人材開発とは|意義や人材育成との違い、企業が取り組むべきポイント

人材開発とは、社員一人ひとりのスキルや能力を高め、パフォーマンス向上を図る取り組みのことです。

新卒一括採用、終身雇用に代表される従来の日本型雇用では、主に新入社員・管理職といった切り口で行う一律の研修のみで十分機能していました。しかし、昨今は外部環境の変化により、はたらき方や個人の価値観も多様化しているため、一人ひとりのスキルや能力を高める「人材開発」の必要性が高まっています。

本記事では人材開発とは何か、必要性が高まる背景や企業が取り組むべきポイントについて解説します。

【最新調査】組織マネジメントの実態レポートをご覧いただけます

人材やはたらき方が多様化し、「組織マネジメント」の重要性が高まっています。

パーソルグループでは、管理職および一般職1,000名を対象に調査を行い、 【組織マネジメントの実態調査レポート】を作成いたしました。

採用・離職、上司・部下の認識ギャップ、キャリアなどに焦点を当て、 組織マネジメントにおける課題や取り組みについてまとめたものです。

組織作りやマネジメントに課題を抱える経営・人事の方、管理職の方のご参考になれば幸いです。

資料をダウンロードする(無料)

目次

人材開発とは

人材開発とは、社員一人ひとりのスキルや能力を高め、パフォーマンスを向上させることです。

人材育成との違い

人材開発と人材育成は、広義では同じ意味を指しますが、目的や対象が異なります。

人材育成 人材開発
目的 一律のゴール設定
業務を進めるうえで必要なスキルの習得などを目指す
一人ひとりゴール設定が異なる
個人のスキル・能力を向上させる
本人の自発性を重視する
対象 「新入社員」「管理職」など職種や立場ごとの切り口で検討 全社員を対象

人材育成は、いわゆる新入社員の集合研修などをイメージするとわかりやすいでしょう。職種や役職、入社年数などで対象者を分け、一律のスキル習得を目指します。

一方、人材開発では、社員自らゴール設定をし、必要なアプローチを選び、スキルや能力の向上を目指します。職種や役職に関わらず、自身の成長イメージや目指すキャリアを実現するために必要な学びを自身で選択するという内発的動機づけが重視されます。

人材育成も人材開発も企業にとって必要な考え方であるため、どちらか一方を行うべきというわけではなく、どちらもバランスよく取り入れることが重要です。

人材開発の必要性が高まる背景

なぜ人材開発の必要性が高まっているのでしょうか。大きく以下2つの背景があげられます。

外部環境の変化

現代はVUCAの時代とも言われ、目まぐるしく変化し、複雑で予測困難な時代です。企業を取り巻く外部環境も、急速に変化し続けています。

先の予測がしづらい状況下においては、これまでの当たり前が通用しないこともあるため、その時々の変化を察知し、柔軟に対応していくことが求められます。

そのため、人材開発によって多様なスキルを持つ人材を育成し、さまざまな変化に対応できる組織づくりが求められています。

関連記事「VUCAとは?予測困難な時代に求められるスキルと、組織づくりのポイント」を見る

はたらく個人の価値観の多様化

個人のはたらき方やキャリア・仕事に対する意識も多様化しています。

株式会社日本マンパワーの「新入社員意識調査2022」によると、「仕事の中で、将来の自分についてどのようなイメージを描いていますか」という質問に対し、「管理職になりたい」「副業しながら働きたい」「起業をしたい」といったように、キャリアに対する考え方はさまざまであることがわかります。

【参考】株式会社マンパワー「新入社員意識調査2022

このように全員が同じキャリアや価値観を持っているわけではないため、従来のように一律の教育では社員のモチベーション低下や生産性の低下を招きかねません。

だからこそ、一人ひとりのキャリア実現を支援し、スキル・能力向上を促す人材開発が求められています。

人材開発における4つの手法

人材開発を推進する際は、自社にマッチした手法を選んで取り入れることが大切です。具体的な手法は、主に以下の4つです。

    1. OJT
    2. Off-JT
    3. 自己啓発
    4. タフアサインメント

1.OJT

OJTとは「On-The-Job Training」の略で、実際の業務を通して必要な知識や技能を学ぶ手法です。上司や先輩社員が、新入社員や業務の未経験者に対して指導を行います。実務に即したノウハウが身につくと同時に、OJTを通じて人間関係も深まるでしょう。

OJTでは、何をいつまでに習得するのかゴールを明確にすることが重要です。

また、OJTは多くの企業で取り入れられています。厚生労働省の「令和3年度能力開発基本調査」によると、正社員または正社員以外に対して計画的なOJTを実施したと回答した事業所は61.8%でした。

【出典】厚生労働省「令和3年度能力開発基本調査

2.Off-JT

Off-JTとは「Off-The-Job Training」の略で、実務からは離れて行う研修を指します。具体的には外部講師による集合研修や管理職のマネジメント研修、セミナーへの参加などがあげられます。専門性の高いテーマ・内容について、体系的に学ぶことができる点がメリットです。

厚生労働省の「令和3年度能力開発基本調査」によると、Off-JTで実施された内容として「新規採用者など初任層を対象とする研修」や「ビジネスマナー等のビジネスの基礎知識」などが挙がっています。

【出典】厚生労働省「令和3年度能力開発基本調査

3.自己啓発

自己啓発とは、社員が自ら目標を設定し、自主的に学習に取り組むことを指します。企業は、例えば資格取得や通信教育受講の際にかかる費用を援助したり、e-learningを導入したりすることで自己啓発を促すことができます。

4.タフアサインメント

タフアサインメントとは、簡単に達成することが難しい、ハードルの高い業務をあえて任せることで、急速な成長を促す方法です。

例えばプロジェクトリーダーなどの責任あるポジションにアサインしたり、本人にとってハードルの高い課題を日常業務のなかで課したりすることが挙げられます。

人材開発を進めるうえで企業が取り組むべきこととは

前述の手法を取り入れるだけでは、人材開発は成功しません。人材開発は、一人ひとりが異なるゴール設定をするため、内発的動機が前提であり、キャリア像を描けるように支援することが重要です。

人材開発の目的が達成できる運用になっているか以下のようなポイントを踏まえて見直しましよう。

▼人材開発を進める上でのポイント

  • 企業と社員の間のギャップや課題を把握できているか?
  • 求める成果とそれにつながる行動を明確化できているか?
  • キャリアの複線化が可能な人事制度、教育制度となっているか?
  • 自身のキャリア像を描けているか振り返る場はあるか?

企業と社員の間のギャップや課題を把握できているか?

まずは、企業と社員の間にどのようなギャップや課題があるか把握しましょう。これらを把握しないままでは、かえって社員のモチベーションが低下する恐れがあります。従業員満足度調査やエンゲージメントサーベイなどを行い、現状と課題をしっかりと捉えることが重要です。

求める成果とそれにつながる行動を明確化できているか?

人材開発は社員の行動変容を促し、その行動が成果につながります。そのため、組織における成果とは何か、また成果につながる行動はどのような行動かを明確にしましょう。

成果につながる行動は、人材要件やコンピテンシー・発揮行動等と定義づけているものがベースになります。コンピテンシー評価・行動評価のように、評価項目として使用している組織も多いでしょう。

キャリアの複線化が可能な人事制度、教育制度となっているか?

「課長→部長→本部長」と昇格していくような従来の画一的な人事制度では、キャリアの選択肢が少なく、社員自身がキャリアを描きづらくなってしまいます。社員の主体的なキャリア形成を促進するためには、複数のキャリアコースからキャリアを選択できるような、人事制度への見直しが必要です。

また、社員一人ひとりのキャリア形成を支援できるような学習機会・教育制度を整えることも重要です。

昨今、アンラーニングの考え方が人材開発においても注目されています。アンラーニングとは、去習得した知識やスキルを意図的に棄却しながら、新しい知識・スキルを取り入れるプロセスを指します。目まぐるしく変化する環境下だからこそ、知識やスキルも柔軟に取り入れていくことが大切です。

【ダウンロード資料】組織と社員を強くする!
アンラーニングを促進する3つの原則とは?

ダウンロードはこちら(無料)

自身のキャリア像を描けているか振り返る場はあるか?

社員が主体的にキャリアを考える必要性を伝え、自身のキャリア像を描けるよう、部下と上司がキャリアについて対話する場を設けましょう。このとき、キャリアプランシートを用いると良いでしょう。過去・現在・将来と段階別にキャリアを考えることができます。

キャリアプランシートの例

STEP1
これまでの経験、今の自分
STEP2
これからやりたいこと
STEP3
どのように能力を伸ばすのか
職務経験(過去・現在)

・これまでの経験の棚卸し
・身につけた知識、能力
・現在の職務について
将来計画(将来)

・自身の価値観、興味
・自分の強み
・将来やりたいこと(仕事、プライベート)
行動計画(将来)

ありたい姿に向けての
・自己啓発計画
・研修受講計画
・仕事経験の計画
関連記事:キャリア自律とは?定義や企業のメリット・支援方法を紹介

まとめ|人材開発で一人ひとりのキャリアを実現し企業成長を図る

はたらき方や価値観が多様化するなかでも企業が持続的に成長するためには、社員一人ひとりのスキルや能力を高め、パフォーマンスの向上を図るための人材開発が重要です。

人材開発を通して、スキルや強みの発掘を支援することで、パフォーマンスの最大化を図っていきましょう。

【最新調査】組織マネジメントの実態レポートをご覧いただけます

人材やはたらき方が多様化し、「組織マネジメント」の重要性が高まっています。

パーソルグループでは、管理職および一般職1,000名を対象に調査を行い、 【組織マネジメントの実態調査レポート】を作成いたしました。

採用・離職、上司・部下の認識ギャップ、キャリアなどに焦点を当て、 組織マネジメントにおける課題や取り組みについてまとめたものです。

組織作りやマネジメントに課題を抱える経営・人事の方、管理職の方のご参考になれば幸いです。

資料をダウンロードする(無料)

よくあるご質問

Q1.人材開発とは?

A1.人材開発とは、社員一人ひとりのスキルや能力を高めてパフォーマンスを向上させることです。

自身の成長イメージやキャリア観を描いてもらい、そこに向かうために必要な学びを自身で選択する、という内発的な動機づけが重視されます。

>>人材開発とは

Q2.人材開発の手法は?

A2.人材開発で活用できる手法は、主に以下の4つです。

1.OJT
2.Off-JT
3.自己啓発
4.タフアサインメント

>>人材開発における4つの手法

Q3.人材開発を行ううえで企業が留意すべきことは?

A3.人材開発の目的が達成できる運用方法になっているか、再点検しましょう。

・企業と社員の間のギャップや課題を把握できているか?
・求める成果とそれにつながる行動の明確化はできているか?
・キャリアの複線化が可能な人事制度、教育制度となっているか?
・自身のキャリア像を描けているか振り返る場はあるか?

>>人材開発をすすめるうえで企業が取り組むべきこととは

インタビュー・監修

株式会社パーソル総合研究所 ラーニング事業本部 人材・組織力強化ソリューション部 ビジネススキルソリューションG

深堀 雅史

スポーツ施設運営会社にて部下を持つ施設運営責任者や、コンサルティング会社にてコーチングを活用した組織開発プログラム等に従事する。2018年パーソル総合研究所へ入社。企業の人事制度改定や育成体系構築のコンサルティングに従事する傍ら、自身の経験をふまえたリーダーシップ研修や評価者研修の企画・設計にも携わる。