人材育成とは?基礎から実践の手法、計画の立て方を解説

人材・組織 経営者・役員 人事

人材育成とは、企業が業績を上げ、経営目標を達成するために人材を育成することです。人材不足に悩む企業が多い現在にあっては、経営目標達成に向けた人材育成が強く望まれます。

本記事では、人材育成の具体的な方法や考え方、計画法を解説します。

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目次

なぜ企業にとって、人材育成が重要なのか

人材育成とは、企業が業績を上げ、経営目標を達成するために人材を育成することです。どれだけ素晴らしい戦略やビジネスモデルがあっても、最終的に実行するのは人であることから、人材こそが企業の重要な資源であるといえます。

だからこそ、人材育成を課題と考え、解決・改善に向け注力している企業が多いと考えられます。

新型コロナウイルス感染症拡大のような特別な状況を除けば、 下図のようにほぼ全業種で人材不足が生じている現在、人材育成は単なる人事労務管理の問題ではなく、人材を資源として捉え、企業戦略のうちに大きく位置づけられる課題となっています。

企業が感じる人材不足

人材育成における企業の動向

パーソルホールディングスが実施した調査によると、今後2~3年で注力したいテーマは、人材育成に関わるものが上位を占めました。

    1. テレワーク推進…29.4%
    2. 次世代リーダーの育成…24.3%
    3. 新人・若手社員の育成/活用…19.6%

他にも、採用・育成に高い関心が持たれていることが分かります。

    • 中途採用の強化…17.8%
    • 新卒採用の強化…15.2%
    • 教育・研修体系の見直し…15.2%

次世代リーダー育成、新人・若手社員の育成や活用が求められている

【出典】パーソルホールディングス株式会社「コロナ以降の人事戦略2021 最新動向レポート」
調査結果のダウンロードはこちら(無料)

DX(デジタルトランスフォーメーション)やIT・オンラインの活用、柔軟性の重視や育成スピードの向上、はたらき方の多様化、テレワーク活用など、不確実な時代で正解がない、現状の社会情勢に即し、変化が必要だと感じていることが読み取れます。

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人材育成のトレンド

ここで、国内全体の教育分野のトレンドにも触れておきましょう。

昨今では、人生100年時代の到来や少子化の時代を迎え、生涯現役で活き活きと暮らすライフスタイルへの変化が求められている中で、「リカレント教育(=学び直し)」や「越境学習」が注目を集めています。

リカレント教育…周期的に教育を受け続けていく仕組み
越境学習…地方やNPOなど、普段と異なる所属団体や社会課題といった越境体験による気づき・学びを重視する教育

今の時代に求められる知識・スキルの向上はもちろん、今後のキャリア形成にも役立つため、学び直しにより転職を有利に進めようという人も多くいます。

企業としては教育の成果を社内で活かしてほしいところですが、リカレント教育をきっかけとした人材の流動化は、大企業のみならず中小企業にも広がってきていることも押さえておきましょう。

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企業が抱える人材育成についての課題

実際に人材育成を進めるうえで、多くの企業が課題を抱えています。

労働政策研究・研修機構の調査によると、「指導する人材が不足している」「人材育成を行う時間がない」といった課題を挙げる企業が多いことがわかります。また、「人材を育成しても辞めてしまう」「人材育成の方法がわからない」といった悩みがあり、現在の育成手法に課題を感じている企業もいるようです。

【出典】労働政策研究・研修機構「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査

個人の育成能力に依存する指導方法では指導ができる人材が限られたり、属人化してしまいます。誰が指導者になっても一定の効果を上げられるようにするには、計画的・体系化されたカリキュラムが必要です。

次章から、人材育成の手法とポイント、事例について解説します。

人材育成の手法4選

人材育成の手法は、一般的に大別して4種類あるといえます。

 1.OJTOn-the-Job Training
 2.Off-JTOff-the-Job Training
 3.自己啓発
 4.異動

それぞれについて詳しく説明します。

1.OJT(On-the-Job Training)
OJTとは、職場の上司や先輩社員がトレーナーとして指導を行う手法で、実際に多くの企業が採用しています。手間はかかるものの常時展開でき業務に直結する分、圧倒的に効果的で優位を占める手法だといえます。ただし対面による効果が大きいと考えられ、オンラインへの移行には工夫が必要です。

2.Off-JT(Off-the-Job Training)
Off-JTは従来から行われている研修・教育訓練のことで、コンテンツによってはオンラインのほうが効果的な場合もあります。

例えば、知識・技術習得型の研修はオンライン化に向いていると考えられます。eラーニング(非同期型の映像(録画)やテキストなど)を活用することもでき、多くの企業が導入しています。

3.自己啓発
自己啓発は社員自らスキルの習得・向上を図る手法で、同じくeラーニングを活用することが可能です。自己啓発を促すために、費用の補助を実施する企業もあります。

4.異動
異動も、従来から行われてきた日本型人材育成の手法のひとつです。さまざまな部署に異動することで、多様な業務スキル・知識と経験を獲得させることが狙いです。

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人材育成を具体的にどう行うか|新入社員の場合

不確実な時代で正解がない環境下における人材育成は、具体的にどう進めればよいのでしょうか。 ここでは、新入社員の人材育成をスムーズに行うためにまず知っておきたい、人材育成のタイミングと計画の立て方を説明します。

人材育成を行うタイミング

不確実な時代で正解がない環境下における人材育成は、具体的にどう進めればよいのでしょうか。まず、新入社員に対し入社後に人材育成を行うタイミングは、大きく分けて以下の3つがあります。

  1. 入社直後
  2. 本配属後
  3. 2・3カ月〜半年後(フォローアップ)

1.入社直後
新入社員は期待とともに「うまく仕事ができるだろうか」「社会人としてやっていけるだろうか」といった不安を持っていることでしょう。まず学生と社会人で異なるマインドセットや知識・技術など、社会人として最低限必要なマナー・スキルを身に付けるのがこの段階です。

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2.本配属後
社会人としての一般的なマナー・スキルを身に付つけた後、本配属後など職種ごとに専門的なスキルを獲得する段階です。

前章で紹介したOJTやOff-JTなどの手法を用い、目標期間を設定するなどして計画的に行うことができると効率的でしょう。

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3.2・3カ月〜半年後(フォローアップ)
数カ月もすると仕事に慣れる一方、研修やOJTなどによる育成効果にバラつきが生まれることがあります。

遅れが見られる新入社員の能力引き上げのため、または研修などの効果を測定・平準化するため、フォローアップ研修を行う企業もあるようです。行う時期・期間は業種・職種などによって異なり、早期離職の防止が期待できるというメリットがあります。

その後の人材育成

これ以降は成長ステージに応じ、入社2〜3年後のより高度なフォローアップ、中堅社員向け・リーダー育成のための教育などがなされていくことになります。

いずれにしても、キャリア形成に意欲的な若い世代を効果的・効率的に育成して定着を促し、業績アップにつなげるためには、場当たり的ではない適切かつ経営目標に沿った育成計画が必要です。

育成計画の立て方

自社にフィットした育成計画を立てるには、

    1. 経営目標を明らかにし目標達成に向けて必要な業務・スキルなどを洗い出す
    2. 人材配置の現状を分析し、目標とのギャップを見つける

このような工程を踏むことで育成対象と必要な要素が明確になります。 育成計画は、前章で紹介した人材育成の手法を鑑みて立案しましょう。

人材育成のポイント

多くの場合、以下のような区分でそれぞれ適切な育成手法を用いていくことになるでしょう。

・新卒、中途採用、リーダー候補・幹部候補など階層・経験に応じた区分
・正規雇用の従業員と非正規雇用の従業員といった雇用形態に応じた区分
・職種による区分など

ここでは新入社員〜若手社員、中堅層社員育成のポイントについて説明します。

新入社員~若手社員育成のポイント

まず新入社員〜若手社員の育成ポイントは、1981~1996年生まれのミレニアル世代・1997~2012年生まれのZ世代の特徴を理解することが重要です。

新卒~若手世代の特徴

● ミレニアル世代(1981~1996年生まれ)
 →デジタルネイティブ、終身雇用に執着しない、自らのキャリアアップに積極的

● Z世代(1997~2012年生まれ)
 →ネットネイティブ、仕事に対して堅実な一面もある

● 両世代が持つ価値観
 →人種・ジェンダーの違いといったダイバーシティ(多様性)に寛容

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細やかな教育・コミュニケーション機会の創出 

若手社員の特徴を理解した上で、定期的にコミュニケーション機会を設けることが重要です。特に、キャリアアップや仕事に対する悩みといった個人的な話は大勢の前ではしづらいため、「1on1」がよく用いられます。

▼1on1

上司と部下が1対1で話し合うこと。

早期離職の防止、またエンゲージメント向上といったメリットが見込まれる。 

1on1でコミュニケーション不足を危惧しないで済むような頻度で話し合う機会を設け、日常の話題も含め自由に話せる空気を醸成することで、心理的安全性※の高いチームづくりが可能になります。

また、心理的安全性が確保されていることで大胆な提案が可能になり、チームや会社の業績アップにつながる可能性もあります。

※ハーバード大学エイミー・C・エドモンソン:「チーム内の対人関係においてリスクをとっても大丈夫だというチームメンバー共有の信念」のこと。グーグル社のアリストテレスプロジェクトが有名。同プロジェクトの調査分析で、グーグル社の好業績の原因がチームメンバー間の「心理的安全性」にあると結論づけた。生産性向上、アウトプット価値の向上、リスク回避、離職者の低減などに貢献すると考えられている。
【参考】日本生産性本部「2018年度 新入社員 春の意識調査」、労働政策研究・研修機構「資料シリーズNo.171全文 第6章 早期離職とその後の就業状況」

中堅層社員育成のポイント

仕事を通して着実に実力がついてきた中堅層の社員には、次なるステップとして、指示される立場ではなく、指示する機会を増やすことがポイントです。

若手中堅の年代から主体的な意志に基づき他者をリードする経験を少しずつ重ねることで、企業の成長にも大きく繋がります。

スキルマップを活用する

より計画的な人材育成を行うために「スキルマップ」を活用するのも有効です。

スキルマップとは、各々の持つスキルのレベルを一覧にまとめたものです。各スキルで到達すべき基準を数段階に分け、現在どのレベルにあるかを表示することで、各人や所属するチームなどのスキルレベルが一目で分かります。

下記のようなスキルマップを作成することにより多能工化が進めば、特定職種の人だけが長時間労働を必要とする、といった個々の属性による就業条件格差を減らし、働き方改革を促進することも期待できます 。

スキルマップの例

【参考】経済産業省・中小企業庁・厚生労働省による例示を適宜編集

スキルマップを作成し、どのレベルを目指すのかを考えるときにも、1on1のような本人への丁寧な聞き取りと相談を行うのが望ましいでしょう。

このとき、具体的な行動目標も設定しておくのが効果的です。目標とするスキル獲得のため、「いつまでに」「何と何を行うか」についても、1on1で詳細に話し合って設定します。

管理者としては、チーム全体のスキル配分と経営目標を按分しつつ、同時に本人の希望も加味し、かつ適切な手法をもって各人のレベルアップを促すことが求められます。各手法には一長一短があるため、適切に選んで育成に用いましょう。

階層を問わず重要なのは「透明性の高い人事評価制度」

透明性の高い人事評価制度を設けることは、若手・中堅層といった階層に関わらず、人材育成において非常に重要です。事前に「何を評価するのか」を明示することで、評価制度を具体的な目標設定に結びつけ、モチベーションの向上を図ることができます。

何を評価されているのかわからない状態だと「頑張っても評価されない」という思考に陥ってしまう可能性があるため、育成計画には必ずセットで評価基準を設けましょう。

関連記事「人事評価制度とは?テレワーク下で見直すべきポイントを解説」を見る

具体的な成功事例

最後に、人材育成の成功事例を紹介します。

事例1 株式会社琉球光和

社員一人ひとりが経営者としての仕事を体験
人事考課や採用を全社で取り組み、ビジョンやはたらく意義を再考する機会に

社員一人ひとりに「経営感覚を身に付ける」のではなく、実際に経営者の仕事を受け持つことで「経営者の自覚を持つ」取り組みを進める株式会社琉球光和。

1年以内の事業計画は全て社員が作成、給与・賞与などの査定基準を決める「評価委員会」は入社2年目以上の社員で構成、半年もの時間をかけて基準を策定します。

さらに人事部を設けず、採用活動を行う際には各部門から若手社員が集まり、会社のビジョンに共鳴する人材を集めるための活動をイチから企画、実施しています。マーケティング・広告も自ら企画運営、300人を超える学生を集め、メディア掲載などにより大きな話題を集めました。

社員一人ひとりが経営者としての仕事を試行錯誤しながら行うことで目指す組織のあり方やビジョンを深く腹落ちさせ、共有することができ、各人がはたらく意義を再考する機会にもなっているそうです。

【出典】厚生労働省「人材育成事例一覧」

事例2 富士ネットシステムズ株式会社

職業能力評価シート(スキルマップ)を導入
上長と詳細に話し合って課題を具体化

入社したての社員が業務の全体像が見えないのは当然のこと。富士ネットシステムズ株式会社でも新入社員は目の前にある業務をこなすばかりでスキルアップにまで手が回らず、技術・技能向上に効果的な取り組みができていませんでした。

そこで職業能力評価シートを作成し、入社2年目の社員にチェックしてもらう取り組みを行いました。その結果、当人は技術・技能習得における自身の正しい現在地を把握することができるようになりました。さらにチェックの結果を見ながら上長と話し合いをすることで自分に不足するポイントや解決すべき課題を明確化・共有し、結果的に必要な技能習得のために何を学べばよいかが分かるようになりました 。

上長との話し合いを終えた当人は、「これから勉強しなければならない仕事が見えた気がする」と、仕事へのやる気を新たにしていたそうです。

まとめ|経営目標達成に向けた育成計画を遂行しよう

人材育成の最終的な目的は経営目標の達成。必要なマインドセットや知識・技術の獲得も、目標達成のために設定され、行われるものです。そのためには育成計画を順序立てて企画・遂行するとともに、さまざまな育成手法や各世代の特徴を知り、育成に生かすことが有効です。また「何でも言える」心理的安全性の醸成は、良好な職場環境をつくり、スキル獲得の促進にも奏功します。1on1やスキルマップといったきめ細やかなフォローで、社員一人ひとりの成長を促すことが企業に求められています。

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