デジタル化とは?意味やIT化との違い・進め方を具体例付きで解説

近年、IT技術の発展によりデジタル化を推進する企業が増えています。デジタル化は、業務効率化や生産性向上に重要な要素となっています。しかし、どの業務をデジタル化すれば良いのか、具体的にどう進めていけばいいか分からない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、デジタル化の定義を明らかにするとともに、デジタル化できる業務や効果、企業におけるデジタル化の進め方と推進ポイントなどを解説します。

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目次

デジタル化とは?

デジタル化とは、デジタル技術を用いた取り組み全般を指します。米国のITアドバイザリー企業・ガートナー社の定義によれば、以下の3つに分類されます。

    1. デジタイゼーション:アナログや物理的なデータをデジタルデータに変換する
    2. デジタライゼーション:デジタル技術を用いてビジネスモデルを変革させ新たな利益や価値を生み出す
    3. デジタルトランスフォーメーション(DX):仮想世界と物理世界を融合し、IoTを通じてプロセスや業界そのものを変革する
【参考】Gartner Glossary「Digitization」「Digitalization」「Digital Transformation」をもとに作成

デジタル化の種類

一口にデジタル化と言っても、どのデジタル化を目指すかによってそれぞれ取るべきアプローチが異なります。自社の現状や課題に応じたデジタル化の施策を検討し、実施することが大切です。

ここではそれぞれの定義や具体的な事例を紹介します。

アナログのデジタル化(デジタイゼーション)

デジタイゼーションは、プロセスそのものは変化させることなく、単にアナログデータをデジタルデータに変換することを指します。紙媒体の電子データ化などの「電子化」はここに含まれます。

デジタイゼーションの具体例には下記のようなものがあります。

    • 保管している資料をスキャンして電子データ化する
    • 請求データをオンラインで送る
    • 紙で管理していた請求書や契約書をペーパーレス化する

デジタイゼーションでは、デジタル技術を導入して特定の作業を効率化することが目的とされます。

ビジネスプロセスのデジタル化(デジタライゼーション)

デジタライゼーションとはデジタルトランスフォーメーションを推進する上での移行プロセスにあたります。デジタライゼーションでは、特定の業務についてプロセスを整理してデジタルに移行し、業務効率を改善することで新たな利益や価値の創出を目指します。

デジタライゼーションの具体例には下記のようなものがあります。

    • 経理システムに専用ITツールを導入し業務効率化を図る
    • 求職者のユーザー属性や関心に応じて最適な求人情報を自動で案内するシステム導入
    • 会議室の確保や移動時間を短縮できるオンライン会議システムの導入

プロセスのデジタル化を行うことで、業務効率を改善し、新たな価値を提供できます。

ビジネスモデルのデジタル化(デジタルトランスフォーメーション)

デジタルトランスフォーメーションは、デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革を意味します。ビジネスモデルが変わるというのは、収益のポイントが変わることを意味します。

デジタルトランスフォーメーションの具体例には下記のようなものがあります。

    • 製造業で現場のデータを見える化し、生産性の向上を図る
    • 運送業で集配ルートの自動設定ができる業務支援ツールで配送を効率化する
    • 不動産業で顧客が自宅から物件内を見学、シミュレーションできるようにする

例えば、集配ルートが自動設定できる業務支援ツールを活用すれば効率的な拠点展開や再配置も可能になります。

IT化とデジタル化の違い

IT化とは、アナログな業務をデジタル化することです。

具体的には下記のような例です。

    • 美容院や病院などでWebから予約できるシステムの導入
    • ネット回線とつながっているPOSレジサービスで在庫の管理
    • 学校や塾などで子どもの欠席連絡をWebで行い出欠確認

対してデジタル化は、業界変革やビジネスモデルの変革といった非常に大きな取り組みも含まれています。具体例のようなIT化をさらに活用していけば業務効率化につながり、さまざまな取り組みを包括するデジタル化となります。定義を広範囲にしたものがデジタル化だと言えるでしょう。

デジタル化とDXの違い

DX(デジタルトランスフォーメーション)は既存事業やビジネスモデルの在り方を変革させることです。一方、デジタル化(デジタライゼーション)は既存事業の一部をデジタル化し、品質向上や業務の効率化を図ります。

デジタイゼーションやデジタライゼーションを経て、ビジネスモデルの在り方をテクノロジーを使って変革させるのがDXです。

DXについて詳しく知りたい方は、関連記事「【図解】DXとは?意味や取り組み内容、メリットをわかりやすく」もご覧ください。

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デジタル化できる身近な業務例

デジタル化は業務効率を改善するうえで有効な取り組みですが、すべての業務を一度にデジタル化することはできません。どのような業務がデジタル化に向いているのか理解し、優先順位を付けて取り組むことが重要です。デジタル化の具体例を把握し、自社におけるデジタル化のヒントとしましょう。

帳票業務(契約・申請・請求書など)

ワークフローシステムなどを導入し、これまで紙で管理していた契約書や申請書を電子化すれば、申請から承認までの一連の流れをすべてシステム上で完結できるようになります。結果として契約や申請にかかる手間と時間を大幅に軽減できます。

またAI-OCRやRPA(ロボットによる業務自動化)を導入すれば、領収書の起票や経費精算の照合を自動化することもできます。

勤怠管理業務

タイムカードでの勤怠管理をデジタル化すれば、従業員の出勤時間、退勤時間、休憩時間などを正確に記録できます。また集計作業が自動化されるため、Excel集計など手作業による人的ミスを減らすことができます。また同じ勤怠管理システムで残業や休暇などの申請を行えば、管理者は情報をリアルタイムで確認することができるため、承認や却下の判断が迅速になります

そのほかにも、従業員の出社場所が定まらない場合にも勤怠管理のデジタル化は役立ちます。例えば、人材派遣会社や建設業など、仕事場所に行って直行直帰する場合にも便利です。

お客様対応業務

お客様対応業務では、電話対応をチャットボットに置き換えたり、AIの自動応答による問い合わせに切り替えたりすることで、オペレーターの作業負担を軽減可能です。顧客側でも知りたい情報をすぐに知ることができるため、顧客満足度の向上も期待できます。

ほかにも、全国展開された店舗から膨大な顧客データ・購買データを取得し、分析することが可能です。顧客データを属性や行動パターンで分析すれば、より深い顧客理解に基づいて商品やサービスを提供することが可能になります。

プロジェクト管理業務

インターネット上のクラウドサービスを利用して、プロジェクトに関連するデータや情報を保存・管理し、必要なときにチーム全体でアクセスできるようにします。クラウド上に保存することで、プロジェクトの関係者は場所やデバイスに依存せずに進捗状況をいつでも確認することができます。

また通知やリマインダー機能でタスクの実行漏れを防いだり、タスクの割り当て機能を活用して業務負荷の偏りがないかをチェックすることもできます。これにより関係者間のコミュニケーションや意思決定の迅速化も期待できます。

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デジタル化のメリット

デジタル化は、業務効率化やコスト削減といった生産性向上の側面だけでなく、多様なはたらき方にも対応することができます。デジタル化を実現することで、企業にどのようなメリットが生まれるのかを紹介します。

業務効率化

これまで人が行っていた業務をITツールで省力化・自動化することにより、業務の効率化が図れます。例えばシステム上で決裁を行ったり、電子証明書や電子署名を導入したりすれば、必要書類の提出や管理がスムーズになるだけではなく、手書きによる人的ミスを削減する上でも効果があります。

業務を省力化・自動化できれば少ない人員で業務に取り組めるため、より重要な業務に人員やコストを割くことが可能です。

労働生産性の向上

労働生産性向上も、デジタル化によるメリットの一つです。日本は、1人あたりの労働生産性がOECD加盟38ヶ国中29位と非常に低い状況にあります。また少子高齢化による人材不足も進行しており、生産性の低さを労働力で埋めることができていません。

RPAによる自動化やクラウドシステムの活用、ビジネスプロセスの見直しなど、組織全体でデジタル化を推進することで、少ない人数でも成果を上げることができるようになります。

コスト削減

ペーパーレス化を進めることにより、紙代や印刷代、郵送代、書面を保管するための場所代といったコスト削減が見込めます。Web会議システムにより会議をオンラインで開催すれば、時間のロスおよび出張費の軽減を図れます。業務の効率化により長時間労働を削減すれば、残業代や休日出勤の手当などが不要になり人件費も削減できます。

効率的なデータ共有

例えば、インターネット上でファイルを共有するクラウドストレージを導入すると、従業員はいつどこからでもスムーズに求める情報へアクセスできるようになります。業務効率が高まるとともに、リアルタイムでの情報共有によって伝達ミスによる混乱リスクを避けられます。

クラウドサービス以外でも、例えば契約書をはじめとした重要な書類をクラウド上で保管・管理しておけば、いざというときに原本を失うリスクを軽減でき、BCP対策としても有効です。

BCP強化

BCP(Business Continuity Plan)とは、不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針や体制、手順等を示した計画のことを指します。地震などの自然災害でオフィスが被災した場合に、事業がすぐに再開できないとビジネスに影響が出てしまいます。

自然災害以外にも、情報セキュリティ上のリスクや自社業務管理システムの不具合や故障、感染症などさまざまなリスクを考慮した計画が必要です。

事業にとって不可欠なデータを、デジタルデータにしてクラウドで管理するなどの対策を行うと、下記のようなメリットが享受できます。

    • データの消失を防げる
    • データに離れた場所からもアクセスできる

同時にオンラインの情報資産や連絡手段などがダメージを受けた場合にも対応できるように、オフラインでデータバックアップをとっておくなどのデジタル化も進めておけば、さまざまなリスクに対応可能です。

新サービスの創出

デジタル化が進むと、既存事業のウィークポイントや改善点が可視化されるため、改善に向けた動きが活発化します。はじめは既存のビジネスモデルにおける作業効率化がメインになりますが、次第に新サービスの創出へとリソースを集中し、企業競争力を高めていくことが可能になります。

例えば、これまで小売店などを通して販売していた自社商品をサブスクリプションサービスにして在庫を管理、自動で発注・配送するシステムを導入した企業もあります。また、熟練技術者の技術をカメラやセンサーを活用して計測・可視化したり、AIがデータ化することで新人教育に活用したりなど、他社への技術提供を展開することも可能です。

多様なはたらき方への対応

勤怠管理や申請業務をシステム化し、Web会議システム、ビジネスチャットなどを導入してテレワークできる環境と体制を構築すれば、会社に出社しなくてもはたらけます。子育てや介護など家庭の事情により自宅を離れられない人材も仕事を辞めずに続けることができ、定着率の向上や優秀な人材の確保につながります。

デジタル化の進め方

デジタル化は適切な順序で進めることで成功しやすくなります。ここからは、具体的にどのようなステップで業務のデジタル化を進めていけば良いのかを解説します。

1.目的と目標を決める

まずは業務をデジタル化する目的と、デジタル化によって達成したい目標を決めましょう。企業によって実施すべき施策は異なるため、何を実現したいのかを明確にすることが大切です。また、目標は具体的な数値を設定したほうが効果測定や改善がしやすくなります。

■営業組織のデジタル化を検討する場合

目的 営業組織の生産性をデジタル化によって高める
目標 2026年末までに営業の生産性を130%にする

2.スコープを設定し業務の現状を整理する

業務領域においてどこまでの範囲(スコープ)をデジタル化するのかを決め、業務の「As Is(現在の状態)」と「To Be(理想の状態)」をそれぞれ洗い出しましょう。

業務の現状を整理する際は、現場メンバーから業務上の課題や要求をヒアリングした上でTo Be(理想の状態)に落とし込んでいきましょう。As Is(現在の状態)とのギャップが具体的に見えてきます。

3.デジタル化する手段を検討する

抽出した課題に対し、解決する手段を検討します。ITツールを導入する場合はこの段階で機能要件を設定します。

デジタル化の手段は「2.スコープを設定し業務の現状を整理する」を踏まえて検討しましょう。例えば、お客様の問い合わせ業務を自動化する場合、業務を整理していくと、問い合わせを自動化した後にどの営業担当者に振り分けるか、振り分けのルールを決める必要が出てきます。この場合、振り分けのルールをIT側に付与する必要があるため、ITの機能要件に「ワークフローと自動振り分け機能」を含める必要があります。

このように、どの業務をデジタル化するかは、業務整理で洗い出す必要があります。業務整理を行わないままITツールを導入すると、現場にとって必要な機能が抜け落ちてしまい、かえって業務の煩雑化につながる恐れもあるので注意しましょう

4.効果測定と改善を行う

ツールやシステムを導入しさえすればデジタル化が可能になるわけではありません。ツールの導入はあくまで手段です。「1.目的と目標を決める」で立てた目標をどの程度まで達成できているかを測定し、目標に届いていなければ「なぜ改善できていないか?」を検証し改善策を講じる必要があります。

デジタル化を推進する際のポイント

デジタル化を推進するためには、従業員の理解が必要です。従業員に対してはなぜデジタル化を行うのかといった目的の理解を促し、さらにデジタルリテラシーを高める取り組みもあわせて行いましょう。

本章では、デジタル化を社内で推進する際のポイントを紹介します。

デジタル化する目的を従業員に理解してもらう

成功させる鍵は、従業員の理解を得て、社内全体を巻き込むことです。デジタル化は情報システム部門だけの力ではうまくいきません。デジタル化の影響を受けるのは、実際にツールやシステムを活用する現場の従業員です。長い目で見ればメリットが多いデジタル化であっても、移行した直後は仕事への取り組み方が大きく変わるため、変化を嫌う従業員が導入に反発する可能性があります。

デジタル化の目的が明確でない限り、従業員は動きません。業務効率化や事業拡大、はたらき方改革といった目的を明確にして、社内で共通認識を持ってもらうようにしましょう。あわせて、デジタル化による現場のメリットを伝えるのが効果的です。

デジタルリテラシーを高める

単なるデジタイゼーションであれば現場を巻き込む必要はありませんが、ビジネスプロセスの変革を伴う場合は業務に近い部分でデジタル化が進むため、営業企画など現場の人材を多数巻き込む必要性が出てきます。現場のメンバーがデジタルに関するリテラシーを高め、リスキリングを実践することで、デジタル化が円滑に進むようになります。

プロジェクトを管理しながら進める

デジタル化を進めるにあたっては、全体のプロジェクト管理を行うことが重要です。プロジェクトの全体を把握しながら、各部門と調整などを行い適切に進行を行う必要があります。

デジタル化のプロジェクトを統括するマネージャーは、情報システム部門から選抜されることが一般的です。しかし、情報システム部門のメンバーは中途採用のケースも多く、必ずしも現場の業務知識を持っているとは限りません。そのため各部門の現場メンバーから選抜することをおすすめします。

しかしながら、現場メンバーは業務知識に長けている一方、プロジェクトマネジメントのスキルを持たない場合も多いです。現場メンバーを対象にリスキリングを実施するなど、企業側が育成を支援しましょう。

使いやすいツールを導入する

ツールやシステムを導入しても、必要な機能が不足していたり、煩雑なルールが設けられていたりすると、かえって従業員の作業効率は低下してしまいます。ツールを導入する際には、現場の従業員から実際の使い勝手や業務への影響などのフィードバックを集める仕組みを整えましょう

例えば、無料トライアルなどのキャンペーンが実施されていれば、試験的に導入してみるのもおすすめです。 またデジタル化の過程では、デジタルを積極的に使ってもらうために「楽しむ仕組み」を取り入れることも効果的です。例えばチャットツールであれば自由に会話できるスレッドを立てたり、趣味の写真を投稿できるスレッドを立てたりすると、積極的にツールを使用してもらいやすくなります。

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まとめ|自社に適した方法でデジタル化を進めよう

デジタル化は業務効率化やコスト削減などのさまざまなメリットをもたらします。デジタル化にはデジタイゼーションとデジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーションの3つがあり、自社がどのデジタル化を目指すかによってアプローチ方法が異なります。自社の現状を正しく把握して、自社に適した方法でデジタル化を進めましょう。

インタビュー・監修

パーソルイノベーション株式会社
『Reskilling Camp(リスキリング キャンプ)』(旧:学びのコーチ)事業責任者/Founder

柿内 秀賢

法人向けリスキリング支援サービス『Reskilling Camp(リスキリング キャンプ)』(旧:学びのコーチ)事業責任者としてリスキリングを支援。
自身も人材紹介事業の営業部長から、オープンイノベーション推進部立ち上げやDXプロジェクトの企画推進、新規事業開発を担う過程にてリスキリングを体験。

 

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