BCP(事業継続計画)とは?目的や策定手順、ポイントを簡単に解説

頻発する自然災害や新型コロナウイルス感染症の拡大など、企業の危機管理対策への関心があらためて高まっています。危機管理対策としてまず整えたいのがBCP(事業継続計画)です。

本記事では、BCPとは何か、その目的と効果、策定の手順などを解説します。

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発生しうるリスクは多岐にわたるため、担当者はあらゆるリスクに対策する必要がありますが、
・リスクの優先度付けが難しい
・他社はどのようなリスク対策を行っているのか知りたい
といった方も多いのではないでしょうか。

そのような方に向けて、経営・人事 1,300名へ調査を行い、リスク対策に関する課題と取り組みをまとめた【ハラスメント・危機管理対策調査レポート】を公開しています。
リスクマネジメント施策の検討にぜひご活用ください。

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目次

BCP(事業継続計画)とは

BCP(Business Continuity Plan/事業継続計画)とは、自然災害や感染症、大規模なサイバー攻撃など、企業の事業活動に深刻な影響を及ぼすリスクが発生した場合に、事業を中断させず、あるいは中断した場合でもできるだけ早く復旧させるための計画を指します。

内閣府のガイドラインでは、以下のように定義されています。

「大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画」


【出典】内閣府「事業継続ガイドライン第3版

企業にとって、売上の継続、顧客対応の維持、法令遵守などは業績や社会的信用に直結します。そのため、万が一のリスクに備えて平時から体制を整えておくことが、今や企業経営における重要課題の一つとされています。

BCMとの違い

BCPとBCMの違い

BCM(Business Continuity Management/事業継続マネジメント)は、BCPを策定し、維持し、運用していくための包括的なマネジメントの枠組みです。つまり、BCPは計画そのものであるのに対し、BCMはその計画を適切に管理・改善していくプロセス全体を指します。

BCMに類する活動には、BCP策定のほか、計画を可能にするための予算や資源の確保、事前対策の実施、従業員の教育・訓練などがあります。

BCSとの違い

BCS(Business Continuity Strategy/事業継続戦略)は、BCPを支える具体的な戦略のことで、例えばサーバーのバックアップ体制や、代替拠点の確保などが含まれます。BCPは全体計画、BCSはそれを実現するための戦略、BCMはその両方を継続的に管理する枠組みという関係性です。

BCPの注目が高まる背景

BCPへの関心が高まった背景には、近年頻発する自然災害、新型コロナウイルスの感染拡大、そしてサイバーセキュリティの脅威の高まりがあります。

BCPが世界的に知られるようになったきっかけは、2001年9月のアメリカ同時多発テロでした。このとき、ワールドトレードセンターに本社を置いていた企業がBCPに従い、バックアップオフィスを活用して事業への影響を最小限に抑えたことで、その有用性が広く知られ、導入企業への信頼も高まりました。

また、国内においては、東日本大震災がターニングポイントになりました。東日本大震災では、被害は少なかったにも関わらず、復旧が遅れ製品・サービスが供給できなかったために顧客が離れ、事業縮小や従業員解雇、廃業・倒産に至ってしまった事例が見られ、BCPの重要性が強く認知されました。

そして2020年、地球規模での新型コロナウイルスの感染拡大という事態が起こりました。これまでは突発的な事態に対しては、企業間の関係性や温情で免責的措置が取られることが多くありましたが、景気悪化やグローバル化の進展で、今後それが難しくなっていくことも十分に想定されます。

規模や業種を問わず、企業にとってBCPが重要であり、経営戦略としての価値もあることが、あらためて認識されています。

BCPを策定する目的

BCPを策定する最大の目的は、非常時においても中核となる事業を継続または早期に再開できる体制を整え、企業としての価値と信用を守ることです。

災害時においても顧客や取引先に責任ある対応を継続することは、企業の社会的責任を果たすことにつながります。さらに、突発的な損失や混乱を最小限に抑えることで、経営の安定性が高まり、投資家や社員などのステークホルダーに対して、信頼性の高い組織であることを示すことができます。

このように、BCPの策定は単なる危機管理にとどまらず、企業競争力を高める経営戦略の一環としても位置づけられています。

BCPの策定手順とポイント

BCPの策定をスムーズに進めるためには、どのような手順で進めていけばいいのでしょうか。具体的な7ステップと、各段階でのポイントを押さえておきましょう。

1.基本方針立案

自社がなぜBCPを策定・運用するのか、目的を明確にしましょう。「従業員の生命を守る」「供給責任を果たす」「地域経済の活力を守る」など、思い浮かぶものを書き出していきましょう。方針は、1つに絞る必要はありません。

ポイント

基本方針は多くの場合、経営理念や経営方針の延長に位置します。これらをヒントに方針を決めましょう。

2.重要商品の検討

多くの企業は、複数の商品・サービスを有していますが、緊急時に調達できる資材や機材、確保できる従業員数には限りがあります。そうした状況で事業を継続するときに、優先的に製造・販売しなくてはならない商品・サービスを選定し、優先順位をつけましょう。

ポイント

提供が停止すると売上に大きな影響がある、もしくは顧客への影響が大きい商品・サービスを選択しましょう。

3.想定されるリスクおよびそれに伴う被害状況の把握

想定されるリスクは、自然災害や火災・事故、感染症、設備トラブル、ITトラブルなど多様で、立地や業種によって発生の可能性も変わります。まずは、自社が見舞われる可能性の高いリスクを挙げましょう。そして、それにより受ける影響、被害状況を、人、主要資材、機材、情報、資金、物流など、事業継続に必要な資源ごとにイメージしましょう。これにより、対応すべきリスクの範囲を明確にします。

ポイント

インシデントが具体的であればあるほど、被害状況や直面する事態を詳細かつリアルにイメージすることができます。地震であれば「所在地域を震源とした震度5弱の大規模地震」というように、いつ、どこで、何が、どれほどの程度で起きたのか、設定して考えましょう。

4.重要な要素(ボトルネック)の把握

ステップ3までを踏まえ、緊急時下でも重要商品を提供し続けるために必要な経営資源を明らかにしましょう。このとき、「この復旧・調達ができない限り生産や業務も再開できない」という、最優先に確保されるべき資源や要素(ボトルネック)を洗い出しましょう。

5.事前対策の検討・実施

経営資源確保のための対策を検討・実施しましょう。すでに対策ができているものは実施を継続し、必要だが実施できていない対策については実施に動きましょう。

インシデントの内容や被害状況によっては、現地での復旧や通常の調達先からの調達が難しい場合もあります。そうした事態に備え、代替生産や代替調達の方法についても検討・規定しておきましょう。

ポイント

実行可能な対策を考える上で、ポイントになるのが、自社の強みや弱みです。「金融機関と友好な関係を構築している」「顧客名簿が十分に整理できていない」というような現状を踏まえ、検討しましょう。

6.緊急時の体制整備

緊急時の対応には、初動対応、復旧のための活動等、さまざまなものがあります。そうした全社の対応に関する重要な意思決定及びその指揮命令を行う統括責任者、また代理責任者も決めておきましょう。

7.運用手順の作成

BCPは、緊急時に有効に活用されてこそ意味を持ちます。策定後は、従業員にその重要性と内容を周知し、必要な訓練やシミュレーションを行いましょう。どれほど備えておいても、想定外の事態は起こり得ます。責任者が不在であっても必要なタイミングでBCPを実施できるよう、発動のガイドラインも定めておきましょう。

また、現況に合わせて随時見直しを行うことも重要です。人事や組織体制に変更が生じたとき、年に数回……など、見直しの基準もBCPに記載しておきましょう。

なお、中小企業庁では、BCP策定の補助ツールとして、入門コース、基本コース、中級コース、上級コースの4コースごとのテンプレートを公開しています。入門コースであれば、経営者1名で、1~2時間程度で作成可能です。

▼中小企業BCP策定運用指針 ダウンロードページ
https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/contents/bcpgl_download.html

企業におけるBCPの導入状況

帝国データバンクの調査によると、約半数の企業がBCPを導入もしくは導入検討中であることがわかります。2023年5月の調査では「策定している」と回答した企業は18.4%、「現在、策定中」は7.5%、「策定を検討している」は22.7%となっています。

BCPの策定状況

【出典】株式会社帝国データバンク「事業継続計画(BCP)に対する企業の見解についての調査

BCPの策定・運用は、企業の緊急時の対応力を高め、経営実態の把握、日々の経営管理の再確認、組織改革や活性化の面でも副次的な効果をもたらすといえます。リスク管理の対外的なアピールにより、顧客や社会からの信頼向上も期待できるというメリットもあります。

まとめ|完璧は目指さない!できる範囲から始めよう

BCPの策定に二の足を踏む要因としてよく挙げられるのが、時間や人員、資金や知識不足などです。しかし、BCPを作るには最初から完璧に作り込む必要も、莫大な費用をかける必要もありません。できる範囲から始め、ブラッシュアップを繰り返していくことが、結果的に良く練られたBCP策定の近道となります。

思いがけないリスクに直面した時に、物を言うのは事前の準備です。どんな状況においても事業を継続できる仕組みづくりは、平常時の企業活動にも良い影響を与えます。BCPの策定及び運用は、自社の「生き抜く力」を総合的に高める、価値ある取り組みなのです。

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