2023年02月10日
2023年12月04日
ダイバーシティとは「多様性」を意味する用語で、多様な人材を登用し受容できる体制づくりのことを指します。近年、人材不足やはたらき方の多様化によりその重要性が認識されてきました。
しかし、本来の意味とは異なる解釈が広がりつつあり、ダイバーシティを表面的な意味だけで捉えている企業が増えています。それにより、ダイバーシティを推進したくてもできていない企業が存在するのが実情です。
本記事では、ダイバーシティを推進したい企業に向けて、ダイバーシティの意味や推進により生まれる効果、注意点について事例とともに解説します。
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ダイバーシティ推進への取り組みは多くの企業で活発になっていますが、まだ取り組まれていない企業も多いのではないでしょうか。
・これからダイバーシティを社内で推進していきたい
・他社のダイバーシティへの取り組みを知りたい
そのような方に向けて、女性活躍推進、キャリア採用などについての調査結果をまとめた「ダイバーシティ&インクルージョン調査レポート」を無料で公開しています。
これからダイバーシティを推進していきたい方、情報収集したい方はぜひご活用ください。
目次
ダイバーシティとは、多様性を意味する用語です。ビジネスの分野では年齢や性別、キャリアや価値観などが異なる人材を登用し、個々の能力を最大限に生かす取り組みを指します。企業で推進することで、優秀な人材の確保や生産性向上といった効果が期待できます。
ダイバーシティには、大きく分けて2つの意味が存在します。
表面的なダイバーシティ | 国籍、性別、年齢、民族、宗教、障害 |
深層的なダイバーシティ | 考え方、趣味、習慣、スキルや知識、職歴、コミュニケーション能力、性的志向 |
表面的なダイバーシティとは、自分の意志では変更することができない、もしくは変更が難しいものです。外見で識別できるものが多く、「目に見えるもの」として表面的なダイバーシティと呼ばれています。
深層的なダイバーシティは「目に見えにくいもの」です。外見での識別が難しいのが特徴です。
ダイバーシティに近い用語に、インクルージョンがあります。インクルージョンとは「包括」を意味し、発想や考え方、思想といった個々の内面的な特性が、十分に生かされた企業活動が行われている状態です。
インクルージョンの具体的な取り組み例は、下記のようなものが考えられます。
日本では元々、インクルージョンも含んだ意味合いとしてダイバーシティという用語が使用されていたこともあり、インクルージョンとダイバーシティは切っても切り離せない関係にあります。
単純に国籍や性別、年齢が異なる人材を集めるだけでは、企業が直面している課題を解決することはできません。企業がダイバーシティを推進するためには、個人の力を最大限に生かすインクルージョンの実現が必要です。
ダイバーシティとインクルージョンの取り組みが両輪でなされていないと、マイナスの効果を生む可能性もあります。多様性を生かすインクルージョンの取り組みとダイバーシティ推進をセットで行うことが非常に重要です。
図のように、ダイバーシティ推進で多様性が増加しても「取り組み」がなければ生産性は低下してしまいます。多様性が増加して何をしたいのか「計画・ビジョン」をはっきりさせておく必要があります。
また、多様性を増加させると同時に、時短勤務や在宅勤務などの「柔軟なはたらき方」の整備も必要です。ダイバーシティ推進とインクルージョンを同時に行うことで、生産性の向上につながります。
近年では、ダイバーシティとインクルージョンの頭文字をとり「D&I」と表現している企業もあります。
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ダイバーシティが推進される背景には、日本の少子高齢化と労働力減少が関係しています。労働力が減少しているため、企業が生産性を高めるにはさまざまな人材の採用・活用が必要です。
具体的にダイバーシティが推進される背景には、下記の3つの要素があります。
特にひとつめの人材不足は、企業の人材確保に大きく影響します。それぞれの要素について、詳しく見ていきましょう。
人口オーナス期(※)に突入した日本では少子高齢化が進み、労働人口が減少しました。その結果、人件費が高騰し優秀な人材確保が困難になったため、これまで検討していなかった属性の人材を受け入れる必要が出てきました。また、近年では日本国内でも海外在住の人材の採用も増えています。
国籍や性別、年齢に縛りを設けず、広く人材を確保するための手段として、ダイバーシティ推進に注目が集まっています。
※人口オーナス期とは、全人口に対し、はたらく人が少なく経済が成長しにくい状態
かつての日本では、全員が決まった場所で決まった時間にはたらくことが、生産性を高める最適な手法でした。しかし日本が人口オーナス期に突入したことで、労働に対する考え方が変化しました。現在では、仕事と私生活の両立を重視する「ワーク・ライフ・バランス」の考えが浸透しています。
従業員側の意識も、残業をして頑張る時代から、「ワーク・ライフ・バランスをとりながら、やりがいを持って、安心して働ける」ことを重視する価値観へ変化しています。
時短勤務やテレワーク、就業時間を自分の裁量で決めるフレックスタイムの導入も、ワーク・ライフ・バランスを考慮した企業の取り組みです。労働総量が少ない人口オーナス期においては、時間や場所に縛られない柔軟なはたらき方を受け入れることが、生産性を高める勝ち筋になるのです。
こうしたはたらき方の多様化も、ダイバーシティ推進につながっています。
労働人口の減少により、女性の社会進出が後押しされるようにもなりました。業務内容が肉体労働から頭脳労働へ移り変わったことで、女性がパフォーマンスを発揮しやすい業務が増えてきています。また、仕事に対する考え方も変化しており「仕事は男性、家庭は女性」といった価値観はなくなってきています。
これまでは、正社員としてはたらくためには一定の時間外ではたらき続けることが求められ、結婚や出産、介護といった事情がある人は、断念せざる得ないケースもありました。現在でも、ダイバーシティ推進と同じく女性活躍推進に課題を感じている企業は約半数に上ります。
優秀な女性社員がキャリアを断念するのは大きな損失です。企業には、女性がはたらきやすい環境を作ることが求められています。
消費傾向の変化もダイバーシティ推進が注目される背景の一つです。顧客の消費傾向は、商品を買う「モノ消費」から体験を買う「コト消費」へ変化しています。経済成長により物質的な欲求が満たされるようになった結果、消費者はサービスや体験、感動を求めるようになりました。こうした変化により、従来のビジネスモデルが通用しない時代となっています。
またITの進歩やスマートフォンの普及により、オンライン上でのビジネスが加速し、顧客が多様化しました。顧客の多様化に対応するためには、状況や変化を素早く察知し、時代に対応した企業戦略を立てていく必要があります。顧客ニーズを把握し、新たなビジネスアイデアを考案するためには、想像力や柔軟性を持った人材が必要です。
想像力や柔軟性は同質的な組織では限界があります。消費傾向の変化に対応するためにも、さまざまなキャリアや価値観を持つ多様性のある組織が求められています。
ダイバーシティを推進するためには、経済産業省による「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」に示されている7つのアクションと3つの視点に則って取り組む必要があります。
【7つのアクション】
経営トップが自らの責任で取り組みをリードする必要があり、推進体制を構築し、取締役会で適切に監督する必要があります。管理職や従業員の行動や意識改革も求められます。また、ダイバーシティ推進の内容や成果については、定期的に発信や対話を行うのが望ましいでしょう。
またダイバーシティ推進には、3つの視点が必要です。
【3つの視点】
経営陣が自ら取り組みをする必要があり、現場では属性にかかわらず活躍できる人事制度の見直しや働き方改革をします。また、労働市場に対してダイバーシティ推進を発信することで、自社の求める人材の確保につながります。
ダイバーシティの推進は、企業の経営面や人事面に大きなメリットをもたらします。ここでは、企業がダイバーシティを推進するメリットを4つ紹介します。
ダイバーシティを推進すると、多様な価値観や考え方を持つ人材が集まります。異なる視点から意見を出しあう環境が生まれることで、新たなアイデアが出てくるようになります。意見に対して内容を膨らませたり、発展させたりもできるでしょう。消費傾向の変化も敏感に感じ取れるため、新たなビジネスを生み出せる土壌が生まれます。
また、公共事業を請け負う企業にとっては、ダイバーシティの推進が入札時に有利になるというメリットもあります。 2019年には女性活躍推進法の改正により、女性の活躍推進を目的とした取り組みが施行されました。常時雇用の労働者数が101人以上の企業では、一般事業主行動計画の策定や公表の実施、女性活躍に関する状況把握などが義務付けられ、国から「ワーク・ライフ・バランス等推進企業」に認定された企業は、国が発注する事業で加点を受けられるようになりました。
ダイバーシティの推進は、優秀な人材の確保にもつながります。これまでの日本企業では、正社員は1日8時間で週5日勤務が一般的でした。そのため、どれだけ優秀な従業員でも、育児や介護、遠方といった事情がある人は正社員として勤務できませんでした。
ダイバーシティを推進すれば、従業員に合わせた雇用形態を導入することになります。そのため、事情を抱える優秀な従業員を途中で手放す必要がありません。育休や時短制度を導入することで、育児と両立しながらパフォーマンスを発揮する従業員も生まれます。
採用面においても、優秀な人材を確保できる可能性が高まります。勤務時間や居住地に関係なく人材を募集するため、海外在住の人材や子育て世代の人材が応募しやすくなるでしょう。
近年では、取引先企業を調査した上で提携を結ぶ企業が増えてきました。資本金や品質管理といった業務に直接かかわる内容だけではなく「どのような従業員がいるのか」「どのような取り組みをしているのか」といった企業姿勢も、調査内容に含まれます。
ダイバーシティ推進で取り組む「異なる価値観の受容」や「多様な人材が能力を発揮している状態」は提携を結ぶ企業からも評価されるでしょう。
また、企業の社会的信用が高まれば、従業員のはたらく意識も変わります。周囲から評価されている企業に所属していることを意識すれば、従業員の責任感や帰属意識も高まり、ひいてはエンゲージメント(従業員の仕事への情熱や誇り)向上にもつながるでしょう。
ダイバーシティの推進は、生産性の向上につながります。多様な能力や価値観を持った人材が集まり、それを受け入れる文化があることで、お互いの能力を生かしあえるのです。
ただし、前述したとおり国籍や性別、年齢が異なる人材を集めただけの、表面的なダイバーシティを推進しても生産性は上がりません。個々の能力が最大限に発揮される状態「インクルージョン」と組みあわせることで、生産性が高まることを覚えておきましょう。
パーソルホールディングスの調査によると、ダイバーシティ推進の取り組みに際し、「どのように取り組んで良いかわからない」という懸念点が多く挙げられていることが明らかになりました。
本章では、ダイバーシティ推進につながる施策をまとめています。自社でダイバーシティ推進に取り組む際の参考にしてください。
多様な人材が能力を発揮するためには、短時間勤務や在宅勤務といったワークスタイルに対応できる労働環境を整備しましょう。
育児や介護を理由とした休業制度の整備とあわせて、活用しやすい制度になるような環境整備も同時に進めましょう。例えば休業制度であれば、相談窓口や復職支援システムを設置することが挙げられます。
また、労働環境の整備には、心理的安全性の醸成も欠かせません。多様な価値観を持った人材を受け入れれば、意見の相違が常に発生します。意見の相違がポジティブな方向に向かえば良いものの、ネガティブな方向に進んでしまう可能性も考えられるでしょう。
ネガティブな方向に進んだ場合、価値観の対立や人間関係の悪化、最悪の場合は離職に発展することも考えられます。ダイバーシティ推進を効果的な取り組みにするためにも、コミュニケーションを取る機会を設け、お互いの価値観や文化を理解し尊重しあうことが重要です。
従業員がお互いの考え方を理解しあうことで、意見を受け入れやすくなり、はたらきやすい労働環境を醸成できるでしょう。
職場環境の見直し | ・職場内のバリアフリー化 ・座席のフリーアドレス制導入 ・テレワークの導入 |
各種制度の見直し | ・フレックスタイム制度の導入 ・育休制度の拡充 ・育児・介護休業からの復職支援 ・時短勤務など、はたらき方の選択肢を増やす |
コミュニケーション機会の創出 | ・談話室の設置 ・社内レクリエーション活動の開催 ・1on1の導入 |
労働環境を整備しただけでは、ダイバーシティの推進はうまくいきません。短時間勤務や在宅勤務といった雇用形態を導入しても、公平な評価制度がなければ従業員の不満は溜まります。
実際に、パーソルプロセス&テクノロジー株式会社の調査によると、テレワーク環境下で自身への評価に不安を覚えている社員は全体の約4割に達していることが明らかになっています。
柔軟なはたらき方には多くのメリットもありますが、勤務状況が見えづらく、これまでの評価方法を踏襲するのが難しいといった課題もあらわれています。そのため、環境の変化にあわせた評価方法へと見直すことが必要です。
また、かつて多くの企業で採用されていた評価制度は、期間当たりの成果で評価する仕組みでした。この評価制度では、長い時間をかけてでも成果を大きくした人の評価が高くなり、短時間勤務の人の評価は低くなってしまいます。そのため、従来の評価制度は、ダイバーシティ推進を阻害する要因となります。
ダイバーシティを推進する企業は、時間当たりの生産性で評価する制度を導入しましょう。この制度では、1時間当たりでどれだけのパフォーマンスを発揮できたかが評価の基準になっています。そのため、短い時間で価値を出している人が評価されます。時間に捉われない評価をすることで公平な評価ができ、従業員の意欲も上がるでしょう。
ダイバーシティの推進と同時に、社内理解を得ることも重要です。多様な価値観を受け入れる準備ができていない状態でダイバーシティを推進した場合、これまでと異なる価値観に対して摩擦や対立が発生します。
ダイバーシティに対する理解度を上げるためには、先述したコミュニケーションを取る機会を増やすことに加え、異なる価値観を受け入れるための教育の実施が必要です。
従業員に対し「なぜ多様性が必要なのか」「どのような効果があるのか」「なにをすればいいのか」を伝えることで、多様性を受け入れる準備ができるでしょう。
特に教育が必要なのは管理職です。管理職がダイバーシティを理解していない場合、差別や誤解から部下へのハラスメントが発生する可能性も考えられます。また、育児休暇や介護休暇といった制度を整備しても、管理職が制度を受け入れていなければ、従業員は休暇を申請しにくくなります。
どんなに制度を整備しても、利用されなければ意味がありません。多様なはたらき方や価値観を理解してもらうことが、ダイバーシティ推進につながります。
ダイバーシティを推進するには、企業トップの取り組みや深層的なダイバーシティを重視することがポイントです。これらのポイントを押さえることで、スムーズにダイバーシティを推進できます。
企業としてダイバーシティを推進するためには、トップダウンとボトムアップの響き合いが大切です。うまくいかないケースとして、経営陣の合意がとれておらず、人事部主導で取り組んでいる場合が挙げられます。
その場合、企業の動きに対して決定権を持つ経営陣が本気ではないと、従業員のモチベーションは下がります。いくらダイバーシティを推進する活動をしても、評価されないと考えてしまうでしょう。それどころかダイバーシティに取り組むことで他業務の活動時間が削られ、却って社内評価を下げると考えてしまう可能性もあります。
経営陣がダイバーシティ推進に対して本気になり、それを社内外に発信することで、従業員に本気度が伝わるのです。従業員に本気度が伝われば、従業員は取り組む意味を見いだせ、企業としてダイバーシティを推進できるでしょう。
先述の通り、ダイバーシティには表面的なダイバーシティと深層的なダイバーシティの2種類があります。
ダイバーシティを推進する際は、キャリアや能力、価値観が異なる人材を登用する「深層的ダイバーシティ」を重視したほうが、パフォーマンス向上が見込めます。
というのも、たとえ国籍や性別、年齢が異なる人材を集めても、多様な人材を生かすための取り組みがなければ、ダイバーシティはマイナスの効果をもたらしてしまうからです。
内閣府の調査によると、多様性が増加しても、それを生かす取り組みをしなかった場合、逆に生産性が低下することが明らかになっています。
国籍や性別、年齢が異なる人材を集めてもダイバーシティが推進されるわけではないことを理解し、キャリアや能力、価値観が異なる人材をどのように生かすのかを検討することが重要です。
ダイバーシティ推進の取り組みは企業によって異なります。女性登用に注力しているケースや組織編成から取り組んでいるケース、業務プロセスの改善により労働環境を整備したケースなどさまざまです。ここでは、ダイバーシティ推進に取り組む企業事例について紹介します。
女性が従業員の約半数を占めているカルビーは、「女性の活躍なしにカルビーの成長はない」という信念のもと、女性の活躍推進を最優先課題と捉えていました。管理職の女性比率を従業員の女性比率と同等にすることを目指し、2024年3月期までの目標として、女性管理職比率を30%超にすることを掲げています。
対策として、選抜型研修やワークショップといった女性の活躍を支援する取り組みを実施し、はたらきやすさやはたらきがいのある職場環境の整備などに取り組んでいます。その結果として、2010年4月時点では5.9%に過ぎなかった女性管理職比率は、2022年4月時点では23.3%まで向上しました。
また、多様な人材が能力を発揮できるダイバーシティ経営を目指し、D&Iの専任部門を発足。本社部門のD&I・スマートワーク推進室と、事業体ごとの人事推進担当が連携しながらダイバーシティを推進してきました。
ほかにも、管理職を対象としたeラーニング導入や障害者雇用の促進、LGBTQに関する取り組みなど、多様な人材が活躍するための支援に取り組んでいます。その取り組みが評価され、経済産業省と東京証券取引所が共同で女性活躍推進に優れた企業を選出する「なでしこ銘柄」に選定されています。
中小企業専門の金融機関である商工組合中央金庫は、企業のトップが先導し、ダイバーシティ推進に対する施策を実施しています。
商工組合中央金庫では顧客企業の事業運営を通し、労働人口減少やコロナウイルス感染症、食料価格の高騰といった想定外の課題に対応することの難しさを感じていました。
そこで、顧客が抱える想定外の変化にともに対応できるパートナーとなるべく、「商工中金自身の企業変革」を戦略の一つとして捉えたのです。まずは、企業のトップが自ら支店長などへダイバーシティ推進を説明することで、本気度を伝えました。
また、ビジネスカジュアルの導入や、従業員を役職ではなく「〇〇さん」で呼ぶ「さん付け運動」といった施策を実施。多様な人材が自由に意見を発言できる組織風土の構築に成功しました。
さらに、従業員が能力を最大限に発揮できる制度や環境を整備するため、組織編成にも着手。人事部をなくし「D&I推進部」と「キャリアサポート部」を発足しました。
商工組合中央金庫は、トップが本気度を示すことと、新たな組織編成により、ダイバーシティ推進に成功した事例です。
エーザイは、シェアオフィスやワーケーションといった制度を導入し、就労場所の選択肢を増やしています。並行して従業員の意識改革にも取り組むことで、ダイバーシティを推進しています。
全従業員を対象にしたアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に関する研修や、管理職対象の育児支援制度や育児、介護に対する配慮に関する研修を継続的に実施。社内の意識改革により、育児休暇を取得しやすい職場風土を実現しています。また、休職中の従業員に対し、保育園の情報提供や自己啓発の支援を実施し、スムーズな復職の支援に成功しています。
エーザイは、従業員の理解度向上により労働環境を整備し、ダイバーシティ推進に成功した事例です。
エーピーシィは、総従業員のうち、女性は78%、外国人は44%(外国人女性含む)という多様な人材を抱えている企業です。
しかし、多様な人材を抱えてはいるものの、その多くは経験の浅い従業員です。熟練工が不足しているため、生産管理や品質管理の不備により、重大クレームが発生することも少なくありませんでした。
そこで生産工程を見直し、休みやすい環境を実現するとともに、多様な人材が活躍できるよう、段階的な育成計画を立案。スキルアップを図る仕組みを作ったことにより、はたらきやすさとはたらきがいのある労働環境を構築しました。
また、2011年の東日本大震災後の影響により離職が相次いだものの、家庭を持つ女性パートタイマー達の多くは残留しました。それを機に、人材戦略を経営計画の中心に位置付け、女性社員の登用に注力したのです。
ターゲットを明確にした採用活動の実施により、人材確保が容易になるとともに、従業員の定着率も向上。その結果として、品質と収益の向上につながっています。
社会的な評価も向上し、2017年には「あいち女性輝きカンパニー」、2019年には「愛知県ファミリー・フレンドリー企業」の認証を受けました。エーピーシィは、計画的な業務プロセス改善により、ダイバーシティ推進に成功した事例と言えるでしょう。
CARTA HOLDINGSは、女性特有の健康課題に対する支援に取り組むことで、女性のキャリア推進を支援しています。活動の一つとして「オンライン診療を活用した低用量ピル服薬の福利厚生制度」を導入しました。
この制度は、生理痛や月経前症候群(PMS)に悩む従業員を対象に、オンライン診療を活用した婦人科受診と低用量ピル服薬の支援をするものです。
この制度の導入により、女性特有の悩みを持つ従業員達のライフプランやキャリアプランの実現に貢献しています。それにより、女性の活躍を提唱する会社としての説得力が上がりました。
また、女性特有の月経随伴症状による労働損失は、4,911億円にもなることが試算されています。女性の健康課題に対応し、女性がはたらきやすい社会環境の整備を進めることが、生産性向上や企業業績向上に結びつくとも考えられます。
ダイバーシティ推進のためには、キャリアや能力、価値観の異なる人材を確保することが求められます。とはいえ、人材不足が深刻化するなか、多様な人材をどのように確保すれば良いか、多くの企業が思案しているのではないでしょうか。
人材確保の方法としては「採用」「育成」「外部人材の活用」の3パターンが考えられます。
採用において優秀な人材を競合他社に奪われないようにするためには、自社の採用ターゲットを明確化し、攻めの姿勢でターゲットへ自社の魅力をアピールしていくことが重要になります。
また、自社内での育成を進める場合は、座学でスキルやマインドセットを学び、学んだことをOJTで実践して実行力を身につけることが効果的です。学びと実務を両輪で進める取り組みが、多様な人材確保に寄与するでしょう。
採用や育成だけでは人材確保が難しい場合は、外部人材の活用も視野に入れましょう。優れたキャリアや能力を持つ人材を、必要な期間だけスポットで活用することで、社内にも良い刺激が生まれるでしょう。
このように、人材を集める方法にはさまざまな手段があります。自社に最適な手段を考え、ダイバーシティ推進の計画に組み込んでいきましょう。
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ダイバーシティ推進への取り組みは多くの企業で活発になっていますが、まだ取り組まれていない企業も多いのではないでしょうか。
・これからダイバーシティを社内で推進していきたい
・他社のダイバーシティへの取り組みを知りたい
そのような方に向けて、女性活躍推進、キャリア採用等についての調査結果をまとめた「ダイバーシティ&インクルージョン調査レポート」を無料で公開しています。
これからダイバーシティを推進していきたい方、情報収集したい方はぜひご活用ください。
ダイバーシティとは、多様性を意味する用語で、多様な人材を登用し、受容できる体制づくりを指しています。企業としてパフォーマンス向上を目指すためには、キャリアや価値観が異なる人材を登用する「深層的なダイバーシティ」を推進したほうが効果的です。
またダイバーシティの推進は、企業にとってビジネスチャンス拡大や人材確保、社会的信用の向上といった効果をもたらします。多様性を受け入れる仕組みを作り、深層的なダイバーシティを推進しましょう。
株式会社パーソル総合研究所
ラーニング事業本部 人材開発支援部 組織開発支援G マネージャー
深堀 雅史
スポーツ施設運営会社にて部下を持つ施設運営責任者や、コンサルティング会社にてコーチングを活用した組織開発プログラム等に従事する。2018年パーソル総合研究所へ入社。企業の人事制度改定や育成体系構築のコンサルティングに従事する傍ら、自身の経験をふまえたリーダーシップ研修や評価者研修の企画・設計にも携わる。