2023年08月03日
2023年11月08日
DX推進にあたり、同業他社やDX先行企業の取り組みを調べるケースは多いのではないでしょうか。DXにおける「目標」や「成功」は企業によって定義が異なるため、自社が目指す取り組みに近い事例を探すことが重要です。
本記事では、DXに取り組む企業事例のほか、事例を調べる際の注意点、DX推進を成功させるポイントなどを解説します。
【無料DL】DX推進のポイント・成功事例を公開中
DXを推進する具体的な施策は企業ごとに様々ですが、DX推進に成功している企業は共通して、ある重要なポイントを押さえています。
・DXを推進するノウハウが知りたい
・他社のDXへの取り組みや事例を知りたい
そのような方に向けて、【DX推進を成功に導く人材採用・人材育成・組織設計と成功事例】を公開しています。
DXの推進にお悩みの方はぜひご活用ください。
DX(Digital Transformation)とは、デジタル技術を用いて企業のビジネスモデルやビジネスプロセスを変革し、企業価値を向上させる取り組みを指します。デジタル化の波が押し寄せる現代社会において、企業が競争力を保ち続けるためにはDXの取り組みが不可欠となっています。
ただし、企業価値の向上といっても、実現するためのアプローチはさまざまです。DXで実際にどのような目標や課題を設定して取り組んでいくのかについても、以下のような選択肢が考えられます。
そのため、DXに取り組む際は、自社の状況に応じて目的を設定し推進することが重要です。
DXの成功事例はさまざまな媒体で取り上げられます。しかしながら、自社のDX推進の参考にしたい場合、闇雲に事例を読む前に自社が実現したいDXを定義することが重要です。ここでは、DXの成功事例で見るべきポイントに関して解説します。
第一のポイントは、DXの目標や成功は企業によって定義が異なるということです。例えば、事業構造を抜本的に変革したいのか、業務プロセスを効率化したいのかによって見るべき事例は異なります。業務プロセスを効果的にしたい目的の場合、ビジネスモデルの変更例はあまり参考にはならない可能性があります。
そのため、自社が何を目指し、何を成功と位置づけるのかを明確にしてから、それに近い参考事例を探すことが重要です。
企業が取り組むべきDXは、大きく分けて以下の3つの領域に分けられます。
内容 | 取り組み例 | |
①プロセスDX ”仕事のやり方を変える” |
従来の業務プロセスにデジタル技術を活用 ➝業務効率化・業務改善を実現 |
・業務の可視化 ・業務の自動化 ・業務ナレッジ共有化 |
②ワークスタイルDX ”はたらき方を変える” |
はたらく環境にデジタル技術を活用 ➝時間や場所の制約を減らし、多様なはたらき手を受容して活躍機会を増やす |
・テレワーク推進 ・タレントシェアリング ・EX(従業員体験)向上 |
③ビジネスDX ”新しい事業を生み出す” |
デジタル技術を活用 ➝新たな事業創造や既存ビジネスモデルの変革に取り組む |
・新規事業の開発 ・ビジネスモデルの変革 |
第二のポイントは、他社の事例をそのまま模倣するのではなく、自社の状況にあわせてアレンジする必要があることです。他社が成功を収めたからといって、その手法やツールが自社にも適用できるとは限りません。
事例の会社規模と大きく差がある場合、導入で負担が大きくなる可能性があります。自社の事業環境、組織文化、技術力などさまざまな要素を考慮し、最終的には自社なりのDXの進め方を考案する必要があります。
また、他社が行っている施策をむやみに取り入れると、実行が中途半端になってしまう可能性があります。DX推進を進める際は、以下の観点から優先順位を決めたうえで取り組むことが大切です。
ただし、他社の具体的な事例が一種の叩き台として活用できるのは変わりません。自社の状況となるべくマッチする成功事例を参考にし、DXで行うべき施策のイメージを具体的に膨らませることは大切です。
DXの成功事例を探す際に役立つ資料のひとつが、経済産業省と東京証券取引所、そしてIPAが選出した「DX銘柄」です。以下では、この資料に基づいて、DXの成功事例を取り組み種別に紹介します。先述のポイントを踏まえた上で、ぜひ参考にしてください。
DX推進の事例として抜本的な事業構造の変革を目的とした例をご紹介します。事業構造変革を目的としている企業は参考にしてください。
日立製作所は「Lumada」というキーワードを掲げ、DXによる社会イノベーション事業を推進しています。Lumadaは特定の製品やサービスというより、データドリブンの新しいビジネスモデルを構築するという日立の大きなコンセプトを指します。
このコンセプトの下で、日立は「Lumada Innovation Hub Tokyo」を設立し、これまでのDXの経験と知識を活用して社会イノベーション事業を推進しています。デジタル技術を活用した水道管の漏水検知、洪水予測、がんゲノム医療などがその具体例です。このように日立はデータとテクノロジーを活用し、新たな事業展開をしながらサステナブルな社会の実現を目指しています。
ここではDXとして商品やサービスの開発をした事例を紹介します。AI技術や3Dセルフ計測サービスなどのツールを活用してサービスの開発が行われています。DXを活用した開発を検討している方は参考としてください。
味の素株式会社は、DXを通じて食と健康の課題解決を推進しています。その一環として、栄養プロファイリングシステム「ANPS」を活用し、新しい食体験サービスの提供を始めました。例えば、レシピサイト「AJINOMOTO PARK」で、AI技術を活用し、各人のニーズに合った献立を提供するシステムを導入するなどです。
同社はこのように個々のニーズに合わせたサービス提供を可能にすることで、顧客体験の向上に成功しました。同社はDXを通じて食と健康の課題解決を実現することで、社会全体の変革をリードする存在になることを目指しています。
株式会社ワコールホールディングスは、DXによって新サービスの開発と事業の多角化に成功しています。その一例が、「3D Smart & try」という新たなセルフ3D計測サービスです。このサービスは、顧客の体のサイズをボディスキャナーで精密に計測し、ストレスフリーな接客体験を提供するもので、すでに10万人以上の顧客が体験しています。
また、同社はこの技術を応用して、アウターウェアのレコメンドサービスや医療機関との共同研究など、事業の多角化を推進中です。これらの取り組みにより、ワコールは企業や業界の枠を超えた協働を活性化し、新たな価値の創造につなげています。
総合化学メーカーである旭化成の社内ベンチャー企業「株式会社コネプラ」は、デジタルの力で地域コミュニティを醸成するサービスを提供しています。コネプラは、アプリによるコミュニティプラットフォーム「GOKINJO」の提供に取り組みました。
「GOKINJO」は、リアルとデジタルの両輪で、マンションや町会、自治会といった地域コミュニティを醸成するプラットフォームです。
マンションや自治会などの特定のコミュニティでのみ使えるアプリとし、ニックネームでの投稿を可能にしました。それにより、個人情報を開示する必要なくコミュニティ内でコミュニケーションを取れます。取得したコミュニティのデータは、属性に応じた物件のモデル化や立地・規模・築年数と掛け合わせたニーズの可視化に活用できます。
GOKINJOにより、ご近所付き合いの減少に伴い失われた「リアルな場所でのつながり」を再構築する新しいビジネスとなりました。また、既存のマンションや自治会をターゲットした新しいビジネスとして、ポテンシャルを秘めたビジネスモデルになっています。
2030年には、データの利活用や広告との連携も視野に、年間売上高数十億円を目標としています。
【無料DL】DX推進のポイント・成功事例を公開中
DXを推進する具体的な施策は企業ごとに様々ですが、DX推進に成功している企業は共通して、ある重要なポイントを押さえています。
・DXを推進するノウハウが知りたい
・他社のDXへの取り組みや事例を知りたい
そのような方に向けて、【DX推進を成功に導く人材採用・人材育成・組織設計と成功事例】を公開しています。
DXの推進にお悩みの方はぜひご活用ください。
DXでは既存ビジネスに対しても付加価値を向上させることができます。付加価値の向上としては顧客体験の向上やサービスの利便性向上などが挙げられます。DXを通じた既存業務の改善をご紹介します。
株式会社LIXILはDXを通じて、既存ビジネスの変革と新規事業の創出に取り組んでいます。例えば同社では、オンラインショールームやAI商品レコメンドを導入し、顧客体験の向上と販売プロセスの効率化を達成しました。
新規事業では、IoT宅配ボックスを開発して、ユーザーが荷物の集配を遠隔管理できるようにし、再配達率の低下やそれに伴うCO2排出量の削減に貢献しています。さらに、従業員の在宅勤務を支えることで、多様なはたらき方を促進し、従業員満足度の向上につなげているのも特筆すべき点です。
トラスコ中山は、生産現場で必要とされる工場用副資材の調達サービスを提供している会社です。「必要なときに、必要なモノを、必要なだけ」供給する体制を整えることにより、モノづくり現場の資材調達の利便性向上を使命に企業活動を行っています。
調達の現場では、在庫管理や発注作業に多くの無駄が発生していました。「パラダイス」と名付けた、独SAPのERP(統合基幹業務システム)パッケージを導入し、それまでは「倉庫に在庫を見に行ったほうが早い」と揶揄されていた在庫システムより、格段に受注処理スピードを向上させました。
この成功を受け「自動化できる仕事は、システムですべて自動化を!」というコンセプトのもと、基幹システムの刷新プロジェクトを立ち上げ、取引先を含むサプライチェーン全体の利便性向上を目指します。
在庫管理不要の「MROストッカー」やAIによる自動見積「即答名人」、データ分析で在庫を管理する「ザイコン3」、コミュニケーション用スマホアプリ「T-Rate」といったユニークな機能を次々に生みだしたのです。
MROストッカ―の導入により、ユーザーは注文することなく、工場用副資材が手に入るようになり、ユーザーが在庫を管理する必要がなくなりました。即答名人の導入で最適な価格を瞬時に計算できるようになったことにより、販売店様への見積回答スピードが劇的に改善し、サプライチェーンの一新に貢献しています。
注文せずに「必要なときに必要なモノが必要な分だけ」すぐ手に入る利便性は、他社にはない価値となっています。
DXは既存の業務プロセスに対しても、効率化や高度化を行うことが可能です。ツールなどの導入により業務を「見える化」し、改善を行うことができます。業務プロセスの改善例として3つの事例を紹介します。
清水建設株式会社は、新しいはたらき方とマネジメント手法の変革を目指し、「SHIMZ Creative Field®」というネットワーク型ワークフィールドを提供しています。これはデジタル技術を活用して、時間と場所を選ばない新しいはたらき方を実現するプラットフォームで、企業の創造性と経営速度の向上に貢献するものです。
このシステムでは、執務空間内に配置された高精度センサーと個人が携帯するタグから位置情報を取得し、それを基にバーチャル執務空間をデジタルツインで再現します。これにより、働き方改革とマネジメント改革のデータ分析を可能にし、空調や換気設備などのフィードフォワード制御を提供することで職場環境の改善も図っています。
株式会社ブリヂストンが手掛ける航空機用タイヤの製造において、高品質で高性能な製品を供給するためには熟練スキルが求められます。しかし、成型工程の作業は複雑で、熟練技能員の技術を伝承することが課題でした。そこで同社は「技能伝承システム」を開発し、モーションカメラやセンサーを使用して作業ステップの動きを計測し、新人技能員と熟練技能員の差を可視化しました。
その結果、効率的に熟練スキルを習得することが可能になり、スキルの標準化や生産性の向上を実現しました。少子高齢化が進む中、熟練技能員の技術伝承は多くの製造業者で課題になっています。そのため、ブリヂストンの事例は、業界全体の課題解決に貢献するものです。
株式会社リコーは、AIを導入することで工場の効率化と品質向上を実現しています。同社が運営する自社トナー工場では、これまで品質管理と制御のために多くの熟練技術者の労力を要していました。そこで同社はAIによってその作業を自動化することで作業者の負担を軽減し、従業員満足度を向上させることに成功しました。
AIの導入効果はこれだけに留まりません。AIによって、労働生産性は2倍に上がり、不良品発生率が65%~91%低減されたことで、生産量も5%向上しました。同社はこの成功ノウハウを自社内で使うだけでなく、社外へサービスとして展開する形でも活用しています。
デジタル技術の活用で顧客獲得を効果的に行うことが可能です。例えば顧客との接点をオンライン上に設置することで、顧客獲得につなげることができます。DXで新規顧客獲得を目的としている方はご参考にしてください。
株式会社GA technologiesは、不動産取引のオンライン化を推進しています。具体的には、データベースや電子契約システムなどを活用することで、顧客が不動産を探し、調べ、契約し、管理するその一連のプロセスを包括的にデジタルで完結できるようにしました。
この取り組みにより、同社は従来のオフライン型コミュニケーションに依存していた不動産取引を変革し、顧客にとってよりスムーズで効率的な体験を実現しました。この結果、同社のサービスは業界内で注目を集め、多くの顧客から支持を得ることに成功しています。
DX推進の成功事例は多様なものの、成功した要因には共通点があります。自社のDXにも取り入れることで、DXをスムーズに推進できるでしょう。
DX推進に成功している事例の共通点として、データの活用が挙げられます。
デジタル技術を活用するDXにおいて、データとの関連性は無視できないものです。実際に、多くの成功事例で、顧客や自社製品に関するデータを蓄積し、業務の効率化やニーズの把握に活かしています。
サービス向上に活かせるデータを取得し、蓄積するだけではなく、それを適切に活用することにより、新たなサービスの提供や付加価値の向上につなげることが可能です。
DX推進に成功した企業は、体制構築に投資をしているという特徴があります。
DXの推進には、システムを導入するだけでなく、DXを推進できる人材の育成や、DXを動かす仕組みが必要です。仮に最新技術が使われたシステムを導入したとしても、社内にそれを活用し業務に活かせる人材がいなければ、企業としての継続的な成長にはつながりません。
実際に、DXに成功した企業の多くが、事業としての取り組みと並行してDX人材の採用・ 育成にも取り組んでいます。継続的な成長につなげるためにも、社内の人材が主となり、DXを推進する体制を構築することが大切です。
また必要に応じて、システムのベンダー企業と連携したり、外部サービスを活用したりといった柔軟な対応が重要となります。
パーソルホールディングスが公表した「DX推進に関する最新動向調査レポート」によると、「DX推進にどの程度課題を感じているか」との問いに対し、全体の約5割が課題を感じていると回答しました。
DXの推進では、社内外でさまざまな問題が発生します。ここでは、DX推進における具体的な課題について解説します。
DX推進に取り組む企業の多くが感じている課題が、DX人材の不足です。「DX推進に関する最新動向調査レポート」においても、「DX推進について取り組みの障壁は何か」との問いに対し、「推進のためのスキルを有する人材を育成できない」と答えた企業が全体の21.1%、「社内のITリテラシーが不十分」との回答が19.9%を占めました。
DX人材を社内で育成できない理由として挙げられるのは、DX人材育成のノウハウを蓄積できていないことです。
DX推進を行う上で活躍できる人材は、デジタルテクノロジーに関する理解を十分に持ち、さらに持っている知識をビジネスにおいてどのように活用できるかを考えられる必要があります。しかし、このようなスキルを兼ね備えている人材は、市場においてもそう多くありません。
そのため、社内で人材を育成する必要がありますが、社内の人材不足を理由にDX戦略の立案や、推進を外部企業へ委託していたケースでは、自社にノウハウを蓄積できていないでしょう。DX推進に成功した企業の多くは、内製化を意識し、人材育成にも取り組んでいます。DXへの取り組みとともに、実践で活用できる長期的な人材育成計画を立てることが大切です。
組織体制や社内環境が整備されていない場合、スムーズなDX推進は困難です。経営陣やIT部門、現場によって、組織体制や社内環境の課題は異なります。それぞれの立場で、どのような課題があるかを把握することが必要です。
経営陣の課題は、ビジョンを提示することです。DXは組織全体で取り組むべきプロジェクトです。しかし、経営陣が「DXで何を成し遂げたいのか、どのように推進していきたいのか」といったビジョンを明確に示していない場合、現場もDXに対して必要性を感じることができず、取り組みを進められません。
経営陣が明確なビジョンを提示することにより、現場はDXの必要性を認識します。経営陣が顧客視点に寄り添い、自分事としてDXのビジョンを考えることが重要です。
IT部門の課題は、人材育成です。あらゆる業界でビジネスのデジタル化、IT化が進むなか、企業におけるIT部門の役割は増える一方です。他社におけるデジタル技術活用やDX推進事例の研究のほか、システムの選定やデジタル技術活用の提案などもしなければならないため、負担はさらに増加します。
しかし、役割や責任が大きくなる一方で、「DX推進に要する人材が不足している」「育たない」といったシーンにはじめに直面するのはIT部門です。DXへの取り組みとともに、IT部門においても人材育成への取り組みも推進することが大切です。
現場の課題は日常業務との兼ね合いです。現場は、日常業務を遂行しつつDXへの取り組みにも着手しなくてはなりません。DX推進においてもっとも影響を受ける立場といえるでしょう。
DXに取り組む体制が整備されておらず、日常業務に追加される形でDX推進への取り組みが求められた場合、DXがうまく進まないどころか、日常業務にも支障をきたす可能性があります。
そのため、現場でどのようにDXを推進していくのかを整理し、現場の負担を軽減できるような体制を考えることが大切です。
DX推進を成功させるために重要なポイントを確認していきましょう。
先行企業の成功事例は、非常に参考になりますが、他社の事例をそのまま自社に適用してもうまくいくとは限りません。そのため、DXに取り組む際は、自社に最適化された施策を検討する必要があります。そしてこれは、DXの目的設計に関しても同様です。
目的設計とは、事業戦略や組織のビジョンと結びついた具体的な目標を設定し、その達成のためにデジタル技術をどのように活用できるか検討するプロセスを指します。具体的な目標を設定することで、組織全体が意識を統一してDXを推進しやすくなります。逆に目的設計がしっかりしていないと、必要以上にハイエンドなツールを導入してしまい、余計なコストを発生させてしまったり、ツールの導入そのものが目的化してしまったりする事態になりかねません。
目的設計に際しては、第一にDXによって実現したい目標やビジョンを明確化することが重要です。その後、自社の現状の状況を可視化することを通して、目標までに何が足りていないのかを把握することに努めます。そして、この目標と現状のギャップを埋めるための手段として、どのようなデジタル技術やITツールが有効かを検討するという流れです。
目的設計に際しては、従業員の意見にも耳を傾けるようにしましょう。現場の実情を無視して施策を講じると、現場で役に立たないツールを導入してしまうなど、失敗のリスクが高まります。
ただし、これは従業員の声を最優先すべきということではありません。従業員の声をすべて取り入れても優れたシステムになるとは限らず、従業員へまったく負担を与えずに変革をするのは困難です。そのため、経営者またはDXの推進責任者は、経営的な観点と従業員の観点の双方をトータルで見て、目的設計や施策の決定をする必要があります。
DXには目的設計が不可欠ですが、その際には経営層が主導することが重要です。DXは個別の業務をデジタル化したり効率化したりするだけでなく、ビジネスモデルや企業文化、社内制度の変革なども伴うものです。もちろん、一定の投資も欠かせません。
そのため、DXを推進するにはIT人材だけでなく、経営的な観点から大きな権限を持って決断できるリーダーが必要です。経営層が主導することで、DXの方向性や経営的な意義が明確になり、経営層と従業員のギャップを埋めながら、部門横断的にDXを進めることが可能になります。なぜDXに取り組むのか、誰にどのような価値を提供したいのかなど、目的やビジョンを明確にして、新しいビジネスモデルを構築していくことが大切です。
DXの成功は、新たなデジタル技術を導入するだけで達成されるものではありません。新たな技術の導入はあくまで手段であり、それをどのように活用して自社の課題を解決するかが重要です。そのため、DXに取り組む前には自社の課題を明確にするようにしましょう。
例えば、SWOT分析といったフレームワークによって、現在、自社が置かれている内部環境・外部環境を分析・整理し、最終的なビジョンを確立するまでに必要な要素を洗い出すことが大切です。
必要な要素を洗い出したら、初期、中期、長期に分けて自社のあるべき姿とやるべきことを定めていきます。例えば、初期にすべきことには「関係者間での意識共有」「デジタル化による、DXに必要なインフラの整備」などがあります。中長期的には「DX推進体制の整備」「デジタルプラットフォームの構築」などが挙げられます。
日本企業は、DXにおいて業務効率化など既存の方法の改善を重視しがちです。しかし、DXではさまざまな取り組みが求められます。そのため、自社の業務を棚卸してそこから課題を抽出し、解決するためにどのようなデジタル技術を活用するべきか、広い観点で考えることが重要です。これにより、デジタル技術の導入そのものを目的化してしまうことを防ぎ、より効果的にDXを推進できます。
DXを推進するためには、単に新たなシステムを導入するだけではなく、組織全体がデジタルを活用して業務や事業を根本的に変革する「マインド」を持つことが求められます。そのためには、まずDXの概念を全社的に理解・共有することが重要です。
具体的には、DXが企業のビジネスモデルを根本的に変革する取り組みであるという理解を深め、それを踏まえてデジタル技術の活用を当たり前とする文化を作ります。その上で、変革を起こすためのアイデアや新しい試みを積極的に取り入れるオープンなマインドを醸成するようにしましょう。
DXは専門的な知識や人員、時間を必要とするため、既存の業務と兼任させるだけでは効率的に推進するのは容易ではありません。DX推進に伴う業務負担の増加により、従業員の不満が生じる恐れもあります。そのため、DXを推進する際には専門のチームを設置するなど、DX推進体制の構築が必要です。
DXが全社的な取り組みであることや、経営そのものに深く関わることを考慮すれば、経営層直下のプロジェクトにすることも一考の価値があります。いずれにしても、このDX推進体制には、各部署のキーパーソンや経営トップが関与し、部門横断的な連携ができると理想的です。
また、DXに精通した人材も欠かせません。理想を言えば、デジタルリテラシーと、変革に対して積極的なマインドを両方持つ人材が求められます。DX人材の確保手段としては、新規採用、既存人材の育成、外部の専門家と連携するなど、多角的なアプローチが考えられます。
DXを実現するためには、一定の初期投資やIT人材の確保が必要となるので、すぐに大規模な取り組みを始められない場合もあります。また、一度に多くの業務を変革しすぎると、現場が大きく混乱してしまうリスクも無視できません。
そのため、最初から大規模なプロジェクトを始めるのではなく、小規模なプロジェクトから始め、その結果を評価し、改善を繰り返すPDCAサイクルを確立することが有効です。例えば定型業務の自動化など、比較的簡単に取り組める改善から始めることが推奨されます。小さな成功体験を積むなかで、これまでDXやデジタルそのものに否定的だった人材も、考えを改めるかもしれません。
また、一度システムを導入したからといって満足せず、常に新しい技術の導入や現在のシステムの見直しを行い、改善を続けることが重要です。これにより、DXを継続的に推進し、自社の競争力を長期的に維持・強化できます。
【無料DL】DX推進のポイント・成功事例を公開中
DXを推進する具体的な施策は企業ごとに様々ですが、DX推進に成功している企業は共通して、ある重要なポイントを押さえています。
・DXを推進するノウハウが知りたい
・他社のDXへの取り組みや事例を知りたい
そのような方に向けて、【DX推進を成功に導く人材採用・人材育成・組織設計と成功事例】を公開しています。
DXの推進にお悩みの方はぜひご活用ください。
「DX銘柄2022」にはDXに積極的に取り組んでいる企業の成功事例が掲載されています。DXを推進する際は、こうした先行企業の事例をヒントにし、「自社の場合ならどうしたらいいのか」と考察を深めていくことが大切です。本記事を参考に、ぜひ自社に適したDX戦略を構築してください。