人材育成の考え方|計画をどう立てるべきか
自社にフィットした人材育成の在り方について考える際は、
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- 経営目標を明らかにし目標達成に向けて必要な業務・スキルなどを洗い出す
- 人材配置の現状を分析し、目標とのギャップを見つける
このようなステップを踏んで、育成対象となる従業員と必要な要素を明確にします。育成対象が新入社員なのか、次世代リーダー人材なのか、それともマネジメントなのかといった観点により、それぞれ必要となる要件は異なるためです。
本章では「新入社員〜若手」「中堅社員」という2つの階層を育成対象とするケースを例に、人材育成の考え方や計画の立て方を解説します。
新入社員〜若手社員の育成
新入社員に対し人材育成を行うタイミングは、大きく分けて以下の3つがあります。 それぞれのタイミングで目的に沿って、人材育成の手法を選択しましょう。
タイミング |
研修の目的 |
入社直後 |
社会人として持つべきマインドセットや知識・技術など、最低限必要なマナー・スキルを身に付ける。 |
本配属後 |
職種ごとに専門的なスキルを獲得する。 |
2・3か月後~半年後 (フォローアップ) |
個人の育成効果に応じて、遅れが見られる能力を引き上げる。 |
また、若手社員の特徴を理解することも重要です。1981~1996年生まれのミレニアル世代・1997~2012年生まれのZ世代は以下のような特徴を持っています。
新卒~若手世代の特徴
● ミレニアル世代(1981~1996年生まれ)
→デジタルネイティブ、終身雇用に執着しない、自らのキャリアアップに積極的
● Z世代(1997~2012年生まれ)
→ネットネイティブ、仕事に対して堅実な一面もある
● 両世代が持つ価値観
→人種・ジェンダーの違いといったダイバーシティ(多様性)に寛容
これらの特徴を理解した上で、1on1ミーティング(上司と部下が1対1で話し合うこと)など定期的にコミュニケーション機会を設けてサポートしていきましょう。
1on1の頻度としては、週に1回もしくは数週間に1回程度のペースで、30〜60分程度行われることが理想的です。日常の話題も含め自由に話せる空気を醸成することで、心理的安全性の高いチームづくりが可能になります。心理的安全性が確保されていることで大胆な提案が可能になり、チームや会社の業績アップにつながる可能性もあります。
【関連記事】1on1とは?目的や話す内容・面談との違い
中堅社員の育成
仕事を通して着実に実力がついてきた中堅層の社員には、次なるステップとして、指示される立場ではなく、指示する機会を増やすことがポイントです。若手中堅の年代から主体的な意志に基づき他者をリードする経験を少しずつ重ねることで、企業の成長にも大きく繋がります。
計画的な人材育成を行うためには「スキルマップの活用」と「異動配置の検討」も有効です。
スキルマップの活用
スキルマップとは、各々の持つスキルのレベルを一覧にまとめたものです。各スキルで到達すべき基準を数段階に分け、現在どのレベルにあるかを表示することで、各人や所属するチームなどのスキルレベルが可視化されます。
スキルマップの例
スキルマップを作成し、どのレベルを目指すのかを考えるときにも、1on1のような本人への丁寧な聞き取りと相談を行うのが望ましいでしょう。
このとき、具体的な行動目標も設定しておくのが効果的です。目標とするスキル獲得のため、「いつまでに」「何を行うか」についても、1on1で話し合って設定します。
【関連記事】MBO(目標管理制度)とは?手法や目標設定の例・メリット
異動配置の検討
より効率的な人材育成を行うためには、戦略的な異動配置も重要です。
パーソル総合研究所の調査では、異動を経験したことのない一般社員が、年数を経るごとに成長志向、学習意欲、キャリア自律への関心が低下している傾向がわかりました。
従業員の今後のキャリア形成を考慮して、成長につながる適切なポジションへと配置を行うことも、人材育成の大きな要素です。
【関連記事】人事異動の決め方|適材適所の実現方法、ありがちな失敗と回避策
人材育成に重要な人事評価制度
人材育成においては、透明性の高い人事評価制度を設けることが非常に重要です。
事前に「何を評価するのか」を明示することで、評価制度を具体的な目標設定に結びつけ、モチベーションの向上を図ることができます。
何を評価されているのかわからない状態だと「頑張っても評価されない」という思考に陥ってしまう可能性があるため、育成計画には必ずセットで評価基準を設けましょう。
【関連記事】人事評価制度とは?必要性や評価項目の具体例・導入のポイント
【お役立ち資料】人事評価制度の見直しガイド
人事評価は社員の成長に必要不可欠ですが、自社の制度に不満を持つ社員は少なくありません。本資料では、評価制度を見直すべきか悩んでいる方向けに、チェックリストや改善のコツをまとめています。
人材育成の成功事例
事例1.株式会社琉球光和|1年以内の事業計画を社員が作成
株式会社琉球光和では、変化の激しい医療業界において、社員間のコミュニケーション、先を読み変化を楽しむことができるような、社員一人ひとりの「想創力」を重要視しており、部門毎にも社員自らミッション・ビジョンを策定し、全社で共有している点が特徴です。具体的には以下の取り組みを行っています。
社員一人ひとりが経営者としての仕事を体験
社員に経営者感覚を身につけ、自覚してもらうために、1年以内の事業計画は全て社員が作成しています。また、給与・賞与などの査定基準を決める「評価委員会」は入社2年目以上の社員で構成され、半年かけて評価基準を策定します。
人事部のない採用活動
採用活動は、各部門から集った若手社員がゼロから企画、実施してします。マーケティング・広報も自ら担い、300名以上の学生を集めた実績もあるそうです。会社ビジョンやはたらく意義を再考する取り組みになっています。
富士ネットシステムズ株式会社では、社員の技術・技能を把握する機会やツールがなく、技術・技能向上に向けた効果的な取り組みを立て難いという課題を抱えていました。特に、新入社員は目の前にある業務に集中するあまり、ステップアップに向けた取り組みができていませんでした。そこで次の取り組みを行いました。
職業能力評価シートを作成し、入社2年目の社員にチェックしてもらうことで現在の業務経験と技術・技能の棚卸を行いました。その結果、当人は技術・技能習得における自身の正しい現在地を把握することができるようになりました。
また、評価シートを見ながら上長と話し合いをすることで自分に不足するポイントや解決すべき課題を明確化・共有し、結果的に必要な技能習得のために何を学べばよいかが分かるようになりました 。
人材育成の最終的な目的は経営目標の達成です。効果的な人材育成を行うためには、育成計画を立案・遂行するとともに、さまざまな育成手法や各世代の特徴を知ることが大切です。
人材育成によって、今いる人材一人ひとりのスキル向上を促し、生産性を向上させることで、企業の競争力強化につなげましょう。
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現代のビジネス環境において、企業が成長するためには人材の育成が求められています。
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