改善を行うのもおすすめです。

ステップ2 課題整理、方針策定

ステップ1の結果をベースに、課題を整理します。目に見えている課題だけでなく、それを引き起こしている「根本的な課題」を見つけ、対処を考えます。そして、解決のためにどう業務改善を進めるのか、方針を決めます。

ステップ3 実行計画の策定

ステップ2で決めた方針に基づき、実行計画を作ります。具体的にはタスクの洗い出し、実行スケジュール、実行するための体制構築などを行います。

実施時のポイント

実行時の動きを徹底的にリアルにイメージしながら、実施に際してやるべきことを全て洗い出しましょう。

例えば、体制決めであれば、人材をどこからアサインするか、アサインするためには事前にどのような準備が必要で、誰にどのような情報を伝えておくべきか、誰に許可を取るのかといったことまで細かく決めておきましょう。

そして、現実的に実行可能かも検証しましょう。入念に想定を行うことが、実行時になってからの計画の頓挫や不備の発生を防ぐことにつながります。

ステップ4 計画実行

ステップ3で立てた計画に沿って、システム活用、工程の自動化、外部委託などを実行します。PDCAを回すことを前提に、現場に無理が出ないように進めましょう。

ステップ5 振り返り

計画実行の結果を振り返り、PDCAサイクルを回していきます。

実施時のポイント

振り返りは必ず行いましょう。そして、必要があればステップ23に戻り、改善を繰り返します。改善活動は、「一度で完璧にする」と思わず、長期的目線を持って行うことが大切です。繰り返しの中で少しずつ理想の形に近づけていくことを意識しましょう。

これら全てのステップを社内の人間だけで行うこともできますが、自分に不利益が出るのを恐れて本当のことを話さない従業員がいたり、業務改善活動の担当者の技量的な問題で進まなかったりと、社内だけで改善活動を完結させるのは難しいことも少なくありません。

その場合、コンサルタントなどの力を借りるのも手です。例えば、ステップ1のヒアリングのみを依頼するなど、一部だけでもプロの力を借りると、業務改善を効率的に進める助けになります。

業務改善の活動には、簡単にできるものからコストがかかるものまで、さまざまなものがあります。条件によっては、こうした費用を軽減する「業務改善助成金」の活用が可能な場合もあります。20218月の改訂で一部の要件も緩和されるので、コスト面で業務改善に二の足を踏んでいる場合は確認してみてください。

【参考】厚生労働省「令和3年8月から『業務改善助成金』が使いやすくなります」

業務改善を進める上での注意点3

業務改善活動の全体を通して、留意したいことがあります。以下の3つを心がけましょう。

1.業務改善の意図を徹底的に伝え、従業員に当事者意識をもってもらう

業務改善を行う際には、従業員一人ひとりのマインドセットをしっかり整える必要があります。当事者意識が生まれないと、ヒアリングをしても問題についての核心的情報がなかなか出てきません。また、「やらされ感」を抱き、改善活動に非協力的な態度をとることもあります。

従業員に業務改善を自分事と思ってもらい、関わる人々の目標を統一する努力を継続しましょう。トップが業務改善の意義や、実行への強い意志を示すのはもちろん、業務改善を社内プロジェクトとし、社内コミュニケーションを強化することも有効です。

2.「合理的」に進めない

業務の合理化、効率化を目指して行う業務改善ですが、改善活動そのものを合理的に進めようとすると、反発が起こりがちです。

現場では「問題の合理的な解決策は分かっているが実行できていない」ということも少なくないでしょう。その場合、必ず実行をはばむ何らかの理由があります。はたらいている一人ひとりに寄り添い、心を通わせることで、理由を洗い出していきましょう。

3.業務改善についてポジティブに考えてもらう

経営層から見れば良いことずくめに見える業務改善でも、現場ではたらく人からは、ネガティブな思いによって「できない」「無理だ」と決めつける否定的な声が出ることも少なくありません。

業務のプロセスが変わるにあたって「仕事を取られて自分の存在価値がなくなってしまうのでは」という懸念や、「面倒なことが増えて忙しくなるのでは」という変化への怖れがあるのは、自然なことです。以前に改善しようとしてうまくいかなかった、という過去の記憶や、それにより大変な思いをしたというトラウマが本人たちの中に根強く残っていることもあるでしょう。

いずれも、頭ごなしに否定するのではなく、裏にある心理を知り、その不安を取り除いていくことで、納得まで持っていくことが大切です。それでも抵抗感や不安が非常に強い場合は、いきなりプロセスを大きく変えることは見送り、小さなことから変更していくなど、状況に合わせ、できるところから少しずつ進めましょう。

「やることは少し変わったけれど自分の存在価値は失われなかった」「作業が楽になった」といった安心感、成功体験を持ってもらうことが、その後の業務改善をポジティブにとらえてもらうために、大切な一歩となります。

業務改善の取り組み事例

業務改善に取り組んだ事例を紹介します。

事例1 AI-OCR×RPAの導入による業務改善

業種:電子部品メーカー
従業員数:5,000名以上

ある電子部品メーカーでは、間接業務の削減を実現すべく、業務量の削減や属人化している業務の改善を課題として抱えており、業務改善を実施しました。

取り組み内容として、業務改善部門とのディスカッションを行いつつ、各部署が自律的に業務改善を行うための方法論を整理・検討、そして検討した方法論を用いて、輸入部門にて検証を実施。

結果、輸入部門で29件にわたる課題を抽出することができました。抽出された課題を解決すべく、手書きの書類、帳簿の読み取りを行ってデータ化するAI-OCRや業務プロセスを自動化するRPAを導入することで、業務量削減につなげることもできました。業務の削減効果は約75~80%と推定され、現場を主体にした業務改善の促進、継続につながっています。

事例2 既存システムの活用による発注プロセス自動化

業種:アパレルメーカー
従業員数:1,000~5,000名

あるアパレルメーカーでは、事業展開する5カ国から届く発注書を担当者1人で処理していました。週300枚の発注書を全て紙に印刷して各部署の管理職に回し、署名を行って処理するというフローでした。

この発注書のペーパーレス化と処理の自動化に、ボトムアップで取り組みました。ワンクリックで管理職が署名できる仕組みを、既存のシステムに組み込む形で導入。社内および事業展開する国でのチェックが不要となり、業務負荷が大幅に軽減、業務効率は大幅に改善しました。

この取り組みによって、新型コロナウイルス感染拡大時、テレワークへの業務移行をスムーズにする助けにもなり、リスク管理の面でもプラスの効果をもたらしました。

自社に合った方法で生産性向上を目指そう

業務改善にマニュアルはありません。自社の抱えた課題に対しての最適なアプローチは、業務の自動化、廃止、削減、標準化、外部委託など、社内外の状況にあわせてまったく異なります。

最初から方法を決めて改善活動を行うのではなく、業務にかかわる従業員一人ひとりと向き合いながら、無理のない範囲から着手していくとよいでしょう。

インタビュー・監修

パーソルプロセス&テクノロジー株式会社 ワークスイッチ事業部シニアコンサルタント

鴨下 茜

ブライダル事業の営業企画・大手小売製造業の需給企画・業務推進経験後、2019年に入社。 主にSalesforceを利用した海外規模のサプライチェーン領域の業務改善や発注プロセスの自動化、ペーパーレス・サインレスのしくみ化の経験を生かし、現在ではAI-OCR×RPAの導入検討支援、サブスクビジネスのプロセス検討支援に従事。

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