リスキリングとは?注目される背景や導入するメリット、事例を解説

リスキリング(Reskilling)とは、新しい分野や職務に必要なスキルを習得することです。ICT産業の変化やDX推進に伴い、人材不足の解消や社内人材育成、自律的なキャリア形成の手段として注目されています。多くの企業が、社内のDX人材育成や業務変革の一環としてリスキリングを導入し始めています。

本記事では、リスキリングの基本や日本における実施状況、取り組む目的、メリット、効果的な進め方、注意点までを解説します。また、企業事例や活用できる補助金・助成金も紹介し、実践に役立つ情報をまとめています。

企業はどう取り組んでいる?
リスキリングの“今”がわかる実態レポート【2025年12月版】

リスキリングの重要性や背景を理解したうえで、「では実際に企業はどのようにリスキリングを進めているのか」と気になる方も多いのではないでしょうか。

パーソルグループでは、企業のリスキリング実施率や目的、育成の手法、投資状況、よくある課題や失敗例、DX人材の確保状況まで、最新の実態を定点調査に基づいてまとめたレポートを公開しています。

リスキリングに関する「2026年度の実施予定と展望」要素についても考察していますので、来年度の自社の施策を考える参考として、ぜひご活用ください。

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目次

リスキリングとは

リスキリング(Reskilling)とは、新しい職務や分野に必要なスキルを獲得することです。経済産業省は、リスキリングについて以下のように定義しています。

新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること


【出典】経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流―

企業が従業員に新しいスキルを習得させることで、DX推進や人材不足の解消、採用コスト削減、自律型人材の育成などが期待されます。

リカレント教育、アップスキリング、アンラーニングとの違い

リスキリングと似た概念には「リカレント教育」「アップスキリング」「アンラーニング」があります。用語が似ているため混同されやすいですが、それぞれ目的や学ぶ内容、主体が異なります。ここでは、それぞれの違いをわかりやすく解説します。

リカレント教育との違い

リカレント教育は個人が主体となり、生涯にわたって学び続ける教育です。大学院での学位取得や資格取得など、自己成長やキャリアアップを目的に行われます。一方、リスキリングは企業が主導して従業員に新しいスキルを習得させる取り組みであり、企業の事業成長や人材不足の解消を目的としています。

【関連記事】リカレント教育とは?意味や必要性・リスキリングとの違い

アップスキリングとの違い

アップスキリングは、現在の職務に必要なスキルをより深める学習です。既存の専門性を高めることが目的であり、リスキリングのように全く新しい分野のスキル習得を目指すわけではありません。

アンラーニングとの違い

アンラーニングは、古くなった知識や価値観、成功体験を意識的に捨て、新しい考え方を受け入れる学習プロセスです。リスキリングは新しいスキルを身につけるプロセスなので、効果的に進めるためにアンラーニングが土台になることがあります。

【関連記事】アンラーニングとは?リスキリングとの違い、進め方や注意点を解説

リスキリングが注目される背景

リスキリングが注目される背景には、DX推進の観点だけでなく、少子高齢化による労働力不足、人的資本経営へのシフト、産業構造の変化、そして個人のキャリア形成の多様化など、さまざまな要因が絡み合っています。ここでは、これらの背景を整理しながら、なぜリスキリングが必要とされるのかを解説します。

人口減少による労働力不足

少子高齢化に伴い、労働力人口は減少しています。パーソル総合研究所の調査「労働市場の未来推計 2035」によると、2035年には1日あたり1,775万時間の労働力が不足すると推計されています。特にサービス業や卸売・小売業での人手不足が深刻です。

2035年の労働力不足の見通し
【参考】株式会社パーソル総合研究所「労働市場の未来推計 2035

一方で、デジタル技術による自動化・機械化が進むことで、事務職など一部の職種では人材過剰となる可能性もあります。そのような状況では、新たなスキル取得による配置転換を進めるうえでも、リスキリングが注目されています。

人的資本経営へのシフト

人的資本経営とは、人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営手法です。経済産業省の「人材版伊藤レポート」でも、人的資本経営の実践においてリスキリングが重要な要素として位置づけられています。

リスキリングは、事業を成長領域へシフトさせるための戦略的投資であり、従業員が付加価値の高い職務を担うためのキャリア開発手段としても機能します。経営戦略を起点に、必要なスキルを定義し獲得するプロセスそのものがリスキリングといえます。

【関連記事】人的資本経営とは|注目の背景やすべきことを具体例とともに解説

自律的なキャリア形成

社会やビジネス環境が急速に変化し、従来の終身雇用制度が崩壊しつつある現代では、従業員自身が長期的な働き方やキャリアを主体的に設計し、必要なスキルや市場価値を継続的に高めることが求められます。キャリア形成は、自身の市場価値を高め、多様なキャリア選択肢を得るだけでなく、仕事のやりがいや生産性向上にも直結する重要な要素です。

こうした個人のキャリア形成を支援する手段のひとつがリスキリングです。新しい業務やプロジェクトに挑戦する機会を提供し、学んだスキルを実務で活用できる環境を整えることで、従業員の自律的な成長を促すと同時に、企業の競争力強化にもつながります。

産業構造・ビジネスモデルの転換

AIやデジタル技術の進展により、産業構造やビジネスモデルは急速に変化しています。世界経済フォーラム「The Future of Jobs Report 2023」では、2027年までにAI・機械学習スペシャリストの需要が40%増、データアナリストや情報セキュリティアナリストの需要も30〜35%増加すると予測されています。

従来の業務がAIや自動化に置き換わる一方で、従業員には新しい付加価値を生み出すスキルの習得が不可欠です。リスキリングは、こうしたスキルギャップを埋め、企業が変化に対応できる人材を育成するための施策ともいえます。

日本企業のリスキリング実施状況

企業の持続的な成長に不可欠とされるリスキリングですが、その取り組みはどの程度進んでいるのでしょうか。ここでは、国内企業のリスキリングの実施状況について最新の動向を解説します。

全体推移

パーソルイノベーションの調査によると、企業のリスキリング実施率は2023年8月の49.1%をピークに、その後も約4割を推移し続けていることが明らかになっています。

企業のリスキリング実施率
【出典】パーソルイノベーション株式会社「リスキリングレポート~リスキリングによる報酬変化と生成AI(ChatGPT等)活用の最新状況~【2025年3月版】

このことから、多くの企業が取り組みの必要性を認識し、定着フェーズに入っていることがうかがえます。一方で約6割の企業は未実施であり、依然として企業間の取り組みには差がある状況です。

規模別・業種別

リスキリングの実施率は、企業の規模や業種によっても以下のように大きな差が見られます。

業種別企業のリスキリング実施率
【出典】パーソルイノベーション株式会社「リスキリングレポート~リスキリングによる報酬変化と生成AI(ChatGPT等)活用の最新状況~【2025年3月版】

従業員規模が大きい企業ほど実施率が高い傾向にあります。大企業(または大企業のグループ会社)の実施率は63.3%である一方、中小企業では32.6%、スタートアップ企業では41.0%と実施率が低くなり、企業規模による取り組みの差が顕著です。

業種別では、製造業で61.8%と実施率が非常に高くなっています。製造業は特にDX化や人手不足などの課題により、既存人材のスキル変革が重要となるためリスキリングが積極的に進められていると考えられます。これと対照的に、通信情報サービスは28.5%と実施率が低く、業種によっても取り組みの温度差が浮き彫りとなっていると言えるでしょう。

より詳しい調査レポートは以下よりダウンロードいただけますので、ぜひご活用ください。

【最新調査】リスキリング調査レポート

本冊子は、企業のリスキリングの実施率と傾向、リスキリングを推進するうえでの課題や失敗例、DX人材育成の状況などについて、四半期ごとの定点調査結果をまとめています。

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リスキリングに取り組む目的

パーソルイノベーションの調査によると、リスキリングに取り組む目的として最も回答が多かったのは「デジタル化・DXの推進」、次に「GX/カーボンニュートラルへの対応」、そして「新規事業の開発/イノベーション促進」と続きました。

リスキリングに取り組む目的
【出典】パーソルイノベーション株式会社「リスキリングレポート~リスキリングによる報酬変化と生成AI(ChatGPT等)活用の最新状況~【2025年3月版】

デジタル化・DXの推進

最も多くの企業がリスキリングの目的として掲げたのが、「デジタル化・DXの推進」です。これは不足するIT人材を補うために、リスキリングによって充実を図っていることがうかがえます。

また、リスキリングの取り組みにおいて重視する目的を問う設問においても、「非IT人材かつ組織全体の能力底上げ」と回答した企業の割合がトップとなっています。これはつまり、非IT人材をIT人材に転換させる目的が大きいと言えるでしょう。

リスキリングに取り組む目的「デジタル化・DXの推進」
【出典】パーソルイノベーション株式会社「リスキリングレポート~リスキリングによる報酬変化と生成AI(ChatGPT等)活用の最新状況~【2025年3月版】

以上のことから、多くの企業がDXを推進する上で深刻なIT人材不足に直面していることになります。外部からの採用が困難である状況においては、既存の非IT人材をリスキリングによってIT人材へと転換させ、組織全体のデジタル対応能力の底上げを図りたいという狙いがあるのです。

GX/カーボンニュートラルへの対応

次にリスキリングの大きな目的として回答率が高かったのが、「GX(グリーン・トランスフォーメーション)/カーボンニュートラルへの対応」です。

脱炭素社会への移行は、特に自動車産業をはじめとする製造業にとって事業構造の大きな変革を意味します。例えば、将来的に新車がすべてEV(電気自動車)に置き換わった場合、従来のエンジン関連の部品や技術に関わる数多くの雇用が失われる可能性があります。

こうした構造変化を見据え、従業員がEV関連の新技術や再生可能エネルギー分野で活躍できるよう、先行してリスキリングに取り組む企業が増えているのです。

【お役立ち資料】GXとカーボンニュートラルの最新動向

異常気象などの気候変動問題が年々深刻化し、それらの大きな原因である温室効果ガスの排出量削減が世界規模で求められています。企業においても、CO₂ 削減への取り組みが喫緊の課題です。 そこで本資料では、GX とカーボンニュートラルの最新動向をお伝えするとともに、現に取り組まれている企業の実例を紹介。外部サービスをうまく活用しながら、GX を進める方法をお伝えします。

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新規事業の開発/イノベーション促進

「新規事業の開発/イノベーション促進」も、リスキリングの重要な目的のひとつ。企業が変化の激しい時代で持続的に成長していくためには、既存事業を守るだけでなく、新たな価値を創造する「攻めの姿勢」が不可欠です。

新しいアイデアやビジネスモデルを生み出すためには、従業員一人ひとりが旧来の枠組みにとらわれない知識やスキルを身につける必要があります。リスキリングによって多様なスキルセットを持つ人材を育成し、組織内にイノベーションが生まれやすい土壌を作ることが求められています。

企業がリスキリングを導入するメリット

職業能力の再開発や再教育を行うリスキリングを導入することで、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、企業がリスキリングを導入するメリットとして特に挙げられる「人材不足の解消」「採用コストの削減」「自律型人材の育成」「DX推進」について詳しく解説します。

人材不足の解消

自社に不足しているスキルを持った人材の育成には、リスキリングが役立ちます。現代ではデータを活用した業務改善やマーケティングを行う企業が増えており、このような業務にはAIや各種システム・デジタル技術の活用などが必要です。そこで、リスキリングによってこのようなスキル・技術に明るい「IT人材」をリスキリングの導入により社内で育成する企業が増えています。

なお、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の「DX白書2023」によると、IT人材の量が「やや不足している」「大幅に不足している」と答えた企業の割合が8割以上、IT人材の質が「やや不足している」「大幅に不足している」と答えた企業の割合も8割以上でした。IT人材は需要に対して供給が不足しているため、採用難の側面があります。そうした状況において自社に必要な人材を確保する上でも、リスキリングが有効です。

リスキリングの導入を早い段階から進めることで、将来起こり得る人材不足への対策にもなります。

採用コストの削減

リスキリングによって社内で人材育成ができれば、採用コスト削減にもつながります。IT人材を例に挙げると、各社でIT人材が不足しているため、今後はそれに伴い採用コストが高くなることが予想されます。採用よりも社内での育成に力を入れた方が、効率良く優秀なIT人材を確保できるケースもあるでしょう。

また、外部から新しい人材を採用すると、会社に馴染むまで時間がかかるというデメリットもあります。リスキリングで社内人材を教育する場合は、すでに会社の文化や体制を理解しているケースもあるため、新しく採用するよりも体制変更やDXなどへの活用が行いやすいというメリットもあります。

自律型人材の育成

リスキリングによって従業員に新しいスキルを学ぶ機会を提供することで、従業員自らキャリアを形成する意識を高められます。キャリアへの意識が高い従業員が「積極的に業務改善を図る」「事業成長につながる提案を行う」ようになる可能性もあるでしょう。

リスキリングは単なるスキルの習得ではなく、従業員の自発的な行動を促す環境をつくり、会社全体の革新性と柔軟性を向上させる手段としても有効です。

【関連記事】キャリア自律とは?企業が支援するメリットや施策、ポイントを解説

DX推進

リスキリングと関連づけて語られることが多いのが「DX(Digital Transformation)」です。DXとは、デジタル技術によって業務やビジネスモデルなど従来の在り方やスタイルを変える取り組みを指します。

リスキリングがDXにおいても重要な理由は、DXを推進するにあたり、DX人材(デジタル人材)の育成が要になることにあります。デジタル技術を活用して、ビジネスモデルや業務プロセスの変革をしていく上では、デジタルツールやシステムを使いこなせる人材が不可欠です。しかし、多くの企業ではデジタル技術にたけた人材の確保に苦戦しています。

課題の解決策として注目されているのが、従業員の能力やスキルの再開発をするリスキリングです。DXに必要な以下のスキル、知識を新たに習得させることでDXが加速します。

スキル 概要
業務知識 ・既存の業務フローやプロセスを理解し、具体的に課題を把握できる
・すでに業務知識がある、または十分なインプットができ、課題への的確な施策を打てる
デジタルリテラシー ・デジタルの基礎知識や使い方について理解し、業務へ適切に活用できる
・最新のトレンドを把握し、適切なソリューションを選べる
推進力 ・組織全体を見据え、大きな枠組みで物事を捉えられる
・社内外の関係者を取りまとめ、組織全体の改革や業務改善に向けてマネジメントができる
・失敗やトラブルが発生しても、試行錯誤して取り組みを続けられる

パーソルホールディングスの調査では、多くの企業がリスキリングにおける重要な施策として、「全体底上げのためのデジタルスキル」の習得を挙げています。

今後必要なリスキリング施策
【出典】パーソルホールディングス株式会社「【人的資本経営調査レポート】03.育成・リスキリング編

この結果からも、デジタルスキルの教育はDXを推進する上で特に重要なのは明らかです。DXの実現のためには具体的にどのようなスキルの開発が必要なのか、どのように取り組んでいけばよいのかなどについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

【関連記事】DX人材とは?役割や求められるスキル・獲得方法【事例あり】

リスキリングの導入手順

リスキリングを効果的に進めるには、カリキュラム設計や学習環境の整備だけでなく、現状把握やフィードバックの仕組みづくりも欠かせません。ここでは、自社でリスキリングを導入する際の主なステップを紹介します。

1.自社の現状を把握し、リスキリングのテーマを決める

リスキリングは、経営戦略と連動していることが重要です。まずは、経営目標を達成するために必要なスキルと、従業員が現在持っているスキルを整理し、ギャップ(不足しているスキル)を明確にしましょう。このギャップこそが、リスキリングで重点的に強化すべきテーマになります。

従業員のスキルを可視化するには、以下のようなスキルマップの活用が有効です。

スキルマップ
【参考】経済産業省・中小企業庁・厚生労働省による例示を編集

2.リスキリング施策を設計する

リスキリングの目的や対象スキルを明確にしたら、次に施策設計を行います。学習方法には、社内研修・オンライン講座・eラーニング・OJTなどがありますが、対象スキルの専門性や従業員の職種特性に応じて、最適な形式を選定することが重要です。

専門性の高い分野では、外部講師や外部コンテンツの活用が効果的です。コストや運用負荷、社内リソースを踏まえ、内製と外部委託のバランス設計を行うことが求められます。

ただし、学習内容を詰め込みすぎると、受講者の離脱を招くリスクがあります。経営戦略を起点にスキルの優先順位と育成ロードマップを明確化することが成功の鍵となります。

【関連記事】リスキリング研修とは?おすすめプログラムや実践方法を解説

3.学習環境を整える

カリキュラムを策定したら、従業員が継続的に学べる環境の整備が必要です。リスキリングは業務と並行して進めることが多く、業務時間外の学習設計では従業員の負担が大きくなります。就業時間内に学習時間を確保する仕組みを設けることで、取り組みやすさと学習の定着率を高められます。

また、学習管理システム(LMS)の導入は、学習状況の可視化・進捗管理・受講履歴の分析を可能にし、組織全体でリスキリングを推進する基盤となります。学習リソースへのアクセス性や社内コミュニケーションの促進も含め、学びを支える仕組みとして設計的に整えることが重要です。

4.実践で活用する機会を提供する

学んだスキルを業務で活用する実践機会の設計も欠かせません。

学習フェーズで得た知識を業務の中で試行・検証することで、初めてスキルが定着し、組織としての成果につながります。可能であれば、実際のプロジェクトや新規施策でスキル活用の場を創出することが望ましいです。実務での適用が難しい場合は、シミュレーションや実験的な業務設計を通じて、学習と実践の往復を仕組み化する方法もあります。

リスキリングを研修施策として終わらせず、業務変革と連動した人材開発サイクルとして位置づけることが、成果を最大化するポイントです。

リスキリングの導入について
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リスキリング導入時の注意点

リスキリングは、ただ研修制度を導入するだけで成功するわけではありません。実際に多くの企業が運用上の課題に直面しています。パーソルイノベーションのレポートにおいて、リスキリングの失敗例として回答が多かったのは「従業員任せになり、成果につながらなかった」「研修・学習内容が実務にマッチしていなかった」「会得したスキル・知識を実践する場がなかった」でした。

リスキリング導入時の注意点
【出典】パーソルイノベーション株式会社「リスキリングレポート~リスキリングによる報酬変化と生成AI(ChatGPT等)活用の最新状況~【2025年3月版】

この3つについて、リスキリング導入時に特に注意すべき点を解説します。

従業員任せにしない

パーソル総合研究所の調査によると、就業者の約5割が「業務外に学習しない」と回答しています。

就業者の約5割が「業務外に学習しない」と回答
【出典】パーソル総合研究所「学び合う組織に関する定量調査

リスキリングは、従業員自身が学び直す意義やメリットを感じていなければ成功しません。従業員も業務以外にやることが増えたと感じ、会社への不信感を持ってしまうケースも考えられます。

従業員に前向きに取り組んでもらうためにも、経営層が「なぜリスキリングが必要なのか」「リスキリングをするとどうなるのか」といった必要性や将来像を従業員に伝え、理解してもらうことが大切です。

リスキリングは人材戦略の一つであり、経営戦略と連動しています。そのためリスキリングの必要性や将来像の発信は、経営層からトップダウンで行いましょう。具体的には、経営計画の中に記載したり、社内の方針発表会で経営層がリスキリングについて発信したりする手段が挙げられます。一度だけではなく、常に発信し続けることが大切です。

また、学習時間の設定もポイントとなります。学習時間を就業時間内に設定すれば、業務に必要な学習であることを実感してもらいやすくなります。あくまでも企業が主体であることを忘れないようにしましょう。

研修・学習内容が実務とマッチしていない

リスキリングにおける最大の課題として、38.2%の企業が「習得したスキルを発揮する場がない」ことを挙げています。これは特に、経営層の号令で始まるトップダウン型の施策で起こりがちな問題です。せっかく時間とコストをかけて新しいスキルを習得しても、実際の業務でそれを使う機会がなければスキルは定着せず、従業員のモチベーションも著しく低下してしまいます。

こうした事態を避けるため、組織として「なぜこのスキルが必要なのか」「習得後、どのような業務やプロジェクトで活用するのか」といった具体的な出口戦略までをセットで設計することが極めて重要です。経営層と現場がすり合わせを行いながら施策を進めることで、無駄のない効果的なリスキリングを実現できるでしょう。

【お役立ち資料】リスキリングを阻む要因と3つの促進ポイント

リスキリングの効果を高めるには、企業主体の組織づくり・仕組みづくりが重要です。本資料では、リスキリングの実態と促進のための3つのポイントを紹介します。リスキリング実施に課題を持つ方はぜひご覧ください。

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企業でのリスキリングの取り組み事例3選

リスキリングの方法は企業によって異なります。従業員のキャリア形成にアプローチした事例や、学習環境を整備してリスキリングを推進した事例などさまざまです。リスキリング導入の好事例を3つ紹介します。

通信業界の変化に対応|AT&T

米国のAT&Tは、業界に先立ってリスキリングに取り組んだ企業です。約25万人の従業員のうち約50%が今後の通信業界の変化に対応できるスキルを持ち合わせていないことを大きな課題と捉え「ワークフォース2020」という教育プログラムを実施しました。

具体的には、企業から新たな業務や今後必要となるスキルを開示します。従業員は開示された情報と自身のスキルを比較し、足りないスキルを認識した上でリスキリングに取り組みました。

スキルを獲得した従業員は、新たな部署や人員不足の部署への異動に対応。その結果、社内で不足していた技術職のうち8割の人材を社内異動で補充することに成功しました。リスキリングに取り組んだ従業員と取り組まなかった従業員を比較すると、リスキリングに取り組んだ従業員の昇進率が高いという数値も公開しています。

AT&Tは、従業員に自律的なキャリア形成を促すことで、リスキリングに成功した事例といえるでしょう。

人材の配置転換に成功|西川コミュニケーションズ

西川コミュニケーションズは、学習環境の整備や経営層自身の実践でリスキリングを推進した企業です。メインの印刷事業から、AIソリューションやビジュアル制作といったデジタル技術を活用したビジネスモデルへの転換を決めました。

学習チームや表彰制度、はたらき方に柔軟性を持たせるといった、学習しやすい環境を提供することでリスキリングを推進。印刷業務に携わっていた従業員を、プログラマーや営業職へ配置転換することに成功しました。

また、経営層が従業員に対し、今後必要になるスキルを明示。経営層自身もディープラーニングの知識を習得することで発信内容に説得力を持たせ、リスキリングを社内に浸透させました。

マルチタスクと業務効率化を実現|陣屋

陣屋は、顧客満足度向上を目的として、IoTの活用に取り組んだ企業です。宿泊業を営む陣屋ですが、手書きの作業が顧客満足度の向上を妨げていると感じ、顧客情報や在庫の管理をすべてデジタルツール化。全従業員がツールを使いこなすための教育を実施しました。

経営側が「仕事を変えなければ、旅館は立ち行かない」と繰り返しIoTの必要性を伝えたほか、紙への台帳記入を禁止し実践でデジタル活用スキルを鍛えさせました。その一方で、操作ミスを許容し従業員の不安感や抵抗感を和らげた点が見習うべき工夫です。

従来はサービス係、清掃係、フロント係と分かれて業務を行っていましたが、データを共有することにより、役割の垣根を越えて、自分が取るべき行動を判断できるようになりました。その結果、マルチタスク化や業務効率化に成功。顧客満足度も向上し、リピーター客が増加しています。陣屋は、実践でのスキル習得と失敗を許容するマインドセットにアプローチすることで、リスキリングに成功した事例です。

【関連記事】リスキリングの導入事例6選|取り組みの効果や導入すべき企業とは

リスキリングに活用できる企業向け補助金・助成金

リスキリングの推進には研修費用や学習時間の確保など、一定のコストがかかります。しかし、国や地方自治体が提供する補助金・助成金を活用すれば、企業の負担の大幅な軽減が可能です。ここでは、代表的な4つの制度をご紹介します。

なお、各制度の公募期間や要件は変更される可能性があるため、申請を検討する際は必ず公式ウェブサイトで最新情報を確認しましょう。

【関連記事】リスキリングの助成金制度を紹介|コースの詳細や申請の流れも解説

ものづくり補助金

ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業の生産性向上を目的とした設備投資などを支援する制度です。

一見リスキリングとは直接関係ないように見えますが、「省力化(オーダーメイド)枠」などを活用する場合、導入する設備とあわせて行うデジタル人材の育成費用やシステム構築費用の一部も補助対象となります。この補助金は、生産性向上につながる大規模な設備投資とセットで人材育成を検討している場合に有効です。

【【出典】ものづくり補助事業公式ホームページ「ものづくり補助金総合サイト

IT導入補助金

中小企業や小規模事業者が、自社の課題やニーズに合ったITツール(ソフトウェア、クラウドサービスなど)を導入する際の経費を一部補助する制度です。

この補助金はITツールの導入費用だけでなく、そのツールを従業員が使いこなすために行われる研修や、導入コンサルティングなどの費用も補助対象となる場合があります。特定の業務を効率化するツール導入と同時に、従業員のITスキル向上を図りたい企業に適しています。

【【出典】「IT導入補助金2025

人材開発支援助成金

従業員のキャリア形成を促進するため、職業訓練などを実施する事業主を支援する厚生労働省管轄の制度です。まさに「人材育成そのもの」を目的としており、リスキリングとの関連性が非常に高い助成金と言えるでしょう。

特に「人への投資促進コース」や「事業展開等リスキリング支援コース」は、デジタル人材の育成や事業構造の変化に対応するための訓練を幅広く支援します。訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されるため、企業の負担を抑えながら本格的な研修を実施できます。

【出典】厚生労働省「人材開発支援助成金

DXリスキリング助成金

東京都が独自に実施するDXリスキリング助成金は、都内の中小企業等を対象とした助成金です。従業員に対してDX推進に必要なスキルを習得させるための民間の教育訓練プログラムを受講させた場合に、経費の一部が助成されます。

このように、国だけでなく地方自治体が独自のリスキリング支援制度を設けている場合があります。自社の所在地に合わせて、利用できる制度がないか確認することをおすすめします。

【出典】東京しごと財団「令和7年度 DXリスキリング助成金

企業はどう取り組んでいる?
リスキリングの“今”がわかる実態レポート【2025年12月版】

リスキリングの重要性や背景を理解したうえで、「では実際に企業はどのようにリスキリングを進めているのか」と気になる方も多いのではないでしょうか。

パーソルグループでは、企業のリスキリング実施率や目的、育成の手法、投資状況、よくある課題や失敗例、DX人材の確保状況まで、最新の実態を定点調査に基づいてまとめたレポートを公開しています。

リスキリングに関する「2026年度の実施予定と展望」要素についても考察していますので、来年度の自社の施策を考える参考として、ぜひご活用ください。

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パーソルが提供するリスキリング支援サービス「リスキリングキャンプ」

パーソルイノベーションが提供する「リスキリングキャンプ」は、実現したいゴールや対象者のスキルに応じた最適なカリキュラム設計と、アウトプット前提の実践向け学習設計によって企業のリスキリングを支援する研修サービスです。

プロのキャリアコーチが受講者一人ひとりの理解度に合わせてフォローアップを行うため、着実に実践向けスキルを習得しながら継続して学習することができます。

スキル・マインドの両面を効果的にサポートすることで企業のリスキリングを成功へと導きます。リスキリングや自社のDXにお悩みの方はぜひお気軽にお問合せください。

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また、パーソルグループでは、誰でも無料でリスキリングを始められるサービス「PERSOL MIRAIZ」をご提供しています。PERSOL MIRAIZでは、スキル獲得に向けた学習コンテンツやキャリア相談など、充実した支援が受けられます。詳細はこちらよりご確認ください。

まとめ|リスキリング推進の鍵は動機づけと環境づくり

リスキリングは、企業が「戦略の一つ」として、新しい業務や変化に対応するための新しい知識やスキルの学習です。現代はビジネスモデルの変化やはたらき方の変化が加速しているため、リスキリングの必要性が高まっています。

企業によって実施すべきリスキリングの施策は異なります。そのため、リスキリングを進める際は、企業側が主体となり「なぜ」「何を」「どのように」の順番でリスキリングの必要性や将来像を伝えることを徹底しましょう。また、リスキリングに継続的に取り組むためにも、動機づけや環境づくりを意識した施策が不可欠です。