リスキリングの助成金制度を紹介|コースの詳細や申請の流れも解説

企業のリスキリング推進は昨今注目を集めていますが、コストやリソース観点で負担が大きいため、なかなか導入に踏み切れないケースがあるのも現状です。

そこでおすすめしたいのが、助成金の活用です。国策であるリスキリング推進には、国や地方自治体による支援制度が用意されています。

本記事では、リスキリング推進に活用できる助成金や、押さえておきたいポイントをわかりやすく解説していきます。

【無料DL】国内企業のリスキリング最新動向をご覧いただけます

DX推進や人材不足の深刻化など、企業を取り巻く環境が変化し続ける今、リスキリングが注目を集めています。

そのような方に向けて、パーソルグループでは、国内企業のリスキリング実施の成果・失敗やそれぞれの実感理由をレポートした「第4弾リスキリングレポート~リスキリングの成果実感と2024年の見通し~」を無料で公開しています。
他社のリスキリングへの取り組み実態を知りたい方は、ぜひご覧ください。

資料をダウンロードする(無料)

目次

企業がリスキリング推進をすべき理由

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進によるAIの活用や業務のデジタル化で、これまで人が行っていた業務の代替が可能になり、失われる仕事も生まれています。一方で、DX・デジタル化に対応できる人材は慢性的に不足している状態です。専門的なスキルを身に着けた人材を外部から採用するには、大変な労力とコストが掛かる上に、企業文化の継承にも時間が必要になるのが難点だと言えます。

そこで求められるのが、企業のリスキリング推進です。経済産業省も、DXにより失われる雇用から新たに誕生する雇用への労働移動を目的に、企業の従業員に対するリスキリング推進を奨励しています。

新たな領域に対応できる人材の内製化は、既に企業文化を理解する人材が活用でき、育成は企業にとってもメリットがあります。

従業員も事業や自身の未来をイメージしやすく、リスキリングがモチベーションアップにつながります。その結果、社内に学びの風土が醸成され、アイディアが誕生しやすくなり、企業においても新規業態の創出や業務の効率化、ひいてはDX推進が図れるのです。

また、キャリア形成にも一役買い、離職率の低下にもつながります。従業員の持つ知識や能力を資本として捉える人的資本経営の観点からも、リスキリングは有効と言えるでしょう。

企業がリスキリング推進をする際の懸念点

企業にとってリスキリングとは、新たな事業や業務に必要とされるスキルの獲得により、従業員の能力開発や、ビジネスチャンスの創出につながる大きな一歩です。しかし、リスキリングを推進するにあたって検討を進めると、いくつかの懸念点が生まれます。

その中でも、大きな理由の一つとして費用面の負担が考えられるでしょう。リスキリングにかかるコストやリソースの大きさから、導入に踏み切れないケースもあるかもしれません。そこで、大きな味方となるのが助成金の存在です。

次の章では、助成金について解説をしていきます。

リスキリングに取り組む企業こそ助成金の活用を

助成金の活用で、企業はリスキリング推進に必要な費用を補うことが可能です。

経済産業省では、DXにより失われる雇用を、新たに誕生する雇用へと円滑に労働移動させることを目的として、企業における従業員へのリスキリング推進を奨励しています。

助成金の種類や申請方法については、後ほど改めて解説していきます。

助成金とは何か?

助成金とは、企業の支援のために雇用増加や教育、人材育成といった様々な分野で支給される、従業員の労働環境向上の支援金です。助成金の財源は会社が支払う雇用保険料でまかなわれ、厚生労働省が管轄しています。助成金の支給には一定の要件を満たす必要があり、返済義務はありません。

助成金の種類や最新の情報は、厚生労働省のホームページや各地の労働局・ハローワークで確認できます。また、社会保険労務士に相談することもできます。

助成金と補助金の違い

助成金と似た制度に補助金があります。助成金と補助金は、どちらも事業者を支援するために、国や地方自治体から支出されるものです。しかし、この二つには明確な違いがあります。

補助金とは、国や地方公共団体が政策を推進するため、事業者や個人事業主に対し、原則返済不要の金銭を支給する制度です。公共の利益、公共性になりうるか、一定の条件に適合しているか、申請後の審査に通るかといった要件を満たし、募集期間内に申請して採用されると、支給されます。こちらも、助成金と同様に返済義務はありません。

助成金との違いは、補助金の方が種類、支給額ともに多く、適用範囲が広い点です。一方で、助成金と異なり、申請期間が短期間であり申請しても審査に落選し支給されないケースもある点、支給までの期間が長いといった特徴もあります。また、補助金の財源は税金で経済産業省の管轄です。

このように、助成金と補助金はそれぞれ目的と管轄が異なり、さらに財源の違いがあります。また、どちらも不正受給や虚偽申請は厳しく罰せられます。

リスキリングに取り組む企業が助成金を活用すべき理由

リスキリングには、研修の受講費用をはじめとした諸々のコストが、掛かることが一般的です。助成金の活用で、これらの費用負担を軽減できるメリットがあります。

リスキリングを必要としながら導入を躊躇している企業の中には、人材の確保や教育方法といった課題を抱える企業も少なくありません。その場合、助成金の活用により、専門的な支援やアドバイスを受けられるのも利点だと言えるでしょう。

リスキリングに取り組む企業にオススメする助成金

従業員のスキルアップや人材育成のため、リスキリングの取り組みを検討している企業にオススメしたい助成金をご紹介します。企業の使用目的に見合った助成金を見つけて、ぜひ活用してください。
※2023年10月現在の情報です。申請前には必ず最新の情報をご確認ください。

人材開発助成金

人材開発支援助成金とは、雇用する社員(従業員)に対して、職務に関連した専門的な知識や技能を習得させる職業訓練等を実施した場合に助成する制度です。この助成金を受けるには、実施計画書の作成が必要です。計画に沿った職業訓練を行った場合にのみ、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等が助成されます。

ここでは、人材開発支援助成金の7つのコースのうち、リスキリングに関連するものをご紹介します。

・人材育成支援コース

人材育成支援コースは、職務に関連した知識・技能習得のための訓練、厚生労働大臣の認定を受けた10時間以上のOJT付き訓練、非正規雇用労働者を対象とした正社員化を目指す訓練を行った場合、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されます。

【出典】厚生労働省「人材開発支援助成金

・人への投資促進コース

人への投資促進コースでは、デジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的に行う訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)等を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等が助成されます。

この制度は令和4〜8年度の期間限定で提供され、国民からの提案を基にした訓練コースには次のようなものがあります。

    • 高度デジタル人材育成の訓練や、大学院(海外を含む)での訓練を行う事業主に対する高率助成
    • IT分野未経験者の即戦力化訓練を実施する事業者への助成
    • サブスクリプション型研修サービスによる訓練への助成
    • 労働者が自発的に受講した訓練費用を負担する、事業主への助成
    • 働きながら訓練を受講するための休暇制度や、短時間勤務等制度を導入する事業主への助成

なお、1事業所が1年度(4月1日から翌年3月31日まで)に受給できる助成限度額が1,500万円から2,500万円に引き上げられるなど、制度が変更される点もありますので、申請前には必ず最新の情報をご確認ください。

【出典】厚生労働省「人材開発支援助成金

・事業展開等リスキリング支援コース

事業展開等リスキリング支援コースは、新製品の製造や新サービスの提供といった新規事業展開のための人材育成や、DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(脱炭素)といった成長分野の技術を採り入れ、業務の効率化を図るための人材育成に対し、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。

中小企業の経費助成率は75%、賃金助成額は1人1時間あたり960円、中小企業以外の場合は経費助成率が60% 、賃金助成額は1人1時間あたり480円と定められています。

【出典】厚生労働省「人材開発支援助成金

その他助成金

その他自治体において、中小企業のリスクキング支援を目的とした助成金も用意されています。ここでは参考として、東京都の助成金をご紹介します。

・DXリスキリング助成金

DXリスキリング助成金は、都内に本社又は事業所(支店・営業所等)の登記がある中小企業で働く従業員が、民間の教育機関などが提供するDX関連の教育訓練でかかる費用を助成する制度です。助成を受けるには20時間以上の訓練が必要とされます。

申請には、業務の効率化・生産性の向上、新製品・新サービスの開発、組織力・営業力の強化などを目標とすることが条件です。研修の受講料や教材、eラーニングのID登録料なども対象となります。

【出典】公益財団法人東京しごと財団「DXリスキリング助成金

この他にも、地方自治体などで中小企業のリスキリング推進を支援する助成金が存在します。地域により使用できる助成金は異なりますので、該当する地域の助成金について調べることをおすすめします。

企業がリスキリングを推進する際に押さえておきたい助成金のポイント

リスキリング推進について、国や地方自治体から様々な支援制度が発表されています。助成金制度の申請には、要件や目標といった細かい支給条件が定められており、それらを満たしていない場合、助成金を受け取れません。

助成金の活用を検討している場合は、必ず事前のチェックを行う必要があります。ここでは、リスキリング推進に際して押さえておきたい助成金のポイントについて解説します。

助成金申請の方法や流れ

国や地方自治体の助成金は種類が多く、それぞれの助成金で必要な書類や要件が異なります。ここでは助成金の申請方法について、一般的な流れを紹介します。

①実施計画の作成
助成金の申請に必要な要件に沿った実施計画を作成します。教育訓練の内容やその目的、期間、対象者などを明記します。

②計画届の申請
計画届を作成し、実施計画の完成後、必要書類を期限までに提出します。計画の承認により、助成金支給の可能性が高まります。

③計画の実行
計画届が承認されると、計画に基づき訓練を実施します。この際、計画内容に変更がある場合は、事前に計画変更届を提出する必要があります。

④助成金の支給申請
訓練終了後翌日から期限内に、支給申請書等必要書類を提出します。この際、内容や結果、名簿などの提出が求められます。行政機関の審査ののち、助成金の支給条件を満たしていれば支給決定書が届き、助成金が支給されます。

以上が一般的な申請の流れです。具体的な手順は申請する助成金により異なる場合があるため、具体的な手順は各助成金のガイドラインやマニュアルをご参照ください。

また、デジタル庁が運営するサイト「e-Govポータル」では、助成金の検索や電子申請が行えますので、こちらもご活用ください。

助成金のメリット・デメリット

これまで、助成金の活用を推奨してきましたが、助成金を利用するにあたって生じるメリット・デメリットの両面について解説します。

メリット

リスキリング中に掛かる訓練費用や賃金が助成され、さらに助成金の返済義務がないため、自社で進めた場合と比較すると予算やリソースの軽減が見込まれます。また、助成金受給のための取り組みが労働環境の改善に影響し、従業員満足度の向上につながる可能性があります。

助成金受給は、いわば国の審査に合格した企業とも言えます。社会的な信用を得られるため、雇用や育成に貢献する企業としてのPRも可能でしょう。

デメリット

助成金受給に至るまで、様々な書類の作成や申請をする必要があり、そのための手間やコストが掛かると考えられます。また、不正受給などが起こらないように厳格な審査を行うため、助成金申請から受給までに時間がかかります。その間のコストは自社で賄わなければなりません。

これらのメリット・デメリットを考慮したうえで、自社の状況や目標に合わせた最適な選択を行うことが重要だと言えるでしょう。

助成金が申請できるリスキリング

リスキリングの訓練プログラムは多数存在しますが、すべてのプログラムで助成金の申請ができるのではありません。それぞれの助成金に定められた一定の条件を満たした訓練内容の場合のみ、講座費用の補助を受けられる可能性があります。

趣味や教養目的の訓練はカウントされないため、注意が必要です。助成金の対象については、管轄の労働局へお問い合わせください。

【出典】厚生労働省「助成金のお問い合わせ先・申請先

リスキリングに助成金を活用するなら「リスキリング キャンプ」

パーソルイノベーションが提供する法人向けリスキリング支援サービス「リスキリング キャンプ」では、個社ニーズに合わせたカリキュラム設計とコーチによる学習伴走でデジタル人材育成のサービスを提供しています。リスキリングの実践で必ず立ちはだかる2つの壁(スキル面とマインド面)を効果的にサポートできるプログラムです。

「リスキリング キャンプ」は、大企業に特化したフルオーダー型のリスキリングプラン立案で、従業員数が多い大企業ならではの課題解決に尽力します。リソース不足でリスキリング施策の検討に悩みを抱える大企業の方は、助成金申請と併せて「リスキリング キャンプ」の活用をぜひご検討ください。

お問い合わせはこちら

まとめ

ここ数年の急激な技術革新で、業態や業種を問わずデジタル化が求められています。企業の成長や事業の存続には、リスキリングを推進し、市場変化への適応が必要です。予算やリソースの確保が懸念される企業は、企業支援のために支給される助成金を活用し、自社のニーズに合ったプログラムでのリスキリング推進をおすすめします。


企画・編集/パーソルイノベーション株式会社 リスキリング キャンプ コラム編集室 三浦 まどか