2023年06月12日
2023年11月08日
近年、DXという言葉をよく耳にしますが、DXとは具体的にどのような取り組みを指すのか、DXとデジタル化とは何が違うのかについて正しく理解している人は多くありません。本記事では、DXの意味や目的、メリット、進め方、成功事例などについて解説します。
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DXに取り組む企業が大幅に増加していますが、DXの推進を実現するにはいくつかのポイントを押さえることが大切です。
・DXが社内で推進できていない
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目次
DXとは、「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略称であり、デジタル技術によって業務やビジネスモデルを変革し、企業価値を高めるための取り組みのことです。
わかりやすい例を挙げると、電子印鑑を活用したペーパーレス化やチャットボットを活用した24時間の顧客対応などが、DXにおける取り組みの一部としてよく行われています。
DXを実施する目的として以下のようなものが考えられます。
これらの目的の中から、自社がDX推進によって何を実現したいのかによって戦略や実行計画などが変わってきます。
DXを推進している企業の中には、その目的を既存の商品・サービスの付加価値向上や業務効率化などとしていることもありますが、厳密にはDXはデジタル化とは意味が異なります。
経済産業省「デジタルガバナンスコード2.0」(旧DX推進ガイドライン)では、DXを以下のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
例えば、音楽業界がCDを販売する従来のスタイルから、デジタル技術を活用したサブスクリプションモデルへと移行するようなビジネスモデルの変革がDXに該当します。
一方でデジタル化とは、アナログな業務プロセスをデジタルで処理できるようにすることです。具体的には「紙の資料をデジタルデータに置き換える(ペーパーレス化)」「これまで手作業していた業務をITツールによって効率化・自動化する」といったことが該当します。
DXを成功させるためには業務やビジネスモデルをデジタル化することが前提にはなっていますが、逆にデジタル化によってDXが実現するわけではありません。
DXとは、デジタル技術を利用したデジタル化を行いながら、革新的なビジネスモデルを構築し、市場での競争優位性を確立することを意味します。
現代社会において、従来のやり方では競争優位性を保つことが難しくなってきており、DXの必要性を感じる企業が多くなってきています。
現在の市場ではデジタルの発展に伴い、以下のような変化が起こっています。
スマートフォンなどのデジタルツールが普及しユーザーの消費行動や価値観を変化させ、それに伴って新しいビジネスモデルや製品・サービスが次々と生まれています。
また企業は、かつては情報システムや新技術の導入に多額の投資と時間が必要でしたが、クラウドサービスやAI、IoTの発展により、これらのハードルが大幅に下がっています。これにより、デジタル技術を駆使した新興企業が次々と現れ、既存ビジネスを脅かす環境が生まれやすくなっているのです。
国内だけではなく海外も含めたデジタル企業が競争相手となる可能性があるため、今後はさらに競争が激化していくことが予想されています。
このような市場に適応し競争優位性を保つために、DX(データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革すること)が注目されているのです。
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DXの実現によって得られるメリットはさまざまです。DXに取り組む際は、どのような効果を得たいのかを事前に明確にしておくことが重要です。
イノベーションの創出による競争力の向上は、DXがもたらす大きなメリットのひとつです。かつては世界トップクラスの国際競争力を誇っていた日本ですが、1990年代半ば以降は下降の一途を辿っています。例えば、スイスのビジネススクールIMDが発表している「IMD世界競争力ランキング(2022年)(The 2022 IMD World Competitiveness Ranking)」では、日本は64カ国中34位と低調な結果でした。
日本経済の国際競争力がこのように低迷しているのは、デジタル技術への対応の遅れや、内向きで硬直的な企業風土などが原因だと指摘されています。
デジタル技術への対応の遅れに関しては、同じくIMDが公表している「世界デジタル競争力ランキング(2022年)」で、日本の総合順位は63カ国中29位でした。この低調な結果を招いているのは主に「ビジネスアジリティ(俊敏性)」の低さ(62位)であり、内訳を見ると、「国際経験」「企業の俊敏性」「ビッグデータの使用と分析」がいずれも63カ国中63位と最下位でした。
たとえ先進的な技術を持っていたとしても、「すばやく受け入れない/使わない」「使いこなすスキルが現場にない」といった状況ではどうしようもありません。グローバル化により、テクノロジーを武器にした海外資本が次々と国内市場に参入してくる中、既存の事業や方法を改善するだけでは、国際的な市場競争に打って出ることが難しくなります。
しかし、デジタル技術への対応において日本には成長の余地が大いにあると捉えることもできます。DXによって全社的にデジタル文化を根付かせ、アジリティや挑戦的なイノベーションを重んじた企業風土を確立できれば、競争力の向上は見込めます。
DXの推進にともない、新しい技術によって構築されたシステムの導入が必要になります。システムの導入により、過去の技術で構築されたシステム(レガシーシステム)が刷新され、業務の効率化が期待できます。
レガシーシステムの刷新は、日本企業における大きな課題の一つです。2018年に経済産業省が公表した調査によると、8割以上の企業が社内に何らかのレガシーシステムを抱えており、2025年には稼働21年以上の基幹システムが6割を超える見込みです。
レガシーシステムを企業が抱え続けた場合、メンテナンスコストやセキュリティリスクの増大、新技術への対応の困難さなど多くのデメリットがあります。この問題を放置した場合、2025年以降、最大12兆円/年の経済損失が日本に生じると「DXレポート」では警鐘を鳴らしています。
レガシーシステムの刷新によって今までかかっていた運用コストの削減や、複雑化したシステムの見直しによる業務の属人化の防止が期待できます。企業の成長を目的としたレガシーシステム刷新を行うことにより、結果的に業務の効率化へとつながります。
労働生産性の向上も期待できる効果のひとつです。現在の日本経済が低迷している一因として、1人あたりの労働生産性が低いことが挙げられます。加えて、少子高齢化による人材不足も進行しており、生産性の低さを労働力で埋めることができない状況にあります。【出典】公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較2022」
DXによって組織全体や業務フロー、はたらき方を再構築することは、生産性向上に有効です。例えば、手作業で行っていた業務をデジタル化すれば、パソコンなどによる自動処理が可能になり、従業員は付加価値の高い業務に集中できます。業務のスピードや精度の向上は、顧客満足度や業務品質の向上にもつながります。
他にも、クラウドシステムや各種ITツールなどでテレワーク体制を構築すれば、柔軟なはたらき方が可能になり、ワークライフバランスの向上も期待できます。さらに従業員のモチベーション向上や離職率の低下、多様な人材の雇用促進など、さまざまなメリットがあります。
DXを導入することで、競争力の向上や業務効率化などが期待されます。しかし、DXの導入は容易ではありません。以下のような難点があるため、正しく理解しておきましょう。
DXを推進する際は、技術の導入だけではなく、業務プロセスやフローの大規模な改革を伴うことが多いため、会社全体の理解と協力が必要です。経営層が独断でDX推進を進めても成功する可能性は低く、従業員全員の意識改革が求められます。
経営層が優先的に動くことは大切ですが、IT担当者や各部門とのコミュニケーションを取りながら進めなければなりません。時には従業員の業務リソースを圧迫してしまうかもしれませんし、新しい体制や業務プロセスに対して反発する従業員も出てくるでしょう。
DX推進は、全社で目線を揃えて進める体制を築くことが大切です。
DXを導入する場合、既存のデータや業務プロセスが変更されるため、システム移行が困難になる可能性があります。
例えば以下のような問題がよく起こりがちです。
適切な人材やサポートなしでのシステム移行は、企業のDX推進を遅らせるリスクが高まるため、事前にDXを進める準備を行いましょう。ベンダー企業との協力体制を築いたり、IT人材の育成・採用・外部活用などを検討する必要があります。
DXを導入したからといって、すぐに結果が出るとは限りません。ビジネスモデルや会社全体の変革が伴うため、成果を実感するまで時間がかかることが多いです。
DXはさまざまな企業が取り組んでいますが、各社でビジネスモデルや組織体制・市場環境などが異なるため、成功方法に明確な答えはありません。そのため、自社の状態や予算・目的に合わせてDXの方針を定めつつも、取り組みながらPDCAを回していくことが重要です。
短期的な結果に囚われず、中長期的なビジョンを持って取り組む姿勢が組織全体に求められます。
例えば市場変動が早い業界やオンラインサービスの需要が高まっている業界などで、「長期的に見て競争力を高めていきたい」と考える企業であれば、DXを検討してみるのも良いでしょう。
2021年の総務省の調査「デジタル・トランスフォーメーションの取組状況(日本)」」によれば、特に情報通信業界や大企業において取り組む企業の割合が多く、40%以上の企業が2020年の時点で既にDXの取り組みを実施していると回答しています。
また、さらに細かく業種別でみると、「農業、林業」「金融業、保険業」なども比較的取り組んでいる企業の割合が大きいことが分かります。
DXを推進すべきかどうかは、各社の経営状況や組織体制によっても異なりますが、一つの判断材料として同じ業種の企業の動向も参考にしてみてください。
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DXを成功させるには、事前にしっかりと戦略を立てて段階的に推進していくことが重要です。自社の目指すべき方向や戦略を明確にしておかないと、ITツールを導入しただけでDXを行った気になってしまいかねません。ここでは、DXに未着手の段階から、どのように進めていけばよいのかを解説します。
DXを実現するには、まずDX推進の目的を明確にすることが重要です。DXの目的としては前述のとおり、競争優位性の確立や新しい市場の創出など、さまざまなことが考えられます。
さらに、DXによって「市場の中で自社がどのような位置に立ちたいのか」「どのような社会・経済を実現したいのか」など、自社が理想とするビジョン(未来像)を明確にすることも重要です。目的やビジョンを明確化することでDXの方向性が大まかに定まり、社内での意思疎通なども行いやすくなります。
DXの目的やビジョンを明確化できたら、次は実現するための戦略に落とし込みます。まずは、SWOT分析などによって、現在、自社が置かれている内部環境・外部環境を分析・整理し、最終的なビジョンを確立するまでに必要な要素を洗い出します。
次に、初期、中期、長期に分けて自社のあるべき姿とやるべきことを定めていきます。例えば、初期にすべきことには「関係者間での意識共有」「デジタル化による、DXに必要なインフラの整備」などがあります。中長期的には「DX推進体制の整備」「デジタルプラットフォームの構築」などが挙げられます。
次のステップでは、DX戦略に沿って、どのような人材やスキルが必要なのかを定義します。例えば、データ分析を本格的に行うのなら、データサイエンスやAIなどの最新技術を理解し、業務に導入できる人材が必要になります。必要な人材やスキルを定義することで、採用や教育・育成などの施策を正しく立てられるようになります。
DXを成功させるためには、社内はもとより、社外に対してもDX推進体制の構築を働きかけることが重要です。DXを推進するには、単独の部署・企業で進めることが難しい場合もあります。そのような際には例えば、DX推進部署を設置して他部署との連携を図ったり、外部の企業・専門家に協力を仰いだりすることも欠かせません。
DXの推進を成功させるためには、いくつかの押さえておくべきポイントがあります。
DXはIT部門だけで実現できることではありません。会社に根本的な変革を迫るため、経営陣や現場の従業員などを巻き込んで、全社的に推進する必要があります。仮にDXに対する社内での理解度が低ければ、反発が起こったり、本質的な改革を行えなかったりすることもあります。
DXを成功させるためには、担当者だけでなく、社内の全員がDXを理解し、賛同する体制を作ることが重要です。そのためには、経営陣や社内メンバーにDXの必要性やメリットを丁寧に説明して理解度を深めてもらい、積極的に協力してもらえるように働きかけていきます。
DXを推進するには、従来アナログで管理・処理していたことのデジタル化から始めることが大切です。例えばAIなどを活用して効果的なデータ分析をするには、まず自社の情報をデジタル化する必要があります。この段階でデジタル技術の利便性などを経営陣や社内メンバーが実感できれば、その後の変革に対する協力も得やすくなります。
デジタルに詳しい人材を確保することも重要なポイントです。DXには、データ分析やAIなどの最新技術を使ったシステム開発・運用などが必要です。そのため、デジタルに詳しい人材を育成・採用したり、場合によっては外部に委託したりする必要があります。
DXは本質的に新しい挑戦をともなうため、成功させるのは簡単なことではありません。では、DXに成功した企業は何を行ったのでしょうか。以下では「DX銘柄2022」から最新の企業事例を紹介します。
中外製薬株式会社は、バイオ医薬品を含む革新的な新薬の開発に注力している企業です。同社の成長戦略では、DXが中心的な役割を占めています。例えば同社はDXによって、AIやロボティクスなどの最先端技術を活用し、「創薬プロセスの革新」「創薬の成功率向上」「プロセス全体の効率化」を図っています。
実際の臨床現場から得られる医療データ(RWD)を解析し、医師による診断・治療の効率化や、医薬品の臨床開発・承認申請の根拠資料としての利用などに取り組んでいます。さらに、すべてのバリューチェーンを効率化するために、営業プロセスの改革、定型業務の自動化、デジタルプラントの実現などを行い、全社的なDXを進めて成果を出しています。
ガラス・土石製品などの素材メーカーであるAGC株式会社は、中期経営計画「AGC plus-2023」の一環として「DXの加速による競争力の強化」を掲げています。同社にとってのDXとは、素材メーカーとしての業務プロセスの効率化はもちろん、サプライチェーンの変革や社会的価値の追求などまでを含みます。
同社ではMA(マーケティングオートメーション)を活用したデジタルマーケティングによって顧客接点を増加したり、顧客情報や商談の進捗状況を部署横断的に共有したりすることで、効率的にLow-Eガラス市場を開拓することに成功しました。
また、素材の組成開発にAIなどのデジタル技術を用いることで、開発期間の短縮や環境対応型新製品の開発などにも成功しています。さらに、社内でデータサイエンスに関する教育プログラムを実施し、DX人材の育成・確保に力を入れていることも注目すべき点です。
株式会社商船三井は、DXを経営ビジョンの中心に据え、「FOCUSプロジェクト」と呼ばれるデータ活用の取り組みを進めています。FOCUSプロジェクトでは、1隻あたり1万点ものセンサーから得た運航ビッグデータを活用し、運航船の状態をリアルタイムにモニタリング・分析して、安全運航の強化や運航の効率化・最適化を実現しました。
DXの取り組みとして、AR航海情報表示システムや航海リスク監視システム、自律運航技術など、安全運航のための技術開発も行っています。さらに全社的な施策を通して、データ・人材の面からもDX推進の基盤構築を進めている状況です。このように同社では、生産性や安全性を向上させるための基盤として、全社的なDX戦略を立案・実施しています。
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DXに取り組む企業が大幅に増加していますが、DXの推進を実現するにはいくつかのポイントを押さえることが大切です。
・DXが社内で推進できていない
・DX推進施策や効果について詳しく知りたい
そのような方に向けて、【DX推進を成功に導く人材採用・人材育成・組織設計と成功事例】を公開しています。
すでにDXに取り組んでいる方もこれからDXに取り組む方もぜひご活用ください。
DXは、単にアナログな作業をデジタルに置き換えるだけでなく、ビジネスモデルを抜本的に変革することです。DXを成功させるには、目的やビジョンを明確にし、入念に戦略を立案し、社内外の協力体制を築くことが重要です。DXを成功させることによって、企業価値や競争力が向上し、事業の持続可能性を高めることができます。