OJTとは?OFF-JTとの違いや運用ポイントを簡単に解説

OJTとは、職場における実務をベースに知識やスキルを習得させる育成(研修)手法を指します。

本記事ではOff-JTやメンター制度など他の育成手法との違いからOJTの三原則、OJTの基本ステップ、OJTが向いている業務・向いていない業務などを解説します。OJTの効果を高めるポイントやよくある失敗の原因もあわせて紹介しますので、ぜひご参考にしてください。

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目次

OJT(On-the-Job Training)とは

OJTはOn-the-Job Training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の略称で、職場での実務をベースに知識やスキルを習得させる育成(研修)手法のことです。

職場の技術をまだ習得していない人に対して教えていく手法のため、新人や未経験者に対して行われることが多いとされています。日常の業務の中で育成が行われることにより、実践的に学べ、早く成長できる点が特長です。

OJTの重要性を示す理論として、人材開発の領域で有名なロミンガーの法則があります。これは「70:20:10」の法則とも言われ、社員の成長に影響を与える要素の70%が「仕事上の経験」であるとされています。

OJTはこの「仕事上の経験」に該当し、学習と実践を日々繰り返していくOJTは重要な教育手法と言えるでしょう

ロミンガーの法則

厚生労働省の調査によると、「正社員または正社員以外に対して計画的なOJTを実施した」と回答する企業は63.2%となっています。このことから、現在の日本企業においてOJTは主流の育成手法となっていることが分かります。

計画的なOJTの実施状況
【出典】厚生労働省「令和5年度能力開発基本調査」より作成

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Off-JTとの違い

Off-JTはOff-the-Job Training(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)の略称で、実務の現場を離れて行う育成手法です。

職場における実務を通じて学ぶのがOJTに対して、職場の外で学ぶのがOff-JTとなります。つまり、OJTは日常業務を通じて実践的な学びであり、Off-JTは職場外で知識やスキルを学ぶ点に違いがあります。

Off-JTの具体的な手法としては、セミナーや研修、ワークショップなどがあります。Off-JTの大きなメリットは、外部の専門家が提供する体系的な知識を身につけられる点です。

メンター制度との違い

メンター制度は、メンターとなる先輩社員がメンティーと呼ばれる育成対象者について育成する手法です。育成対象者に対して一人の先輩がつくという点はOJTと同じように見えますが、メンター制度は実務に限らず、新人の精神面や悩みをサポートすることに比重を置いている点で違いがあります。

そのため育成対象者と同じ部署内に限らず、年齢や社歴が近い他部署の先輩社員がメンターに選ばれることも多く、気軽に相談できる先輩としての役割を担っています。

オンボーディングとの違い

オンボーディングとは、新入社員が早期に組織・職場に馴染み、業務をこなせるようになるための取り組みを指します。「業務の習得を支援する」という側面においてはOJTと共通する側面もありますが、OJTとオンボーディングは別物です。

OJTは新入社員が特定の業務やスキルを身につけることが目的ですが、オンボーディングは組織に馴染み業務をこなせるようになることを目的としています。そのためOJTは現場での指導がメインになる一方で、オンボーディングは現場での指導や相談の他に、ランチ会やスキルアップ研修、歓迎会などを実施するケースがあることも特徴です。

研修との違い

研修とは、一般的なビジネスマナーや業務に関する専門知識、リーダーシップ、チームビルディングといったビジネスに必要な要素を体系的に幅広く学ぶことです。

OJTと研修は、いずれも社員のスキル向上や知識習得を目的としていますが、OJTは実際の業務に直接結びつく知識やスキルを効率的に身につけることを目的としており、特に日常業務で必要なことを学ぶのに効果的です。対して、研修は業務外で新たな知識を習得するため、視野を広げたり新たなスキル・知識を身につけたりするのに効果的である点でOJTと違います。

また、企業によってはOJTのことを「OJT研修」と呼ぶケースもありますが、OJTとOJT研修は呼び方が違うだけでいずれも「On-the-Job Training」を意味します。

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OJTの目的

企業がOJTを実施する主な目的を解説します。目的を理解することでOJTに取り組む意識も変わり、より効果的にOJTを実施できるでしょう。

人材の早期育成

実際の業務を通じてスキル向上を図ることから、人材の早期育成につながります。インプットしながらアウトプットする機会を与えられるため知識の定着も早く、即戦力化しやすいとされています。

定着率向上

即戦力として成長した社員には、社内での活躍のチャンスが広がります。OJTを経て「できること」が増えた新入社員は、単にこなせるスキルが増えるだけでなくモチベーションも高まり、結果として企業への定着率向上につながります。

また、OJTを通して社内での人間関係が構築されることにより、組織や上司が「気にかけてくれている」という安心感が生まれ、新人の孤立化を防ぐことにもなるのです。このような関係性の中で、帰属意識や自律性が醸成されていきます。

社内における関係性の醸成と孤立化の防止は、テレワーク・リモートワークが進む組織においては一層重要となるでしょう。

適材適所の人材配置

育成担当者が新人を個別に指導することにより、一人ひとりの適性や素養を把握しやすくなります。それぞれの社員の強みやスキルを理解し組織で共有することで、適性を見極めることにもなり、適材適所の人材配置につながります。

職能資格制度の傾向が強い日本企業においては、複数の職務を経験しながら段階的に専門性を高めることが一般的です。OJTを通じて適材適所を実現するためには、OJTの履歴をタレントマネジメントシステムなどに蓄積するのが重要となります。職務や部署が変わって学習や実践を積むごとに、こうしたOJTの履歴をカルテのように記録していくことで、各社員の適性を見極めることにつながります。

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4.OJT担当社員の成長

OJTでは対象者が成長するのはもちろん、担当となった先輩社員にとっても成長の機会です。具体的にはOJTを通じて、担当先輩社員には人材育成力や対人マネジメント力が向上する効果を得られます。管理職になる前に、このように人材育成に関われるのは極めて重要です。

OJTの三原則

OJTに取り組む際、意識すべき3つの原則は、意図的・計画的・継続的です。

意図的 OJTを実施する目的を明確にしてトレーニングを実施すること
計画的 カリキュラムを立ててトレーニングを実施すること
継続的 繰り返し持続的に、徐々にトレーニングを実行すること

OJTの質を高めるためにも、これらの原則を守ることが大切です。

OJTの実施期間

OJTの実施期間は企業によってさまざまですが、平均して3ヶ月〜1年が一般的です。短い期間であれば1週間、長い期間では1年以上実施する企業もあります。

OJT実施期間に明確な定めはなく、企業ごとに適切な期間は異なります。例えば、ルーチンワークのような日常的に繰り返す業務が多い職種であれば、OJTの実施期間は少なくても問題ありません。対してイレギュラー対応が多い職種であれば、OJTの実施期間も長期間となる傾向にあります。

また、OJTの実施期間は職場の外で行われるOff-JTは含まず設定しましょう。OJTとそれ以外の育成手法は目的に違いがあり、進捗や評価の管理を分けたほうが効果的だからです。

OJTを実施するメリット

本章ではOJTのメリットを解説します。自社がOJTに求めるメリットと合致するか検証してみてください。

1.社内コミュニケーションの活性化

OJTは育成担当者と新入社員のみならず、部署や組織全体で取り組んでいくものです。業務を教えたり質問したりすることで対話が生まれ、フィードバックや情報共有を通して社内のコミュニケーションが活性化されます。それにより、組織の生産性や社員の定着率の向上といったメリットが生まれます。

2.育成コストの抑制

自社の社員に育成の役割を与えるため、育成コストが抑えられます。一般的にOff-JTなどによる研修は、外部に講師を依頼するケースが多く、費用がかかります。外注費をかけることなく、実践を通して即戦力を育成するという点では、コストを抑えられる施策であると言えるでしょう。

3.組織社会化の実現

OJTの実施によって、育成対象者が自社の組織に順応していく「組織社会化」がスムーズに運びます。組織社会化は、新入社員が組織の一員として活躍できるようになるうえで必須のプロセスです。OJT担当者によるマンツーマンの直接的な指導により、自社の価値観や文化、ルールなどを習得し、一人の自立した社員へと成長していきます。

OJTを実施するデメリット

OJTによる教育はメリットばかりではありません。本章ではOJTのデメリットについて述べていきます。自社で運用する際は、以下に挙げるデメリットを防げるように対策を取りながらOJTを進めるとよいでしょう。

1.現場社員のリソースが新人教育に割かれる

新人への教育に時間が割かれ、現場社員の負担が増えることは避けられません。特に、OJTの初期は一時的に部署や課全体の業務に影響が出る可能性があります。

OJT担当者が育成に集中できるように、また、組織としてのパフォーマンスを落とさないためにも、OJT担当者の業務を事前に他の社員へ割り振るなどの対策を取りましょう。

2.指導者によって指導内容に差が生じる

OJT担当者の指導スキルによって、新人への教育内容に差が生じることがあります。プレイヤーとしては優秀でも、育成に不慣れだったりマネジメントが苦手だったりすることも考えられます。

OJTを始める前に、担当者を集めて研修などのスキルアップの機会を与えたり、OJTのマニュアルを用意したりと社内全体で取り組み、指導者の質を担保しましょう。

3.運用が形骸化する

OJTは育成手法の一つに過ぎないため、ただ新人に先輩とマンツーマンで業務を学ばせる形式だけを取っても、うまくはいきません。かえって、現場の負担感や新人側の不満が生じ、OJTのメリットが享受できないケースもあります。

事前準備を入念に行い、社内全体で取り組む姿勢をもつなど、「やって終わり」にならないような対応が重要です。

OJTに向いている・向いていない業務

冒頭で紹介した通り、OJTのベースは実務での業務習得ですが、OJTの対象業務には、向き・不向きがあります。自社でOJTを実施するにあたり、そもそも実地での指導が適しているか業務かを確認することが大切です。

OJTに向いている業務

手順がある程度明確で、マニュアルが確立している業務が向いています。やることが分かりやすく、新人でも理解しやすいためです。手順があることで、どこでつまずいたのかという課題の発見も容易です。

例えば、製造業の組み立てラインでは、特定の手順に従って作業を進めることが求められるため、誰が指導者でも同じ内容を教えることになります。教える内容が明確であるほど、指導者ごとの感性や好みのやり方に振り回される機会が少なくなり、OJTを通じて新人に業務を着実に習得してもらいやすくなります。
また、パターン化できる業務もOJTに向いているでしょう。顧客応対など、状況や相手によってやり方が異なるものの、いくつかのパターンに分けて対処法を教えられる業務であれば、育成担当者の指導の下、新人はスムーズに業務を習得できます。

OJTに向いていない業務

新規プロジェクトなど柔軟な対応が求められる業務や、イレギュラーが発生しやすい業務はOJTに向いていません。こうした業務はマニュアル化がしづらく、育成担当者にとっても初めての経験となることがあるため、新人に教えるのは難しくなります。
また、専門的な知識を必要とする業務でも、OJTは不向きでしょう。経理や会計、法律、IT、デザイン、学術といった分野の業務は、業務を遂行する上で専門的知識が重要になります。つまり、座学で知識の習得をすることがベースとなりますが、専門知識は数百時間以上をかけて学ぶのが一般的なため、OJTトレーナーでできることはほとんどありません。

OJTで新人に知識やスキルを習得させたい際には、OJTが育成手段として適しているかを判断し、向いていない場合にはOff-JTなど別の手段を検討するとよいでしょう。

OJTの基本的な4ステップ

OJTの基本的な手順は以下の4ステップです。段階ごとの内容や意図を簡単におさらいしましょう。

OJTの4つのステップ

ここでのポイントは、4ステップをすべて実施することです。「業務を見せるだけで説明しない」「説明だけで業務をやらせない」など一部分だけを実践しても、OJTはうまくいきません。事前に計画を立て、OJTに取り組みましょう。

1.Show(見せる)

まずは育成担当者が実際に仕事をやって、育成対象者に見せます。教育係が手本を示すように、実際に対応している姿を見せることで業務の流れややり方を把握させましょう。

2.Tell(説明・解説する)

育成担当者が業務を実践して見せた後、その業務の詳細を説明します。表面的な内容にとどまらず、理由や背景まで説明することで、新人の業務に対する理解度を高められます。特に、暗黙知(実践上のコツ・工夫など)を伝えることが重要です。次のステップで新人が実践できるように、説明だけでなく質疑応答も行い、新人の抱える疑問はこの段階で解消しましょう。

3.Do(やらせてみる)

育成担当者の手本を見たり説明を聞いたりして分かったように感じても、実際にやってみるとうまくいかないケースも珍しくありません。そこで、実務を通して経験を重ねてもらうために、実際に新入社員が一人で業務に対応する機会を与えましょう。

ただし、いきなり一人で行わせるのではなく、近くで見守りフォローしながら行わせます。新入社員の心境にも寄り添うことが重要です。

失敗してしまっても決して責めずに、新入社員が安心して取り組める環境を整えましょう。

4.Check(振り返りを支援し、追加指導する)

実践の機会を与えた後は、振り返りの場を設けてフィードバックを行いましょう。「できたこと」と「できていないこと」の両方を振り返り、できていた部分は褒め、できていないことは改善点を共有しましょう。新人の理解度や育成進捗もあわせて確認します。

フィードバックを成功させるには、一定の型があります。D.コルブの「経験学習サイクル」を例に挙げると、効果的な学習は以下の4つのサイクルによって起こるとされています。

    • 日々現場で仕事を経験する
    • 経験した事実を振り返る
    • 振り返りから学びや教訓を得る
    • 得た学びや教訓を次の仕事で試す
経験学習サイクル

本来は育成対象者本人が、自ら経験学習サイクルを回せることが大切です。しかし、経験が少ないと視座が低く視野も狭いため、振り返りが限定的になりがちです。だからこそ、育成担当者が関わる価値があります。育成対象者よりも高い視座、広い視野から問いかけつつ振り返る機会を提供しましょう。育成担当者が問いかけることでより深く振り返ることができ、学びや教訓を得られやすくなります。そして、その学びや気づきを実践するタイミングについて、背中を押してあげることができます。

このように、育成担当者が振り返りに関わることで、育成対象者の成長が持続的なものとなるのです。

【お役立ち資料】フィードバック実践のコツと進め方

フィードバックを成功させるためには、対象者とのコミュニケーションを通して信頼感を確保したり、事後のフォローアップをしたりすることが重要です。 本資料では、フィードバックのコツや進め方をさらに詳しく解説します。

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OJTが失敗する3つの原因

OJTが失敗してしまう要因としては、以下のようなものが挙げられます。失敗の原因を知り、自社に当てはまるものがあれば改善しましょう。

1.育成担当者と育成対象者のコミュニケーション不足

育成担当者の指導力不足は、OJTの失敗に直結します。育成対象者が「質問しづらい」「放置されている」と感じてしまう場合は、担当者と対象者の間で適切なコミュニケーションが取れていない状況だと考えられます。具体的には、質問をしやすい関係を構築できていなかったり、業務のフォローアップが不足していたりすることが原因です。

こうした問題は育成担当者の指導力不足によって生じるため、企業においては育成担当者の教育が必要です。OJTを実施すると決まったら、事前に研修などによって育成担当者を教育することも計画に織り込むようにしましょう。

2.指導体制が整っていない

OJTを実施する目的が明確ではなく、ただ現場で先輩社員に新入社員を指導させる形を取るだけでは、OJTは形骸化し失敗に終わります。OJTはあくまで育成手法の一つに過ぎません。社内全体で、OJTによる新入社員の育成体制を整えることが重要です。

OJTを担当する先輩社員のみならず、上司や部署全体で育成計画や進捗を管理・共有し、指導体制を構築していきましょう。

よくある失敗例として、組織側でOJTの育成計画を立てないまま教育を部署の担当者へ一任しているケースもあります。育成計画がないと、育成担当者は参考にするものがないため、「自分はこうだった」という主観をもとに教育する傾向になりがちです。特に、優秀な社員は「自分が新人の頃は教えてもらわなかった」「やり方を知らなくても自分で考えて取り組んだ」というケースも少なくありません。このようなケースでは、育成担当者は育成対象者の気持ちや立場を考えられず、OJTにおいて業務のやり方や進め方を十分に教えられないといった懸念があります。

このような状況を回避するためにも、人事部門や上司がOJTの指導体制を適宜チェックするなどといった工夫をしましょう。

3.振り返りを行っていない

OJTを計画的に実施したとしても、その後の振り返りを行わなければOJTは成功しません。前述の通り、振り返りはOJTを改善していくために不可欠な作業となります。

振り返りを行う際は、OJTの進捗状況やOJTのカリキュラム、担当者の指導方法などを確認しましょう。

OJTの進捗状況を確認し、具体的な成果や改善点について考えることが大切です。カリキュラムでは各業務におけるプロセスや時間配分などを振り返り、どの部分が効果的だったか、またどのような改善が必要かを分析します。

育成担当者の指導方法については、指導方法やコミュニケーションスタイルが適切だったか、どのような改善が可能かを考えることが大切です。このように、OJTをやりっぱなしで終わることがないよう、振り返りのポイントを実践しましょう。

OJTの取り組み事例

OJTの取り組み事例を2つ紹介します。自社で取り入れられそうなものがあれば、実践していきましょう。

マルハニチロ株式会社

マルハニチロ株式会社は、大手食品会社で冷凍食品や缶詰を扱っている会社です。人材育成方針を「採用人数を絞って、じっくり育てる」と定めているのが特徴で、その一環として新入社員向けにOJTを実施しています。

新入社員は入社後1年間、「OJTリーダー」と呼ばれる指導を担う先輩社員の付き添いの下、業務の指導を広範に受けます。OJTリーダーからは担当業務のやり方を教わるのはもちろんのこと、目標の設定方法を学んだり、日々の悩み相談に乗ってもらったりします。同社のOJTでは、一人前の社会人になるための成長を手助けすることを目指しており、OJTリーダーだけでなく職場全体で新人をサポートしているようです。

【参考】マルハニチロ株式会社「キャリア

山一電設株式会社

山一電設株式会社は山口県に本社を構え、住宅や商業施設、工場の電気工事を専門としている会社です。同社では、新入社員は経験に基づいて5日から50日間の初期研修を受け、約20日間の現場実習を経て配属される仕組みとなっています。

その後、チームリーダーによるOJTや資格取得マニュアルに基づく試験準備、勤務経験に応じた外部研修の受講などが行われます。

OJTの強化のため、毎月1日を特別な研修日としてグループワークも行っているようです。チーム内で教師役と生徒役に分かれ、それぞれの得意分野を共有し合うことでスキル向上を図ることが狙いです。

【参考】厚生労働省「人材育成事例206
【参考】山一電設株式会社「教育・OJT

OJTの効果を高める6つの運用ポイント

OJTの効果を高めるポイントは、以下の6点です。

1.育成計画を立てる

育成計画を立てることは、場当たり的な対応や育成方針のズレを防ぐことにもつながります。OJTの実施期間や目標、習得すべきスキルなどを可視化し、新入社員や部署メンバーに共有します。短期的な成長目標に加えて、企業が求める人材像というような長期的な目標を掲げることも効果的です。

どのような内容を教えるべきかは部署によって異なるため、OJT対象の部門が詳細な育成計画を立てます。具体的には、1年後にどうなってもらいたいかという「あるべき姿」を打ち出しましょう。理想とする姿から逆算して、必要な経験や期間、教える順番を考えていきます。

OJT終了後のフィードバックや関係者たちへの聞き取りを通して得た情報は、次年度の育成計画へ反映させると、より当事者たちのニーズにそった育成計画を立てることができます。このように、OJTという教育手法を年間単位のPDCAで捉える視点が重要です。

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2.組織全体で取り組む

OJTは育成担当者に丸投げせず、組織全体で体制を構築しましょう。トップから育成担当者に対して、OJTへの理解と動機付けを促すことで、組織全体が同じ方向を目指して新人教育に臨める効果があります。

企業のトップから育成担当者に対してメッセージを送るにあたっては、以下のような視座の高いポイントを伝えることが重要です。育成担当者はこれらのポイントを理解することによって、納得度を高めてOJTに従事できます。

    • 財務的な観点(売上・利益に貢献する人材の育成など)
    • 生産性の観点(仕事の効率・効果の向上につなげるなど)
    • イメージの観点(会社や組織を好ましく思ってもらいたいなど)

時には上司や経営層からもフィードバックを得ることで当事者の孤立を防ぎ、求めるゴールへの軌道修正を図っていきましょう。組織全体でOJTのノウハウが蓄積されれば、人材育成の効率化や組織力の向上にもつながります。

3.育成対象者の傾向を理解する

新入社員の中には、従来のキャリア形成や仕事に対する価値観に魅力を感じない人が少なくありません。育成担当者と育成対象者の間には、根底にある価値観にズレがあるケースも考えられます。

新入社員の価値観の傾向を理解することでギャップを埋め、新入社員に合った対応を取りやすくなります。相手の特性に適した育成は、新入社員にとっては心理的安全性の確保につながり、企業にとってはミスマッチによる人材流出を未然に防ぐ一手にもなるでしょう。

4.育成担当者研修を取り入れる

育成担当者への研修を取り入れて、スキルアップを図ります。前述したOJTのデメリットでも挙げたように、指導者の質のばらつきは新入社員の育成成果に大きく影響します。育成担当者向けの研修を活用することで、人材育成を体系立てて学ぶのに役立ちます。育成担当者の安心感にもつながり、余裕を持って新人を受け入れることができるでしょう。

パーソルグループでは、さまざまな目的や対象者にあわせた育成担当者向けの研修を提供しています。育成担当者向け研修の開催・実施にあたってお困りごとがあれば、お気軽にパーソルグループまでご相談ください。

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5.育成担当者同士で情報共有できる場を設ける

社内において、育成担当者同士の横のつながりがあると、OJTは円滑に進みやすくなります。

例えば、「育成がうまくいかない」「新入社員とどのようにコミュニケーションを取ればいいか分からない」といった悩みの相談や、他の育成担当者による育成成功事例などを共有する場を設けるのも一案です。OJTの開始前からこのような場があると、育成担当者は安心してOJTに臨めます。

また、最近では情報共有の場としてグループチャットを作成することもあります。育成担当者だけのグループと、人事部門の社員が入っているものを分けて作成することで、育成担当者たちに目的に応じた情報共有や悩みの相談をしやすい場所を提供できるでしょう。

6.Off-JTなど他の育成手法と組み合わせて実施する

Off-JTなどの外部研修と組み合わせて実施すれば、育成の相乗効果を得られます。例えば、ビジネスマナーの基本や社会人としての姿勢、PCソフトの使用方法などの知識やスキルは、あらかじめ外部研修やeラーニングなどで体系的に学ぶのが効率的です。OJTで実務の場に出たときに、これらの基本的な知識やスキルを実践しやすくなるからです。

新入社員の育成計画を立てる際は、eラーニングや社外研修(Off-JT)など、OJT以外の育成手法と組み合わせて考えましょう。

まとめ|OJTを効果的に運用して組織で活躍できる人材育成を

OJTは、現場での実務を通して新入社員のスキルアップを図る実践的な育成手法です。即戦力を育てるために実施する企業が多いものの、育成に失敗する例も見られます。成功させるためにはOJTの効果を高めるポイントを押さえ、組織全体で取り組むことが重要です。

また、OJTを効果的に運用していくことで、優秀な人材が活躍すること以外にも、育成ノウハウの蓄積や体制の整備に役立つといった企業にとっての中長期的なメリットをもたらします。

パーソルグループでは、育成担当者向けの研修やマネジメントに特化したプログラムを用意しています。OJTの運用にあたってお困りのことがあれば、ぜひご相談ください。

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監修・インタビュー

株式会社パーソル総合研究所 ラーニング事業本部
トレーニングパフォーマンスコンサルタント

渡邉 規和

大手人材サービス業にて営業管理職(東京・仙台・大阪)、BPO事業のプロジェクトマネジメントに従事。9つの新規受託案件の立ち上げ~運用に関わる。その後、合弁会社の人事(採用・研修)を経て、2018年 富士ゼロックス総合教育研究所(現パーソル総合研究所)入社。
トレーニングパフォーマンスコンサルタントとして、営業力強化・コミュニケーション力強化を中心に組織人材開発に従事。 対面集合・オンライン合わせて年間約140日のトレーニング・ワークショップをファシリテーション。
自身のリカレントのために、専門職大学院である社会構想大学院大学 実務教育研究科に在籍。研究テーマは「『越境学習としての集合研修』を起点とした組織外知識の組織内転移」

資格等:・PMP®
    ・Points of You® Expert
    ・DiSC®認定ファシリテーター
                  ・ブレンディッドラーニングデザイナー (一般社団法人 日本フューチャーラーナーズ協会)
    ・認定ワークショップデザイナー (一般社団法人 ワークショップデザイナー開発機構)
    ・国家資格キャリアコンサルタント (登録番号17060950)
    ・アクションラーニングコーチ (NPO法人日本アクションラーニング協会)

よくあるご質問

Q1.OJTの目的は?

A1.OJTの目的として以下の4つが挙げられます。

1.人材の早期育成
2.定着率向上
3.適材適所の人材配置
4.育成を担当する社員の成長

>>OJTの目的

Q2.OJTを実施するメリットは?

A2.OJTを実施するメリットは以下の3点です。

1.社内コミュニケーションの活性化
2.育成コストの抑制
3.組織社会化の実現

>>OJTを実施するメリット

Q3.OJTの効果的な運用方法は?

A3.OJTの効果を高めるポイントは、以下の6点です。

・育成計画を立てる
・組織全体で取り組む
・新人社員の傾向を理解する
・OJT担当者研修を取り入れる
・OJT担当者同士で情報共有できる場を設ける
・Off-JTなど他の育成手法と組み合わせて実施する

>>OJTの効果を高める6つの運用ポイント