戦略的な人員配置をどう行うか|ミスマッチの原因や最適化する方法を解説

人材・組織 人事

労働人口の減少に伴い、多くの日本企業が慢性的な人材不足に直面しています。そのような中、市場での競争優位性を高めていくために、企業の重要な経営資源の一つである「ヒト」をどのように活用するかは、企業が成長を続けていくための生命線とも言えます。

本記事では、「人員配置」をテーマに、企業における人事異動の現状やミスマッチを引き起こす原因、企業の成長をアシストするための適切な配置のポイントを解説します。

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目次

人員配置とは?

人員配置とは、経営目標を達成するために、従業員をどの組織・ポジションに配置するかを決める人材マネジメントのことを言います。

人員配置と聞くといわゆる「人事異動」や「新卒社員の配属先決め」などを想起されることが少なくありませんが、実は「人員配置」は大きく2つの手法に分けられます。

  •  適所適材:配属先に対して、異動する人材を決めること。
  • 適材適所:配属先を検討する前に、どこかへ異動する候補者のリストを作ること。

つまり空きポジションが先か、異動させるべき人材リストが先かの違いです。

採用時点で「営業職」など業務内容が決まっている場合は「適所適材」といえる一方、パフォーマンスが伸び悩んでいる従業員を適性やスキル・能力等を見極めたうえでパフォーマンスを発揮できるだろうポジションへと再配置する場合は「適材適所」になります。どちらの手法が望ましいかは、企業や部署、またその時の事業・組織フェーズやメンバーによっても異なります。

このことから、人員配置はその方向性一つで、従業員のパフォーマンス、チームの成績、ひいては企業の成果にも影響を及ぼす経営戦略の一部と言っても過言ではありません。従業員本人のキャリアプランや志向を考慮することで、離職率の低下・従業員満足度の向上にも寄与しますが、理想的な人員配置を実現することは容易ではありません。

それでもなぜ人員配置が不可欠なのか

中長期的な経営目標達成のためには、人員配置を常に考慮しておくことは極めて重要です。なぜなら「今」に満足していても、10年後、20年後、あるいはさらに先の企業の未来を考えたとき、人員配置が必要になってくる層が一定数存在するからです。

具体的には、40代半ばを過ぎてから非管理職であり十分なパフォーマンスを上げることができない「ミドルパフォーマー」です。以下の図ではCの部分、「非専門職かつ非管理職」に該当します。

ミドルパフォ―マ―は企業において大多数を占める、かつ業務経験が長く、異動方針があいまいになることが多い傾向になりますが、何も対応しなければ、組織全体のパフォーマンス低下、業務のマンネリ化を引き起こしてしまう要因になりかねません。そして、こうした問題が明るみに出てから対処するのではなく、できる限り事前に対策が必要です。

優秀な人材に定着・成長してもらうためにも、適切な人員配置については常に意識しておく必要があります。

次章からはその理由を探るために、人事配置の現状と、適切な配置を行うためのステップを見ていきます。

企業における異動配置の現状

パーソル総合研究所の調査によると、「従業員のキャリア開発・キャリア自律意識向上のための組織的支援」「一般社員層(総合職)の戦略的異動配置」といった課題の優先度が高いことがわかります。

【参照】株式会社パーソル総合研究所「一般社員層(非管理職層)における異動配置に関する定量調査

しかし、一般社員層の異動配置に関する方針について、「明確な方針がある」企業は35.0%にとどまります。

さらに、年齢別に異動配置への方針を見てみると、若年層から高齢層になるにつれて、異動配置の方針がなくなっていることも現状です。

なぜ異動配置でのミスマッチが発生するのか

企業は、従業員のパフォーマンスを最大化するため、また中長期的な事業目標を達成するために、適切に人員配置を行うことが求められます。しかしながら、前述のとおり多くの企業が異動配置におけるミスマッチという問題を抱えています。

この異動配置のミスマッチが起こる背景には、企業における人事施策の優先度が課題にあります。

従業員数が数千人〜数万人の中・大企業においては、人事部門の限られたリソースで、全従業員の適性や能力・志向などを正しく把握し、適材適所へ配置することは困難を極めます。そのため、将来的に会社の中核を担うであろう「次世代経営人材」や、現状のポジションで著しくパフォーマンスを発揮できていない「ローパフォーマー」の異動が優先的に行われているのが現状です。

しかしながら、従業員の大部分を占めるのは「ミドルパフォーマー」、つまり現状のポジションで難なく仕事をこなしているものの、次世代経営人材の候補にはなっていない層です。

ミドルパフォーマーは、異動配置を考える際にどうしても後回しになってしまいます。結果的に「本人が望んでいても、異動の声がかからない」「本人の意向や適性とマッチしていない部署に移動させられる」といったことが多く起こってしまうことから、ミスマッチが発生してしまうのです。

適切に人員配置を行うポイント

では、具体的に人員配置を適切に進めていくためには、どのようなポイントに留意すれば良いのでしょうか。ポイントとなるのは、以下3点です。

    • ミドルパフォーマーに目を配る
    • 人材データを「人員配置」に利用できる粒度にする
    • 社内公募制度の充実・多様化を図る

それぞれについて解説します。

ミドルパフォーマーに目を配る

前章で述べたように、ミドルパフォーマーは人事側の視点から異動候補者としての優先度が低くなってしまいます。また、事業部側の視点でも、現状のポジションである程度機能しているため、異動の候補リストに推薦するといったことは、あまり考えられません。

このように人事側・事業部側、双方の視点から後回しになってしまいがちなミドルパフォーマーの配置に目配りしないことは、企業にとってのリスクが潜んでいます。

それは、現状では機能していても、5〜10年後に同じパフォーマンスを発揮できるとは限らないからです。特にミドルパフォーマーは、40代以降でパフォーマンスが著しく低下することが指摘されています。

パーソル総合研究所の「働く10,000人成長実態調査」では、年齢別に見ると、50代で仕事における成長を重視する人の割合が低下していることが伺えます。

【出典】株式会社パーソル総合研究所「働く10,000人の成長実態調査2021

また、42.5歳を境に「出世したい」と考える人よりも、「出世したいと思わない」と考える人の割合が上回るという結果が出ています。

【出典】石山恒貴+株式会社パーソル総合研究所「会社人生を後悔しない40代からの仕事術」

ミドルパフォーマーは、異動や人材開発の面で後回しにされてきたため、40代以降になって会社としても最適なポストを用意できず、結果的に同じような仕事を退職まで続けることになりがちです。

このようなことを防ぐためにも、次世代経営人材やローパフォーマーだけでなく、ミドルパフォーマーの今後のキャリア形成を考慮して、人材データの利活用や社内公募制度を用いて、適切なポジションへと配置する仕組みを整えることが大切です。

人材データを「人員配置」に利用できる粒度にする

最近では、多くの企業で「タレントマネジメント」や「ピープルアナリティクス」を用いて、従業員データを採用や人事異動・評価に役立てようという流れが加速しています。しかし、実際に人事異動に従業員データをしっかりと活用できている企業は、あまり多くありません。

パーソル総合研究所の調査によると、人材に関するデータの分析を行っている企業は41.0%ですが、実際に分析したデータを意思決定まで活用できている企業は16.9%にとどまっていることがわかりました。

【参照】株式会社パーソル総合研究所「人材マネジメントにおけるデジタル活用に関する調査2020

従業員データが人員配置に活用できない理由には、実際の人員配置に必要な情報がうまく収集できていないことが要因に挙げられます。

人員配置を行う際には、過去にどのような役職についてきたかという「キャリアデータ」だけでなく、従業員一人ひとりが具体的にどんな能力を持っているのかといった「スキルデータ」や、今後どのようなポジションに就き成長していきたいかといった「キャリアプランに関するデータ」が必要になってきます。

多くの企業では、過去の事実に基づいた職務経歴書のような「キャリアデータ」は収集できているが、スキルやキャリアプランに関するデータが集まっていないという現状があります。適切な人員配置に役立てるためにも、現状でどのようなデータを持っているのかを確認し、人員配置に活かせない粒度なのであれば、従業員データの収集を組織全体で進めていく必要があるでしょう。

また管理体制が大規模に及ぶ場合はツールを活用することも一つの方法です。パーソルグループが提供するタレントマネジメントシステムを、一例として紹介します。

HITO-Talent」は、膨大な人員情報の一元管理と可視化をアシストするタレントマネジメントシステムです。個人の成長をモニタリングする機能に優れ、従業員一人ひとりの育成課題に応じて、最適な育成計画のプランニングに活かすことができます。

また、異動シミュレーション機能を搭載し、配属先のポジションと異動候補者のリストを、画面上の従業員プロフィールを参照しながら、素早く作成できます。限られた人事リソースで最適な人員配置の実行をサポートします。

▼HITO-Talentの機能とできること

    • 個人プロフィール
      →評価情報の蓄積、異動時のシミュレーションや適材適所の配置
    • 目標設定
      →研修やキャリアプランを立てやすくなる

社内公募制度を充実・多様化を図る

人員配置を最適化させるもう一つのポイントが、社内公募制度の充実です。通常の人事異動とは異なり、従業員自らが希望するポジションに立候補することが最大の利点です。

最近では、多くの企業で導入が進んでいますが、公募されるポジションの多くが「新規事業」等に限られるケースが多いのが現状です。ミドルパフォーマーをどう活かすかという観点から見ると、新規事業への立候補はハードルが高く、仮に希望が通らなければモチベーションの低下を招きかねません。

ミドルパフォーマーが「応募しても合格しない」と考えてしまえば、社内公募制度の意味はありません。そのため、新規事業などに限らず、一般的なポジションに関しても社内公募制度を利用して、異動できるようにするなど、エントリーのハードルを下げる必要があるでしょう。

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人員配置を最適化する4つのステップ

ここからは、実際に人員配置を実行するためのステップを解説します。

    1. 現在の人員配置の確認
    2. 従業員情報の整理(データ収集)
    3. キャリアプランについてのヒアリング
    4. 人員配置の実行〜効果検証

まずは、事業部や営業所ごとにどのようなポジションの従業員が何人在籍しているのか、現在の人員配置を確認します。また現場の担当者へのヒアリングを通して、人員の過不足について調査しましょう。

次に、在籍している従業員の情報を整理・収集します。適切に人員配置をするポイントでも述べたように、過去のキャリアデータだけでなく、スキルや能力といったように人員配置の際の判断材料となり得る粒度でデータを集めていくことが求められます。なお、従業員が数千人を超える大企業の場合は、人事部門だけではデータ収集ができないことが考えられますので、現場との連携を取り、従業員自らシステムにデータを入力できる仕組みを整える必要があるでしょう。

データ収集が終わった段階で、各従業員にキャリアプランのヒアリングを行います。現状のポジションに満足しているのか、どういうキャリアを歩みたいのかといった「志向」のデータを集め、人員配置の参考にします。

実際に人員配置を実行する際には、部署等に空きが出たから補充するという「適所適材」の視点ではなく、あらかじめポジションにマッチしそうな候補者リストを作成し、それをもとに人員配置を実行する「適材適所」の考え方を持つようにしましょう。

人員配置は、一度実行すれば終わりではなく、配置後の効果検証が欠かせません。従業員が異動したポジションでパフォーマンスが向上しているのかをモニタリングすることが大切です。

まとめ

本記事では、人員配置とは何か?という基礎知識から、異動配置が抱える問題点、そして最適な人員配置を行うためのポイントや手順について解説しました。

人員配置は、欠員が出たポジションの穴埋めをする作業ではなく、従業員のパフォーマンスを最大化し、企業の経営目標を達成するために行うものです。「次世代経営層」や「ローパフォーマー」に目が行きがちですが、企業を支える「ミドルパフォーマー」の人員配置も意識し、従業員データを活用しながら効率的にかつ、最適な人員配置を目指しましょう。

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インタビュー・監修

株式会社パーソル総合研究所 上席主任研究員

藤井 薫

電機メーカーの人事部・経営企画部を経て、総合コンサルティングファームにて20年にわたり人事制度改革を中心としたコンサルティングに従事。その後、タレントマネジメントシステム開発ベンダーに転じ、取締役としてタレントマネジメントシステム事業を統括するとともに傘下のコンサルティング会社の代表を務める。労政時報など人事専門誌への寄稿も多数。2017年8月パーソル総合研究所に入社、タレントマネジメント事業本部を経て2020年4月より現職。

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