2025年03月31日
2025年06月17日
新卒採用者や中途採用者が、入社後スムーズに組織に適応し、活躍するためには「オンボーディング」が欠かせません。オンボーディングとは、新しく組織に加わった人が職場環境や業務に慣れ、早期から定着・活躍できるようにサポートする一連のプロセスを指します。
オンボーディングは、新卒採用者と中途採用者で重視すべきポイントが異なり、それぞれに適したプログラムの設計が重要です。
本記事では、オンボーディングの基礎知識から具体的な施策、成功のポイントまで解説していきます。自社のオンボーディング施策を考える際に、ぜひご活用ください。
人材が定着する組織のつくり方とは?定着率向上に向けた実践ガイド公開中
採用した人材が早期に離職してしまう――従業員の早期離職や定着率の低下は、採用・育成コストの損失だけでなく、組織力の低下にもつながりかねません。
そこでパーソルグループでは、定着しにくい組織に共通する課題や背景をひも解き、従業員の定着率を高めるための具体的な施策と実践フローをまとめています。
“辞めない組織づくり”を進めたい方は、ぜひご覧ください。
目次
オンボーディングとは、新しく組織に加わった人が職場環境や業務に慣れ、早期から定着・活躍できるよう、計画的にサポートする一連のプロセスです。業務知識やスキルの習得だけではなく、企業文化や価値観への理解を深め、組織への定着を促します。
入社者へのサポートが不十分だと、入社後に職場の雰囲気や業務とのギャップに戸惑い、力を発揮できないまま早期離職につながることもあります。そのため、人材の定着率を高め、早期活躍を促す取り組みとして、オンボーディングの注目が高まっています。
オンボーディングとOJT・Off-JTは、いずれも企業の人材育成手法ですが、その目的が異なります。
OJT(On-the-Job Training)は、職場での実務をベースに知識やスキルを習得させる育成手法です。一方、Off-JT(Off-the-Job Training)は、研修やセミナー、eラーニングなど職場を離れて行う育成手法です。
OJTやOff-JTがスキルや知識の習得にフォーカスしているのに対し、オンボーディングは入社前後のサポートを通じて、職場への定着や早期活躍を促すことが目的です。なお、OJTやOff-JTは、オンボーディングの一環として実施されることもあります。
【関連記事】OJTとは?OFF-JTとの違いや運用ポイントを簡単に解説
近年、企業におけるオンボーディングの重要性が高まっています。その背景には、新卒・中途それぞれの採用環境における変化が大きく関係しています。
まず新卒採用では、人材の価値観が多様化・流動化が進んでおり、入社後のフォロー体制によって早期離職のリスクが大きく変わる時代になっています。従来の一律的な教育やOJTでは対応しきれず、個々の志向に寄り添ったオンボーディング施策の重要性が高まっています。
一方、中途採用では、これまで体系的な受け入れ体制を整えていなかった企業が多く、中途入社者にもオンボーディングが必要という認識が急速に広がっています。実際、2023年頃から注目度が高まっており、導入や改善に取り組む企業が増加しています。
このような背景から、オンボーディングは単なる人事の一施策ではなく、採用後の人材活用を左右する重要な経営課題として、今まさに注目されています。
オンボーディングを実施する4つの目的について解説します。
オンボーディングを通じて、入社者が職場・業務にスムーズに適応できることで、パフォーマンスを発揮しやすくなり、早期活躍につながります。
入社者に企業文化や業務知識など必要な情報が共有されることで、新しい環境にスムーズになじみやすくなります。また、社員同士の交流を促進することで、相談しやすい関係が築かれ、助け合える環境作りにもつながります。
オンボーディングは、定着率の向上にもつながります。オンボーディングを通じて職場環境や人間関係などに対する不安や違和感を解消できれば、職場への理解やはたらく意欲が高まります。その結果、この会社で長くはたらきたいというキャリア展望を持てるようになるのです。
さらに、定着率が向上すれば、人材育成の効率が上がり、採用コストや教育コストの削減にもつながります。
【関連記事】定着率を上げる7つの方法|計算方法や平均値と併せて解説
従来、入社時研修は人事などで画一的に行われますが、配属後の受け入れは各部署に任されることが多く、上司や先輩によって指導内容やレベルにばらつきが生じる課題がありました。
オンボーディングのプロセスを全社で構築することで、入社者全員が必要な知識やスキルを習得でき、どの部署に配属されても一定の理解を持って業務に取り組めます。
オンボーディングは入社者のみならず、既存社員にとっても学びや気付きをもたらします。
入社者を受け入れる過程で、自身の業務や価値観を改めて振り返る機会が生まれ、成長のきっかけになります。また、部署を超えた交流が促進されることで、組織全体のつながりが強まり、エンゲージメントの向上につながるでしょう。
新卒採用者と中途採用者では、入社時の状況や課題が大きく異なるため、オンボーディングの内容も、それぞれに合わせて設計することが重要です。
ここでは、新卒採用者向けと中途採用者向けに分け、具体的な施策を紹介します。
新卒採用者の場合は、学生気分からの脱却やビジネスマナーの習得など、基礎的な部分からのサポートが必要です。また「リアリティ・ショック」と呼ばれる、入社前に抱いていたイメージと現実とのギャップに苦しむケースも多いため、社会人としての基礎や社内ルールなどを丁寧に教え、本人と頻度高く会話を重ね、ギャップを解消していくことが重要になります。
パーソル総合研究所の調査によると、新入社員の約8割が入社後にリアリティ・ショック(思い描いていた期待と現実とのギャップ)を感じていることが分かっています。
うまく適応できないままでいると、本来の能力を発揮できず、思うように活躍できなくなってしまいます。
新卒採用者向けのオンボーディングでは、新卒採用者本人と育成を支援する上司の主体的な取り組みが不可欠です。具体的なプログラム例は「オンボーディングプログラムの具体例」で紹介します。
中途採用者の場合は、前職との違いに戸惑ったり、社内の人間関係や暗黙のルールの理解に苦労したりするケースが多い傾向にあります。さらに、新卒採用者と比較すると即戦力を求められることが多く、必要な情報提供や教育自体が不足してしまうケースがあります。
そのため、配属部署の業務や期待される役割を明確に伝え、仕事を進めるうえで関わりを持つ上司や先輩、同僚と関係性を築けるよう支援することが重要です。
中途採用者向けには、業務に必要な情報や知識だけではなく、新しい環境にスムーズになじめるよう、会社の文化や社内ルールも伝えましょう。また、上司や同僚に対して中途採用者を正しく理解し、適切にサポートするような支援が必要です。
具体的なプログラム例は「オンボーディングプログラムの具体例」で紹介します。
オンボーディングの効果を高めるためには、以下のポイントを意識しましょう。
オンボーディングは、上司の理解と協力が不可欠です。
上司が積極的に関わることで、入社者は業務の進め方や期待される成果を具体的に理解しやすくなります。また、上司とのコミュニケーションを通じて、企業文化や価値観を知ることができ、相互理解が深まり、職場における適応がスムーズに進みます。さらに、上司がフィードバックを行うことで、入社者のモチベーションが高まり、早期に業務に慣れることができます。
上司が積極的に関与することで、入社者の定着率向上と早期活躍につながります。

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オンボーディングは人事部や入社者の上司・メンターのみならず、配属先のメンバーや関連部門など、組織全体で取り組む意識を持つことが重要です。
入社者が安心してはたらける環境を作ることで、定着率やエンゲージメントの向上につながります。社内報で入社者を紹介するなど、組織全体で入社者を迎え入れる雰囲気作りが重要です。
オンボーディングを実施する際は、具体的な目標を設定しましょう。
例えば「3カ月以内にチームに溶け込み、積極的に意見交換ができるようにする」「1年以内に配属部署の業務を一人でこなせるようにする」といった具体的な目標を設定することで、オンボーディングの成果を測ることができ、現状の把握やその後の改善にもつなげられます。
オンボーディングに取り組む企業の事例として、株式会社東芝の新入社員向けオンボーディング施策についてご紹介します。
東芝では、新卒採用者向けの導入教育について以下のような問題意識を抱えていました。
・変化が大きいビジネス環境に適した導入教育になっているか
・どのように新入社員を受け入れ、定着させるのか、職場(上司・メンター)任せになり過ぎていないか
そこで、2022年から導入教育の見直しに着手し、2024年に新入社員の上司・メンター約1,500人を対象にオンボーディング研修を設計、実施しました。
具体的な研修の構成は以下のとおりです。
| 前工程 (意識付け・事前課題) |
・eラーニング受講 ・メンター/上司面談 |
|---|---|
| 研修本番 (上司・メンターは別で実施) |
・若手2,000人アンケート結果共有 ・メンバーの意欲を高めるメカニズム ・実践に向けた行動計画 |
| 後工程 (事後課題) |
・eラーニング受講 ・ラーニングトリオ(受講者同士のワーク) ・メンター/上司面談 |
まず、前工程では特設ポータル上のテキストやeラーニングにより、研修に対する納得感や意識付けの機会を提供します。
その後、研修本番では、東芝グループの若手社員の「キャリア観」や「職場での成長支援」に関するリアルな声を一般データと比較しながら共有。課題の当事者意識を醸成したうえで、メンバーの意欲を高めるための関わり方・留意点について学びます。
そして研修後は「受けたら終わり」とならないよう、研修本番で決めた行動計画を受講者同士で振り返る”ラーニングトリオ”の取組みや、eラーニングによる追加の学習などを通じて、現場での実践につなげています。
オンボーディング研修を導入した結果、85.2%の受講者が「行動が変化した」と回答しました。具体的には、新卒採用者とのコミュニケーションが増加した、新卒採用者の価値観に沿った対応ができるようになったといった声があがっているそうです。
オンボーディングの目的や重要性を踏まえたうえで、実際にどのようなプログラムを設計・実施すればよいのか悩まれる方も多いのではないでしょうか。 ここでは、パーソル総合研究所が提供するオンボーディング支援サービスをもとに、実践的なプログラムの一例をご紹介します。
新卒採用者向けのオンボーディングプログラム「Onboarding-NAVI」は、学生から社会人への移行をスムーズにし、主体的に組織になじんでいけるようにサポートするプログラムです。組織適応領域の第一人者である、尾形 真実哉教授が全面監修しており、サーベイとオンライン学習を組み合わせた独自のプログラムとなっています。
プログラムの流れは、以下の通りです。入社半年後頃から取り入れ、1年目が終わる頃にプログラムが終わるようなスケジュールで進めることを推奨しています。
プログラムを通じて、新卒採用者は主体的に組織になじむためにとる行動(プロアクティブ行動)を身に付け、上司は新卒採用者が組織になじめるようにどのように支援するべきかを理解してもらいます。
中途採用者向けのオンボーディングプログラム「Onboarding-NAVI」は、早期からパフォーマンスを発揮できるよう、組織適応力を強化するプログラムです。こちらも尾形真実哉教授が全面監修しており、中途採用者が抱える「8つの適応課題」を理解し、解消に向けて取り組むプログラムになっています。
中途採用者向けのプログラムは、中途採用者本人、上司、教育担当者が取り組み、入社1カ月目からスタートし3カ月目まで行われます。入社1カ月目は企業や仕事に対する理解を深め、自分自身を周囲に理解してもらい、入社2カ月目にはアンラーニングを進め、入社3カ月目には2カ月間を振り返り、組織の一員として自走し、パフォーマンスを発揮していくための準備を行います。
本サービスについて詳しく知りたいという方はもちろん、まずはオンボーディングに関するお悩みや課題感を相談してみたいという方も、お気軽にお問い合わせください。貴社の状況に応じたご提案をさせていただきます。
オンボーディングのさまざまな施策を通じて、企業独自の文化や価値観への理解を深め、組織への定着を促すことは、入社者の早期活躍や定着率向上、既存社員のエンゲージメント向上など、企業にとって多くのメリットをもたらします。
新卒採用者と中途採用者で意識すべきポイントが異なるため、それぞれの状況を踏まえたオンボーディングを実施することが重要です。またオンボーディングの実施には、上司の理解と協力が欠かせません。
まずは上司やメンター、そして組織全体で入社者を迎え入れる体制を整えましょう。
人材が定着する組織のつくり方とは?定着率向上に向けた実践ガイド公開中
採用した人材が早期に離職してしまう――従業員の早期離職や定着率の低下は、採用・育成コストの損失だけでなく、組織力の低下にもつながりかねません。
そこでパーソルグループでは、定着しにくい組織に共通する課題や背景をひも解き、従業員の定着率を高めるための具体的な施策と実践フローをまとめています。
“辞めない組織づくり”を進めたい方は、ぜひご覧ください。

株式会社パーソル総合研究所
組織力強化事業本部 組織力強化コンサルティング部
木村 保絵
大学卒業後、フィリピンでNGO団体に所属。その後、国際交流事業やラジオ局での活動等を経て、2019年より現職。ブレンディッド・ラーニングの講座運営や案件支援に従事した後、研修の企画・開発を担当。オンボーディング支援プログラムやコミュニケーションをテーマとした研修の開発に携わっている。一般社団法人日本フューチャーラーナーズ協会認定ブレンディッドラーニング・デザイナー、WIAL-Japan(日本アクションラーニング協会)認定シニアアクションラーニングコーチ