DXの推進役となる「DX人材」の育成方法とは

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日本でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進まない理由の一つに、推進する人材が不足していることが挙げられます。どのようにDX人材を育成すれば良いのか、備えるべき資質やその習得方法、育成手段を解説します。

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目次

迫られるビジネスモデルの変革

欧米企業は、デジタル技術で新たな価値を生み出し、今までなかったビジネスモデルを展開して成長市場のメインプレーヤーになりました。欧米ではAIやIoT、モバイルなどのテクノロジーを活用したさまざまなサービスや製品が登場し、大きな利益を上げています。それがDXです。

グローバル経済の中で日本企業が競争力を維持・強化するために、スピーディーなDXで新事業創出や既存事業のデジタル化を実現し、市場に乗り出していく必要があります。

DXを推進する人材「DX人材」の不足

独立行政法人情報処理推進機構(以降IPA)が2019年4月12日に公開した「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」によれば、社内で「DX」という用語を使用している国内企業は全体の3分の1程度と少なく、デジタル化を管掌するCDOというポストを設置している企業も、わずか1割程度という状況でした。

同調査では人材不足の深刻さも浮き彫りになっています。経済産業省もDXを推進する上での課題の一つとして「DX人材の不足」を挙げています。「ユーザー企業で、ITで何ができるかを理解できる人材が不足」「ベンダー企業でも、既存システムの維持・保守に人員・資金が割かれ、クラウド上のアプリ開発の競争領域にシフトしきれていない」と指摘し、その対応策を次のように提言しています。

DX人材の育成・確保

・既存システムの維持・保守業務から解放し、DX分野に人材シフト
・アジャイル開発の実践による事業部門人材のIT人材化
・スキル標準、講座認定制度による人材育成

【出典】経済産業省「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」(平成30年9月7日)

「DX人材」に必要な資質

DXを推進する人材とはいったいどのような人材なのでしょうか。IPAの調査では、DXは必ずしも先端ITやデジタル化に知見と能力を持つスペシャリストが推進できるわけではなく、課題を見つける力や主体性を持つ人材が必要だとまとめています。プロジェクトを力強く推し進める適性として以下の6つを「仮説」として挙げています。

DX人材に必要な6つの適性(仮説)

1.不確実な未来への創造力
取り組むべき領域を自ら定め、新分野への取り組みをいとわず、ありたい未来を描いてそれに向かって挑戦する姿勢

2.臨機応変/柔軟な対応力
計画通りのマネジメントではなく、外部の状況変化を踏まえ、方向転換をいとわずに目標に進めていく姿勢
当初の計画にこだわりすぎない姿勢

3.社外や異種の巻き込み力
対立するメンバーがいても巻き込み、外部とも交わりを多く持ち、自分の成長や変化の糧にできる包容力

4.失敗したときの姿勢/思考
一時的な失敗を恐れずに、失敗を糧にして前に進めることができる姿勢

5.モチベーション/意味づけする力
自ら解決したい課題を明確にし、自分の言葉で話せる主体性

6.いざというときの自身の突破力
困難な状況に陥ったときにも方法を模索し、壁を突破できるリーダーシップ

DXを推進するチーム構成

DX人材には多くの適性が要求されます。ただ、新事業創造やDX推進はチームであたることが多いので、チームのメンバー同士や社内のトップが補完しあえば良いという考え方が一般的です。では、チームにはどのような役割があるのかを紹介します。

DX推進人材の役割

人材の呼称例 人材の役割
プロデューサー DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材(CDO含む)
ビジネスデザイナー DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進等を担う人材
アーキテクト DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計できる人材
データサイエンティスト/AIエンジニア DXに関するデジタル技術(AI・IoT等)やデータ解析に精通した人材
UXデザイナー DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材
エンジニア/プログラマ 上記以外にデジタルシステムの実装やインフラ構築等を担う人材

【出典】IPA「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」(2019年)

IPAの調査では、チームの役割の中で「非常に重要」だと回答されたのは「ビジネスデザイナー」で、次いで「プロデューサー」でした。また、それぞれの役割において必要となるスキルやマインドを次のように整理しています。前述の6つの適性がほぼ集約されているのが分かります。

役割別スキルとマインド

プロデューサー
【現状を変えたい思考】
・現状に疑問を抱く「合理的な思考」をする
・ディスラプティブ(破壊的)な発想・思考をいつも持っている
・新しいことへのチャレンジができる
【諦めない力/やりきる力】
・最後までやりきることができる
・現状を変えようとする持続的意志とエネルギー
【柔軟なプロジェクトマネジメント能力】
・プロジェクトのマネジメント能力
【リソースマネジメント能力】
・PM(プロジェクトマネジャー)やその配下のメンバーなど人的リソース管理
・複数プロジェクトの中でのリソースの優先順位付け

ビジネスデザイナー
【新しいビジネス企画力・推進力】
・新ビジネス創出を実践する研修を受講
・ビジネスをつくれる人材を外部からリクルートできる
・ビジネスの将来像を描ける
・変化に目を向け、先読みし、他社より先にいく力
【巻き込み力/調整力】
・相手の意見を聞き、互いに尊重し合い、調整する能力
・ポジティブ志向で仲間をつくる能力
・周囲を巻き込んで、新たに人を集める能力
【失敗を恐れず、固執せず、糧にできる力】
・失敗でも積み重ねることで人材として成長できる

【出典】IPA「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査報告書本編」をもとに作成

いずれにしても、DX人材には非常に多くのスキルが要求され、それらを満たす人材の絶対数が多くないことは容易に推測されます。しかし、こうした人材をそろえ、チームとして機能させなければDXは進みません。人材をそろえるための方法としては「中途採用」や「社内育成」、「外部企業とのパートナーシップ」などが考えられます。

しかし、人材市場におけるIT 通信業界出身者の需要はここ数年で急増し、獲得競争が激化しています。採用のみならず、今いる人材を育成することも重要です。

では、DX人材をどう育成すれば良いのでしょうか。

社内で人材を掘り起こして育成する

DX人材で特に重要視されるプロデューサーやビジネスデザイナーには、円滑なプロジェクト推進や効率的な組織運用、自社のビジネスへの理解など、一般的なビジネススキルが求められます。

そうしたスキルを備えた人材は、実は社内に豊富にいて発掘できる可能性があります。社内の人材を育成すれば、テクノロジーだけでなく自社のビジネスにも精通した、DXを推進する上で心強い戦力となる人材が確保できるようになります。

DX人材の育成方法は、「座学」「OJT」「ネットワーク構築」の3つです。座学ではDXに必要なスキルセットやマインドセットを身につけ、OJTでそれらを実践する力を取得します。さらに、社内外とのネットワークを構築し、多種多様な人材とつながって、常に最新の情報との接点を保つ必要もあります。

座学で知識を得てマインドセットを学ぶ

座学では、ハンズオン講座や社外講師による講演が有効だといわれています。ハンズオン講座は、特にテクノロジースキル習得の効果が大きく、ビッグデータの操作などによりテクノロジーの活用を具体的にイメージすることで、理解が深まります。また、DXはチームで推進するので、座学ではメンバーに対して自発的な行動を促すためのリーダーシップの育成も不可欠です。社外講師による講演は、どのようなマインドセットでDX推進に成功したかを当事者目線で語ってもらうことで、リアリティーを持ってマインドセットを学ぶことができます。

OJTで実行力をつける

座学で学んだスキルセットやマインドセットを実務に活かす訓練が、OJTです。社内に限定した小規模なプロジェクトを立ち上げ、活用力や実行力を身につける必要があります。座学で学び、OJTで実践する。この両輪がDX人材の育成には必要です。

社内外のネットワークを構築する

常にどこかで新しい技術やサービスが誕生している今、必要な情報を効率的に得るためには、社内外にネットワークを張る必要があります。例えば、最新の技術・サービスの紹介や各社の事例などを情報交換している社外コミュニティーに参加することは重要です。また、各分野で第一人者のSNSをフォローするなども有効です。

先行企業のDX人材育成事例に学ぶ

DX人材の育成に取り組み、成果を上げている企業の事例を紹介します。

企業内大学を設立し、イノベーター人材を育成した機械メーカー

国内機械メーカー
従業員数:約7,500名(単体・2021年3月)
資本金:約850億円

国内の機械メーカーでは新たなソリューション創出や、ものづくり技術の高度化、業務改革へのAI活用を重要課題と捉え、DX人材の育成を選択しました。大学と連携をして企業内大学を開講し、数学からプログラミング、機械学習やAI応用に至るまで幅広く学べる場をつくりました。学び直しの機会を会社が創出して、AIやIoTに強い人材を社内で育成する制度です。

営業メンバーを中心に専門組織でDX人材を育成

国内通信会社
従業員数:約17,000名(単体・2021年3月)
資本金:2,000億円以上

国内通信会社では、通信事業の枠を超えた新領域へ事業を拡大する成長戦略を打ち出し、社会課題の解決に向けたDX専門部署を新設しました。
スキルよりもマインドを重視した人選が特徴的です。連携先と交渉できるスキル、新事業立ち上げで重要になる売上やコスト意識の高さ、想定と異なった場合に速やかに計画を見直せる柔軟な思考力などを重視し、主に営業や営業企画、事業企画で活躍していた社員を立ち上げメンバーに選びました。
スキルは研修で補うほか、専門的な知識を持つメンバーを加える方法を選んでいます。今後は職位ごとに求められるDX人材像を整理しながら、より多くの人材育成を図る予定です。

人材育成と組織づくりの両輪でDXを推進

多くの経営者は、将来の成長や競争力強化のために、DXが必要だと実感しているはずです。それでもDXが進まないのは、既存のシステムが複雑になっていたり、ブラックボックス化したりしていることが一因かもしれません。また、DX推進の機運を全社で共有することも重要です。成果が出ている企業は、全社戦略に基づいてDXに取り組んでおり、推進するための組織体制もしっかりと構築されているようです。

DX人材は自社のビジネスに関する理解とデジタルリテラシーの両方が不可欠なため、自社で育成することが理想的です。適切な育成によって、デジタルのスペシャリストの中からも、ビジネスに詳しいエキスパートの中からも生まれる可能性があります。どの企業にもDX人材の原石が埋もれている可能性があります。

DXを推進する人材の育成と、その人材を活かす組織づくり。DX推進にはどちらも欠かせません。

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