2023年06月19日
2024年04月03日
DX人材とは、DXを推進するためのスキルや考え方を備えた人材のことを指します。経済産業省では以下のように説明されています。
自社のビジネスを深く理解した上で、データとデジタル技術を活用してそれをどう改革していくかについての構想力を持ち、実現に向けた明確なビジョンを描くことができる人材
DX人材が不足しており、育成方法や獲得方法に悩んでいる企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、どのようにDX人材を育成すれば良いのか、備えるべき資質やその習得方法、育成手段を解説します。
DX推進のための組織づくりに関するお役立ち資料をご覧いただけます
企業価値の向上・競争力強化を実現するために「DX」に取り組む企業が多くなっていますが、「DX推進のためのエンジニアが確保できない」「スキルを持った人材がいない」といった人材・組織に関する課題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。
パーソルグループでは、「エンジニア・DX人材の採用・育成・外部活用の実態と戦略【データから読み解くDX推進のための組織づくり】」を公開しています。
前半はDX人材をめぐる労働市場の動向などデータブックに、後半はDXが進まない理由を踏まえたうえで、課題別に方策をまとめています。DX推進のご参考としてご活用ください。
目次
DX人材とは、DXを推進するためのスキルを持ち、実行できる人材のことを指します。
主体性や好奇心を持ち、組織を牽引する存在となり、問題を解決し新しい価値を生み出します。
しかし、技術を持っているだけではなく、自分の会社の業務を深く理解し、他の人たちと一緒に仕事を進める能力やビジネスの視点も持っている必要があります。DX人材は、新しい技術を学ぶ意欲があり、リーダーシップを取りながら他の人たちと上手くコミュニケーションを取れる人材でなければなりません。
なお、DXの定義について改めて確認したい方は、「DXとは?意味や必要性・導入効果などの全体像を具体例付きで解説」を参考にしてください。
【お役立ち資料】DXをリードする人材を育成するポイントとは
多くの企業においてDXが推進されていますが、DX人材の採用市場は競争が激しいため、推進できるスキルを持った人材を社内で育成する企業が増えてきています。本資料では、DX人材を社内で育成する際のポイントや準備すべきことについてまとめました。 DX人材の不足にお悩みの方はぜひご覧ください。
多くの企業で推進されているDXは、大きく3つのタイプに分けられます。DXのタイプによって、求められる人物像は異なります。そのため、自社で推進するDXのタイプを把握したうえで、自社に必要なDX人材を見極めることが大切です。
DXのタイプやその内容、取り組み例は以下のとおりです。
DXのタイプ | 内容 | 取り組み例 |
---|---|---|
①プロセスDX ”仕事のやり方を変える” |
従来の業務プロセスにデジタル技術を活用 ➝業務効率化・業務改善を実現 |
・業務の可視化 ・業務の自動化 ・業務ナレッジ共有化 |
②ワークスタイルDX” はたらき方を変える” |
はたらく環境にデジタル技術を活用 ➝時間や場所の制約を減らし、多様なはたらき手を受容して活躍機会を増やす |
・テレワーク推進 ・タレントシェアリング ・EX(従業員体験)向上 |
③ビジネスDX ”新しい事業を生み出す” |
デジタル技術を活用 ➝新たな事業創造や既存ビジネスモデルの変革に取り組む |
・新規事業の開発 ・ビジネスモデルの変革 |
DX人材の明確な定義はありませんが、デジタルを活用し、ビジネスモデル・組織を変革していくためには、「デジタル技術・データ活用のスキル」「プロジェクトをリードする推進力」の2つが必要です。
経済産業省と独立行政法人情報処理推進機構の発表によると、DX人材に必要なスキルは以下5つの人材類型で分けられています。
各類型の主な役割は以下です。DXを推進する人材は他の類型とのつながりを積極的に構築し、他類型の巻き込みや手助けを行うことが重要です。
類型 | 役割 |
---|---|
ビジネスアーキテクト | ・DXにおける目的の設定 ・目的を達成するための関係者間の調整 ・プロセスの進行管理 |
デザイナー | ・製品やサービスの方針、開発プロセスの策定 ・仕組みやユーザー体験、イメージの設計 |
データサイエンティスト | ・データ活用戦略の策定 ・データ収集や加工 ・データ分析 |
ソフトウェアエンジニア | ・製品やサービスを提供するためのシステム、ソフトウェアの設計・管理・保守 ・開発や運用環境の最適化 |
サイバーセキュリティ | ・サイバーセキュリティリスクの検討、評価 ・セキュリティ対策の管理や統制 ・対策の実施や保守、運用 |
デジタル人材に求められるスキルは、技術的なスキルだけではありません。発想力や論理的思考力、マネジメントスキルのほか、対人関係や思考のスキルなど、業務を推進するためのスキルも必要です。
また、どのようなデジタル人材でも共通して持つべきスキルとして、以下の3つが挙げられます。
共通スキル | 概要 |
---|---|
業務知識 | ・既存の業務フローやプロセスを理解し、具体的に課題を把握できる ・すでに業務知識がある、または十分なインプットができ、課題への的確な施策を打てる |
デジタルリテラシー | ・デジタルの基礎知識や使い方について理解し、業務へ適切に活用できる ・最新のトレンドを把握し、適切なソリューションを選べる |
推進力 | ・組織全体を見据え、大きな枠組みで物事を捉えられる ・社内外の関係者を取りまとめ、組織全体の改革や業務改善に向けてマネジメントができる ・失敗やトラブルが発生しても、試行錯誤して取り組みを続けられる |
【お役立ち資料】DX人材に必要なスキルと人材育成ポイント
DX人材には各専門知識のほか、業務知識やデジタルリテラシーなど様々なスキルが求められます。本資料では、DX人材を育成するための具体的な施策やステップを解説しています。DX推進を検討している方はぜひご覧ください。
DXを推進する上ではデジタル技術への知識だけでなく、ステークホルダーと話し合いながらプロジェクトを進めていく主体性や課題発見力も求められます。
IPAの調査では、プロジェクトを力強く推し進める適性として以下の6つを「仮説」として挙げています。
適性因子 | 概要 |
---|---|
不確実な未来への創造力 | 取り組むべき領域を自ら定め、新分野への取り組みをいとわず、ありたい未来を描いてそれに向かって挑戦する姿勢。現況を把握して課題を設定できる能力。 |
臨機応変/柔軟な対応力 | 計画通りのマネジメントではなく、外部の状況変化を踏まえ、方向転換をいとわずに目標に進めていく姿勢。 当初の計画にこだわりすぎない姿勢。 |
社外や異種の巻き込み力 | 対立するメンバーがいても巻き込み、外部とも交わりを多く持ち、自分の成長や変化の糧にできる包容力。 |
失敗したときの姿勢/思考 | 一時的な失敗を恐れずに、失敗を糧にして前に進めることができる姿勢。 |
モチベーション/意味づけする力 | 自ら解決したい課題を明確にし、自分の言葉で話せる力、前向きに取り組みたいと感じられる姿勢。主体性や好奇心を持っている。 |
いざというときの自身の突破力 | 困難な状況に陥ったときにも解決策を模索し、壁を突破できるリーダーシップ。物事に取り組む際の責任感の強さ。 |
越境学習のスキル | 自身の専門領域にとどまらず、他の専門領域の知識についても学び、新たな視点やアイデアを得る能力。例えばIT技術者であっても、プロジェクトの目的まで見通した状態で業務を行う。 |
企業はデジタルリテラシーと上記の適性をあわせ持つ人材を獲得しなければいけません。
国際経営開発研究所(IMD)が発表した「世界のデジタル競争力ランキング2023」において、日本は63カ国中32位でした。2022年の29位からさらに3つランクを落とし、過去最低となっています。特に「人材/デジタル・技術スキル」は63位と低く、日本におけるIT人材の不足やデジタル技術・スキルの不足が顕著に現れています。
また、総務省の調査によると、デジタル化に関する課題や障壁について、日本は米国・ドイツ・中国に比べて人材不足を課題と認識している割合が高いことがわかります。
こうした状況を受けて、日本企業は変化の激しいグローバル市場の中で競争優位性を築くためにも、DXの推進は急務であるといえます。そして、DXを推進するためには、DX人材が不可欠であり、企業は採用や育成によってDX人材を獲得する必要があります。
企業にとって、いかにしてDX人材を獲得するかは急務な課題です。経済産業省の「IT人材供給に関する調査」によると、2030年には最大で79万人ものIT人材が不足するといわれており、DX人材の獲得競争は激化しています。
そのため、採用だけでなく、社内に適任者を探し、育成することも重要です。
本章では、DX人材を獲得する3つの方法について紹介します。
人材市場におけるIT 通信業界出身者の需要はここ数年で急増し、獲得競争が激化しています。一般的な採用活動のほかに優秀なDX人材を競合他社からスカウトするケースも増えています。
自社のDX推進を支える人材を採用するためには、次のポイントを押さえておきましょう。
採用活動を始める前に自社の課題を洗い出し、DX人材に求める役割や必要なスキル、ノウハウを明確にします。
求める人物像が漠然としているときに陥りがちな、採用後の組織戦略とのミスマッチや、選考がスムーズに進まないといった事態を防ぐことができます。
DX人材への需要の高まりから、求職者にとって魅力的な企業であることをアピールできないと、なかなか応募や内定受諾者が集まらない可能性があります。
「この企業に入りたい」「自身の能力が発揮できそう」という動機付けにつながる要素を可視化してみましょう。また、社員に対し、面接時に「自社のどこに魅力を感じたか(気になったか)」をヒアリングすると、求職者目線での企業の選び方のヒントを得ることもできます。
DX人材の採用は競争力が激しいため、「待ち」ではなく「攻め」の姿勢でアプローチしていくことを心がけましょう。
DX人材の採用ポイントを詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
【関連記事】DX人材を採用するには?必要な資質や採用時のポイントについて解説
【お役立ち資料】成功事例から学ぶDX人材の採用ノウハウ
DX人材を確保するには採用ブランディングの強化が重要です。本資料ではDX人材の採用方法のほか、トヨタ社の採用ブランディング成功事例を合わせて解説します。
DX人材で特に重要視されるプロデューサーやビジネスデザイナーには、円滑なプロジェクト推進や効率的な組織運用、自社のビジネスへの理解など、一般的なビジネススキルが求められます。
そうしたスキルを備えた人材は、実は社内に豊富に存在し、発掘できる可能性があります。
社内の人材を育成すれば、テクノロジーだけでなく、自社のビジネスにも精通した心強い戦力となる人材が確保できるようになります。
DX人材の育成方法は、以下の3つです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
座学では、ハンズオン講座や社外講師による講演が有効だといわれています。
ハンズオン講座は、特にテクノロジースキル習得の効果が大きく、ビッグデータの操作によりテクノロジーの活用を具体的にイメージすることで、理解が深まります。
また、DXはチームで推進するため、座学ではメンバーに対して自発的な行動を促すためのリーダーシップの育成も不可欠です。社外講師による講演は、どのようなマインドセットでDX推進に成功したかを当事者目線で語ってもらうことで、リアリティーを持ってマインドセットを学ぶことができます。
座学で学んだスキルセットやマインドセットを実務に活かす訓練が、OJT(On the Job Training)です。社内に限定した小規模なプロジェクトを立ち上げ、活用力や実行力を身につける必要があります。
OJTを通して業務指導する際に必要な流れは以下の通りです。
OJTは仕事を覚えてもらうだけではなく、OJTを通してどのようなDX人材になってほしいか、目的と目標を決めて、評価・指導を行うことも大切です。
座学で学び、OJTで実践する。この両輪がDX人材の育成には必要です。
新しい技術やサービスが次々と誕生している今、必要な情報を得るためには、社内外にネットワークを構築することが重要です。
例えば、最新の技術・サービスの紹介や各社の事例などを情報交換している社外コミュニティーに参加したり、各分野で第一人者のSNSをフォローしたりするとよいでしょう。
【お役立ち資料】DX人材育成で押さえたい3つのポイント
DX人材育成は中長期的かつ計画的に取り組む必要があります。本資料ではDX人材育成の前に押さえるべき3つのポイントから研修実施のコツまで紹介します。
外部人材を活用する最大のメリットは、解決したい課題にあわせて専門性の高いスペシャリストをアサインできることです。新規事業の立ち上げのように、短期間で必要な経験・スキルが変わる場合も、外部人材であれば必要な期間だけスポットで活用することができます。
特に最近は、優れたエンジニアや経験豊富なコンサルタントなどの専門家がフリーランスとして活躍しているケースが増えていますが、採用市場にはあまり登場しないため、社員として雇用するのは非常に難しいでしょう。しかし、外部人材を活用すれば、課題にマッチしたエンジニアやコンサルタントの力を得ることができます。
【調査レポート】DX人材の採用・外部活用・育成の実態とは
人材が不足する中、DX推進における新たな打ち手として外部人材の活用が見込まれています。本資料では外部人材の実態レポートのほか、DX人材の採用・育成の取り組み例を調査データをもとに解説します。
DX人材を採用する際には、経営者から従業員まで、社内が1つのことに取り組む雰囲気を作る組織設計が大切です。DXの最終的な目標は、部署やチームのような小さな枠組み内に留まらない、組織全体の変革にあります。
また、優秀なDX人材を採用・育成できたとしても、その人材が早々に退職した場合、新しい人材を確保しなければなりません。DX人材を長期的に確保するために、評価方法や給与の見直しなどを行い、持続的な成果を出せるような体制を構築することが大切です。
最後に、DX人材の育成に取り組み、成果を上げている企業の事例を紹介します。
国内機械メーカー
従業員数:約7,500名(単体・2021年3月)
資本金:約850億円
産業構造や社会構造の大きな変革期に対応するため、企業内大学「ダイキン情報技術大学」を開講しました。大阪大学を中心とした教育・研究機関と連携し、数学などの基礎知識からプログラミング、機械学習やAI応用に至るまで幅広く学べる場をつくりました。2021年度末にデジタル人材1,000人の育成を達成、2023年度末に1,500人育成を目標に取り組みを進めています。
学び直しの機会を会社が創出して、AIやIoTに強い人材を社内で育成する制度です。
国内ガス会社
従業員数:約3,060名(単体・2023年3月)
資本金:約1,418億円
同社では、データの分析や利活用ができるDX人材に焦点をあてた、求人募集ページの用意や「DX/データアナリスト採用」枠の設置に取り組みました。
求人募集ページには、求めるDX人材の人物像を「データ分析・利活用を中心に、価値創造や課題解決に取り組む人材」として明確に定義してあります。応募者が入社後をイメージしやすいようにサイト内で業務例を紹介しているほか、応募後の説明会にて、実際に活躍する社員の声を紹介し、DX人材への訴求力を高めました。
また、採用枠の設置と並行して「超実践型」のインターンシップを実施した結果、2023年度のインターンシップ倍率が10倍を超すほどの応募を得ており、学生のなかでもDXに強い人材の興味を引くことに成功しています。
国内食品メーカー
従業員数:約15,227名(連結・2023年3月)
資本金:約251億円
同社は「DIGITIZE YOUR ARMS(デジタルを武装せよ)」をスローガンに掲げ、全社員のデジタルスキル向上を目指し、DX人材育成を進めています。
プログラミングの深い知識がなくてもアプリケーション開発ができる「ローコード開発ツール」を導入し、業務改善システムの開発を外部委託から社内での開発に切り替える社内体制を整えました。それにより、事業部門内でアプリケーションを開発しています。実際に使用しながら開発することにより、DXの推進にもつながっています。
DXを推進するためには、デジタルリテラシーと推進力を持ち合わせたDX人材の獲得が不可欠です。
DX人材の採用または育成が求められていますが、パーソルワークスイッチコンサルティングの調査では、DX人材の育成課題として「取り組んでいるがDXにつながらない」という回答が最も多く挙げられていました。
自社に人材育成やデジタル技術に関するノウハウがない場合は、外部の企業への依頼も検討してみるとよいでしょう。
DX推進のための組織づくりに関するお役立ち資料をご覧いただけます
企業価値の向上・競争力強化を実現するために「DX」に取り組む企業が多くなっていますが、「DX推進のためのエンジニアが確保できない」「スキルを持った人材がいない」といった人材・組織に関する課題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。
パーソルグループでは、「エンジニア・DX人材の採用・育成・外部活用の実態と戦略【データから読み解くDX推進のための組織づくり】」を公開しています。
前半はDX人材をめぐる労働市場の動向などデータブックに、後半はDXが進まない理由を踏まえたうえで、課題別に方策をまとめています。DX推進のご参考としてご活用ください。