2023年08月03日
2025年10月17日
DXの推進にあたり、同業他社やDXの取り組みを先行している企業の事例を調べるケースは多いのではないでしょうか。DXにおける「目標」や「成功」は企業によって定義が異なるため、自社が目指す取り組みに近い事例を参考にすることが重要です。
本記事では、DXに取り組む企業事例のほか、事例を調べる際の注意点、DX推進を成功させるポイントなどを解説します。
DX推進のノウハウや成功事例をまとめた資料を無料公開中

DXを推進しようとしても、社内にノウハウがなく「どこから手をつければいいのか分からない」という声は少なくありません。本資料では、DXを成功に導くプロセスを整理するとともに、人材採用・育成・組織設計のポイントをわかりやすくまとめています。自社のDX推進にお悩みの方はぜひご活用ください。
目次
DX(Digital Transformation)とは、デジタル技術を用いて企業のビジネスモデルやビジネスプロセスを変革し、企業価値を向上させる取り組みを指します。
デジタル技術が大幅に向上し、消費行動や価値観の変化が見られる現代社会において、企業が競争力を保ち続けるためにはDXの取り組みが欠かせません。
そもそもDXとはどのような取り組みなのか、デジタイゼーションやデジタライゼーションとの違いは何かなどを知りたい方は、以下の記事をあわせてご覧ください。
【関連記事】DXとは?意味や取り組み内容、必要性をわかりやすく
他社のDXの成功事例を参考にする場合、やみくもに取り組みを真似るのではなく、まずは自社の実現したいDXのあり方を定義することが重要です。ここでは、DXの成功事例を参考にする際のポイントを解説します。
第一のポイントは、DXのゴールは企業によって定義が異なるということです。例えば、事業構造を抜本的に変革したいのか、業務プロセスを効率化したいのかによって参考にすべき事例は異なります。
そのため、自社がDXによって何を目指しているのかを明確にしてから、参考となる事例を探しましょう。一般的にDX推進には以下のようなパターンがあります。
本記事でもこれらの分類に沿って事例を紹介するので、目的に応じて参考にしてみてください。
第二のポイントは、他社の事例をそのまま模倣するのではなく、自社の状況にあわせてアレンジする必要があることです。他社が成功を収めたからといって、必ずしもその手法やツールが自社にも適用できるとは限りません。
例えば、企業規模に大きく差がある場合、ツールの開発や導入によって負担が大きくなる可能性があります。自社の事業環境、組織文化、技術力などさまざまな要素を考慮し、最終的には自社なりDXの進め方を模索考案する必要があります。
また、他社が行っている施策をむやみに取り入れると、中途半端な実行に終わってしまう可能性もあるでしょう。DXを推進する際は、以下の観点から優先順位を決めた上で取り組むことが大切です。
一方で、他社の事例が叩き台として活用できるのは変わりません。自社の状況となるべくマッチする成功事例を参考にし、DXで行うべき施策のイメージを具体的に膨らませることをおすすめします。

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DXを推進している企業が増えてきていますが、成果を出している企業は「組織設計」や「社内人材の育成」などに力を入れています。パーソルグループでは、そのようなDX推進が成功している企業事例を紹介した【DX推進を成功に導く人材採用・人材育成・組織設計と成功事例】を無料で公開しています。
DXの成功事例を探す際に役立つ資料のひとつが、経済産業省と東京証券取引所、そしてIPAが選出した「DX銘柄」です。以下では、この資料に基づいて、DXの成功事例を業種別に紹介します。以下の表では、先述のポイントを踏まえて整理していますので、ぜひ参考にしてください。
| 業種 | 企業名 | 目的 |
| 製造業 | 株式会社ワコールホールディングス | よりストレスフリーで自由な顧客体験を実現 |
| 旭化成株式会社 | 無形資産の価値を最大化する新たな収益モデルを創出 | |
| 富士フイルムホールディングス株式会社 | 最新のデジタル技術の導入によるビジネスモデルの変革 | |
| コスモエネルギーホールディングス株式会社 | 事業戦略を支える経営基盤の変革 | |
| 株式会社ブリヂストン | 「リアル」と「デジタル」を融合し、未来のモビリティと社会を支える | |
| AGC株式会社 | 年間3万時間の削減効果や新たな物流サービスの創出で企業価値を最大化 | |
| JFEホールディングス株式会社 | 無形資産と最新技術で未来を拓き、新たな価値創造へ | |
| ダイキン工業株式会社 | デジタル技術で「空気」と「環境」に新たな価値を | |
| 三菱重工業株式会社 | モノづくりとデジタル技術を「かしこく・つなぐ」 | |
| 物流業 | SGホールディングス株式会社 | 持続可能な未来の物流を創造 |
| 三菱倉庫株式会社 | 先端技術の活用を通じて社会の「いつも」を支え、非連続な成長に挑む | |
| 建設・不動産業 | 大成建設株式会社 | 共通認証基盤とデータドリブン経営により、次世代の都市サービスを創造 |
| 三菱地所株式会社 | 既存の商品やサービス・事業の付加価値を向上 | |
| 保険・金融業 | 株式会社三井住友フィナンシャルグループ | 生成AIと総合金融サービスで金融の枠を超えた業態変革へ |
| 株式会社ふくおかフィナンシャルグループ | お客さま本位の変革を徹底し、地域に真のゆたかさを | |
| プレミアグループ株式会社 | DXでクルマに関わるすべての人に寄り添う未来のカーライフを共創 | |
| 株式会社クレディセゾン | 内製開発による基幹システム改革で競争力を強化 | |
| 小売・流通業 | 双日株式会社 | 既存ビジネスの深化とデジタル収益化を両輪で加速 |
| 株式会社ミスミグループ本社 | AIなどの活用で顧客時間価値を最大化 | |
| アスクル株式会社 | 独自のECバリューチェーンとデータ、AI活用でDXを推進 |
| 課題・背景 | 顧客への個別対応の限界を超えるため、「パーソナライズ」をキーワードにデジタル技術を活用した顧客体験の新たな価値創造を目指した |
| 主な取り組み内容 | ストレスフリーな3D計測サービス「SCANBE」の展開など |
| 成果 | 「SCANBE」は延べ約30万人が体験。SCANBE初の有料コンテンツであるAI骨格診断はポップアップストアでほぼ満席となり、他店での利用者も大幅に増加 |
グローバルでインナーウェア事業を展開する株式会社ワコールホールディングスは、「一人ひとりの自分らしさや美しさに貢献」することをミッションに、2030年に向けた「VISION 2030」を策定。世界市場での競争優位性の確立を目指し、デジタル戦略を通じた非連続成長に挑戦しています。
「未来の当たり前をつくること」をDXビジョンに掲げ、「パーソナライズ」をキーワードにデジタル技術を活用して顧客体験の新たな価値創造を目指しています。
具体的なDXの取り組みとして2019年5月に開始されたのが、3D計測サービス「SCANBE」です。この計測データは公式アプリ「ワコールカルネ」と連携。データ活用とオープンイノベーションを通じて、TOPPANやアイシービーとの協業によるAI活用「わたしを知る骨格診断」を展開し、さらにasken社とのマッチングによりヘルスケア領域(PHR活用)への拡大を進めています。また、3Dデータ分析に基づき、一人ひとりにフィットするパーソナライズ設計の商品開発も行っています。
| 課題・背景 | 豊富な無形資産を効率的に価値に変え、マテリアル領域における収益性と資本効率を高める新たなビジネスモデルの創出を課題としていた |
| 主な取り組み内容 | 無形資産の価値を最大化し、スピードとアセットライトを両立する新収益モデル「テクノロジーバリュー事業開発」を創出 |
| 成果 | 中期経営計画2024において設定された、DX戦略の達成度を測る成果指標「DX-Challenge 10-10-100」をすべて達成した |
旭化成グループは、「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献」という企業理念に基づき、「マテリアル」「住宅」「ヘルスケア」の3領域を軸に成長と安定のバランスを実現しています。
同社は「DX Vison 2030」を掲げ、デジタルの力で境界を越えてつながり、すこやかなくらしと笑顔のあふれる地球の未来を創ることを目指しており、中期経営計画2024では、Green、Digital、Peopleのトランスフォーメーションを経営基盤強化の実行指針としました。
DX戦略の核となるのが、無形資産(コア技術、知財、ノウハウ、データ、AI)の価値を最大化する「テクノロジーバリュー事業開発(TBC)」という新たな収益モデルの創出です。TBCは、設備投資に係るコストやリスクを回避・低減しつつ、顧客との共創を通じてスピードとアセットライトを両立した価値提供を目指します。具体的には、MI(マテリアル・インフォマティクス)モデルの活用などにより、開発工数の削減や技術確立の加速化を支援し、物売りに留まらないソリューションビジネスを構築します。
また、DX推進体制として2021年にデジタル共創本部を設立し、グループ横断での変革を進めています。デジタルプロフェッショナル人材(レベル4・5)の育成と確保に注力するなどの取り組みによって、中期経営計画2024で設定されたDX戦略の成果指標である「DX-Challenge 10-10-100」(デジタルプロ人財10倍、データ活用量10倍、増益貢献100億円)をすべて達成しました。
| 課題・背景 | 経営戦略として生成AIなどの最新デジタル技術を柔軟に取り入れ、ビジネスモデルを変革するDXをグループ全社で強力に推進 |
| 主な取り組み内容 | ERPやAIなどを活用したサプライチェーン改革による在庫最適化の実現など |
| 成果 | 情報伝達工数を10分の1に軽減したことで、在庫日数の大幅短縮やコスト削減を実現し、キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)を大幅に改善した |
富士フイルムホールディングスは、グループパーパスである「地球上の笑顔の回数を増やしていく。」の実現に向け、経営戦略と連動したDX(デジタルトランスフォーメーション)を強力に推進しています。
経営戦略の重要なポイントは、生成AIなど最新のデジタル技術を柔軟に取り入れ、ビジネスモデルを変革することです。DXビジョンでは、デジタル活用によって個人の生産性を飛躍的に高め、優れた製品・サービスを通じた革新的な顧客体験の創出と社会課題の解決に貢献し続けることを掲げています。
具体的なDXの取り組みとして、サプライチェーン改革ではERPやブロックチェーン、AIを活用し、部品調達のプロセスを改革。これによって情報伝達工数を大幅に削減し、キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)の改善や在庫最適化を実現しています。
また、ヘルスケア領域では、新興国で展開する健康診断センター「NURA」を中心に、ブロックチェーン技術を活用し、個人データ主権を守る情報基盤を構築しました。
健診データのオーナーを患者個人とし、そのデータを資産化・利活用できるエコシステムを構築することで、医療データ社会のリーダーシップ確立を目指しています。同社は成果指標として、2030年度までに医療AI技術を活用した製品・サービスを196か国へ展開すること、「NURA」を100拠点まで拡大することを掲げています。
| 課題・背景 | デジタル・ケイパビリティの向上とチェンジマネジメントの推進によるビジネスモデル変革を目標としている |
| 主な取り組み内容 | 全製油所へのデータ統合基盤の導入、EMSによる蓄電池の充放電自動制御の実証実験の実施など |
| 成果 | 製油所へのデータ統合基盤の同時導入によりコラボレーティブメンテナンスが加速し、センサーやAIを活用してトラブルを未然に防ぐことで、高稼働率の維持と保全コスト低減による収益性の向上につながっている |
コスモエネルギーホールディングス株式会社は、2030年に向けた「Vision 2030」の実現と企業価値向上を目指し、第7次連結中期経営計画のスローガン「Oil & New ~ Next Stage ~」のもと、HRX、DX、GXの3つのトランスフォーメーションを推進しています。
DX戦略は「Cosmo’s Vision House」として表現され、「デジタル・ケイパビリティ」の向上と「チェンジマネジメント」の推進を柱とする6つの戦略を立てています。同時に、全員参加型のDXを目指し、社員の意識改革を促す「Cosmo’s 5C」も掲げています。
サイバーセキュリティ戦略では、NIST CSF2.0準拠の対策高度化や、グループ横断の「COSMO-CSIRT」による迅速なインシデント対応体制を構築しています。データ活用面では統合基盤を整備し、需要予測や発電量予測にAIを活用するほか、生成AIの安全な利用に向けたガイドラインも制定しています。
具体的なDXの取り組みとして、「Oil」領域では全3製油所にデータ統合基盤を導入し、保全の連携(コラボレーティブメンテナンス)を加速させ、高稼働・高効率操業と収益性向上に貢献しています。販売部門では、AIを活用したDSS(デジタルステーションシステム)を拡大中です。
また、「New」領域では、自社構築のEMS(Energy Management System)に予測データを取り込み、蓄電池の充放電を自動制御する実証実験を進め、グリーン電力サプライチェーンの強化を図っています。
| 課題・背景 | ビジョン実現と価値創出のため、バリューチェーン全体でのDX推進を目指す |
| 主な取り組み内容 | 商品設計基盤技術「ENLITEN」とモノづくりDXを組み合わせたアルゴリズムの開発など |
| 成果 | DXを通じて断トツ商品の価値を増幅し、競争優位性を獲得するために取り組みを推進した |
ブリヂストンは「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして、社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」というビジョン実現に向け、バリューチェーン全体でDXを推進しています。この取り組みは、企業コミットメント「Bridgestone E8 Commitment」で掲げる8つの価値を、従業員、社会、パートナー、お客様と共に創出し、持続可能な社会を支えることにコミットするものです。
ブリヂストン流のDXは、「より大きなデータで、より早く、より容易に、より正確に」をテーマとし、市場・顧客データや経験則に基づく技術などの強い「リアル」に「デジタル」(独自のシミュレーションやアルゴリズム)を融合させることで、イノベーションを加速することを目指しています。
具体的な取り組みとして、コア事業であるプレミアムタイヤ事業では、商品設計基盤技術「ENLITEN」とモノづくりDXを組み合わせ、AI技術を用いてリアルタイムで最適な製造条件を導き出すアルゴリズムを開発し、製造条件の自律制御を可能にしました。
また、探索事業では、空気充填が不要な次世代タイヤ「AirFree」の開発において、独自のシミュレーション技術と機械学習を組み合わせた最適設計システムを活用し、2026年の社会実装を目指しています。
| 課題・背景 | 長期経営戦略の実現を目指し、中期経営計画においてDXを「コーポレート・トランスフォーメーションの梃子」と位置づけた |
| 主な取り組み内容 | 業務知識とデジタルスキルを持つ「二刀流人財」の育成推進、MIシステムやセキュアな生成AI基盤「ChatAGC」の活用など |
| 成果 | 自動車用フロントガラス検査へのAI導入により高精度な自動検査を実現し、年間約3万時間の検査作業時間の削減が見込まれている |
AGC株式会社は「AGC、いつも世界の大事な一部」をパーパスとし、長期経営戦略「2030年のありたい姿」の実現に向け、中期経営計画「AGC plus-2026」にて「価値創造DXの推進」を主要戦略に掲げ、DXを「コーポレート・トランスフォーメーションの梃子」と位置付けています。
価値創造DXの主要な取り組み領域は、モノづくり力の向上を通じた生産性の革新、品質向上や開発スピードアップによる競争力の強化、お客様などとのWin-Winの関係を目指すビジネスモデルの変革の3項目です。
DX推進体制として、2023年にミッションを拡張したデジタル・イノベーション推進部を発足させ、経営層と一体でDXを推進しています。また、業務知識とデジタルスキルを併せ持つ「二刀流人財」の育成に積極的に取り組み、研究開発分野ではMI(マテリアルズ・インフォマティクス)データベースシステムを独自開発・運用しています。セキュアな生成AI活用基盤「ChatAGC」も2023年6月から本格運用されています。
具体的な取り組みには、異常検知AIを活用した自動車用フロントガラスの無人自動検査の導入(年間約3万時間の検査作業時間削減見込み) や、センサー付きISOコンテナの内容量リアルタイム把握サービス(輸送負荷の平準化や顧客の在庫管理省力化に貢献)があります。リスク管理では、「サイバーセキュリティ/情報セキュリティ」を重要リスクの一つに設定し、情報資産の保護に努めています。
| 課題・背景 | 長年の事業で蓄積した膨大なデータやノウハウを活かし、最先端技術との組み合わせで新たな価値創造を追求している |
| 主な取り組み内容 | 製造現場の生産性向上をもたらすCPS(サイバー・フィジカル・システム)の導入など |
| 成果 | JFEスチールにおいて全社CPS導入率80%を概ね達成。DX人材育成では市民開発者数(630名)やデータサイエンティスト数(660名)が目標を超過達成 |
JFEグループは、社会の持続的発展に貢献する「なくてはならない」存在を目指し、DX戦略を重要な経営戦略として推進しています。鉄鋼、エンジニアリング、商社事業で蓄積されたデータやノウハウといった無形資産を、AI、IoTなどの最先端技術と組み合わせ、新たな価値を創造しています。
JFEスチールは、2024年4月にDX戦略本部を発足させ、「J-OS Cloud」を構築しハイブリッド環境を活用。製造現場では、CPS(サイバー・フィジカル・システム)の導入により生産性向上を実現しました。また、「Chat JFE」などのAI活用や、多工程一貫品質データ解析システムを運用しています。人材育成では市民開発者数、データサイエンティスト数ともに目標を超過達成しました。
そのほか、JFEエンジニアリングはデータ解析プラットフォームの社内利用を拡大し、プラント運営の効率化に活用したり、JFE商事は顧客向けに「安全AIシステム」を提供し、DX化をサポートしたりと、グループ全体で取り組みが行われています。
| 課題・背景 | 世の中がモノ売りからコト売りへシフトするなかデジタル技術で顧客とつながり、多様化するニーズに適したソリューションを提供し、サステナブル社会への貢献を目指す |
| 主な取り組み内容 | AI・IoTを活用し、空調運転データと他データを組み合わせた最適なエネルギーマネジメントの自動化など |
| 成果 | クラウド型サービス「DK-CONNECT」をグローバル展開し、顧客ごとの快適性向上と省エネを実現 |
ダイキン工業は、「デジタル技術で環境と空気の新たな価値を提供し、サステナブル社会へ貢献する」ことを経営ビジョンに掲げ、モノ売りからコト売りへの社会のシフトに対応しています。戦略経営計画「FUSION25」に基づき、2023年度から2025年度までの3年間で累計1,800億円のデジタル投資を計画しています。
DX戦略は、新しいビジネスの創出や既存ビジネスの変革を目指す「ビジネスイノベーション」と、開発リードタイム短縮やサプライチェーンの効率化を図る「プロセスイノベーション」の二領域で推進されています。データ活用が必須であり、AI・IoTを活用して空調の膨大な運転データと他データを組み合わせ、最適なエネルギーマネジメントの自動化を目指しています。
具体的な取り組みとして、100万台の同時接続とリアルタイム制御が可能なオールコネクテッドプラットフォームを構築。クラウド型空調コントロールサービス「DK-CONNECT」をグローバル展開し、顧客ごとの快適性向上やエネルギー消費量削減を実現しました。
| 課題・背景 | 経済発展と社会的課題の解決を両立するSociety 5.0を実現し、「人が豊かに生活する」ことを追求している |
| 主な取り組み内容 | デジタル技術で機械製品を「かしこく・つなぐ」ことを軸とするDX戦略を策定。2022年7月にデジタルイノベーション本部を新設し、IT/OT/EX/CXの改革を推進 |
| 成果 | 成長領域の水素バリューチェーンでは、AIを活用した最適な脱炭素ソリューションを検討・実証。ガスタービンでは実機・シミュレーションを組み合わせた予測制御・最適化を実現 |
三菱重工業のDX戦略は、AI・デジタル化を最大限に活用し、経済発展と社会的課題の解決を両立するSociety 5.0を実現すること、「人が豊かに生活する」ことの追求を経営ビジョンとしています。
中期事業計画に基づくDX戦略は「ΣSynX(シグマシンクス)」を軸としています。これは、多種多様な機械製品・サービス等をデジタル技術で「かしこく・つなぐ」ことにより、お客様に省人化、最適化、高信頼性といった新たな価値を提供することをコンセプトとしています。
2022年7月にはDX推進部門としてデジタルイノベーション本部を新設し、グループ全体のDXを加速。取り組みは、内部オペレーションの最適化(IT領域)、製品事業の変革(OT領域)、および従業員・顧客エクスペリエンスの改革(EX、CX)の多岐にわたります。
特にデジタル人材の育成・確保に力を入れており、標準・ガイドラインに基づく育成プログラムを策定し、既に2万人以上のデジタル人材育成を始動しています。グループ全社員約75,000名を対象としたデジタルリテラシー教育も実施中です。
また、DXの取り組みとして、成長領域である水素バリューチェーンでのAIを活用した最適な脱炭素化ソリューションの検討(GX)や、ガスタービンにおける実機・シミュレーションを組み合わせた予測制御・最適化(OT分野でのサイバー・フィジカル融合)、データ解析による意思決定(SX)の推進があります。
| 課題・背景 | 顧客ニーズへの対応、持続的な成長、トラックドライバー不足といった課題解決においてDXの推進が不可欠となるなか、創業以来の「飛脚の精神」を大切にし、「必要不可欠な存在」であり続けることを目指している |
| 主な取り組み内容 | 「サービス強化・業務効率化・デジタル基盤進化」の3施策を掲げ、AI搭載荷積みロボットやレベル4自動運転、独自帳票対応のAI-OCR開発など、先端技術を活用したソリューションを提供 |
| 成果 | DX実現の道筋が明確であると高く評価され、投資判断基準にROIやROICを算定する先進的な仕組みを導入した |
SGホールディングス(SGH)は佐川急便を中核とし、宅配便からロジスティクス、グローバル物流まで幅広い事業を展開。同社は創業以来、「飛脚の精神」を大切にし、「お客さまおよび社会にとって必要不可欠な存在(=インフラ)」であり続けることを目指しています。
2030年に向けた長期ビジョン「SGHビジョン2030」では、「新しい物流で、新しい社会を、共に育む。」を掲げ、持続的な成長のためにDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を不可欠としています。トータルロジスティクス提供には物流ソリューションの高度化が重要であり、DX戦略は「サービスの強化」「業務の効率化」「デジタル基盤の進化」の3つの施策からなります。
具体的なDXの取り組みとして、AIやロボティクスなどの先端技術を活用し、国内事業者として業界初となるAI搭載トラック荷積みロボットの開発、レベル4自動運転トラックの公道実証、山間地域でのドローン配送実用化に向けた実証実験を実施しています。
また、社内向けに開発したAI-OCRサービスは独自帳票の読み取りにも対応し、社外にも提供することで新たなビジネスチャンスにつなげています。2024年問題など、労働力不足の社会課題解決のためにもDXを効果的に活用しています。
SGHは、DXを推進するための明確な道筋を示しており、投資案件ごとに想定ROIやROICを算定して企業価値向上につながるかを判断するなど、先進的な取り組みも高く評価されています。
| 課題・背景 | パーパスとビジョンの実現、および労働人口減少などの社会課題解決と事業成長を目指し、グループ全体でDX推進とサステナビリティ経営を推進している |
| 主な取り組み内容 | 物流業務の効率化・高度化を図るSmart Hybrid Warehouseの全店展開など |
| 成果 | 全社データ分析基盤が倉庫の拠点再配置シミュレーションなどで効果を発揮した |
三菱倉庫株式会社は、2024年に策定した「Supporting Today, Innovating Tomorrow.」というパーパスに基づき、トータルロジスティクスと街づくりを世界で展開し、非連続な成長を実現することを目指しています。
このビジョン達成のため、先端技術の活用による業務改善と新ビジネス創出を成長戦略の柱とし、特に物流プラットフォームの高度化やデータサイエンスを活用した顧客体験(CX)の向上に注力しています。
また、DXを推進するために、全社的な組織体制の構築、デジタル人材の育成・確保、およびレガシーシステムからの脱却とサイバーセキュリティ対策の強化にも並行して取り組んでいます。DX関連投資として2030年までに500億円の投資額を掲げ、具体的な成果指標を設定し、ステークホルダーとの対話を重視しながら施策を推進しています。
| 課題・背景 | 「人々が豊かで文化的に暮らせる社会づくり」を目指し、「TAISEI VISION 2030」達成に向けた事業変革の基本方針としてDXを位置づけ、企業価値の向上を図っている |
| 主な取り組み内容 | 生産プロセス、経営基盤、サービス・ソリューションの3領域でDXを推進。「デジタルツイン」「AI」をコア技術とし、DXアカデミーやDX戦略部設置で人財・体制を強化 |
| 成果 | 生産プロセスDX標準基盤の累計導入作業所数をKPIとし、2026年度目標650箇所に対して2024年度実績は324箇所と順調に進捗した |
大成建設株式会社は、グループ理念の実現に向けた中期経営計画と「TAISEI VISION 2030」において、DXを事業変革の重要な柱と位置づけています。
DX戦略は、「生産プロセス」「経営基盤」「サービス・ソリューション」の3つの注力領域を中心に展開され、デジタルツインやAIなどのコア技術とデジタル人財の育成がその基盤となっています。具体的な取り組みとして、「Taisei-DaaS」によるデータ連携や、土木・建築事業における「T-iDigital® Field」や「T-BasisX®」といったDX標準基盤の導入が進められており、これらの成果指標も設定されています。
さらに、全社的なDX推進体制として「DX戦略部」が新設され、「DXアカデミー」を通じてデジタル人財の育成・確保が図られています。
| 課題・背景 | 「三菱地所デジタルビジョン」を策定し、膨大なエンドユーザーとの接点と不動産への関与という強みを活かし、高効率かつ真に価値ある社会を実現するためDXを推進している |
| 主な取り組み内容 | 共通認証基盤とネットワークを構築し、オンラインとオフラインの接点をシームレスに連携 |
| 成果 | 総合スマートホームシステムの他社へのサービス提供、顔認証による利便性向上と運営コスト削減を実現した |
三菱地所株式会社は、都市開発を通じて真に価値ある社会を実現するという経営ビジョンのもと、社会価値向上と株主価値向上を両輪とする経営を推進しています。
DX戦略としては、顧客体験をシームレスにつなぐ「三菱地所デジタルビジョン」を策定し、共通認証基盤「Machi Pass」やオープンなエコシステム「MELON」を構築しています。
また、スマートホームシステム「HOMETACT」や顔認証プラットフォームなどの新規事業創出に注力するほか、グループ全体のデータ利活用、生成AIの活用による業務効率化、デジタル人材の育成とサイバーセキュリティ強化にも取り組んでいます。
| 課題・背景 | DXによるビジネスモデル転換を機会・脅威と認識し、失敗を恐れない企業文化で業態変革を推進している |
| 主な取り組み内容 | 「Olive」やVポイント統合を展開。専用生成AI(SMBC-GAI)を開発し、500億円の投資枠も整備 |
| 成果 | 顧客利便性を高めるビジネスを創出し、「Olive」の顧客基盤を拡大。SMBC-GAIは1日2万件以上利用され、グループで100業務以上の自動応答照会を実現した |
株式会社三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)は、「金融機関」の枠を超えたグローバルソリューションプロバイダーを目指し、「Beyond&Connect」をスローガンに業態変革を推進しています。
その実現のために、DX推進を担う組織体制の整備、IT・デジタル人材の確保・育成に注力しており、また「Olive」といった総合金融サービスの提供や、生成AIを活用した業務効率化、新たな顧客向けソリューション開発に積極的に取り組んでいます。
| 課題・背景 | 急速なデジタル社会の進展に対応し、将来にわたり選ばれ続けるため、お客さま本位のDXを徹底し新たな価値提供を目指す |
| 主な取り組み内容 | 個人向けアプリ等の内製開発、AI導入・データ活用体制整備に加え、DX推進本部を組成。次世代システム構築や金融枠を超えた新事業も展開中 |
| 成果 | 個人向けアプリ登録者は約126万人、BIZSHIP利用者は約33,000名に増加。稟議意見書AIサポートシステム導入で年間3,500時間の業務削減を達成した |
「お客さま本位」を徹底し、金融の枠を超えた新たな価値提供を目指す、株式会社ふくおかフィナンシャルグループ。同社は長期戦略の基本方針として、「デジタル/AIでお客さまを深く理解し、人のきめ細やかさでニーズに応える」ことを掲げています。
DX戦略では、バンキングアプリや事業者向けポータル「BIZSHIP」などのデジタルツールの内製開発を通じてビジネスモデルの変革を進め、データ活用やAI導入による業務効率化を図っています。また、「みんなの銀行」や金融機関発の総合商社「FFGインダストリーズ」といった新規ビジネスの創出にも積極的に取り組み、地域社会の豊かな実現に貢献することを目指しています。
| 課題・背景 | 長期ビジョン「ONE&ONLYのオートモビリティ企業」と中期ビジョンの実現に向け、DXを不可欠な戦略と位置づけ、未来のカーライフの共創を目指す |
| 主な取り組み内容 | モビリティプラットフォーム構築、申込のWEB化、AIによる与信自動審査、体系的なDX人材育成など |
| 成果 | オートクレジット与信業務におけるAI自動審査で一定の成果を創出。申込のWEB化により、加盟店との業務効率向上を大幅に実現した |
プレミアグループ株式会社は、「ONE&ONLYのオートモビリティ企業」という長期ビジョンと「カープレミア事業モデルの確立」という中期ビジョンの実現に向け、DXを不可欠な戦略と位置づけています。
モビリティ事業者との共創、従業員のウェルビーイング、次世代モビリティサービスの実現という3つのコアビジネス戦略を掲げ、特にB2B2Cモデルを目指すモビリティプラットフォームの構築と、オートクレジット事業におけるAIを活用した与信業務のデジタル化への取り組みを推進しています。
| 課題・背景 | 2030年に向けて既存基幹システムの安定性を保ちつつ、競争力強化とサイバーセキュリティリスク増大に対応する必要があった |
| 主な取り組み内容 | 内製開発チームを設立し、安定と柔軟性を持つ全社DX推進体制へ発展。クラウドを活用し、基幹システムをラップする社内API基盤を構築 |
| 成果 | AI活用によりカード申込入力を最大3割超削減し、最短0秒審査を実現。社内API基盤構築でコスト削減や基幹システムに伸縮性をもたらし、システム外販も開始した |
株式会社クレディセゾンは2030年に向けて「GLOBAL NEO FINANCE COMPANY」を目指し、内製開発の拡大とDX推進を事業改革の核としています。
具体的には、2019年からフェーズに分けてDXに取り組み、テクノロジーセンターの設立からCSDX推進部への統合を通じて、アジャイルな開発体制を構築しました。また、コアデジタル人材を含む三層のデジタル人材育成を進め、基幹システムをラッピングする社内API基盤「オープンGW」を内製化することで、システムのフットワークの軽さと伸縮性を実現しています。
| 課題・背景 | 2030年の企業ビジョン実現と企業価値向上に向け、経営戦略の中心にデジタル技術の徹底活用を掲げている |
| 主な取り組み内容 | デジタルビジネス収益化、既存事業強化、基盤整備の3本柱で推進。全社横断的DX体制を構築し、人材育成や生成AI活用、各事業でのデジタルツインやAI活用PJを加速 |
| 成果 | 人材育成の土台を確立した上でデジタルビジネス収益化や既存事業の収益増加、業務効率化などを主要KPIに設定したほか、DX推進委員会で進捗を監視し持続的成長へつなげた |
双日株式会社は、2030年の目標として「事業や人材を創造し続ける総合商社」を掲げ、「Digital-in-All」をコア戦略に据えてデジタル技術の徹底活用を推進しています。
デジタルビジネスの収益化、既存事業の価値向上、そしてそれを支えるデジタル基盤の整備の3本柱を推進し、具体的にはマグロ養殖や自動車販売、タイでのアグリビジネスなどにおけるDXに取り組んでいます。
| 課題・背景 | 顧客時間価値の最大化とインダストリアル・オートメーション(IA)産業の非効率解消を目指す |
| 主な取り組み内容 | AIプラットフォームなどの新サービスの投入、基幹システムの内製刷新・グローバル導入、DX主管組織設立など |
| 成果 | デジタルモデルシフトによるビジネスモデルの進化、確実短納期の実現、製造業マーケットプレイスの立ち上げを達成した |
株式会社ミスミグループ本社は、インダストリアル・オートメーション(IA)産業における非効率を解消し、「顧客時間価値」の最大化を目指す「成長連鎖経営」を掲げています。この成長戦略の中心にあるのがデジタルモデルシフトであり、AIプラットフォーム「meviy」やサプライヤーネットワーク構築サービス「D-JIT」など、新たなデジタルサービスを展開しています。
また、事業成長を支えるために約200億円を投じて基幹システム「NEWTON」を内製開発し、DX推進組織の強化やデジタル人材の育成にも注力しています。これらの取り組みを通じて、同社は製造業におけるマーケットプレイスのプラットフォーマーとしての地位を確立し、バリューチェーン全体のスピード化と自動化を推進しています。
| 課題・背景 | 従来のアドホックなデータ活用では知見の蓄積や自動化が困難だったため、AI活用でデータドリブン企業への転換を目指す |
| 主な取り組み内容 | マーチャンダイジングと物流のDXへの取り組み、データ基盤の構築、生成AIツールの全社導入など |
| 成果 | 東京大学との共同研究で配送最適化を実現した |
アスクル株式会社は、1993年のオフィス通販「ASKUL」立ち上げ以来、AIなどのテクノロジーを活用したデータドリブン企業への転換を目指し、「オフィス通販からのトランスフォーメーション」を掲げています。
DXの具体的な取り組みとして、商品開発(マーチャンダイジングDX)や物流プロセスの自動化・最適化(物流DX)に注力しており、全ECバリューチェーンを自社で運営する強みを最大限に活かしています。
また、CDXOを中心とした推進体制を構築し、「ASKUL EARTH」と呼ばれるビッグデータプラットフォームの構築、全社的なデジタル人材の育成、生成AIツール「ASKUL GPT」の導入など、基盤強化と新規ビジネス創出の両面を進めています。
DX推進の事例は企業によってさまざまであるものの、成功した要因には共通点があります。自社においてDXを推進する際にも、以下のようなポイントの再現性を意識して取り組むとよいでしょう。
DXの推進は単なるデジタル化とは異なり、企業戦略と紐づいた長期的な取り組みが求められます。そのためDXを通じて、数年後にどうなっていたいのか、組織のありたい姿を定めることが大切です。
実際、前述の「DX銘柄2025」に選出された企業の多くが、経営戦略における長期的なビジョンのもとでDX推進に取り組んでいます。
長期的なビジョンを持つことによって、ありたい姿に対してモチベーションを高めるだけでなく、そうなるために何が足りていないのかを具体化することにもつながるのです。
積極的なデータ活用も、DX推進に成功している事例の共通点として挙げられます。
デジタル技術を活用するDXにおいて、データとの関連性は無視できないものです。実際に、多くの成功事例で、顧客や自社製品に関するデータを蓄積し、業務の効率化やニーズの把握に活かしています。
例えば、株式会社ワコールホールディングスでも、同社が蓄積してきたデータの活用とオープンイノベーションによって従来の画一的なサービス提供の限界を超え、顧客体験の新たな価値創出を実現しています。
この事例からもわかる通り、サービス向上に活かせるデータを取得し、蓄積するだけではなく、それを適切に活用することにより、新たなサービスの提供や付加価値の向上につなげることが可能なのです。
DX推進に成功した企業は、体制構築に投資をしているという特徴があります。
DXの推進には、システムを導入するだけでなく、DXを推進できる人材の育成や、DXを動かす仕組みが必要です。仮に最新技術が使われたシステムを導入したとしても、社内にそれを活用し業務に活かせる人材がいなければ、企業としての継続的な成長にはつながりません。
実際に、DXに成功した企業の多くが、事業としての取り組みと並行してDX人材の採用・ 育成にも取り組んでいます。
継続的な成長につなげるためには、社内の人材が主となり、DXを推進する体制を構築することは成功要因として不可欠と言えるでしょう。また必要に応じて、システムのベンダー企業と連携したり、外部サービスを活用したりといった社外との連携も重要です。
パーソルホールディングスが公表した「DX推進に関する最新動向調査レポート」によると、「DX推進にどの程度課題を感じているか」との問いに対し、全体の約5割が課題を感じていると回答しました。
DXの推進では、社内外でさまざまな問題が発生します。ここでは、DX推進における具体的な課題について解説します。
DX推進に取り組む企業の多くが感じている課題が、DX人材の不足です。「DX推進に関する最新動向調査レポート」においても、「DX推進について取り組みの障壁は何か」との問いに対し、「推進のためのスキルを有する人材を育成できない」と答えた企業が全体の21.1%、「社内のITリテラシーが不十分」との回答が19.9%を占めました。
DX人材を社内で育成できない理由として挙げられるのは、DX人材育成のノウハウを蓄積できていないことです。
DX推進を行う上で活躍できる人材は、デジタルテクノロジーに関する理解を十分に持ち、さらに持っている知識をビジネスにおいてどのように活用できるかを考えられる必要があります。しかし、このようなスキルを兼ね備えている人材は、市場においてもそう多くありません。
そのため、社内で人材を育成する必要がありますが、社内の人材不足を理由にDX戦略の立案や、推進を外部企業へ委託していたケースでは、自社にノウハウを蓄積できていないでしょう。DX推進に成功した企業の多くは、内製化を意識し、人材育成にも取り組んでいます。DXへの取り組みとともに、実践で活用できる長期的な人材育成計画を立てることが大切です。
組織体制や社内環境が整備されていない場合、スムーズなDX推進は困難です。経営陣やIT部門、現場によって、組織体制や社内環境の課題は異なります。それぞれの立場で、どのような課題があるかを把握する必要があります。
経営陣の課題は、ビジョンを提示することです。DXは組織全体で取り組むべきプロジェクトです。しかし、経営陣が「DXで何を成し遂げたいのか、どのように推進していきたいのか」といったビジョンを明確に示していない場合、現場もDXに対して必要性を感じることができず、取り組みを進められません。
経営陣が明確なビジョンを提示することにより、現場はDXの必要性を認識します。経営陣が顧客視点に寄り添い、「自分ごと」事としてDXのビジョンを考えることが重要です。
IT部門の課題は、人材育成です。あらゆる業界でビジネスのデジタル化、IT化が進むなか、企業におけるIT部門の役割は増える一方です。他社におけるデジタル技術活用やDX推進事例の研究のほか、システムの選定やデジタル技術活用の提案などもしなければならないため、負担はさらに増加します。
しかし、役割や責任が大きくなる一方で、「DX推進に要する人材が不足している」「育たない」といったシーンにはじめに直面するのはIT部門です。DXへの取り組みとともに、IT部門においても人材育成への取り組みも推進することが大切です。
現場の課題は日常業務との兼ね合いです。現場は、日常業務を遂行しつつDXへの取り組みにも着手しなくてはなりません。DX推進においてもっとも影響を受ける立場といえるでしょう。
DXに取り組む体制が整備されておらず、日常業務に追加される形でDX推進への取り組みが求められた場合、DXがうまく進まないどころか、日常業務にも支障をきたす可能性があります。
そのため、現場でどのようにDXを推進していくのかを整理し、現場の負担を軽減できるような体制を考えることが大切です。

【調査レポート】リスキリングの最新トレンド
全国の企業にお勤めの方を対象に、「リスキリング」に関する定点調査を四半期ごとに実施しており、定点観測的な項目に加え、定点観測的な項目に加え、リスキリング施策に関する「転職と社内異動の関係」について考察しています。リスキリングを上手に取り入れている企業の特徴を、さまざまな角度から分析していますので、ぜひご活用ください。
DX推進を成功させるために重要なポイントを確認していきましょう。
先行企業の成功事例は、非常に参考になりますが、他社の事例をそのまま自社に適用してもうまくいくとは限りません。そのため、DXに取り組む際は、自社に最適化された施策を検討する必要があります。そしてこれは、DXの目的設計に関しても同様です。
目的設計とは、事業戦略や組織のビジョンと結びついた具体的な目標を設定し、その達成のためにデジタル技術をどのように活用できるか検討するプロセスを指します。具体的な目標を設定することで、組織全体が意識を統一してDXを推進しやすくなります。逆に目的設計がしっかりしていないと、必要以上にハイエンドなツールを導入してしまい、余計なコストを発生させてしまったり、ツールの導入そのものが目的化してしまったりする事態になりかねません。
目的設計に際しては、第一にDXによって実現したい目標やビジョンを明確化することが重要です。その後、自社の現状の状況を可視化することを通して、目標までに何が足りていないのかを把握することに努めます。そして、この目標と現状のギャップを埋めるための手段として、どのようなデジタル技術やITツールが有効かを検討するという流れです。
目的設計に際しては、従業員の意見にも耳を傾けるようにしましょう。現場の実情を無視して施策を講じると、現場で役に立たないツールを導入してしまうなど、失敗のリスクが高まります。
ただし、これは従業員の声を最優先すべきということではありません。従業員の声をすべて取り入れても優れたシステムになるとは限らず、従業員へまったく負担を与えずに変革をするのは困難です。そのため、経営者またはDXの推進責任者は、経営的な観点と従業員の観点の双方をトータルで見て、目的設計や施策の決定をする必要があります。
DXには目的設計が不可欠ですが、その際には経営層が主導することが重要です。DXは個別の業務をデジタル化したり効率化したりするだけでなく、ビジネスモデルや企業文化、社内制度の変革なども伴うものです。もちろん、一定の投資も欠かせません。
そのため、DXを推進するにはIT人材だけでなく、経営的な観点から大きな権限を持って決断できるリーダーが必要です。経営層が主導することで、DXの方向性や経営的な意義が明確になり、経営層と従業員のギャップを埋めながら、部門横断的にDXを進めることが可能になります。なぜDXに取り組むのか、誰にどのような価値を提供したいのかなど、目的やビジョンを明確にして、新しいビジネスモデルを構築していくことが大切です。
DXの成功は、新たなデジタル技術を導入するだけで達成されるものではありません。新たな技術の導入はあくまで手段であり、それをどのように活用して自社の課題を解決するかが重要です。そのため、DXに取り組む前には自社の課題を明確にするようにしましょう。
例えば、SWOT分析といったフレームワークによって、現在、自社が置かれている内部環境・外部環境を分析・整理し、最終的なビジョンを確立するまでに必要な要素を洗い出すことが大切です。

必要な要素を洗い出したら、初期、中期、長期に分けて自社のあるべき姿とやるべきことを定めていきます。例えば、初期にすべきことには「関係者間での意識共有」「デジタル化による、DXに必要なインフラの整備」などがあります。中長期的には「DX推進体制の整備」「デジタルプラットフォームの構築」などが挙げられます。
日本企業は、DXにおいて業務効率化など既存の方法の改善を重視しがちです。しかし、DXではさまざまな取り組みが求められます。そのため、自社の業務を棚卸してそこから課題を抽出し、解決するためにどのようなデジタル技術を活用するべきか、広い観点で考えることが重要です。これにより、デジタル技術の導入そのものを目的化してしまうことを防ぎ、より効果的にDXを推進できます。
【関連記事】SWOT分析とは?やり方や具体例、活用法をわかりやすく解説
DXを推進するためには、単に新たなシステムを導入するだけではなく、組織全体がデジタルを活用して業務や事業を根本的に変革する「マインド」を持つことが求められます。そのためには、まずDXの概念を全社的に理解・共有することが重要です。
具体的には、DXが企業のビジネスモデルを根本的に変革する取り組みであるという理解を深め、それを踏まえてデジタル技術の活用を当たり前とする文化を作ります。その上で、変革を起こすためのアイデアや新しい試みを積極的に取り入れるオープンなマインドを醸成するようにしましょう。
紹介した事例の中では、株式会社LIXILのノーコード開発ツールの導入などが良い事例です。自分で開発したアプリが実際の業務で使われる可能性があれば、従業員のモチベーション向上に繋がります。
DXは専門的な知識や人員、時間を必要とするため、既存の業務と兼任させるだけでは効率的に推進するのは容易ではありません。DX推進に伴う業務負担の増加により、従業員の不満が生じる恐れもあります。そのため、DXを推進する際には専門のチームを設置するなど、DX推進体制の構築が必要です。
DXが全社的な取り組みであることや、経営そのものに深く関わることを考慮すれば、経営層直下のプロジェクトにすることも一考の価値があります。いずれにしても、このDX推進体制には、各部署のキーパーソンや経営トップが関与し、部門横断的な連携ができると理想的です。
また、DXに精通した人材も欠かせません。理想を言えば、デジタルリテラシーと、変革に対して積極的なマインドを両方持つ人材が求められます。DX人材の確保手段としては、新規採用、既存人材の育成、外部の専門家と連携するなど、多角的なアプローチが考えられます。
【関連記事】DX人材とは?役割や求められるスキル・獲得方法【事例あり】
DXを実現するためには、一定の初期投資やIT人材の確保が必要となるので、すぐに大規模な取り組みを始められない場合もあります。また、一度に多くの業務を変革しすぎると、現場が大きく混乱してしまうリスクも無視できません。
そのため、最初から大規模なプロジェクトを始めるのではなく、小規模なプロジェクトから始め、その結果を評価し、改善を繰り返すPDCAサイクルを確立することが有効です。例えば定型業務の自動化など、比較的簡単に取り組める改善から始めることが推奨されます。小さな成功体験を積むなかで、これまでDXやデジタルそのものに否定的だった人材も、考えを改めるかもしれません。
また、一度システムを導入したからといって満足せず、常に新しい技術の導入や現在のシステムの見直しを行い、改善を続けることが重要です。これにより、DXを継続的に推進し、自社の競争力を長期的に維持・強化できます。
【無料DL】DX推進のノウハウや成功事例をまとめた資料を公開中
DXを推進している企業が増えてきていますが、成果を出している企業は「組織設計」や「社内人材の育成」などに力を入れています。
パーソルグループでは、そのようなDX推進が成功している企業事例を紹介した【DX推進を成功に導く人材採用・人材育成・組織設計と成功事例】を無料で公開しています。DXの推進にお悩みの方はぜひご活用ください。
パーソルイノベーションが提供する「リスキリングキャンプ」は、実現したいゴールや対象者のスキルに応じた最適なカリキュラム設計と、アウトプット前提の実践向け学習設計によって企業のリスキリングを支援する研修サービスです。
プロのキャリアコーチが受講者一人ひとりの理解度に合わせてフォローアップを行うため、着実に実践向けスキルを習得しながら継続して学習することができます。
スキル・マインドの両面を効果的にサポートすることで企業のリスキリングを成功へと導きます。リスキリングや自社のDXにお悩みの方はぜひお気軽にお問合せください。
「DX銘柄」にはDXに積極的に取り組んでいる企業の成功事例が掲載されています。DXを推進する際は、こうした先行企業の事例をヒントにし、「自社の場合ならどうしたらいいのか」と考察を深めていくことが大切です。本記事を参考に、ぜひ自社に適したDX戦略を構築してください。