適切に人員配置を行うポイント
では、具体的に人員配置を適切に進めていくためには、どのようなポイントに留意すれば良いのでしょうか。ポイントとなるのは、以下3点です。
-
- ミドルパフォーマーに目を配る
- 人材データを「人員配置」に利用できる粒度にする
- 社内公募制度の充実・多様化を図る
それぞれについて解説します。
ミドルパフォーマーに目を配る
前章で述べたように、ミドルパフォーマーは人事側の視点から異動候補者としての優先度が低くなってしまいます。また、事業部側の視点でも、現状のポジションである程度機能しているため、異動の候補リストに推薦するといったことは、あまり考えられません。
このように人事側・事業部側、双方の視点から後回しになってしまいがちなミドルパフォーマーの配置に目配りしないことは、企業にとってのリスクが潜んでいます。
それは、現状では機能していても、5〜10年後に同じパフォーマンスを発揮できるとは限らないからです。特にミドルパフォーマーは、40代以降でパフォーマンスが著しく低下することが指摘されています。
パーソル総合研究所の「働く10,000人成長実態調査」では、年齢別に見ると、50代で仕事における成長を重視する人の割合が低下していることが伺えます。
【出典】株式会社パーソル総合研究所「働く10,000人の成長実態調査2021」
また、42.5歳を境に「出世したい」と考える人よりも、「出世したいと思わない」と考える人の割合が上回るという結果が出ています。
【出典】石山恒貴+株式会社パーソル総合研究所「会社人生を後悔しない40代からの仕事術」
ミドルパフォーマーは、異動や人材開発の面で後回しにされてきたため、40代以降になって会社としても最適なポストを用意できず、結果的に同じような仕事を退職まで続けることになりがちです。
このようなことを防ぐためにも、次世代経営人材やローパフォーマーだけでなく、ミドルパフォーマーの今後のキャリア形成を考慮して、人材データの利活用や社内公募制度を用いて、適切なポジションへと配置する仕組みを整えることが大切です。
人材データを「人員配置」に利用できる粒度にする
最近では、多くの企業で「タレントマネジメント」や「ピープルアナリティクス」を用いて、従業員データを採用や人事異動・評価に役立てようという流れが加速しています。しかし、実際に人事異動に従業員データをしっかりと活用できている企業は、あまり多くありません。
パーソル総合研究所の調査によると、人材に関するデータの分析を行っている企業は41.0%ですが、実際に分析したデータを意思決定まで活用できている企業は16.9%にとどまっていることがわかりました。
【参照】株式会社パーソル総合研究所「人材マネジメントにおけるデジタル活用に関する調査2020」
従業員データが人員配置に活用できない理由には、実際の人員配置に必要な情報がうまく収集できていないことが要因に挙げられます。
人員配置を行う際には、過去にどのような役職についてきたかという「キャリアデータ」だけでなく、従業員一人ひとりが具体的にどんな能力を持っているのかといった「スキルデータ」や、今後どのようなポジションに就き成長していきたいかといった「キャリアプランに関するデータ」が必要になってきます。
多くの企業では、過去の事実に基づいた職務経歴書のような「キャリアデータ」は収集できているが、スキルやキャリアプランに関するデータが集まっていないという現状があります。適切な人員配置に役立てるためにも、現状でどのようなデータを持っているのかを確認し、人員配置に活かせない粒度なのであれば、従業員データの収集を組織全体で進めていく必要があるでしょう。
また管理体制が大規模に及ぶ場合はツールを活用することも一つの方法です。パーソルグループが提供するタレントマネジメントシステムを、一例として紹介します。
「HITO-Talent」は、膨大な人員情報の一元管理と可視化をアシストするタレントマネジメントシステムです。個人の成長をモニタリングする機能に優れ、従業員一人ひとりの育成課題に応じて、最適な育成計画のプランニングに活かすことができます。
また、異動シミュレーション機能を搭載し、配属先のポジションと異動候補者のリストを、画面上の従業員プロフィールを参照しながら、素早く作成できます。限られた人事リソースで最適な人員配置の実行をサポートします。
▼HITO-Talentの機能とできること
-
- 個人プロフィール
→評価情報の蓄積、異動時のシミュレーションや適材適所の配置
- 目標設定
→研修やキャリアプランを立てやすくなる
社内公募制度を充実・多様化を図る
人員配置を最適化させるもう一つのポイントが、社内公募制度の充実です。通常の人事異動とは異なり、従業員自らが希望するポジションに立候補することが最大の利点です。
最近では、多くの企業で導入が進んでいますが、公募されるポジションの多くが「新規事業」等に限られるケースが多いのが現状です。ミドルパフォーマーをどう活かすかという観点から見ると、新規事業への立候補はハードルが高く、仮に希望が通らなければモチベーションの低下を招きかねません。
ミドルパフォーマーが「応募しても合格しない」と考えてしまえば、社内公募制度の意味はありません。そのため、新規事業などに限らず、一般的なポジションに関しても社内公募制度を利用して、異動できるようにするなど、エントリーのハードルを下げる必要があるでしょう。