適切に人員配置を行うポイント
では、人員配置を適切に進めていくためには、どのようなポイントに留意すれば良いのでしょうか。ポイントとなるのは、以下の3点です。
1.ミドルパフォーマーに目を配る
前述のとおり、ミドルパフォーマーは従業員の大部分を占めるものの、人事側・事業部側双方の観点で異動の優先度が低く、後回しになってしまいがちですが、現状は機能していても、5~10年後に同じパフォーマンスを発揮できるとは限りません。
ミドルパフォーマーは、異動や人材開発の面で後回しにされてきたため、40代以降になって会社としても最適なポストを用意できず、結果的に同じような仕事を退職まで続けることになりがちです。
このようなことを防ぐためにも、次世代経営人材やローパフォーマーだけでなく、ミドルパフォーマーの今後のキャリア形成を考慮して、従業員データの利活用や社内公募制度を用いて、適切なポジションへと配置する仕組みを整えることが大切です。
2.従業員データを「人員配置」に利用できる粒度にする
最近では、多くの企業で「タレントマネジメント」や「ピープルアナリティクス」を用いて、従業員データを採用や人事異動・評価に役立てようという流れが加速しています。しかし、実際に人事異動に従業員データをしっかりと活用できている企業は、あまり多くありません。
パーソル総合研究所の調査によると、人材に関するデータの分析を行っている企業は41.0%ですが、実際に分析したデータを意思決定まで活用できている企業は16.9%にとどまっていることがわかりました。
【出典】株式会社パーソル総合研究所「人材マネジメントにおけるデジタル活用に関する調査2020」
従業員データが人員配置に活用できない理由には、実際の人員配置に必要な情報がうまく収集できていないことが要因に挙げられます。
人員配置を行う際には、過去にどのような役職についてきたかという「キャリアデータ」に加えて以下のようなデータも必要になってきます。
- スキルデータ …従業員一人ひとりが具体的にどんな能力を持っているかをまとめたデータ
- キャリアプランに関するデータ …今後どのようなポジションに就き成長していきたいかをまとめたデータ
多くの企業では、過去の事実に基づいた職務経歴書のような「キャリアデータ」は収集できているが、スキルやキャリアプランに関するデータが集まっていないという現状があります。
適切な人員配置に役立てるためにも、現状でどのようなデータを持っているのかを確認し、人員配置に活かせない粒度なのであれば、従業員データの収集を組織全体で進めていく必要があるでしょう。
また、管理体制が大規模に及ぶ場合はタレントマネジメントシステムを活用することも一つの方法です。後ほどご説明します。
3.社内公募制度の充実・多様化を図る
人員配置を最適化させるもう一つのポイントが、社内公募制度の充実です。通常の人事異動とは異なり、従業員自らが希望するポジションに立候補することが最大の利点です。
最近では、多くの企業で導入が進んでいますが、公募されるポジションの多くが新規事業などに限られるケースが多いのが現状です。
ミドルパフォーマーをどう活かすかという観点から見ると、新規事業への立候補はハードルが高く、仮に希望が通らなければモチベーションの低下を招きかねません。ミドルパフォーマーが「応募しても合格しない」と考えてしまえば、社内公募制度の意味はありません。
そのため、新規事業などに限らず、一般的なポジションに関しても社内公募制度を利用して、異動できるようにするなど、エントリーのハードルを下げる必要があるでしょう。