2021年04月21日
2025年05月14日
テクノロジーの発展やグローバル化が進む昨今において、ダイバーシティ(多様性)という言葉が盛んに使用されています。そうした多様性を重んじる傾向にある社会において「インクルージョン」という言葉も同様によく見聞きするようになりました。
インクルージョンとは、多様な人々のそれぞれの特性が十分に活かされて企業活動が行われている状態を指し、ダイバーシティとセット(Diversity & Inclusion/D&I)で企業経営のキーワードに挙げられます。では具体的にダイバーシティとは何が異なるのでしょうか。
本記事では、ダイバーシティ&インクルージョンの実現によるメリットを実践事例とともに紹介します。
DE&I実践ガイド ~推進の理由、メリット、進め方を一冊に~
DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進は、単なる「取り組み」ではなく、組織の競争力に直結する重要な戦略です。
パーソルグループでは、企業がDE&Iを推進する理由や得られるメリット、実際に進める際のステップについてまとめたガイドブックを公開しています。
「なぜ今DE&Iなのか?」を社内で伝えたい方にもおすすめです。DE&I推進ご担当の方はぜひご活用ください。
目次
「インクルージョン(inclusion)」は、日本語では「包括」「含有」「一体性」などと訳されます。ビジネスシーンにおける「インクルージョン」は、多様な人々がそれぞれの個性を尊重されつつ、その特性を活かしつつ社会・組織の一員として属している状態を指します。
語源は、1970年代フランスの社会的経済格差に由来します。当時のフランスでは、社会的排除(ソーシャル・エクスクルージョン)という言葉が使われていました。 その後、社会的に排除されたあらゆる人たちが孤立したり、枠からはみ出たりしないよう、社会の中で支援する「社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)」という反対の概念が生まれたことが経緯です。
日本では2000年に厚生労働省より発表された「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会報告書」にて「ソーシャル・インクルージョン」に関する内容が盛り込まれています。教育の分野でも「インクルーシブ教育」として取り組みが進み、近年ではビジネスシーンにおいては多様性とセットで考えた「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」として広まっています。
【お役立ち資料】DE&I推進実践ガイド
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インクルージョンを語る上では、「ダイバーシティ」と「エクイティ」2つの言葉についても理解が必要です。企業間で広まっている「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)」についてもあわせて解説します。
「ダイバーシティ(diversity)」は、直訳すると「多様性」「相違」「種々」などと表されます。個人または集団間の「さまざまな違い」を示す意味合いが強い言葉です。ビジネスシーンにおけるダイバーシティとは「様々な個性や背景を持つ人材が集まる組織」のことを指します。一方で、企業がダイバーシティを推進するためには、単に国籍や性別、年齢が異なる人材を集めるだけでは組織マネジメントとして成功しません。
多様性を受け入れた上で、個々の特性を活かした企業活動を行うためには「インクルージョン」の概念が重要になります。排除することなく、個人の力を最大限に活かす「インクルージョン」の考え方を加えることによって、多様性を組織内で受け入れ、活用していく「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」が生まれます。
企業においては多様性を認めるダイバーシティはもちろん、多様な個性を孤立させることなく組織への還元を目指すインクルージョンの実現が必要です。
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「D&I」から一歩進んだ考え方として、「公平性」「公正性」という意味の「エクイティ(equity)」を加えた「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)」という概念も広まっています。
「エクイティ」とは、個人のスタート地点の違いに着目し、一人ひとりがパフォーマンスを発揮できるようにそれぞれに合わせた支援です。はたらく人に公平な支援を行うことで、多様性(ダイバーシティ)と包括性(インクルージョン)を含んだ企業活動を推進できます。
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多様な個性を重んじて、その価値発揮を組織として支援するインクルージョンを推進することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的には以下の4つが挙げられます。
多様性を受け入れ、個々の特性を発揮できる適材適所のポジションに人材を配置することで、従業員の不満や不安の軽減につながります。それぞれの業務に対して迷うことが少なくなることで離職率が低下することに加え、従業員満足度が上がることで定着率の向上も期待できます。
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多様な人材の個性に着目し、活躍できる環境づくりを目指すことで、一人ひとりの生産性向上につながります。個々のパフォーマンスの向上に伴い、組織全体の生産性向上の達成も期待できます。個性が認められ、受け入れられていることを従業員が実感できれば、モチベーションも向上するはずです。
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インクルージョンを推進し、多様性が認められている企業であることは、顧客や社会からも高く評価される傾向にあり、企業イメージの向上にもつながります。社会的に高く評価されている企業に所属していることで従業員の責任感や帰属意識が高まり、エンゲージメント向上にも寄与します。さらに、求職者にとってもプラスに影響するため、優秀な人材の獲得にもつながるでしょう。
異なる分野の知識、経験、価値観を持つ人材が意見を出し合うことで、画一的な組織よりも新しい発想が生まれやすくなり、イノベーションの創出につながります。変化が多い不確実な時代においては、個性を活かした戦略を遂行することで業績向上や競争力強化が期待できます。
多様性や社会的包摂を重んじることは、現代のビジネスシーンで発展を遂げる上で重要な考え方です。では、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を推進するために、どんな取り組みが行われているのでしょうか。具体的な施策を紹介します。
イベントを実施することで、参加者が有用な情報を得られる点がメリットです。また、社員同士の交流が促進され、新たなコミュニティが生まれるという効果もあります。
いずれも参加者自身の気づきや学びにつながるとともに、多様性を尊重し視野を広く持つ精神を育む機会になります。管理職を対象としたマネジメント研修は、社内の行動変容を加速させる点でも意義ある取り組みです。
テレワークの導入や副業・兼業の解禁により、多様なはたらき方やライフスタイルを受容する体制を整える企業も増加中です。ダイバーシティ&インクルージョンの施策が企業全体にプラスの効果が波及したという事例も出ています。
例えば、体格や体力を問わず作業ができる環境を整えたことで、作業工程内の重労働の割合が軽減。社員の労働状況が改善した事例があります。また、経験豊富なシニアや海外人材の雇用が、固定化されていた制度や無駄な慣習の改善・撤廃、社内の活性化につながることも期待できます。
一人ひとりの経験やキャリアを尊重した人員配置を行うことで、従業員のモチベーションはもちろん、事業にもプラスの効果が期待できるでしょう。それぞれの能力や適性を発揮しやすい環境を整備することは非常に重要です。
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ダイバーシティ&インクルージョン推進の具体的な施策を踏まえ、実行フェーズに移す際には押さえておくべきポイントがあります。特に経営陣がダイバーシティ&インクルージョン推進の意義を正しく理解することが大切であり、全社としての共通認識を持てる環境を醸成することが求められます。
ダイバーシティ&インクルージョンの推進においては、経営トップが改革意識を持って推進体制を構築することが不可欠です。KPI・ロードマップを策定することにより、社内での推進状況について認知することを心がけましょう。
また、そうした取り組みについて対外的にも発信を行うことで、企業イメージの向上にもつながります。求職者の目にも留まりやすくなるほか、投資家に向けた企業価値向上の内容・成果を発信することで、ダイバーシティ&インクルージョン施策の効果をより感じられるはずです。
ダイバーシティ&インクルージョン施策を推進するうえで、「女性管理職比率〇〇%達成」や「外国人雇用比率〇〇%以上」などと定量的な数値目標を策定することもあるでしょう。しかし、数値目標の達成に主眼を置き、多様な人材を求めるだけではダイバーシティ&インクルージョンの効果を得られません。
ダイバーシティ&インクルージョン推進の真の目的は、多様な人材を受け入れ、全ての従業員が働きやすい環境を構築することです。したがって、人材を受け入れるにあたり個々の特性が十分に活かされる環境を整えるという定性的な目標が重要であり、定量的な数値だけを追い求めることは避けましょう。
ダイバーシティ&インクルージョン推進に取り組む企業の事例について紹介します。
カルビーでは、全員活躍(性別のみならず国籍、年齢、障がいの有無や、個々の価値観、ライフスタイルなどの垣根を越えた多様な人財が活躍する企業)を目指しており、これによって従業員と組織の力が最大化し、会社が成長するための原動力になると考えています。特に従業員の約半数を占める女性の活躍なしにカルビーの成長はないという信念のもと、女性活躍推進を最優先課題に設定しました。
女性リーダー候補の選抜型研修やワークショップの実施、はたらきやすさやはたらきがいのある職場環境の整備などに取り組みました。その結果、2010年4月時点では5.9%であった女性管理職比率が、2022年4月時点では23.3%まで向上しています。
中小企業専門の金融機関である商工組合中央金庫は、トップ自らが ダイバーシティ&インクルージョン推進を従業員に説明し、組織全体への浸透を図った点が特徴です。多様な人材が自由に発言できる風土を醸成するため、ビジネスカジュアルの導入や、従業員を役職ではなく「〇〇さん」で呼ぶ「さん付け運動」などの施策を実施しています。
さらに、一人ひとりが能力を最大限に発揮できる制度や環境を整備すべく、従業員のキャリア開発をサポートする「キャリアサポート部」や「D&I推進部」を設置するなど本部組織の見直しも行いました。
インクルージョンの推進は、社員一人ひとりが能力を発揮し、活き活きとはたらいてもらえる環境を構築することが目的です。今後企業が競争力を強化するためには、ダイバーシティとインクルージョンをセットで進めることが求められます。
外部環境がめまぐるしく変化し、はたらく個人の価値観も多様化している昨今、自社に適した施策を検討し、インクルージョンを実現しましょう。
DE&I実践ガイド ~推進の理由、メリット、進め方を一冊に~
DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進は、単なる「取り組み」ではなく、組織の競争力に直結する重要な戦略です。
パーソルグループでは、企業がDE&Iを推進する理由や得られるメリット、実際に進める際のステップについてまとめたガイドブックを公開しています。
「なぜ今DE&Iなのか?」を社内で伝えたい方にもおすすめです。DE&I推進ご担当の方はぜひご活用ください。
A.インクルージョンはダイバーシティと組み合わせて推進されることが多くあります。具体的には、以下の取り組みが挙げられます。
ダイバーシティ&インクルージョンの施策の取り組み実態についてまとめたガイドブックは、以下リンクよりどなたでも無料でダウンロードいただけます。
>>02.ダイバーシティ&インクルージョン編【人的資本経営調査レポート】
A.インクルージョンとは、多様な人々の個々の特性が十分に活かされて企業活動が行われている状態を指し、ダイバーシティとセットで企業経営のキーワードに挙げられます。
>>インクルージョンとは?
A.企業がインクルージョンを導入することで、以下の4つのメリットが得られます。