2023年07月25日
2023年10月12日
DXを成功させるためには、デジタルに関する知識やスキルを持った人材が欠かせません。しかしながら、日本国内ではDX人材が不足しています。
企業は従業員を「DX人材」として育成し活躍させることが求められています。しかし「どのようにDX人材を育成すればいいのかわからず、なかなか取り組みを始められない」という企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、DX人材の育成方法を解説します。他社は何を行っているのか、どのようなステップで育成すればよいのか、DX人材にはどのようなスキルが必要なのかなどを、企業の成功事例を交えて解説します。
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あらゆる企業においてDXは不可欠となっていますが、DXを推進するための人材が不足している企業が多いため自社でDX人材を育成する企業が増えてきています。
・DX人材を育成する環境を整えたい
・どのようにDX人材育成を進めるか知りたい
そのような方に向けて、【DXをリードする人材を育成するポイントとは】を公開しています。
DX人材の育成・採用にお困りの方はぜひご活用ください。
目次
DX人材とは、DXを進めるために必要なスキルや適性を持ち、DXをリードしていく人材のことです。また、DX人材は大きく2種類に分けられます。
DX人材を育成する際には、どちらの人材を育てたいかを事前に決めてから適切な育成方法を取り入れる必要があります。
DX人材を確保する方法はさまざまですが、自社で育成した場合以下のようなメリットがあります。
自社の社員は事業方針や業務内容から既存のシステムまで熟知しています。DX人材を自社で育成すると、社内の人材が中心となってDXを進めるため、自社の現状を把握している人材による最適なDXの実現が可能です。
外部ベンダーへの委託や中途採用した人材に任せてDXを推進する場合、自社業務の課題や既存システムとの互換性、連携など、DXを進めるために把握すべき現状や希望する改善内容などに認識の齟齬が生じる恐れがあります。
実際に自社のシステムを使用して毎日業務を行っている社員がDXに携わるのであれば、システムと連携した業務の効率化や課題の改善、新規ビジネスの創出につながります。自社に最適なDXが進められるのは大きなメリットです。
DX推進は一部の部署だけでなく部署の垣根を越えて会社全体で進めなければならないプロジェクトであるため、各部署のさまざまな社員同士が連携して進める必要があります。社内全体を取りまとめてスムーズにDXを進めるには、企業風土や社内で認識されている暗黙のルールなどに配慮しながら、部署ごとの業務内容や必要な機能などを調整することが重要です。
DX推進を外部に委託した場合、社内のルールなどに詳しくないベンダーが中心となって行うため、全部署と連携を取りながら進めるのが難しくなります。社内の状況を把握している社員が中心となって進めるケースでは、全部署との連携が取りやすくなるため、DXを推進するのに適した社内体制の構築が可能です。
経済産業省が発表した「DX推進スキル標準(DSS-P)」では、DXの取り組みに必要な人材として、主に5種類の類型があるとしています。各人材類型が、個々のスキルを用いて求められる役割を果たすことで、DXが効果的に進められます。
DX人材の育成で重要なのは、DX人材に求められるスキルを理解し、自社の育成方針に誤りがないか再確認することです。人材育成で重要なのは「自社で活躍できる場所があるか」です。自社のDX推進に適した人材像やスキルが設定されていないと、宝の持ち腐れとなってしまう可能性が出てきます。
また、独立行政法人情報処理推進機構の調査では、DX人材に求められる資質について6つの適性因子を仮説として挙げています。DX人材には卓越したコミュニケーション能力や外部状況に応じた柔軟な対応力など、さまざまな適性因子が必要です。
適性因子 | 概要 |
---|---|
不確実な未来への創造力 | 取り組むべき領域を自ら定め、新しい分野にも積極的に取り組み、目標とする未来を描いて挑戦する姿勢。現況を把握して課題を設定できる能力。 |
臨機応変/柔軟な対応力 | 計画通りのマネジメントではなく、外部状況の変化や現状を踏まえながら、目標に向けて適切に方向転換を行い進めていく姿勢。当初の計画にこだわりすぎず、臨機応変に対応する力。 |
社外や異種の巻き込み力 | 対立する周囲のメンバーを巻き込むだけでなく、外部とも多くの交わりを持って、自分の成長や変化にもつなげられる受容力。 |
失敗したときの姿勢/思考 | 一時的な失敗を、成功に向けた過程と受け取り、糧にする力。失敗を恐れず前に進み続ける姿勢。 |
モチベーション/意味づけする力 | 自ら解決したい・取り組みたい課題を明確にして自身の言葉で表現できる力、前向きに取り組みたいと感じられる姿勢。主体性や好奇心を持っている。 |
いざというときの自身の突破力 | 解決が困難な状況に陥った場合でも、あきらめずさまざまな方法を模索して、状況を改善するためにリーダーシップを発揮する姿勢。物事に取り組む際の責任感の強さ。 |
越境学習のスキル | 自身の専門領域にとどまらず、他の専門領域の知識についても学び、新たな視点やアイデアを得る能力のこと。例えばIT技術者であっても、プロジェクトの目的まで見通した状態で業務を行える。 |
DX人材の育成にお困りではありませんか?
・他社がどのようにDX人材を確保しているのか参考にしたい
・IT人材の動向や、採用・育成などに関する実態を把握しておきたい
このような方に向けてパーソルグループでは、DX推進やDX人材の確保に役立つ資料を公開しています。ぜひご活用ください。
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DX人材の育成に関して、以下のような疑問や悩みを持っている方も多いのではないでしょうか。
ここでは、それぞれの課題とその解決策について解説します。
前述したように、DX人材といっても多様な職種や役割があるため、デジタル技術を習得させるだけでは不十分です。
詳しくは後述しますが、まずは自社がDXを推進する目的を明確にし、現在社員がどのようなスキルを持っているかを整理します。そのうえで足りないものを明確にし、どのような人材を育てるべきなのかを定めることが大切です。
以下のようなスキルマップを活用することがおすすめです。
自社だけでDXの目的や必要な人材を明確にできない場合は、外部コンサルタントの力を借りるのもひとつの方法です。
DX人材の育成方針が定まったとしても、どのように学習させればよいのかが分からないという企業も多いでしょう。
DX人材を育成するには、次のような方法があります。
社内にノウハウや知見がある場合は、自社独自の研修を設計し、社員に受講させることもできます。
しかし、必要なスキルを習得できる研修を自分たちで作れる企業はそう多くはないでしょう。その場合は外部に頼ることが有効です。
e-learningであれば、あらかじめDX人材の育成に必要なカリキュラムが組まれた教材を使用することができます。小テストや理解度チェックアンケートなどを実施できるケースも多いです。
また外部のコンサルタントやDX推進ソリューションを活用すれば、必要な教育プログラムの企画から各種教育コンテンツの提供までを実施してもらえることもあります。
DX人材の育成が実務に活かせないケースとして挙げられるのは、座学を中心とした育成になってしまっているケースです。もちろん、座学で基礎知識やスキルを習得することは必要です。
しかし、DX人材にはさまざまな能力が求められており、それらのインプットだけでは実務に活かせないケースも多いです。OJT(実務を通し学習させる手法)などを取り入れ、座学で学んだ知識やスキルを実務で活かす場を提供することが重要です。
DX人材の育成は大きく5つのステップに分けられます。より効果的なDX人材育成を行うには、それぞれのステップで重視するポイントを押さえながら順番に実行していく必要があります。
人材育成のポイントとして、まずDXで何を実現するべきかを定義しておくことが重要です。いきなり対象者の選定から始める、人材計画を立てるといったことはせず、DXの目的を明確にしましょう。ここではそれぞれのステップについて解説します。
DX人材の育成において、最初に必要となるのは目的の策定です。企業ごとに最適なDXの内容は異なります。自社に合ったDXを成功させるためには、最初にDXの目的を明確に定めておくことが重要です。例えば、DXによって新しくビジネスを作るのか、ビジネスプロセスのデジタル化を進めるのかといった目的によって、求める人材の要件が変わってきます。
まだDX戦略が定まっていない場合には、有識者やアドバイザーを役員に登用するなどの方法で、経営者側の働きかけによるDX戦略の整理を実行する必要があります。
次に、DXに必要な人材の要件定義を行います。先に定めたDXの目的を踏まえて、どのようなスキル・素養を持った人材が自社のDX推進に必要かを洗い出しましょう。
エンジニアリングやデータサイエンスなどの「技術系スキル」、組織やプロジェクト管理などの「ビジネス系スキル」、コミュニケーション能力や物事に柔軟に対応できる柔軟性、精神力などの「スキル以外の素養」に分けて整理すると、重視すべきポイントを押さえやすくなります。
人材の要件を定義したあとには、DX人材のキャリアパスを設計します。DX人材育成を短期間で終わらせることは難しいため、キャリアパスを立てて、計画的にDX人材を育成しなければなりません。
キャリアパスの設計では、設定したDX人材の要件をもとに自社で不足しているスキルや人材を整理し、実際に社員が学ぶ必要のあるスキルなどを明確にします。例えば、スキルマップを活用してスキルを可視化し、社員に何を学ばせるのか定義する方法があります。
スキルマップは、社員一人ひとり、また、部署やグループ内の社員がどのスキルを持っているかを示す一覧表です。スキルマップを活用すると、社員の持つスキルの種類だけでなくスキルレベルまで把握できるため、効率的に人材育成を行うためのキャリアパス設計に役立ちます。
次に、育成対象者を選出します。選出する際は、1.既に一定のDX基礎リテラシーがあるか、2.社内DX推進をミッションとして与えられているか、あるいはその予定があるか、3.実務でDX関連の業務を行っているか、あるいはその予定があるか、という観点から対象者を特定することが重要です。
全社をあげてDXを推進するためには、育成対象者はエンジニアなどの専門的なデジタルスキルを持つ社員だけでなく、社内の各部署から幅広く集める必要があります。
育成計画を立案し、実行していきます。実行方法は、主に3種類あります。知識の習得やマインドセットを行う座学、実践で学べるOJT、社内外でのネットワーク構築です。
座学では、DXに関する専門的な知識の習得が可能です。研修や講義などの実施で、デジタルスキルやその他DXに関する知識を学習します。チーム全体でDXを推進するためのチームマネジメントやリーダーシップスキルの習得、変革を恐れないマインドセットなども行います。
OJTは、実際の業務経験を通じた人材育成方法です。座学で学習した知識やマインドセットは、OJTで実践して定着させ、実行力を身につけていきます。
社内だけでなく社外とのネットワークを構築することも重要です。IT関連の知識や技術は変化が激しいため、常に最新の情報を仕入れておかなければなりません。最新の知識や技術をチェックし、学び続ける必要があります。
人材育成を担当する上司とDX担当者が話し合いながら、DXの目的を達成するためのロードマップとして具体的なアクションプランの設定を行います。各プロセスを小さなタスクに分けて、誰がどのタスクを担当するか定めたアクションプランを設定すると、DXで行う業務の把握や推進に役立ちます。
例えば、DX研修を計画している場合、以下のようなアクションプランシートを作ると良いでしょう。
育成後には、実践でのアウトプットと、新しい知見を習得するインプットの繰り返しが欠かせません。一度学習した内容をもとにアクションプランを設定したとしても、あとからプランの見直しが必要な部分に気づくケースがあります。当初に設定したDXの目的を実現できる完成度の高いDXを進めるために、PDCAサイクルを取り入れてアクションプランの設定、改善を繰り返します。
DX人材の育成にお困りではありませんか?
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・IT人材の動向や、採用・育成などに関する実態を把握しておきたい
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これまでの企業では、DX人材を育成する機会はそれほど多くはありませんでした。そのためDX人材の育成を行っている企業でも、知識だけを学ぶ研修を実施するケースがほとんどで、具体的な成果につながっていないのが実情です。企業によってDX推進のために何を学ぶべきかが異なるため、DXに対する考え方を学習できる実践的な育成を行う必要があります。
ここでは、DX人材育成を成功させるために必要な4つのポイントを解説します。
DX人材の育成が目的になってしまうケースは少なくありません。育成対象者が研修の機会を与えられただけで、具体的なDX推進には関わっていないようなケースです。
DXの知識を習得させるための研修に費用と時間をかけても、そこで人材育成を完了している場合には、基本的な知識が身についただけで実際の業務では有効に活用できない恐れがあります。単なる知識や正解を伝える研修を実施して終わるのではなく、DXに対する考え方を学べる研修を実施することが大切です。
考え方を修得できれば、自分の業務と紐づけてDXを理解でき、現場でその学びを活かすことができるようになります。これこそがDX推進の原動力になり得ます。
DX人材の研修後は、最初から大きなプロジェクトに取り組むのではなく、スモールステップで小さなプロジェクトへの取り組みから始めることが重要です。たとえばエクセルのチェック作業にRPAを導入してみたり、プロジェクトの広報活動にSNSツールを利用してみたりといった、職場ごとの小さなDXプロジェクトなどに取り組み、業務改善や課題解決などの成功体験を積み重ねます。
このような小さなDXに関する成功体験は、DXに関する成功事例として経営層やDX研修を受けていない社員などと共有できるメリットもあります。成功事例が共有されると、社内のDXに対する理解や関心が高まり、DX推進への体制強化が可能です。
小さなDXプロジェクトは期間が短く難易度が低いものが多いため、成功につなげやすい点もメリットです。もし失敗した場合にも大きな損失は生じづらく、経験を生かして改善策を講じられます。
DX推進に関して社内で支援体制を設けることも重要です。企業のDX推進は、本人の主体性に任せているケースが多くみられます。これでは、担当者が研修を受けてから実際に変革が完了するまでには長い期間がかかります。
DX推進を担当する従業員は、DX化を進めている間にもDXの最新情報を学び続け、現場で活用し続けていかなければなりません。周囲の支援がない状況では、最新情報や現場の変化が生じたときにどうすべきか分からなくなるケースもあり、モチベーションを維持するのが難しい問題があります。
DX担当者に任せるだけでなく、社内全体で協力する意識を持ち、支援体制を設けることで、担当者の負担が軽減され適切な人材育成の実現につながります。
支援体制を設けるには、まずは経営層がDX化に対してその重要性をよく理解し、明確なビジョンを持つことが大事です。そのうえで、周囲の従業員との積極的なコミュニケーションや従業員教育などを行い、DX志向の企業文化醸成を進めていくとよいでしょう。また、予算の確保や専門スキルを持った人材の採用、外部パートナーとの提携なども支援の大事な要素です。
さらに、DX化に取り組む人材に対して、スキルや実績の評価を行うことも大切です。たとえばKPIの設定や定期的なフィードバック、パフォーマンスレビューなどを行えば、課題や改善点が見つかり、当初の目標設定を見直す機会を設けられるので担当者の新たな成長につながります。また、DXの成果そのものを評価することで、モチベーションの維持にも役立ちます。
DX人材を確保する方法は、育成だけではありません。その他にも、以下のような選択肢もあります。
情報処理推進機構の「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査」調査によると、デジタルビジネス推進企業では、DX推進を主導するリーダー層となる人材は内部で保有する傾向があります。
一方で、システムのデザインや実装を担当するUI/UXデザイナーやエンジニアに関しては、社内の人材を育成するだけではなく、外部人材も積極的に活用している様子がうかがえます。
このように社内人材の活用のみだけではなく、状況や不足している人材に応じて適切な解決策を検討することが重要です。
本章では、DX人材の育成を成功させた企業の事例を紹介します。自社の人材育成の参考にしてください。
ダイキン工業株式会社では、自社にDX(AI)人材を育成する教育システムを構築しています。2017年に大阪大学などと連携して、企業内大学「ダイキン情報技術大学」を設立しました。DX人材育成のため、新入社員向けの基礎的なAI知識を身につける講座から、既存社員向け、基幹職層向け、幹部層や役員向け講座まで、対象者のレベルや役割に応じた講座を準備しています。
技術職として入社した新入社員300名のうち希望する社員100名に向けた研修は、2年間行われる長期間の研修です。コンピューターシステムの基礎学習から現場参加型の応用的な学習まで、研修に専念できる環境を整えて、DX人材の育成を行っています。
日清食品ホールディングスは、「DIGITIZE YOUR ARMS(デジタルを武装せよ)」をスローガンに掲げてDX人材育成を進めています。全社員のデジタルスキル向上を目指した取り組みが特徴です。
プログラミングの深い知識がなくてもアプリケーション開発ができる「ローコード開発ツール」を導入し、業務改善システムの開発を外部委託から社内での開発に切り替える社内体制を整えています。事業部門内でアプリケーションを開発・実際に使用していることから、DXの推進にもつながっています。
【無料DL】DX人材を育成するポイントを公開中
あらゆる企業においてDXは不可欠となっていますが、DXを推進するための人材が不足している企業が多いため自社でDX人材を育成する企業が増えてきています。
・DX人材を育成する環境を整えたい
・どのようにDX人材育成を進めるか知りたい
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DX人材の育成・採用にお困りの方はぜひご活用ください。
DX人材を育成するには、まずはDXの目的を定義することが欠かせません。そのうえで人材要件の定義や育成対象者の選定へとステップを踏んでいきましょう。担当者だけに任せるのではなく、社内全体で協力・応援するカルチャーを醸成し、支援体制を構築することも大切です。
パーソルイノベーション株式会社
TECH PLAY company 事業責任者
武藤 竜耶
2011年、インテリジェンス(現、パーソルキャリア)に新卒入社し、約4年間デジタル人材領域の採用支援を担当。
その後、デジタル人材領域の採用支援部門責任者として2年間部門立ち上げに取り組む。
2017年に『TECH PLAY』にジョインし、現在はTECH PLAYの事業責任者として全体を管掌。