2023年07月25日
2023年11月08日
DXを推進するにあたって「何から手を付けていいか分からない」「具体的にどのように戦略を策定すればいいか見当が付かない」「他社がどのように取り組んでいるのかを知りたい」と考える方は多いのではないでしょうか。
本記事では、DX戦略の定義や必要な理由、事例、進める上での注意点などをご紹介します。戦略策定の全体像も解説していますので、ぜひ参考にしてください。
【お役立ち資料】DX推進を成功に導くポイントとは?
DXに取り組む企業が大幅に増加していますが、DX戦略を策定する際にはいくつかのポイントを押さえることが大切です。
・DXが社内で推進できていない
・DX推進施策や効果について詳しく知りたい
そのような方に向けて、【DX推進を成功に導く人材採用・人材育成・組織設計と成功事例】を公開しています。DX戦略の策定・見直しにお悩みの方はぜひご活用ください。
DX戦略とは、企業がビジネスモデルを変革し、新たな価値を創造するための計画や方法を指します。
そもそもDXとは、「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略称であり、デジタル技術によって業務やビジネスモデルを変革し、企業価値を高めるための取り組みを指します。部門の垣根を超え、事業そのもののあり方を変えるような大きな改革を実行するには、戦略が重要です。
DX戦略は、経営戦略と紐づき、企業のビジョンや目標に基づいて策定されます。組織の変革、DX人材の育成、各種ビジネスプロセスの改善など、企業全体の動きに大きく影響するため、DX推進の初期段階で戦略策定が求められます。
DX戦略策定にあたって検討すべき内容としては、以下が挙げられます。
また戦略を策定した後には、進捗を確認・評価し、必要に応じて改善するといったPDCAを回し続けることで、成果につながりやすくなります。
【関連記事】DXとは?意味や取り組み内容・メリットをわかりやすく
DXを推進するためには、事前に綿密な戦略を策定しておくことが重要です。なぜなら、戦略を明確にしないまま取り組むと、思うようにDXが進まず、失敗に終わってしまうことも多いからです。
例えば「とりあえずシステムを導入してみたが、蓋を開けてみるとうまく機能せず、業務変革が起きない」といったことが挙げられます。施策ありきになってしまい、本質的な改革には至らないケースも多いのです。
以下は経済産業省が企業のDX推進実態を調査した際、明らかになった代表的な課題です。
このように、経営層がDXに対して積極的に携わっていないことにより、現場での導入が行き詰まるケースが多いようです。そのため、DXを成功に導くには、経営層がDXについての理解をより深め、明確な戦略を策定し、積極的に社内に発信していくことが重要だと考えられます。
「DX戦略」といっても、具体的なイメージが思い浮かばない方も少なくないでしょう。解像度を高めてもらうため、まずは国内企業が行ったDX戦略の立案・取り組み事例を紹介します。
国内大手の小売企業であるイオンは、全国に展開された店舗から、膨大な顧客データ・購買データを取得できます。顧客データを属性や行動パターンなどによって分析することで、より深い顧客理解に基づいて商品やサービスを提供することが可能です。イオンがDXにおいて注目したのは、この豊富な情報資産をどのように顧客体験の向上へ結びつけるかという点でした。
この課題に応えるために、イオンでは2025年までにオンラインとオフラインを融合させるビジネス戦略「OMO」を実現できるように、5カ年の中期経営計画を策定しました。この計画においては、2023年までにグループ全体のDX推進体制や顧客とのデジタル接点を確立し、デジタルを活用した新規事業や付加価値の提供を可能にするための基盤構築を終えることが目指されています。
イオンと言えば、実店舗でのサービスをイメージしやすいですが、今後はオンライン、または金融決済などの他分野にも注力していくことで、さらなる事業拡大を目指しています。オンライン上といった実店舗以外の場でも顧客接点をつくることで、さらなる顧客データの取得が期待できます。そこで得たデータを活用することで、本業である実店舗での小売りサービスの改善が可能になります。
国内大手の電子機器メーカーである京セラもDXへ積極的に取り組んでいる企業のひとつです。京セラでは2020年にDXを推進する専門のチームを設置し、DX、業務のデジタル化に対して100億円規模の予算をDXに投じています。
京セラでは従来、独立採算で動く小グループに組織を分割して運営する「アメーバ経営」という手法を取っていました。アメーバ経営は組織の透明性確保をはじめ、従業員の目標管理やモチベーション向上などの成果を出しましたが、他方でデータが社内で分断されるという結果を生んでいました。
そこで同社は、全社的なデータ共有を起点にしてグループ間の壁を取り除き、これまで小グループごとで行っていた取り組みを、全社規模での体制へ切り替えることに成功しました。同社ではモノづくりの工程にAIやIoTなど最先端のデジタル技術を取り入れ、業務効率化や品質向上などに注力しています。
味の素も、DX推進に取り組んでいる企業です。「社会全体の変化をサポートし、食と健康の課題を解決する」というミッションを実現するための手段としてDXを推進しています。味の素では、DXを4つのステージに分けています。
各ステージの目標を1つずつクリアしていくことで、最終目標である「DX4.0:社会変革」の実現を目指しています。
同社のDX取り組みの一例として挙げられるのが、パーソナライズドマーケティングです。顧客1人ひとりの属性や行動履歴、生活者のSNSなど膨大なデータを解析し、顧客のニーズを深く分析します。
こうした顧客情報に基づいたデジタルデータをマーケティングに活用することで、価値観が多様化している現代の消費者ニーズに応えようとしています。
DXは企業活動そのものを全体的かつ抜本的に見直し、変革であるため、組織全体で取り組むことが重要です。ここでは、DX戦略を立案し、実行するためのステップを紹介します。
まずは、達成すべきビジョンを定めます。DXによって企業がどのような成果を創出したいのか、どのような企業価値を生み出したいのか、ありたい姿を具体的に描くことが重要です。ビジョンはDXにおけるすべての活動の指針となるため、可能な限り明確に定義します。
また、全社員が同じ方向に向かって動けるよう、策定したビジョンは全社に共有しましょう。
次に、DXに取り組む領域と、そこでどのような取り組みを行うのかを定義します。例えば、既存のビジネスプロセスやサービス・製品などを見直し、どの部分をデジタル化するか、新たにどのようなビジネスを開発するかなどです。先の段階で目指すべきビジョンや目標が定まっていれば、それを実現するために適した部門を選択し、取り組み内容の方向性も定まってきます。
DXのステップは3つに挙げられます。ここでは米国のITアドバイザリー企業・ガートナー社の定義を元に紹介しますが、こうした基準を元に取り組み領域を検討するのもおすすめです。
DXの取り組み段階 | 意味 |
---|---|
デジタイゼーション | アナログや物理的なデータをデジタルデータに変換する |
デジタライゼーション | デジタル技術を用いてビジネスモデルを変化させ、新たな利益や価値を生み出す |
デジタルトランスフォーメーション | 仮想世界と物理世界を融合し、IoTを通じてプロセスや業界そのものを変革する |
また取り組み領域はプラットフォームビジネス構築やサブスクリプションモデル構築といった全社横断テーマなのか、マーケティングや生産といった事業活動を機能ごとに分類した個別機能単位のテーマなのかという基準でも分類することができます。
ビジョンを定め、取り組み領域を決定したら、社内体制の整備に移ります。戦略が定まっても、DXを実施するに際して必要な人材が不足していれば、取り組みは難航するでしょう。
業務の自動化や省力化には、AI・IoTについてのエンジニアリングの知識が不可欠です。また、自社が集めたデータを分析・活用するには、データアナリティクスの知識を持つ人材が必要となります。しかし、日本全体でIT人材の不足に陥っている中で、こうした人材を確保するのは簡単なことではありません。育成する場合でも、多くのリソースを要するでしょう。
自社だけで賄いきれない場合には、外部のデジタル・IT人材や企業にアウトソーシングをするのがおすすめです。アウトソーシング企業は、各社での導入実績が豊富であり、DXに精通しているため、より効果的かつスピーディーにDXを推進していけるでしょう。
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ビジョンと取り組み領域が定まったら、それらを達成するための具体的な行動計画、つまり推進プロセスを策定します。プロジェクトの優先順位、目標期限、進行スケジュール、必要なリソース、責任者などを明確にし、全体のマイルストーンを設定します。
ビジネスプロセスのデジタル化(デジタイゼーション)が十分に進んでいない場合、まずはそれらの取り組みから始めることも検討が必要となります。短期的な対応と中長期的な対応の両面から考えることが重要です。
最後に、策定した戦略とプロセスに基づいてDXを実施し、その結果を評価します。評価をもとに戦略やリソース配分を見直し、必要であれば再度ビジョンの見直しも行いましょう。評価・見直しのフェーズがDX戦略のPDCAサイクルを形成し、継続的にDXを進めていくための鍵になります。
また、顧客に対する価値提供をできているかの成果を、指標を基に評価をすることが重要となります。評価のためには事前に適切なKPIを設定し測定、改善していくことが必要です。また、PDCAの速度を上げるために失敗を許さない管理ではなく、こまめに速度感を持った対応ができる管理体制を確立し、デジタル化に関するリスクへの対応を行いましょう。
【お役立ち資料】データから読み解くDX推進の組織づくり
「DX推進のためのエンジニアが確保できない」「スキルを持った人材がいない」といった課題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。本資料では、【エンジニア・外部人材の採用・外部活用・育成の実態と戦略】について解説しています。エンジニア・DX人材の採用、育成にお悩みのご担当者はぜひご活用ください。
DX戦略を成功させるためには、注意すべきポイントがいくつか存在します。以下では、それらの詳しい内容を解説します。
DXはツールの導入や個別業務の部分最適化などに留まるプロジェクトではなく、企業の持続的な成長を支えるための経営戦略です。そのため、一度の取り組みで終わらせず、継続的な検証と改善を重ねていくことが必要です。
これを実現するには、組織全体がDXの理念を共有することを通して企業風土やマインドセットをも変革していくことが求められます。社内にデジタルを活用する文化が浸透していない場合は、社内教育などを通してそこから変えていくことも必要です。
DXは本質的にチャレンジングな取り組みです。既存の仕組みを壊して新しいものを取り入れていく中では、必ずしもすべてがスムーズに進むわけではありません。そうした中で重要なのは、失敗を過度に恐れないマインドセットを組織に根付かせ、失敗から得た学びを積極的に共有できる企業風土を醸成していくことです。
取り組みが失敗した場合はどこが失敗の要因だったのか分析を行い、知見として共有することで、DX戦略のブラッシュアップを行えます。
DX戦略の最終的な目標は、デジタル技術を活用してビジネスモデルを抜本的に変革し、企業価値を高めることです。そのため、DXに際しては既存業務のデジタル化や効率化だけでなく、ビジネスモデルそのものの見直しや抜本的改革も視野に入れることが重要になります。デジタルの活用によって、自社の事業をどのように拡張し、新たな市場開拓や価値提供ができるか、既存の価値観や先入観などにとらわれずに検討することが重要です。
DXを成功させるためには、DX戦略を構築することが重要です。DX戦略の策定を通して、DXで実現すべきビジョンや目標を明確にすることで、具体的な施策や必要なツールなども考えやすくなります。効果的なDX戦略を構築する際には、経営陣が自らDXへの理解を深め、リーダーシップを発揮していくことが求められます。
【お役立ち資料】DX推進を成功に導くポイントとは?
DXに取り組む企業が大幅に増加していますが、DX戦略を策定する際にはいくつかのポイントを押さえることが大切です。
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