DX推進が企業にとって急務となっている背景
では、なぜDXが多くの企業にとって急務となっているのでしょうか。背景として以下の3点があげられます。
1.「2025年の崖」問題
経済産業省は2018年に発表した「DXレポート」の中で、DXが実現できない場合、2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性がある、いわゆる「2025年の崖」が訪れる危険性を示しました。
2025年の崖とは
多くの経営者が、将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出・柔軟に改変するDXの必要性について理解している。しかし、
・ 既存システムが、事業部門ごとに構築されて、全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズがなされているなどにより、複雑化・ブラックボックス化
・ 経営者がDXを望んでも、データ活用のために上記のような既存システムの問題を解決し、そのためには業務自体の見直しも求められる中、現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれを実行するかが課題となっている
この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性がある
企業が大きな損失を生まず、かつ、新たなビジネスモデルを創出するなど競争力を強化していくためには、DX推進に向けた具体的な取り組みが急務となっているのです。
2.競争力の強化
近年世界中のあらゆる市場で、デジタル技術による破壊的なイノベーション(デジタルディスラプション)が起きています。これまで市場を牽引してきた企業であっても、シェアを奪われてしまうケースも少なくありません。
米国におけるデジタルディスラプションの例
・Amazonに代表されるインターネット通販サービスの台頭により、大手の小売事業者が経営破綻
・Netflixなどのインターネット動画配信サービスが登場したことで、大手レンタルビデオ・DVDチェーンが倒産
日本企業がグローバル市場で競争力を強化するためには、デジタル技術を活用し、既存事業の変革を起こすことが必須といえます。
3.外部環境の変化への適応
パーソル総合研究所の「労働市場の未来推計2030」によると、2030年には7,073万人の労働需要に対し、6,429万人の労働供給しか見込めず、644万人の人手不足となることが明らかになっています。
そのため、既存業務のフローの見直しやテクノロジーの活用によって、業務効率化を実現し、一人ひとりの生産性を向上させることは不可欠です。
また、コロナ禍を機に、従来のはたらき方や業務プロセスについて課題が浮き彫りになった企業も多いのではないでしょうか。テレワークをはじめ、はたらき方や価値観の多様化が急激に進んだことも、DXを後押しする大きな要素の一つとなっています。