人材育成とは?基本の考え方や育成方法・具体例を解説

人材育成とは、企業が業績を上げ経営目標を達成できるように、人材を育成することです。人材不足に悩む企業が多い現在にあっては、経営目標を達成するために、人材育成によって従業員一人ひとりのパフォーマンスを高めることが強く望まれます。 

本記事では、人材育成の具体的な方法や考え方、計画法を解説します。

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現代のビジネス環境において、企業が成長するためには人材の育成が求められています。

・成果が出る人材育成の打ち手を知りたい
・慢性的な中核人材不足を解消したい

そのような方に向けて、経営層・人事を対象に調査を行った人材育成の実態調査レポートを公開しています。
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目次

人材育成とは

人材育成とは、企業が業績を上げて経営目標を達成するために、従業員に必要なスキルの習得を促すことです。

似た言葉として人材開発がありますが、従業員個人の目標ではなく、企業の目標を達成することがゴールである点で違いがあります。

人材育成は職種や役職・入社年数などで対象者を分け、研修などを通して一律のスキル習得を目指します。

関連記事:人材開発とは|一人ひとりのキャリアを実現し企業成長を図る

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なぜ企業にとって、人材育成が重要なのか

人材育成の重要度が高まっている背景には、以下2つがあげられます。

      • テクノロジーの進化による市場の均質化
      • 人材不足

テクノロジーの進化により自動化が進んだことで、技術力や価格だけで他社と差別化することが難しくなっています。そこで、企業の競争力を左右する要素として注目されているのが「人材」です。

また、日本銀行の「雇用人員判断D.I.(四半期)」によると、現在全業種において人材不足に陥っていることがわかります。 

企業が感じる人材不足


【出典】日本銀行「雇用人員判断D.I.(四半期)」

コロナ禍で人手不足は一時的に緩和したように見えていましたが、経済の回復とともに右肩上がりの傾向が続いています。

今後も人材不足が続き、人材獲得競争が激化することが予想される中、今いる人材一人ひとりのスキル向上を促し、生産性を向上させることが企業課題になっています。

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日本の市場において人材不足は深刻な課題です。2030年には約600万人以上の人材が不足すると予測される中、企業が今から取り組むべき備えを解説します。

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人材育成の3つの手法 

人材育成は、一般的に以下の3つの手法を組み合わせることによっておこなわれます。 

    1. OJT(On-the-Job Training)
    2. Off-JT(Off-the-Job Training)
    3. 自己啓発(SD、Self Devlopment)

1.OJT(On-the-Job Training) 

OJTとは、職場の上司や先輩社員がトレーナーとして指導を行う人材育成の手法です。職場での実務を通じて業務のスキルやノウハウを身に着けるため、接客や営業、技術的な作業の指導に効果的です。また、上司・先輩と部下・後輩が研修を通じて直接コミュニケーションを取ることができる点もメリットです。

ただし、上司や先輩の指導スキルによって効果に幅が出るため、指導担当者のフォローアップが必要です。

2.Off-JT(Off-the-Job Training) 

Off-JTは日常の業務から一時的に離れて行う教育訓練のことです。指導者のスキルによるばらつきがなく、体系的に知識やノウハウを習得できる点がメリットです。また、eラーニングなどオンラインで実施しやすい点も特徴です。

3.自己啓発(SD、Self Development) 

自己啓発は社員自らスキルの習得・向上を図る手法です。社員本人の自発的な取り組みを指します。

パーソル総合研究所が実施した「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)」によると、社会人の約半数は勤務先以外での自己研鑽を行っていないことがわかっています。

社外の学習・自己啓発の活動状況


【出典】株式会社パーソル総合研究所「グローバル就業実態・成長意識調査(2022年)

業務の一環として行う学習ではなく、社員の自己啓発を促すために、費用の補助や制度の拡充を実施する企業もあります。

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社員一人ひとりが自発的に知識・スキルの習得に取り組む「アンラーニング」への注目が高まっています。本資料では、組織内でアンラーニングを促進するための3つの原則と、アンラーニングを阻害する要因について解説します。

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企業が抱える人材育成についての現状と課題

パーソルホールディングスの調査によると、今後2~3年で注力したいテーマは、「次世代リーダーの育成」「新人・若手社員の育成/活用」といった人材育成に関わるものが上位を占めていました。 

次世代リーダー育成、新人・若手社員の育成や活用が求められている

【出典】パーソルホールディングス株式会社「コロナ以降の人事戦略 最新動向レポート」

しかし、実際に人材育成を進めるうえでは、多くの企業が課題を抱えています。

労働政策研究・研修機構の「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」によると、

    • 指導する人材が不足している
    • 人材育成を行う時間がない

といった課題を挙げる企業が多いことがわかります。さらに「人材を育成しても辞めてしまう」「人材育成の方法がわからない」といった課題も見られ、リソース面とノウハウ面の双方に課題を感じている企業の姿が見えてきます。 

【出典】労働政策研究・研修機構「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」を参考に作成

個人の育成能力に依存する指導方法では、指導ができる人材が限られる上、属人化してしまいます。誰が指導者になっても一定の効果を上げられるようにするには、計画的で体系化されたカリキュラムが必要です。 

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人材育成の考え方|計画をどう立てるべきか

自社にフィットした人材育成の在り方について考える際は、

    1. 経営目標を明らかにし目標達成に向けて必要な業務・スキルなどを洗い出す
    2. 人材配置の現状を分析し、目標とのギャップを見つける 

このようなステップを踏んで、育成対象となる従業員と必要な要素を明確にします。育成対象が新入社員なのか、次世代リーダー人材なのか、それともマネジメントなのかといった観点により、それぞれ必要となる要件は異なるためです。

本章では「新入社員〜若手」「中堅社員」という2つの階層を育成対象とするケースを例に、人材育成の考え方や計画の立て方を解説します。

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新入社員〜若手社員の育成

新入社員に対し人材育成を行うタイミングは、大きく分けて以下の3つがあります。 それぞれのタイミングで目的に沿って、人材育成の手法を選択しましょう。

タイミング 研修の目的
入社直後 社会人として持つべきマインドセットや知識・技術など、最低限必要なマナー・スキルを身に付ける。
本配属後 職種ごとに専門的なスキルを獲得する。
2・3か月後~半年後
(フォローアップ)
個人の育成効果に応じて、遅れが見られる能力を引き上げる。

また、若手社員の特徴を理解することも重要です。1981~1996年生まれのミレニアル世代・1997~2012年生まれのZ世代は以下のような特徴を持っています。

新卒~若手世代の特徴

● ミレニアル世代(1981~1996年生まれ)
 →デジタルネイティブ、終身雇用に執着しない、自らのキャリアアップに積極的

● Z世代(1997~2012年生まれ)
 →ネットネイティブ、仕事に対して堅実な一面もある

● 両世代が持つ価値観
 →人種・ジェンダーの違いといったダイバーシティ(多様性)に寛容

これらの特徴を理解した上で、1on1ミーティング(上司と部下が1対1で話し合うこと)など定期的にコミュニケーション機会を設けてサポートしていきましょう。

1on1の頻度としては、週に1回もしくは数週間に1回程度のペースで、30〜60分程度行われることが理想的です。日常の話題も含め自由に話せる空気を醸成することで、心理的安全性の高いチームづくりが可能になります。心理的安全性が確保されていることで大胆な提案が可能になり、チームや会社の業績アップにつながる可能性もあります。

関連記事「1on1とは?3つのメリットと効果的に運用するポイントを解説」を見る

中堅社員の育成

仕事を通して着実に実力がついてきた中堅層の社員には、次なるステップとして、指示される立場ではなく、指示する機会を増やすことがポイントです。若手中堅の年代から主体的な意志に基づき他者をリードする経験を少しずつ重ねることで、企業の成長にも大きく繋がります。

計画的な人材育成を行うためには「スキルマップの活用」と「異動配置の検討」も有効です。

スキルマップの活用

スキルマップとは、各々の持つスキルのレベルを一覧にまとめたものです。各スキルで到達すべき基準を数段階に分け、現在どのレベルにあるかを表示することで、各人や所属するチームなどのスキルレベルが可視化されます。

スキルマップの例

【参考】経済産業省・中小企業庁・厚生労働省による例示を適宜編集

スキルマップを作成し、どのレベルを目指すのかを考えるときにも、1on1のような本人への丁寧な聞き取りと相談を行うのが望ましいでしょう。

このとき、具体的な行動目標も設定しておくのが効果的です。目標とするスキル獲得のため、「いつまでに」「何を行うか」についても、1on1で話し合って設定します。

関連記事「MBO(目標管理制度)とは?概要、メリット、注意点を解説」を見る

異動配置の検討

より効率的な人材育成を行うためには、戦略的な異動配置も重要です。

パーソル総合研究所の調査では、異動を経験したことのない一般社員が、年数を経るごとに成長志向、学習意欲、キャリア自律への関心が低下している傾向がわかりました。

【出典】株式会社パーソル総合研究所「非管理職層の異動配置に関する実態調査

従業員の今後のキャリア形成を考慮して、成長につながる適切なポジションへと配置を行うことも、人材育成の大きな要素です。

関連記事「【監修有】人員配置とは|最適化する手順やポイントを解説」を見る

人材育成に重要な人事評価制度

人材育成においては、透明性の高い人事評価制度を設けることが非常に重要です。

事前に「何を評価するのか」を明示することで、評価制度を具体的な目標設定に結びつけ、モチベーションの向上を図ることができます。

何を評価されているのかわからない状態だと「頑張っても評価されない」という思考に陥ってしまう可能性があるため、育成計画には必ずセットで評価基準を設けましょう。

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人事評価は社員の成長に必要不可欠ですが、自社の制度に不満を持つ社員は少なくありません。本資料では評価制度を見直すべきか悩んでいる方向けに、チェックリストや改善のコツをまとめています。

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人材育成の成功事例

事例1.株式会社琉球光和|1年以内の事業計画を社員が作成

株式会社琉球光和では、変化の激しい医療業界において、社員間のコミュニケーション、先を読み変化を楽しむことができるような、社員一人ひとりの「想創力」を重要視しており、部門毎にも社員自らミッション・ビジョンを策定し、全社で共有している点が特徴です。具体的には以下の取り組みを行っています。

社員一人ひとりが経営者としての仕事を体験

社員に経営者感覚を身につけ、自覚してもらうために、1年以内の事業計画は全て社員が作成しています。また、給与・賞与などの査定基準を決める「評価委員会」は入社2年目以上の社員で構成され、半年かけて評価基準を策定します。

人事部のない採用活動

採用活動は、各部門から集った若手社員がゼロから企画、実施してします。マーケティング・広報も自ら担い、300名以上の学生を集めた実績もあるそうです。会社ビジョンやはたらく意義を再考する取り組みになっています。

【参照】厚生労働省「人材育成事例一覧」

事例2.富士ネットシステムズ株式会社|社員の技術・技能を把握するためにスキルマップを導入

富士ネットシステムズ株式会社では、社員の技術・技能を把握する機会やツールがなく、技術・技能向上に向けた効果的な取り組みを立て難いという課題を抱えていました。特に、新入社員は目の前にある業務に集中するあまり、ステップアップに向けた取り組みができていませんでした。そこで次の取り組みを行いました。

職業能力評価シート(スキルマップ)を導入

職業能力評価シートを作成し、入社2年目の社員にチェックしてもらうことで現在の業務経験と技術・技能の棚卸を行いました。その結果、当人は技術・技能習得における自身の正しい現在地を把握することができるようになりました。

また、評価シートを見ながら上長と話し合いをすることで自分に不足するポイントや解決すべき課題を明確化・共有し、結果的に必要な技能習得のために何を学べばよいかが分かるようになりました 。 

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まとめ|経営目標達成に向けた育成計画を遂行しよう

人材育成の最終的な目的は経営目標の達成です。効果的な人材育成を行うためには、育成計画を立案・遂行するとともに、さまざまな育成手法や各世代の特徴を知ることが大切です。

人材育成によって、今いる人材一人ひとりのスキル向上を促し、生産性を向上させることで、企業の競争力強化につなげましょう。

よくあるご質問

Q.人材育成はどのように行う?

A.人材育成の手法は、大別して以下の3種類があげられます。

1.OJT…職場での実務を通じて業務のスキルやノウハウを身に着ける手法。
2.Off-JT…日常の業務から一時的に離れて行う手法。
3.自己啓発…社員自らスキルの習得・向上を図る手法
>>人材育成の手法3選

人材育成における階層ごとの課題と研修テーマについてガイドブックにまとめました。ガイドブックは、以下リンクよりどなたでも無料でダウンロードいただけます。
>>『人が育つ組織』になるためにいま必要な打ち手とは?-人事課題と人材育成のトレンド

Q.人材育成とは?

A.人材育成とは、企業が経営目標を達成するために社員を育成することです。競争力の源泉として「人材」の重要度が高まっており、人材育成も企業戦略のうちに大きく位置付けられる課題となっています。

>>なぜ企業にとって、人材育成が重要なのか

Q.新入社員~若手社員の人材育成で大切なことは?

A.人材育成を進める際は、次のポイントを意識しましょう。

〈新入社員~若手社員の場合〉
・新卒~若手世代の特徴を理解する
・細やかな教育・コミュニケーション機会の創出

〈中堅層社員の場合〉
・他者をリードする経験の創出

〈階層を問わず重要なこと〉
・透明性の高い人事評価制度を設けること

>>人材育成の考え方|計画をどう立てるべきか

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