2024年02月16日
デジタル化・DXの進展に伴う人材不足を受け、各企業や地方自治体がリスキリング(Reskilling)に注目しています。しかし、想定していた成果が出ず、失敗に終わるケースも散見されます。受講者がくじけずにリスキリング研修を完遂するためには、押さえておきたいステップやポイントがあります。
本記事では、リスキリング研修の基礎知識やプログラム例、導入ステップを解説します。リスキリング研修を成功に導くポイントも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
リスキリングの推進ポイントを無料公開中
推進や人材不足の深刻化など、企業を取り巻く環境が変化し続ける今、リスキリングが注目を集めています。
・リスキリングに取り組む機会を用意したものの、自ら学ぼうとする人が増えない
・リスキリングでの学びが活きる、人材配置・処遇ができていない
そのような方に向けて、リスキリングの基本や推進ポイントをまとめた「リスキリングを阻む要因と3つの促進ポイント【チェックシート付き】」を公開しています。
これからリスキリングを始める方や施策の見直しを検討している方は、ぜひご活用ください。
目次
リスキリング研修とは、リスキリングの取り組みを企業主体で進めることです。社員(従業員)が新しいスキルを習得することで、企業の競争力を高め、社員(従業員)の雇用を守ることも目的としています。
そもそもリスキリング(Reskilling)とは、市場ニーズに適合するため、保有している専門性に加え、新しい取り組みにも順応できるスキルを意図的に獲得し、自身の専門性を高め、変化に対応できるようにする取り組みです。
企業のDX推進の動きや市場環境の変化に対応し、新しい職種や業務で求められるスキルや知識の習得は、社員(従業員)のスキルアップ促進の取り組みとして注目されています。
日本政府は、リスキリングなどの人への投資に5年で1兆円を投入するとの方針を示し、リスキリング推進企業への助成を拡充しています。
また、国や地方自治体、企業などの参画団体から構成される「日本リスキリングコンソーシアム」があります。さらに、株式会社ベネッセコーポレーションが全国45自治体と共に発足した「全国自治体リスキリングネットワーク」といった無料で利用できる集団やネットワークの存在も、リスキリング推進の気運を高めています。
リスキリングについては「リスキリングとは?意味やDXとの関係性、取り組み事例を解説」で詳しく解説しています。
リスキリング研修・プログラムを実施することでどのような成果が得られるのかを、パーソルイノベーションが提供するリスキリング支援サービス「Reskilling Camp」の実例を基に紹介します。
5ヶ月間のトレーニングを通じて、IT未経験営業職社員をITコンサルタントへとリスキリングした事例です。
▼当初の課題
▼取り組み内容
▼成果
▼当初の課題
▼取り組み内容
▼成果
管理部門スタッフを業務改善推進者へリスキリングした事例もあります。
▼当初の課題
▼取り組み内容
▼成果
リスキリング研修の実施方法としては、以下の3種類が挙げられます。
それぞれの特徴と課題点を解説します。
ビデオやテキストを用いてオンラインで学ぶ形式です。比較的低コストで、場所を選ばず自分のペースで効率的に学習を進められる点がメリットです。
デメリットは、参加者同士のコミュニケーションが取りにくいため、双方向性がないことです。
会議室や研修室などに集合し、講師が受講者に対して直接指導する形式です。同じ場所で行うため受講者同士の交流が生まれやすく、ロールプレイや演習など実践形式やグループワークも採り入れやすいのがメリットでしょう。
ただし、参加者のスケジュール調整や会場確保、受講者にとっては会場までの移動など、手配に時間と費用がかかることがデメリットです。
e-learningと集合タイプのこれら二つを掛け合わせた形式です。両方の長所を生かし、短所を補い合うのがハイブリッドタイプの良さと言えます。
AI(Artificial Intelligence)やIoT(Internet of Things)、ビッグデータの活用で現在の業務のデジタル化が進み、時代は急速に変化しています。従来、人間が携わっていた労働の一部はデジタル化によって失われる未来が容易に予測できるようになりました。
一方、デジタル化や自動化に対応できる高度な技術を持つ人材は、恒常的に不足しています。それに加えて、新たな人材確保も困難になっており、採用コストも喫緊の課題です。
リスキリング(Reskilling)研修の目的は、社員(従業員)が変化する業務に適応できるようにスキルや知識を身につけ、新しい時代に合ったはたらき方で企業の成長に貢献することです。
内部人材へのリスキリングは、企業にとって多くのメリットを有します。組織文化に理解の高い人材が新技術に必要なスキルを習得すると、自社の文化継承も可能なため企業にとってもプラスの要素が高いと言えるでしょう。
ここで、リスキリング研修に取り組むメリットを4点ご紹介します。
リスキリングはスキルの習得だけでなく、新たな考え方や捉え方を学びます。これらの習得は、業務の精査や、より効率的な業務改善を生み、その結果業務遂行の速度向上をもたらします。
つまり、リスキリングが業務の効率化を生み出し、業務全体のパフォーマンス向上につながります。
企業におけるリスキリングの推進は、社員(従業員)の自発性が生まれキャリア自律できる人材の育成を促します。新しいスキルの獲得を前向きに考える社員(従業員)の増加は、企業の中にチャレンジ精神の風土が浸透していくでしょう。
企業はリスキリング研修で社員(従業員)に学びの機会を提供し、自社内でのキャリア形成の支援を行います。これらは将来的に生産性の向上、そして組織に対する業績貢献という結果をもたらします。社員(従業員)は、新たに身に着けたスキルを業務で発揮し活用するのはもちろんのこと、自社と外部の連携では有識者として調整役の働きを担うメリットも生まれます。知見を活かしたスムーズでスピーディーな業務進行も期待できるでしょう。
新しい知識をアップデートした社員(従業員)にとって重要なのは、スキルを活かせる環境です。労力をかけて習得したスキルを発揮できる労働環境がなければ、離職を検討する社員(従業員)が現れかねません。
企業はリスキリング推進と同時に、習得したスキルや知識を生かして活躍できる場を提供する必要があります。社員(従業員)も将来像がクリアに描けると安心感も増し、エンゲージメントの向上につながります。
またリスキリング研修で生み出される労働環境の改善もメリットの一因です。業務効率化によって生じる時間外労働の減少は、社員(従業員)にとって働きやすい環境と言え、エンゲージメント率アップも期待できます。
リスキリングを成功させるためには、研修導入前から終了までに押さえておきたい6つのステップがあります。
リスキリング研修の導入にあたり、企業は研修の目的を明確にする必要があります。
リスキリングは、攻めと守りの2種類があります。攻めの目的とは、自社のDX推進です。事業構造変革やDX実現に向けたデジタルスキルの習得、人材育成で事業拡大や新しい価値の創出が期待できます。守りの目的とは、自社の社員(従業員)の雇用維持や事業維持です。技術的失業対策や余剰人員を、今後必要とされる新たな事業に労働移動させる際、戦力化を目的としたスキルの習得を行う必要があります。
企業側は、まず自社のリスキリング研修の目的を絞り込み、市場環境や事業構造、そして自社の人員構造に即した攻めと守りのリスキリング配分で、時間軸を組み立てるのが成功のポイントだと言えるでしょう。
リスキリング研修の目的が明確化されると、次に行うのは研修対象者の選定です。まずは現在の業務内容や個々の社員(従業員)の持つスキルレベルを把握し、リスキリングで獲得したいスキルのニーズを考慮した上で、研修の対象となる人材を選定します。そのためには自社の事業方針や経営戦略を踏まえて、求める人材や将来の組織の姿を具現化する必要があります。
現状との差異を明確にすると、対象として選定された社員(従業員)も納得して取り組めるでしょう。
リスキリングが必要なスキルはそれぞれの企業や受講する対象者の状況により、様々な違いがあります。よって、リスキリング研修の目標設定で重要なのは、明確な自社の将来像です。まず自社はどのように進みたいのか、事業戦略をしっかりと把握します。その上で将来求められる人材やスキル、そして個々の社員(従業員)が現時点で保有するスキルを照らし合わせ、目標値を設定します。
現状と目標値の差がリスキリングを必要とするスキルです。
リスキリングには攻めと守りの目的があると先に述べたように、研修施策はターゲットに合致したものを企画する必要があります。企業の状況や目的、参加者のニーズに応じた使い分けも大事なポイントです。
効率よくスキル習得できるプログラムの選定や、カリキュラム設計の工夫はリスキリング研修を成功へ導きます。受講する順番によっては理解度が高まり、短期間のスキル習得が可能です。
リスキリングの学習方法には、研修、オンライン講座やe-learningといった様々な教育プログラムがあります。自社での教育が難しい場合は、外部人材の活用や外部ベンダーの学習コンテンツの検討をおすすめします。
なお、日本政府は2022年10月の臨時国会で、リスキリング支援に今後5年間で1兆円を投じると発表しました。その流れを受け厚生労働省は、人材開発支援助成金制度を創設し、社員(従業員)の人材育成、スキルアップのリスキリング研修推進をサポートしています。
施策が決定しプログラムの準備が完了したら、研修を行います。
社員(従業員)がリスキリング研修に取り組むにあたり、注意すべき点があります。新しいスキルの習得は社員(従業員)にとって多少なりともストレスがかかります。本人の意思や今後のキャリアプランを尊重し、リフレッシュの機会も設けながらモチベーションを維持し、学習を進めることが重要です。
また部署内の協力、支援体制を固め、就業時間中に学習できる時間を設けるようにしましょう。
研修の終了後には効果の測定を行い、研修成果を評価する必要があります。研修の満足度や理解度を調査するアンケートの他、研修前後にテストを実施し、スキルや知識の向上度を測る評価テスト、また研修後に行う業務成果の測定といった方法で評価が可能です。評価のフィードバックは社員(従業員)にとって今後のキャリア形成に役立ちます。また研修の効果を持続させるために、継続的なフォローアップが求められるのです。
フィードバックや評価結果を分析して、プログラムの改善サイクルを作っていく必要があるでしょう。
いくら良質な学習プログラムを選択しても、研修内容が受講者のニーズやレベルに合わない場合、研修への興味は薄れ、向学心の低下を招きます。受講者は時間の無駄になり、企業側は導入コストに加えて時間と手間をかけて研修を行っても採算が取れません。
効果のある研修プログラムを設定するために、目的や研修内容と受講者のニーズが合致しているか、必ず事前のヒアリングで確認し、すり合わせることが重要です。
また、スキル習得後の社員(従業員)が転職を検討しないように、社内で活躍できるポジションの確保も大切です。離職による人材流出を防ぐため、処遇の見直しや社内制度の整備も同時に進めておきましょう。
リスキリング研修を実施する際、企業が直面する2つの大きな壁があります。
①スキル面の壁
②マインド面の壁
その点、外部プログラムやリソースはターゲットに合わせたカリキュラム設計がされているため、社内で学習プログラムを開発する時間やコストが抑えられます。もちろんクオリティの高さにも定評があり、外部リソースの活用でリスキリングの仕組み作りを迅速に行えるメリットがあります。
リスキリングの本来あるべき姿とは、「企業・経営者主導」の形です。e-learning受け放題のサービスは、隙間時間の活用や自己の努力に任せた個人や現場主導のリスキリングになる傾向があり、学習が形骸化してしまいがちです。またスキル発揮の場を求めて離職するリスクも増加します。
学習環境とスキル発揮の場を企業側が提供した上で、不安を払拭して学習できる仕組みが大切です。研修対象者は学習の意味を見出し、チーム全体や複数人の学びで新たなスキルと学習の習慣化を身に着けられる他、学習対象者の途中経過が確認できるプログラムをおすすめします。
パーソルイノベーションが提供する「リスキリング キャンプ(旧学びのコーチ)」は、最適なカリキュラム設計とコーチによる学習伴走をワンパッケージで提供し、DX人材の新規スキル習得と定着を支援する新しい研修サービスです。
使用教材は受講者数4,400万人を超える法人向けeラーニング講座「Udemy Business」と、豊富な学習コンテンツを持つマイクロソフトが提供するデジタルスキル認定教材です。細分化されたオリジナルのスキル定義から、到達レベルに向けて最適なカリキュラムを選定します。
学習負荷や環境変化による不安を打ち明けられるキャリアコーチと、学習内容の専門家であるテクニカルコーチが、習熟サポートと学習伴走でリスキリング施策を成功に導きます。ぜひお気軽にお問い合わせください。
日本政府の方針もあり、多くの企業や地方自治体が、人材育成のリスキリング(Reskilling)研修に注目し、取り組みを行うようになりました。受講者がくじけずにリスキリング研修を完遂するためには、企業主導型リスキリングの徹底と、研修前の準備段階の綿密な洗い出しが重要です。受講者のレベルにあったプログラム選定と、マインドセットとスキルセット両面のサポートには外部リソースの活用が有効です。
パーソルイノベーション株式会社が提供するリスキリング キャンプ(旧学びのコーチ)は、法人向けリスキリング支援サービスです。
デジタル人材育成におけるスキル面・マインド面の課題に対して、企業にフィットしたカスタマイズカリキュラムと独自の学習伴走メソッドを用い、各企業のリスキリング施策を成功に導きます。
企画・編集/パーソルイノベーション株式会社 リスキリング キャンプ コラム編集室 三浦 まどか