VUCAとは?意味や時代に合わせた対策・必要な組織作りを解説

「VUCA(ブーカ)」とは、目まぐるしく変転し、複雑で予測困難な時代の特徴をとらえた言葉です。

本記事では、そのような代に求められる人材やスキル、VUCA時代を生き残るために企業が取り組むべきことを解説します。

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「マネジャー=単なる評価者」ではなく、キャリアの先をゆくロールモデルとしての役割を果たすには、マネジャー自身がその先のキャリアパスを描き、成長していく必要があります。

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目次

VUCAとは

VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字をとった言葉で目まぐるしく変転する予測困難な状況を意味します。

現代は、グローバリゼーションや国家・地域間の経済紛争、新型コロナウイルス感染拡大や政権交代、日々更新されるITやバイオの最新技術といった、さまざまな物事が目まぐるしく変化しています。

こうした状況を正確に把握することで、予測しづらい状況のなかでも最適な意思決定を行い、ビジネスを成功に導くために不可欠な考え方として注目を浴びています。

Volatility=変動性

オックスフォード英語辞典によると、Volatilityは以下のように説明されています。

1. (often disapproving) the quality in a person of changing easily from one mood to another
 人の気の変わりやすさ(しばしば否定的な意で)

2. The quality in a situation of being likely to change suddenly
 急激に変わりやすい状況


【出典】オックスフォード英語辞典(Oxford English Dictionary)

変動性(Volatility)」は、VUCAでは2つめの意味で使用され、事象の変わりやすさ、しかも急激な変動性を指しています。

例えば、新型コロナウイルスの急速な感染拡大や、それによる勤務形態の急激な変化は、変動性という言葉で表される現代の特徴だといえるでしょう。

時代の変動性にいち早く気づき、組織変更やテクノロジーの獲得などによって競合よりも早く的確に対応できた企業は、先行優位をもって有利なビジネスができています。

Uncertainty=不確実性

1. [uncountable] the state of being uncertain
 不確かな状態[不可算名詞]

2. [countable] something that you cannot be sure about; a situation that causes you to be or feel uncertain
 確信が持てないこと[可算名詞]


【出典】オックスフォード英語辞典(Oxford English Dictionary)

不確実性(Uncertainty)」は、正しい情報の収集と理解をともなわないために、事態が明らかでなく、確信が持てない状態であることを表しています。

例えば、新型コロナウイルスの科学的見地について、膨大な情報が溢れる中どれが正しい情報なのか選別できずわからない、という状況は不確実性という言葉で表せるでしょう。企業にとっても不確実性はやっかいな問題です。

しかし、不確実な状況下でも仮説をもとに商品を提供し、その世評や新たな状況変化に即応して商品を適切に改善してきた企業もまた、収益を伸ばすことができるでしょう。

Complexity=複雑性

1. [uncountable] the state of being formed of many parts; the state of being difficult to understand
 多くのパーツから成り立っている状態;理解が難しい状態

2. Complexities [plural] the features of a problem or situation that are difficult to understand
 理解するのが難しい問題や状況[複数形]


【出典】オックスフォード英語辞典(Oxford English Dictionary)

物事は、バラバラに運動する部分の数が多ければ多いほど、全体を把握することは困難になります。理解しがたさが構成する要素の多さに由来するとき、その事象の特徴が「複雑性(Complexity)」と呼ばれます。

例えば、東京のJR渋谷駅前交差点を横断する人々の、誰1人とも交差しない直線を見出そうとするのは、集団の動きの複雑性からして困難だといえるでしょう。

同じように、市場のニーズの複雑性を巧みに分解して何が希求されているか理解し、人々が心から求める商材を把握し提供できた企業もまた、市場で優位に立つことができるでしょう。

Ambiguity=曖昧性

1. [uncountable] the state of having more than one possible meaning
 1つ以上の意味を持っている状態[不可算名詞]

2. [countable] a word or statement that can be understood in more than one way
 複数の意味に理解される語や文章[可算名詞]

3. [uncountable, countable] the state of being difficult to understand or explain because of involving many different aspects
 さまざまな側面が関与するため、理解や説明が困難である状態[可算名詞・不可算名詞]


【出典】オックスフォード英語辞典(Oxford English Dictionary)

VUCAにおける「曖昧性(Ambiguity)」は、元々の英語の意味は日本語と少々ニュアンスが異なり、「複数の意味を持っている状態」を指します。これは複雑性とは違い、構成する要素の多さではなく、ある1つのものが持っている解釈の可能性が複数あることに焦点が当てられています

例えば、何もせずにじっと座っている男性の頬を涙が伝ったとき、この状況はその男性が
 ・何かを思い出して悲しいのか
 ・体に痛い部分があるのか
 ・嬉しいことがあってかみしめているのか
いずれにも解釈が可能です。この状況は「ambiguous」(曖昧だ)といえるでしょう。

このように物事の両義性はときに企業を惑わせます。複数の仮面を剥ぎ取り、その裏にある素顔(ニーズ)を読み取った企業もまた、有利にビジネスを進めることができるでしょう。

VUCAが注目されている背景

元々「VUCA」は、軍事用語として使われていました。刻々と変化する戦況や、複雑化した国際情勢を正しく把握し機先を制するために考案された言葉です。

VUCAが注目を集めるようになった背景として、2016年の世界経済フォーラム(ダボス会議)で用いられたことがあげられます。

現代は、異常気象による災害や先進国の少子高齢化など、外部環境が不確実な時代です。また、テクノロジーが急速に発展し、ビジネスモデルや消費者のニーズも急速に変化しています。戦場で兵士がその時々の戦況に正しく対応できなければ生き延びることができないように、企業には状況変化を素早く察知し、時代に適応した人材を採用・育成し、組織と行動を柔軟に変えていくことが求められます。

どんなに入念に準備しても想定外のことは起こり、そのような中で企業は危機を乗り越えなければならないからこそ、VUCAがさらに注目を浴びているのだと考えられます。

VUCA時代に求められるスキル

VUCA時代は、複雑で理解しがたく、想定外のことが起こるために予測も困難です。そのような中で、正しく柔軟に適応するためには、以下のスキルが求められます。

情報処理能力

どのような決断も、正しい状況判断をともなわなければ誤った行動を導きます。したがって、あらゆる決断にとって、膨大な情報から正しい情報を選別し、正しく状況を把握する情報処理能力が、前提として必要であるといえます。

情報処理能力を持つ人の特徴・傾向

・日頃から多くの情報に接している。特に自らと異なった意見も含めて多様で大量なニュースソースを持っている

ただし、膨大な情報に接していても、デマや正確性の低い情報を正しいと思い込み、そこから確度の高い仮説や指針が得られない場合は、情報の海に溺れているだけともいえます。

したがって、膨大な情報から適切な情報を選び出すリテラシーが必要だといえます。

仮説構築能力

完全な情報を得ることが難しいかつ意思決定にスピードが求められるVUCA時代には、仮説思考が求められます。

仮説思考とは、情報が出揃っていない状態で仮説を立て、検証していく思考方法です。仮説は不完全な情報をもとに構築されているため、より確度の高い仮説を考え出して望ましい目標に近づくことができる人は、優れた仮説構築能力を持っているといえます。

また、仮説構築能力の高い人材は、現状認識と実際の状況のギャップが大きくなったときに、素早く次善策に切り替えて実践できる柔軟性を持ちます。

仮説構築能力を持つ人の特徴・傾向

・日頃から先を予測した行動を取っている
・なぜ?どうして?と問い続けている
・好奇心旺盛で、情報収集を続けている

仮説をもとに行動、得られた結果から再度仮説を立てるなど、目標に向けて改善を積み重ねていくことができる人材だといえます。

行動力

どれだけ適切に情報処理を行い、より望ましい仮説をつくりだすことができても、失敗を怖れずかつ前例にとらわれずに、まずは現実に適応してみる=実践してみなければ、現状認識と仮説について検証することができません。したがって、VUCA時代に最も必要なスキルは行動力だといえます。

行動力を持つ人の特徴・傾向

・日頃から周囲からもアクティブであると見られていることが多い
・知的好奇心が旺盛
・何でも自分で経験してみなければ気が済まない
・常に活力があって周囲を楽しませようとする

幹事などのまとめ役を買って出る、独自のセルフマネジメント力がある、ふらっと一人旅に出る、多趣味である、多様な経験を持つといった傾向は、行動力を判定する一定の指標になることでしょう。

VUCA時代を生き抜く組織づくりとは

企業は、前述のスキルを持つ人材を採用・育成するとともに、自ら正しい情報収集に努めて情報の確度をあげ、素早く意思決定し、変化に柔軟に即応できる組織へと改変していくことも重要な課題です。

ここでは、VUCA時代に求められる組織づくりについて解説します。

迅速な意思決定法OODAループを活用する

VUCA時代の組織づくりにおいては、意思決定と行動を早めるための思考法「OODA(ウーダ)ループ」が有効です。常に変化し、想定外のことが起こる、また複雑になりすぎて全体像の理解が難しい状況のなかで、有効に働く迅速な意思決定モデルです。

OODAループは、以下の4つから構成されています。4つの意思決定過程を繰り返すことで、迅速判断行動を可能にします。

 1.Observe(観察)
 2.Orient(適応)
 3.Decide(決断)
 4.Act(行動)
OODA loopとは

【出典】U.S. Army War College「JOHN BOYD AND THE “OODA” LOOP (GREAT STRATEGISTS)」

有名なフレームワークであるPDCAは、「計画」を立て評価と改善を繰り返すことを重視していますが、OODAループの場合は「行動」を重点に置いているため、刻一刻と変わる状況に対応しながら行動できるというメリットがあります。

また、前述のとおりVUCA時代に求められる人材のスキルは「情報処理能力」「仮説構築力」「行動力」です。一見習得することが難しい資質ですが、OODAループの意思決定法を見ると、その資質に含まれた要素が意思決定の各段階に盛り込まれていることがわかります。つまり、時間をかけて資質を習得しなくても、OODAループの意思決定を行うことでVUCA時代に適応した迅速な判断ができます

想定外のことを前もって想定し、不完全な情報からも適切な仮説を現実に当てはめ、現状認識・仮説と現実とのギャップが大きくなってきたら別の選択肢を迅速に採用する。OODAループを活用して、試行錯誤することで、より適切な意思決定をし、現実に対応していくことができます。

マネジャーを効率よく素早く育成する

組織として迅速に意思決定し行動に移すことができるようになるには、意思決定を実効的に行動に移す権限をもったマネジャーを、できるだけ早く効率よく育成することも重要です。

このとき気をつけなければならないのが、育成したい人材が習得している知識や技術を超えた権限委譲をいきなり行っても失敗する、ということです。ステップを踏みながら徐々にマネジャーの権限を委譲する必要があります。

一般に、企業による権限委譲(エンパワーメント)は、以下の4段階を踏まえて行われ、「部下の成長段階・個別の状況に応じた教育」を行うことを意味します。

教育の4段階

教育の4段階

1.指示
まず、知識・技術がまだまったく身についていない新人へは、手取り足取り「指示」します。この段階では、まだエンパワーメント(権限委譲)はありません。

2.合意
次に、ある程度の知識や技術が身についてきたら、ある程度の権限委譲を行い、一定の範囲で裁量をもって業務にあたってもらうようにします。このとき、一定の目標・手法の「合意」をもってエンパワーメントを行う、ということになります。

3.援助
さらに部下が育ち、かなりの業務知識や技量をそなえてきたなら、上司はさらに大きな権限を渡し、「援助」するのみといった役割に徹します。この段階までくれば、部下はかなりの裁量をもち、それほど上司の手をかけることなく仕事ができるようになっていることでしょう。

4.委任
最後が「委任」です。自らもつ権限をすべて委譲し、同じ職務につくだけの知識と技量を部下がもつことができたということです。これにより一定の教育は完遂された、と考えることができます。

部下の成長度合い・状況に応じた教育が必要となるため、外資系企業などでは上司と部下が到達するべき目的・手法などの情報共有を個別にすりあわせる、1on1と呼ばれるミーティングを繰り返し行っています。こうした教育の際には、部下にスモールサクセスを積み重ねさせることも配慮されています。

主体性の高い人材を育成する

企業の競争力を高めるために人材育成は欠かせません。かつての日本は「同じ作業を早く大量にこなせる」人材が求められていました。しかし、現代の日本はビジネス環境の変化が激しく、業務内容もめまぐるしく変化します。そのため、企業がビジネスを勝ち抜くには、自ら考え、行動できる主体性の高い人材が必要です。

主体性の高い人材を育てるための方法として、思考力を高めるロジカルシンキング研修の実施や、仕事に対するやりがいを育てるジョブ・クラフティングの導入などが挙げられます。

多様な人材を取り入れる

VUCA時代は、経歴や経験、価値観が異なる人材を登用してイノベーションを促すことが必要です。

従来の日本では、新卒一括採用で長期的に人材を育成していくことが主流でした。しかし、不確実性の高いVUCA時代では、こうした育成手法はマッチしません。

また、採用においても多様性を重視する必要があります。様々な角度から企業課題を見つめ、イノベーションを促進するには、経験や年齢、価値観など異なる人材を採用しましょう。

まとめ|混沌とし予測しがたいVUCAの時代、企業は迅速な意思決定と適切な教育を

VUCAとは、変化し(Volatility)不確実で(Uncertain)複雑(Complexity)、さらに曖昧=両義性がある(Ambiguity)現代の特徴を言い表す言葉です。

そのような時代において、企業には迅速な意思決定と組織的行動、社員個々の能力の発揮と自律的な行動、迅速な管理者教育が求められます。

不完全な情報をもって刻々と変化する状況にあわせ対応を変える意思決定法であるOODAループ、部下の成長段階に合わせたエンパワーメント(権限委譲)を行う4段階教育、迅速な行動を可能にするフラットな組織改編により、VUCAで困難な時代を乗り越えていきましょう。

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「マネジャー=単なる評価者」ではなく、キャリアの先をゆくロールモデルとしての役割を果たすには、マネジャー自身がその先のキャリアパスを描き、成長していく必要があります。

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よくあるご質問

Q.VUCA時代における、組織づくりのポイントは?

A.従来の画一的な人材マネジメントではなく、従業員一人ひとりの強みを引き出し、最大限活用できるような組織づくりが求められます。

VUCA時代に求められる人材とスキル、組織運用のポイントはガイドブックでまとめて紹介しています。ガイドブックは以下リンクよりどなたでも無料でダウンロードいただけます。
>>VUCA時代・テレワークにおける組織運営のポイント

Q.VUCAとは?

A.VUCA(ブーカ)とは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字をとった言葉です。

>>VUCAとは

Q.VUCA時代に求められるスキルとは?

A.想定外のことが起こるVUCA時代に正しく適応するためには、以下の資質が求められます。

    • 情報処理能力
    • 仮説構築能力
    • 行動力

>>VUCA時代に求められるスキル

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