ITアウトソーシングとは?活用事例とメリット、導入方法まで

「自社にITに精通した人材がいない」「自社リソースでは運用に手一杯で企画や開発にかける時間がない」といった課題を抱えている企業も多いのではないでしょうか。そんな悩みを抱えている企業が検討したいのが、ITアウトソーシングの活用です。

ITに精通した外部人材を効果的に活用することで、部門が本来注力すべき業務に集中できるだけでなく、今までになかった知見や技術をもたらし、ビジネスを加速させる原動力となります。

本記事では、ITアウトソーシングの導入を検討している方に向けて、ITアウトソーシングとは何かといった基礎知識から導入に至るまでのプロセス、そして導入事例について解説します。

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業務をアウトソーシングすることで、生産性向上やコアコンピタンス強化につながります。

・スタッフの交代・離職が多く、育成時間やコストがかかる
・業務の繁閑差が激しく、人の配置が難しい
・業務が属人化しており、標準化できていない

上記のようなお悩みをお持ちの方に向けて、【アウトソーシング導入のポイントと活用事例】を公開しています。ぜひダウンロードしてご活用ください。

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目次

ITアウトソーシングとは

ITアウトソーシングとは、ITに関する業務を外部委託することです。企画から要件定義、開発・運用まで全てを外部ベンダーに委託する「フルアウトソーシング」や、IT分野の一部を外部委託するケースなど、委託の形態は企業によってさまざまです。

ITアウトソーシングの主な形態

フルアウトソーシング 企画・要件定義・開発・運用まですべてを外部委託する
運用 サーバーやOSなどインフラの運用を外部委託する
ホスティング 外部ベンダーのサーバーやストレージを活用し、運用や保守などを外部委託する
ハウジング 自社が用意したサーバーや通信機器を外部ベンダーのデータセンターなどに間借りする
ヘルプデスク 顧客からの問合せやクレーム対応などを外部に委託する
常駐 外部ベンダーのスタッフが自社に常駐し、技術的なサポートを受ける

ITアウトソーシングで委託できる業務内容

ITアウトソーシングで委託できる業務内容は、主に以下の5つです。

5つの委託タイプ 主な業務内容
①テクニカルサポート ハードウェア・ソフトウェアの技術的な問合せの対応業務、顧客や社員からのヘルプデスク業務、従業員に支給するモバイル端末の運用管理など
②システムマネジメント インフラの保守運用・クラウド基盤運用・データセンター運用など
③システムデリバリー ネットワーク開通調整、プロビジョニング
④ツール保守・RPA導入 ツール開発保守、RPA導入支援、業務プロセスのデジタル化支援
⑤PMO・コンサル プロジェクトの進行管理・品質管理、運用設計、クラウド導入支援

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IT分野はアウトソーシングが最も活用されている領域

少子高齢化によって慢性的な人材不足を抱える多くの日本企業では、さまざまな分野でアウトソーシングが活用されています。その中でも最も導入が進んでいる分野がIT関連です。

アデコが実施したアウトソーシングの導入状況に関するアンケートでは、どの業務でアウトソーシングを利用しているかという問いに対して、全体の半数を超える54%の企業が「IT・運用保守・web」と回答しています。

【参考】アデコ株式会社「アウトソーシングの導入状況・メリット・デメリットなど

オンライン上での顧客情報の管理や、ビッグデータやBI(ビジネスインテリジェンス)、MAなどさまざまなテクノロジーの導入・活用が欠かせない現代において、IT・運用保守・web分野における業務は急速に拡大・高度化しています。そうした背景に基づき、高度な技術やノウハウを有した人材を確保するために、ITアウトソーシングを積極的に活用する企業が増えていると考えられます。

【関連記事】アウトソーシングとは?意味や導入のメリットを簡単に解説

ITアウトソーシングの活用メリット

IT分野におけるアウトソーシングの需要が高まっていることを理解した上で、具体的にITアウトソーシングを導入することで企業にもたらされるメリットについてみていきましょう。

1.部門全体がコア業務に注力できる

ITアウトソーシングを活用する最大のメリットは、部門全体が本来注力すべきコア業務に人材や時間を集中的に投下できることにあります。多くの企業では日々の障害対応や問合せ・保守管理といった業務に稼働時間を奪われ、システムの企画設計や開発に時間を割けないという問題を抱えています。

そこで部門で担当する業務に関して、売上や事業拡大に直結する「コア業務」と、直接的には売上に関係しない「ノンコア業務」に分けて、ノンコア業務をアウトソーシングすることによって、コア業務に集中できる環境を整えることができます

また、ノンコア業務を外部に委託することによって余った時間を、新しい技術やノウハウの学習の時間に充てることができます。新しいテクノロジーは日々進化をしているため、定期的に情報のアップデートを行うことが欠かせません。従業員が最新の知識を得ることで、事業強化へと繋げることができるでしょう

2.専門性の高いプロ人材に任せることができる

ITアウトソーシングのサービスを提供する企業は多くの場合、ITの各分野に精通したスペシャリストを有しています。

テクノロジーは日々アップデートされるため、最新の技術やノウハウを学習し続け、実際の業務に活かすためには多くの労力と時間を要します。そこで専門性の高いプロ人材を活用することで、新しい技術や仕組みをスピーディーに事業成長に活かすことができます

ITアウトソーシングの活用プロセス

ここからは、ITアウトソーシングの導入を具体的に検討している企業に向けて、導入や立ち上げに至るまでのプロセスについて解説します。

なお、ITアウトソーシングの導入プロセスは企業によってさまざまです。今回は、一般的な手順をステップごとに紹介します。

アウトソーシングの活用プロセス例

STEP1.現状課題の把握〜ゴール(目的)の定義

ITアウトソーシングを導入する際にまず行うべきことは、現状課題の把握と最終的なゴール(目的)の定義です。

現状の自社リソースや人材では、どの業務を遂行することができないのか、またコア業務の遂行を妨げている業務は何なのかを明確にしていきます。その上で、外部ベンダーに委託する業務内容や範囲を決定し、いつまでに運用を開始するのかを定めていきます。

この際に忘れてはいけないのが、中長期的なITアウトソーシング導入の目的やミッションです。例えば、

 ・将来的にはインハウスで運用するために短期的に運用を外部委託する
 ・現状では獲得困難な高い専門性を持った人材を活用することによって、中長期的にビジネスを加速させていく

など、ITアウトソーシングの導入によりどのような成果をもたらしたいのか、明確にしましょう。

なお、ITアウトソーシングは経営層の鶴の一声で導入が決定してしまうことも少なくありません。しかし、調査〜計画の段階における現場の担当者と経営層の密なコミュニケーションは、導入後の運用をスムーズにするためにも重要な要素となります。

今直面している課題は何か、アウトソーシングを活用することでどのように課題を解決するのか、アウトソーシング導入先の部署との合意が取れた上で進行しましょう。

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ITアウトソーシングを進める際は、あらかじめ業務内容の整理・洗い出しを行ったうえで、委託内容や範囲を明確にすることが重要です。本資料では、業務改善のコンサルタントが現場で得た事例をもとに、具体的な業務洗い出しのステップ、業務改善の進め方・コツを紹介しています。

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STEP2.要件定義

課題やゴールの定義ができた上で、要件定義を行っていきます。委託する業務を効率的に運用するために必要な情報や工程・スタッフ・予算などのベースラインを決めていきます。

STEP3.運用設計

続いて、運用設計を行います。運用設計には、具体的な作業フロー図や作業手順書・課題管理表・スキルチェック表の作成などが含まれます。この工程をうまく進めることで、実際に運用した時に業務の標準化や適切な人材配置・育成が可能になり、効率よく業務を遂行することが可能になります。

STEP4.導入〜立ち上げ

最後にITアウトソーシングの導入〜立ち上げを行います。担当者をアサインし、座学やOJTを通して業務遂行に必要な知識を養います。

一定のレベルに達した段階で、外部ベンダーのみで運用を開始します。なお、運用開始当初は、トラブルが発生することもあります。浮き彫りになった問題に対して、外部ベンダー側と連携を図り、改善を行うことが欠かせません

【関連記事】失敗しないアウトソーシング先企業の選び方|手順と選定ポイント

ITアウトソーシングの活用事例

パーソルグループでITアウトソーシングサービスをご提供している、パーソルビジネスプロセスデザインがご支援した2つの事例について解説します。

総務部門のモバイル管理業務の事例

多くの従業員を抱える人材サービス事業のA社では、従業員に支給する社用モバイル端末の発注や支払いといった管理業務や、紛失時のデータ消去などの作業に多くの工数を必要としていました。そこで、パーソルに総務部門が担当していたモバイル管理業務を委託しました。

社用モバイル端末(スマホ、タブレット、Wi-Fi等)の管理業務において約2万台を超える端末の発注、納品、管理、解約、廃棄、請求支払といったライフサイクル管理を全て一括でパーソルで担当すると共に、通信キャリアとの交渉を行い、コスト削減を実現しました。

また、運用中の社用モバイル端末を遠隔システム上で制御。インストールアプリの制御や紛失時のデータ消去などに対応し、総務部と情報システム部で組織を跨いで管理していた課題を、パーソルが一括で業務遂行することで運用を効率化

各業務のプロセスを改善させた上で、業務特性に合わせたデジタルツール(タスク・マニュアル管理、RPA等)の選定・導入支援および、導入後の運用保守も担当し、結果的に、業務工数をアウトソーシング導入前の約30%にあたる月320時間削減、利用コストも月800万円の削減に成功しました。

サービス企画部門でのシステム再構築プロジェクトのPMO事例

大手通信事業者B社のサービス企画部門では、業務マニュアルが不足していることや人的リソースが確保できないために、本来注力すべき「システム再構築プロジェクト」の計画が約6ヶ月遅延しているという課題を抱えていました。

そこで、パーソルがプロジェクトに参画。全体の課題及びタスク進捗管理、各会議の取りまとめ、マスタスケジュールの進捗管理を主として活動をスタートしました。

具体的には、既存システムで使用されていたデータソースを活用しつつ、独自のフレームワーク『iBiQ』を用いたデータモデリングを作成し各タスクの管理体制を早期構築。不要機能整理を実施するなど、システム開発部門への支援を並行して実施しました。加えて、部門の可視化されていない業務をヒアリングして、約100件のフローを作成し、業務マニュアルの不足分の整備を行い、再構築の為に必要な情報を充足しました。

結果的に6ヵ月遅延していたプロジェクト計画の進行を、3ヵ月でオンスケとなるようなリカバリーに成功。可視化されていない業務100件のフローを作成することで、業務の効率化を実現しました。


【参考】パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社「事例・実績紹介」

ITアウトソーシングを検討する際の注意点

最後に、ITアウトソーシングの導入を検討する際の注意点について解説します。

企業によってITアウトソーシングを導入する目的やミッションは異なります。闇雲に導入するのではなく、「本質的に顧客への高品質なサービス提供につながるか」という点を重要視して導入を進めていきましょう。

導入時の注意点

導入時に注意すべきなのが、「業務の柔軟性と専門性の担保」「責任範囲の確認」「セキュリティレベル」の3点です。

業務の柔軟性と専門性の担保

業務の柔軟性と専門性の担保とは、外部ベンダーに委託することで、部門全体がコア業務に本当に注力できるかということです。

ITアウトソーシングのサービスを提供する多くの外部ベンダーは、特定の分野に高い専門性を持ったスタッフを抱えています。しかし、現場を理解した柔軟な対応をしてくれるかという点は別の問題です。

企業が抱えている本質的な問題を理解し、課題解決に奔走してくれる外部ベンダーでない場合、自社のスタッフが外部ベンダーのサポートに回らざるを得なくなるなど、ITアウトソーシングの弊害を招く恐れがあります。

過去の実績や担当するスタッフの経験などを確認した上で外部ベンダーの選定をする、運用前に外部ベンダーと綿密な打ち合わせをするといった工夫が求められます。

責任範囲の確認

運用時によくトラブルになるのが、企業と外部ベンダーの責任範囲の問題です。導入時に業務内容と範囲を明確にしなかったため、いざ運用してみると業務の品質低下を招いてしまった、ということも多々起こります。

このようなことを防ぐために、ITアウトソーシングの導入時には、業務範囲や内容・サービス品質を明確に取り決める「SLA(サービス・レベル・アグリーメント)」を双方で結んでおくことが大切です。

SLAの内容に決まったものはありませんが、次のような点を明確にしておくと良いでしょう。

・業務の前提
・業務内容
・業務範囲
・トラブルが発生した時の責任の所在
・サービスレベル
・品質低下が見られた時の対応 など

セキュリティレベル

顧客情報など、個人情報の流出はITアウトソーシングを導入する際に注意を払わなければなりません。今まで企業内部で取り扱っていた情報を外部ベンダーが取り扱う場合、当然ですがセキュリティのリスクは高まります。

多くの外部ベンダーでは、セキュリティに対して高いレベルを有し、細心の注意を払い個人情報の取り扱いを行います。しかし、全ての外部ベンダーでセキュリティの遵守が徹底されている訳ではありません。

外部ベンダーを選定する際には、事業者の個人情報の取り扱いが適切であることを示す「プライバシーマーク」や、国際的に設定されたセキュリティ基準をクリアしていることを示す「ISMS認証」を取得しているかをチェックすることが大切です。

加えて、運用開始前には個人情報の取り扱いに関して、企業と外部ベンダーでしっかりと取り決めを行う必要があります。作業を行う場所や個人情報を取り扱うスタッフ・人数に関して確認を行いましょう。

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運用時の注意点

ITアウトソーシングの最大の懸念は、自社にノウハウや知見が溜まりにくいといった点です。

外部委託している業務に関して、「将来的にインハウスで運用できるようにしたい」と考えているのであれば、委託する業務量や範囲をフェーズによって柔軟に変更していくことが求められます

この際に重要なのが、現状自社で業務を遂行できないからといって外部ベンダーに任せきりにしないことです。自社で直接的に業務を行わなくても、外部ベンダーが日々どのような技術を利用し、運用を行っているのかを確認することで、将来的なインハウス運用への足掛かりになります。

自社リソースや適切な人材が確保できた段階で、徐々に自社運用に移行できるように外部ベンダーと綿密な連携を取ることが大切です。

【関連記事】アウトソーシングの3つのデメリットと解消策、ポイントを解説

まとめ

本記事では、ITアウトソーシングの導入を検討している企業に向けて、ITアウトソーシングとは何かといった基礎知識から、導入するメリット・具体的な導入プロセスや事例について解説しました。

ITアウトソーシングを導入することで、本来注力すべきコア業務に専念できる・専門性の高いプロに業務委託ができるといったメリットがあります。その反面、業務範囲や業務レベルを事前に取り決めることや、セキュリティに関しての双方の認識が合っていないと、トラブルを招く恐れもあります。

導入時、そして運用時の注意点を十分に理解した上で、ITアウトソーシングを導入することが大切です。

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業務をアウトソーシングすることで、生産性向上やコアコンピタンス強化につながります。

・スタッフの交代・離職が多く、育成時間やコストがかかる
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よくあるご質問

Q1.ITアウトソーシングで委託できる業務とは?

A1.ハードウェア・ソフトウェアの技術的な問い合わせ対応やヘルプデスク、インフラの保守・運用などを委託できます。企画から運用まで全てを依頼するケースや、一部業務のみ委託するケースなど委託形態はさまざまです。

>>ITアウトソーシングとは

Q2.ITアウトソーシングを活用するメリットとは?

A2.日々の障害対応や問い合わせ、保守管理といったノンコア業務の工数を削減し、システムの企画設計や開発などに注力できるようになります。ITアウトソーシング企業はスペシャリストを有しているため、新しい技術や仕組みをスピーディーに導入できるメリットもあります。

>>ITアウトソーシングの活用メリット

Q3.ITアウトソーシングの委託先はどのように選ぶべき?

A3.委託先を選ぶ際は、以下の観点から検討を進めましょう。

・業務の柔軟性
・専門性の担保
・セキュリティレベル

アウトソーシングにより、本当にコア業務へ集中する時間の捻出ができるかなど、求めている成果が期待できるのか検討が必要です。

>>ITアウトソーシングを検討する際の注意点

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