DXの成功事例10選|他社の取り組み内容・成功の共通点を解説

DX推進にあたり、同業他社やDX先行企業の取り組みを調べるケースは多いのではないでしょうか。DXにおける「目標」や「成功」は企業によって定義が異なるため、自社が目指す取り組みに近い事例を探すことが重要です。

本記事では、DXに取り組む企業事例のほか、事例を調べる際の注意点、DX推進を成功させるポイントなどを解説します。

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DXを推進する具体的な施策は企業ごとに様々ですが、DX推進に成功している企業は共通して、ある重要なポイントを押さえています。

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目次

DXとは

DX(Digital Transformation)とは、デジタル技術を用いて企業のビジネスモデルやビジネスプロセスを変革し、企業価値を向上させる取り組みを指します。

デジタル技術が大幅に向上し、消費行動や価値観の変化が見られる現代社会において、企業が競争力を保ち続けるためにはDXの取り組みが不可欠となっています。

そもそもDXとはどのような取り組みなのかを改めて確認したい方は、以下の記事を参考にしてください。

関連記事「DXとは?意味や取り組み内容、必要性をわかりやすく」を見る

DXの成功事例で見るべきポイント

DXの成功事例はさまざまな媒体で取り上げられます。しかしながら、自社のDX推進の参考にしたい場合、闇雲に事例を読む前に自社が実現したいDXを定義することが重要です。ここでは、DXの成功事例で見るべきポイントに関して解説します。

DXの目的に合わせて事例を見る

第一のポイントは、DXのゴールは企業によって定義が異なるということです。例えば、事業構造を抜本的に変革したいのか、業務プロセスを効率化したいのかによって見るべき事例は異なります。

そのため、自社が何を目指しているのかを明確にしてから、近しい参考事例を探しましょう。DX推進には以下のようなパターンがあります。

    • 抜本的な事業構造を変革
    • 新商品・新サービス・新事業を開発
    • 既存の商品やサービス・事業の付加価値を向上
    • 業務プロセスの効率化・高度化
    • 新規顧客の開拓

本記事でもこれらの分類に沿って事例を紹介するので、目的に応じて参考にしてみてください。

自社の状況にあわせてアレンジする

第二のポイントは、他社の事例をそのまま模倣するのではなく、自社の状況にあわせてアレンジする必要があることです。他社が成功を収めたからといって、その手法やツールが自社にも適用できるとは限りません。

事例の会社規模と大きく差がある場合、導入で負担が大きくなる可能性があります。自社の事業環境、組織文化、技術力などさまざまな要素を考慮し、最終的には自社なりのDXの進め方を考案する必要があります。

また、他社が行っている施策をむやみに取り入れると、実行が中途半端になってしまう可能性があります。DX推進を進める際は、以下の観点から優先順位を決めたうえで取り組むことが大切です。

    • 早期に解決すべき課題は何か
    • コスト面はどうか
    • どの程度の日数がかかるのか

ただし、他社の具体的な事例が一種の叩き台として活用できるのは変わりません。自社の状況となるべくマッチする成功事例を参考にし、DXで行うべき施策のイメージを具体的に膨らませることは大切です。

DX推進の成功事例

DXの成功事例を探す際に役立つ資料のひとつが、経済産業省と東京証券取引所、そしてIPAが選出した「DX銘柄」です。以下では、この資料に基づいて、DXの成功事例を業種別に紹介します。以下の表では、先述のポイントを踏まえて整理していますので、ぜひ参考にしてください。

業種 企業名 目的
製造業 ダイキン工業株式会社 新規顧客の開拓
株式会社LIXIL 業務プロセスの効率化・高度化
運輸業 ヤマトホールディングス株式会社 既存の商品やサービス・事業の付加価値を向上
建設・不動産業 清水建設株式会社 新商品・新サービス・新事業を開発
プロパティエージェント株式会社 既存の商品やサービス・事業の付加価値を向上
保険・金融業 ms&adインシュアランスグループホールディングス株式会社 既存の商品やサービス・事業の付加価値を向上
株式会社ふくおかフィナンシャルグループ 抜本的な事業構造を変革
株式会社りそなホールディングス 新規顧客の開拓
小売・流通業 株式会社丸井グループ 新商品・新サービス・新事業を開発
双日株式会社 業務プロセスの効率化・高度化

製造業

ここでは製造業の取り組みを見ていきます。取り上げる企業は「ダイキン工業株式会社」と「株式会社LIXIL」です。

空調機をクラウドに接続し、顧客に応じた空調管理の効率化を実現|ダイキン工業株式会社

課題・背景 ビルや商業施設・病院などにおいて、部屋や設備などの使用状況に応じた効率的で手間のかからない空調コントロールが求められていた
主な取り組み内容 クラウド経由で空調管理を遠隔制御できる「DK-Connect」を展開
成果 顧客に適した空調管理の効率化により、快適性向上、エネルギー削減、管理工数削減などが可能に

近年、ビルや商業施設・病院などの業務用空調機には「快適な環境を提供する」という従来の機能だけではなく、多様な働き方への対応やエネルギー消費量の削減などが求められています。また、設備管理者の人手不足も課題になっており、使用状況に応じた効率的で手間のかからない運用・管理が必要とされています。

ダイキン工業株式会社はこの課題に対応するため「DK-Connect」を2021年から展開しています。

このサービスは、空調機をクラウドに接続し、パソコンやスマートフォン・タブレット端末からの監視や制御を可能にするソリューションです。例えば以下のようなことが行えます。

    • 空調機の運転状況を確認し、遠隔操作する
    • 照明や換気装置など他の設備との連携を通じて、省エネや利便性・快適性の向上を実現する
    • 空調機の運転データを自動で蓄積し、運用改善に活かす
    • 顧客の管理ニーズに応じたアプリケーションを新たに組み合わせ、課題や状況に応じて空調管理を効率化する

「DK-Connect」の展開により、顧客ごとに空調管理を効率化し、快適性の向上やエネルギー消費量の削減、管理工数の削減などに貢献しています。

【参考】経済産業省「DX銘柄2023

ノーコード開発ツールの導入で「デジタルの民主化」を実現|株式会社LIXIL

課題・背景 従業員を価値創造の中核に据え、「デジタルの民主化」を目指す
主な取り組み内容 ノーコード開発ツールを全従業員に向けて導入
成果 従業員が開発し、実際に稼働しているアプリが1,500個を超え、「デジタルの民主化」を実現

株式会社LIXILでは従業員を価値創造の中核としており、従業員が独自にソリューションを提案できる組織を目指しています。そこで掲げたテーマが「デジタルの民主化」で、その象徴となる取り組みがノーコード開発ツールの導入です。

ノーコード開発ツールは日本の全従業員が利用可能なもので、導入から1年で開発されたアプリは2万件におよび、そのうち1500個以上が実際に正式な業務用ツールとして活用されています。

入社3年目のタイル事業部の若手社員がタイルインクの残量記録アプリを開発したり、総務部が運行記録とアルコールチェックを行えるアプリを開発するなど、部門を超えて様々なアプリが開発され「デジタルの民主化」に成功しています。

運輸業

ここでは運輸業の取り組みを見ていきます。取り上げる企業は「ヤマトホールディングス株式会社」です。

デジタル技術の活用で効率的な医薬品の運輸を実現|ヤマトホールディングス株式会社

課題・背景 厳密な品質管理とトレーサビリティの徹底が必要な特殊医薬品の配送コストの負担を、混載輸送によって低減する必要があった
主な取り組み内容 IoTデバイスを活用し、荷物をリアルタイムでモニタリング
温度の逸脱など、配送時に問題が発生した際に自社のネットワーク上でリカバリー対応ができるように整備
成果 新型コロナウイルスのワクチン輸送で活躍

ヤマトホールディングス株式会社のDXの取り組みは、医薬品の運輸で大きな成果をあげています。

医薬品の輸送には厳格な品質管理が求められるため、高額な専門便の利用が一般的でした。しかし、同社はIoTデバイスによる荷物のリアルタイムモニタリングや、ネットワーク上でのリカバリー対応ができるようにすることで、安全な配送を実現しました。また、医薬品専門資材によるエリア分けを徹底することで、トラック庫内での混載を可能にし、配送コストの軽減も実現しました。

同社のソリューションは、新型コロナウイルスのワクチン輸送でも活用され、社会課題の解決に大きく貢献しています。

建設・不動産業

ここでは建設・不動産業の取り組みを見ていきます。取り上げる企業は「清水建設株式会社」と「プロパティエージェント株式会社」です。

建物OS「DX-Core」で建物の一元管理を実現|清水建設株式会社

課題・背景 管理するビル毎に、その都度設備間・システム間を連携するのが、コスト、時間、手間がかかっていた
主な取り組み内容 建物のOSである「DX-Core」を導入
成果 入居者・建物管理者・オーナーの利便性や業務効率性の向上

清水建設が行なったDXの取り組みの1つは、建物のシステムや設備を一元管理できるシステムの開発です。従来、建物内に新しいシステムを導入しようとすると、システムや設備を個別に連携する必要がありました。

例えば、ビル内の搬送用や清掃用のロボットの場合、ロボットが移動するためにエレベーターや自動扉を利用するシーンがありますが、従来はこれらとロボットを個別に連携させなければなりませんでした。

この問題を解消するのがDX-Coreです。DX-CoreのAPIを通すことで、ロボットやエレベーターのほか、監視カメラや空調などの設備も一元管理できるようになります。そしてDX-Coreを導入した結果、ビルの付加価値向上、オーナーの利便性や業務効率性向上に繋がりました。

特許取得の顔認証システムで既存事業を深化|プロパティエージェント株式会社

課題・背景 不動産業界は競合が多く、かつ差別化が難しいという特徴を持っている。そのため、どのような付加価値を提供できるかが企業戦略において重要。
主な取り組み内容 ALL顔認証マンションの導入
成果 高いセキュリティと利便性の提供に成功

プロパティエージェント株式会社は、「現実空間に強みを持つ総合DXグループ」をテーマにDXを推進している企業です。特に、特許を取得した独自の顔認証を軸に、事業の深化を行っています。

その主なDXの取り組みが「ALL顔認証マンションの導入」です。多くのマンションでは、エントランスはパスワード、メールボックスはダイヤル式、玄関は物理キーなどのように統一されていませんが、ALL顔認証マンションでは、これらを顔認証で統一することができます。また顔情報データは暗号化されているため、セキュリティ面も安心です。

このようにプロパティエージェント株式会社は、顔認証技術を通じて、人々の現実空間をより便利で、より安全なものとする取り組みを行っています。

保険・金融業

ここでは製造業の取り組みを見ていきます。

    • ms&adインシュアランスグループホールディングス株式会社
    • 株式会社ふくおかフィナンシャルグループ
    • 株式会社りそなホールディングス

「CSV×DX」で交通事故リスク軽減に貢献|ms&adインシュアランスグループホールディングス株式会社

課題・背景 交通事故リスクの防止・軽減には、危険箇所の洗い出しや詳細分析が必要
主な取り組み内容 保険サービスで得られたデータを活用して、危険箇所分析をワンストップで行うサービスを提供
成果 自治体の安心・安全なまちづくりに貢献

ms&adインシュアランスグループホールディングス株式会社の事例は、自社の強みの活用が社会的課題の解決に結びついたDXの良い例と言えます。

同社の特徴的なDXの取り組みが、保険サービスを通じて得られたデータを、事故リスク軽減のために活用する「交通安全EBPM支援サービス」です。これは、自動車保険のデバイスから取得した走行データをもとに、危険箇所候補の選定、要因分析、対策の提案、効果の検証をワンストップで行い、安心・安全なまちづくりを支援する取り組みです。

「交通安全EBPM支援サービス」は2023年の内閣官房主催「冬のDigi田甲子園」で、最高位の内閣総理大臣賞を受賞しています。DXを通じて、自治体の安心・安全なまちづくりの貢献に成功したといえるでしょう。

システムをゼロベースで設計しデジタルネイティブ世代へアプローチ|株式会社ふくおかフィナンシャルグループ

課題・背景 長期的に顧客を確保するために、まずます増加する「デジタルネイティブ世代」が使いやすい銀行サービスを提供することが重要
主な取り組み内容 デジタルネイティブ世代をターゲットにしたシステムをゼロベースで設計
成果 サービス開始2年で200万ダウンロード、67万口座突破

株式会社ふくおかフィナンシャルグループは、2022年にスタートした第7次中期経営計画で「〜カタチは変わる、想いは変わらない。〜」をスローガンに掲げ、DXを推進してきました。それを体現する取り組みが「みんなの銀行」サービスの提供です。

「みんなの銀行」とは、あらゆるサービスがスマートフォン上で完結するサービスです。従来の銀行の延長線上ではなく、デジタルネイティブ世代をターゲットに据え、業務プロセスや基幹システムに至るまで全てをゼロベースで設計しています。2030年にデジタルネイティブ世代が就業人口が60%になることを見込んだ、先見的な取り組みです。

同サービスは、2021年5月にスタートし、2023年5月までの2年間で200万ダウンロード、67万口座を突破しています。利用者の居住地域も九州だけでなく、関東や関西、甲信越地方など様々です。

DXは単なる既存業務のデジタル化とは異なります。ふくおかフィナンシャルグループのように、ときに社会構造の変化にも目を向けた大胆な取り組みを行うことも大切です。

デジタル技術を活用して「会えないお客さま」との取引を拡大|株式会社りそなホールディングス

課題・背景 「リテールNO.1」を実現するために、これまで有効な接点をモテなかった顧客にリーチする必要があった
主な取り組み内容 フルバンキング機能を持つりそなグループアプリをリリース
成果 「うすく」×「ひろく」×「ながく」という収益モデルへの変革に成功

株式会社りそなホールディングスは「リテールNO.1」への挑戦を掲げており、DXの取り組みもその目標を具現化するものとなっています。これまでに蓄積してきた豊富な対面チャネルを最大限活かすために、スマートフォンを活用して、「会えないお客さま」でも銀行のサービスをフルに活用できるようにしたのです。

「会えないお客さま」にアプローチできるようになったことで、「うすく」×「ひろく」×「ながく」という収益モデルへの変革も成功しました。DXの推進することで、自社の目標の実現に近づくことに成功した良い事例と言えます。

小売・流通業

ここでは小売・流通業の取り組みを見ていきます。取り上げる企業は「株式会社丸井グループ」と「双日株式会社」です。

デジタル債発行によって新たな選択肢を提供|株式会社丸井グループ

課題・背景 会員向けのアンケートを実施したところ、約7割が「社会課題解決の応援をしたいが行動に移せていない」ことが判明
主な取り組み内容 ブロックチェーンを活用したデジタル債による「応援投資」を仕組み化し、社債の募集をスタート
成果 予測を大きく応募があり、顧客満足度の向上に成功

株式会社丸井グループが行なったDXの取り組みの1つが、デジタル債による「応援投資」という仕組みです。これはブロックチェーンを活用したデジタル債を購入することで、途上国の課題解決のための資金提供と、自身の資産形成を同時に行えるサービスです。

会員向けのアンケートによると、約7割が「社会課題解決の応援をしたいが行動に移せていない」ことがわかりました。そこで「応援投資」を会員向けに提供したところ、予想を大きく上回る35億円の応募がありました。DXによって、顧客満足度を高めることに成功した良い例と言えるでしょう。

また、丸井グループは上記のようなDXを推進するための人材育成にも力を入れています。つまりデジタルの力を活用し、新たなビジネスをプロデュースできる人材、「プロデュースbyデジタル」人材の育成です。具体的には、DX研修などの基礎的なプログラムに加え、新たなビジネスを創出できる人材の発掘・育成を目的とした「丸井グループ アプリ甲子園」などの独自の取り組みを行っています。

養殖業の「見えづらい状態」をデジタル化で解消|双日株式会社

課題・背景 経営管理上不可欠な、マグロ養殖における生簀内の尾数把握が困難だった
主な取り組み内容 新技術開発のため外部の研究機関との共同研究をスタート
成果 最先端のデジタル技術により、高い精度の尾数カウントが実現

双日株式会社ではDXを、マーケットニーズや社会課題に柔軟かつ迅速に対応し、取り扱う事業・商品・ポートフォリオを変化させるという総合商社の強みを加速させるものとして捉えています。

その具体的な取り組みの1つに、養殖業の「見えづらい状態」をデジタルで可視化し、事業経営の高度化に貢献するというものがあります。

マグロ養殖業において生簀内尾数の把握は、経営管理上重要な位置付けですが、これは技術的に困難を極めます。しかし、2021年に新設されたCDO室が中心となって国内外の関連技術を調査した結果、国立研究開発法人海洋研究開発機構の研究が有望であることがわかりました。そして同機構との共同研究を通じて、今では高い精度での尾数カウントを実現しています。そして、尾数カウントの精度が高まることで、安全・安心な品質のマグロの安定供給が実現に繋がるのです。

卸売を旨とする商社のイメージからすると、上記のような取り組みは一見すると事業との関連性が低いように思えます。しかし、商品の安定した調達も商社の要です。その意味で、同社の取り組みは、戦略的なDXの良い例と言えるでしょう。

DXの成功事例の共通点

DX推進の成功事例は多様なものの、成功した要因には共通点があります。自社のDXにも取り入れることで、DXをスムーズに推進できるでしょう。

長期的なビジョンを持っている

DXの推進は、単なるデジタル化とは異なり、企業戦略と紐づいた長期的な取り組みとなります。そのため、DXを通じて、数年後にどうなっていたいのかという、ありたい姿を定めることが大切です。

実際、上記で紹介してきた企業も、長期的なビジョンの下にDXを推進しています。例えば、株式会社ふくおかフィナンシャルグループは、2030年にデジタルネイティブが就業人口の60%を占めることを見越した取り組みを行っています。

長期的なビジョンを持つことによって、ありたい姿に対してモチベーションを高めるだけでなく、そうなるために何が足りていないのかを具体化することにも繋がります。

データを活用している

DX推進に成功している事例の共通点として、データの活用が挙げられます。

デジタル技術を活用するDXにおいて、データとの関連性は無視できないものです。実際に、多くの成功事例で、顧客や自社製品に関するデータを蓄積し、業務の効率化やニーズの把握に活かしています。

例えば、ms&adインシュアランスグループホールディングス株式会社が良い事例です。同社で行っていたのは、既存の自動車保険サービスで蓄積したデータをもとに、事故の少ない街づくりの支援です。自社の強みを、理念に基づいて有効に活用しています。

この事例からわかる通り、サービス向上に活かせるデータを取得し、蓄積するだけではなく、それを適切に活用することにより、新たなサービスの提供や付加価値の向上につなげることが可能なのです。

体制構築に投資をしている

DX推進に成功した企業は、体制構築に投資をしているという特徴があります。

    • DX人材の育成に力を入れている
    • 社員のエンゲージメント向上に力を入れている
    • 外部人材やサービスを適切に活用している など

DXの推進には、システムを導入するだけでなく、DXを推進できる人材の育成や、DXを動かす仕組みが必要です。仮に最新技術が使われたシステムを導入したとしても、社内にそれを活用し業務に活かせる人材がいなければ、企業としての継続的な成長にはつながりません。

実際に、DXに成功した企業の多くが、事業としての取り組みと並行してDX人材の採用・ 育成にも取り組んでいます。丸井グループの「アプリ甲子園」や、ダイキン工業株式会社の「ダイキン情報技術大学」などが良い例です、

継続的な成長につなげるためにも、社内の人材が主となり、DXを推進する体制を構築することが大切です。また必要に応じて、システムのベンダー企業と連携したり、外部サービスを活用したりといった柔軟な対応が重要となります。

DX推進における課題

パーソルホールディングスが公表した「DX推進に関する最新動向調査レポート」によると、「DX推進にどの程度課題を感じているか」との問いに対し、全体の約5割が課題を感じていると回答しました。

【出典】パーソルホールディングス株式会社「DX推進に関する最新動向調査レポート

DXの推進では、社内外でさまざまな問題が発生します。ここでは、DX推進における具体的な課題について解説します。

DX人材の不足

DX推進に取り組む企業の多くが感じている課題が、DX人材の不足です。「DX推進に関する最新動向調査レポート」においても、「DX推進について取り組みの障壁は何か」との問いに対し、「推進のためのスキルを有する人材を育成できない」と答えた企業が全体の21.1%、「社内のITリテラシーが不十分」との回答が19.9%を占めました。

【出典】パーソルホールディングス株式会社「DX推進に関する最新動向調査レポート

DX人材を社内で育成できない理由として挙げられるのは、DX人材育成のノウハウを蓄積できていないことです。

DX推進を行う上で活躍できる人材は、デジタルテクノロジーに関する理解を十分に持ち、さらに持っている知識をビジネスにおいてどのように活用できるかを考えられる必要があります。しかし、このようなスキルを兼ね備えている人材は、市場においてもそう多くありません。

そのため、社内で人材を育成する必要がありますが、社内の人材不足を理由にDX戦略の立案や、推進を外部企業へ委託していたケースでは、自社にノウハウを蓄積できていないでしょう。DX推進に成功した企業の多くは、内製化を意識し、人材育成にも取り組んでいます。DXへの取り組みとともに、実践で活用できる長期的な人材育成計画を立てることが大切です。

組織体制や社内環境が不十分

組織体制や社内環境が整備されていない場合、スムーズなDX推進は困難です。経営陣やIT部門、現場によって、組織体制や社内環境の課題は異なります。それぞれの立場で、どのような課題があるかを把握することが必要です。

経営陣の課題

経営陣の課題は、ビジョンを提示することです。DXは組織全体で取り組むべきプロジェクトです。しかし、経営陣が「DXで何を成し遂げたいのか、どのように推進していきたいのか」といったビジョンを明確に示していない場合、現場もDXに対して必要性を感じることができず、取り組みを進められません。

経営陣が明確なビジョンを提示することにより、現場はDXの必要性を認識します。経営陣が顧客視点に寄り添い、自分事としてDXのビジョンを考えることが重要です。

IT部門の課題

IT部門の課題は、人材育成です。あらゆる業界でビジネスのデジタル化、IT化が進むなか、企業におけるIT部門の役割は増える一方です。他社におけるデジタル技術活用やDX推進事例の研究のほか、システムの選定やデジタル技術活用の提案などもしなければならないため、負担はさらに増加します。

しかし、役割や責任が大きくなる一方で、「DX推進に要する人材が不足している」「育たない」といったシーンにはじめに直面するのはIT部門です。DXへの取り組みとともに、IT部門においても人材育成への取り組みも推進することが大切です。

現場の課題

現場の課題は日常業務との兼ね合いです。現場は、日常業務を遂行しつつDXへの取り組みにも着手しなくてはなりません。DX推進においてもっとも影響を受ける立場といえるでしょう。

DXに取り組む体制が整備されておらず、日常業務に追加される形でDX推進への取り組みが求められた場合、DXがうまく進まないどころか、日常業務にも支障をきたす可能性があります。

そのため、現場でどのようにDXを推進していくのかを整理し、現場の負担を軽減できるような体制を考えることが大切です。

DX推進を成功させるポイント

DX推進を成功させるために重要なポイントを確認していきましょう。

    • 目的を設計する
    • 経営層が主導となり目標を設定する
    • 自社の課題と結びつける
    • マインドを醸成する
    • DX推進体制を構築する
    • PDCAを徹底する

目的を設計する

先行企業の成功事例は、非常に参考になりますが、他社の事例をそのまま自社に適用してもうまくいくとは限りません。そのため、DXに取り組む際は、自社に最適化された施策を検討する必要があります。そしてこれは、DXの目的設計に関しても同様です。

目的設計とは、事業戦略や組織のビジョンと結びついた具体的な目標を設定し、その達成のためにデジタル技術をどのように活用できるか検討するプロセスを指します。具体的な目標を設定することで、組織全体が意識を統一してDXを推進しやすくなります。逆に目的設計がしっかりしていないと、必要以上にハイエンドなツールを導入してしまい、余計なコストを発生させてしまったり、ツールの導入そのものが目的化してしまったりする事態になりかねません。

目的設計に際しては、第一にDXによって実現したい目標やビジョンを明確化することが重要です。その後、自社の現状の状況を可視化することを通して、目標までに何が足りていないのかを把握することに努めます。そして、この目標と現状のギャップを埋めるための手段として、どのようなデジタル技術やITツールが有効かを検討するという流れです。

目的設計に際しては、従業員の意見にも耳を傾けるようにしましょう。現場の実情を無視して施策を講じると、現場で役に立たないツールを導入してしまうなど、失敗のリスクが高まります。

ただし、これは従業員の声を最優先すべきということではありません。従業員の声をすべて取り入れても優れたシステムになるとは限らず、従業員へまったく負担を与えずに変革をするのは困難です。そのため、経営者またはDXの推進責任者は、経営的な観点と従業員の観点の双方をトータルで見て、目的設計や施策の決定をする必要があります。

経営層が主導となり目標を設定する

DXには目的設計が不可欠ですが、その際には経営層が主導することが重要です。DXは個別の業務をデジタル化したり効率化したりするだけでなく、ビジネスモデルや企業文化、社内制度の変革なども伴うものです。もちろん、一定の投資も欠かせません。

そのため、DXを推進するにはIT人材だけでなく、経営的な観点から大きな権限を持って決断できるリーダーが必要です。経営層が主導することで、DXの方向性や経営的な意義が明確になり、経営層と従業員のギャップを埋めながら、部門横断的にDXを進めることが可能になります。なぜDXに取り組むのか、誰にどのような価値を提供したいのかなど、目的やビジョンを明確にして、新しいビジネスモデルを構築していくことが大切です。

自社の課題と結びつける

DXの成功は、新たなデジタル技術を導入するだけで達成されるものではありません。新たな技術の導入はあくまで手段であり、それをどのように活用して自社の課題を解決するかが重要です。そのため、DXに取り組む前には自社の課題を明確にするようにしましょう。

例えば、SWOT分析といったフレームワークによって、現在、自社が置かれている内部環境・外部環境を分析・整理し、最終的なビジョンを確立するまでに必要な要素を洗い出すことが大切です。

必要な要素を洗い出したら、初期、中期、長期に分けて自社のあるべき姿とやるべきことを定めていきます。例えば、初期にすべきことには「関係者間での意識共有」「デジタル化による、DXに必要なインフラの整備」などがあります。中長期的には「DX推進体制の整備」「デジタルプラットフォームの構築」などが挙げられます。

日本企業は、DXにおいて業務効率化など既存の方法の改善を重視しがちです。しかし、DXではさまざまな取り組みが求められます。そのため自社の業務を棚卸してそこから課題を抽出し、解決するためにどのようなデジタル技術を活用するべきか、広い観点で考えることが重要です。これにより、デジタル技術の導入そのものを目的化してしまうことを防ぎ、より効果的にDXを推進できます。

マインドを醸成する

DXを推進するためには、単に新たなシステムを導入するだけではなく、組織全体がデジタルを活用して業務や事業を根本的に変革する「マインド」を持つことが求められます。そのためには、まずDXの概念を全社的に理解・共有することが重要です。

具体的には、DXが企業のビジネスモデルを根本的に変革する取り組みであるという理解を深め、それを踏まえてデジタル技術の活用を当たり前とする文化を作ります。その上で、変革を起こすためのアイデアや新しい試みを積極的に取り入れるオープンなマインドを醸成するようにしましょう。

紹介した事例の中では、株式会社LIXILのノーコード開発ツールの導入などが良い事例です。自分で開発したアプリが実際の業務で使われる可能性があれば、従業員のモチベーション向上に繋がります。

DX推進体制を構築する

DXは専門的な知識や人員、時間を必要とするため、既存の業務と兼任させるだけでは効率的に推進するのは容易ではありません。DX推進に伴う業務負担の増加により、従業員の不満が生じる恐れもあります。そのため、DXを推進する際には専門のチームを設置するなど、DX推進体制の構築が必要です。

DXが全社的な取り組みであることや、経営そのものに深く関わることを考慮すれば、経営層直下のプロジェクトにすることも一考の価値があります。いずれにしても、このDX推進体制には、各部署のキーパーソンや経営トップが関与し、部門横断的な連携ができると理想的です。

また、DXに精通した人材も欠かせません。理想を言えば、デジタルリテラシーと、変革に対して積極的なマインドを両方持つ人材が求められます。DX人材の確保手段としては、新規採用、既存人材の育成、外部の専門家と連携するなど、多角的なアプローチが考えられます。

関連記事「DX人材とは?役割や求められるスキル・獲得方法【事例あり】」を見る

PDCAを徹底する

DXを実現するためには、一定の初期投資やIT人材の確保が必要となるので、すぐに大規模な取り組みを始められない場合もあります。また、一度に多くの業務を変革しすぎると、現場が大きく混乱してしまうリスクも無視できません。

そのため、最初から大規模なプロジェクトを始めるのではなく、小規模なプロジェクトから始め、その結果を評価し、改善を繰り返すPDCAサイクルを確立することが有効です。例えば定型業務の自動化など、比較的簡単に取り組める改善から始めることが推奨されます。小さな成功体験を積むなかで、これまでDXやデジタルそのものに否定的だった人材も、考えを改めるかもしれません。

また、一度システムを導入したからといって満足せず、常に新しい技術の導入や現在のシステムの見直しを行い、改善を続けることが重要です。これにより、DXを継続的に推進し、自社の競争力を長期的に維持・強化できます。

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まとめ|DXで自社の課題を解決しよう

「DX銘柄」にはDXに積極的に取り組んでいる企業の成功事例が掲載されています。DXを推進する際は、こうした先行企業の事例をヒントにし、「自社の場合ならどうしたらいいのか」と考察を深めていくことが大切です。本記事を参考に、ぜひ自社に適したDX戦略を構築してください。