2025年03月24日
2026年02月09日
近年、多くの企業が「離職防止」に取り組んでいます。従業員の離職が続くと、採用・教育コストの増加や業務負担の偏りなど、企業にとって大きな課題となります。特に人手不足が深刻化する中で、優秀な人材の流出を防ぎ、はたらき続けたいと思える職場環境を整えることは重要です。
本記事では、離職防止の要因や離職が増えるリスク、企業が取るべき対策について解説します。
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従業員の離職が続くと、採用・育成コストの損失のみならず、組織力の低下にもつながりかねません。しかし、離職の背景にはさまざまな要因があるため、一つの施策だけで解決しようとせず、複合的なアプローチを行うことが重要です。
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離職防止とは、従業員の離職を防ぐための取り組みです。職場環境の改善や定期的な面談、従業員間のコミュニケーションを促進することなどが含まれます。「リテンション」「リテンションマネジメント」とも呼ばれています。
離職の原因は一つではなく、さまざまな要素が絡んでいます。そのため、離職を防止するためにはいくつかの対策を組み合わせて実施することが大切です。全従業員に適用される制度を整えるだけではなく、従業員一人ひとりのニーズに合わせた柔軟な対応も求められます。人手不足が深刻化する中、従業員に自社で長く活躍してもらえるよう、離職防止に取り組むことがますます重要になってきています。
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厚生労働省の「雇用動向調査」によると、2023年の離職率は15.4%です。コロナ禍の2020年と2021年は一時的に離職率が低い水準であったものの、平均15%前後で推移しています。
特に、若年層や中小企業における離職率が高い傾向にあり、2021年3月に大学を卒業した新卒就職者のうち、3年以内に離職した人は34.9%で、直近15年の中で最も高くなりました。業界別に見ると、宿泊業・飲食サービス業や生活関連サービス業・娯楽業などのサービス業で離職率が高い傾向にあります。

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従業員の離職が増えると、企業にはさまざまなリスクが生じます。ここからは、離職が企業に与える影響について解説します。
従業員の離職が増えると、優秀な人材が流出してしまう恐れがあります。特に、長年培ってきたスキルや知識、経験を持つ従業員が退職すると、業務の効率が低下したり、顧客との関係が損なわれたりする可能性が高くなります。最近では人材の流動性が高まっており、優秀な人材はより良い条件を求めて転職する傾向が強いため、企業はこれを防ぐための施策が必要です。
離職が発生すると、その業務を既存の従業員が引き継ぐことになり、負担が増加します。パーソル総合研究所の調査によると、欠員が出た場合に77%の組織で人員の補充がされておらず、後任や上司の残業時間が増えていることが明らかになっています。さらに、欠員発生後、「他にも退職する人がいそうだ」と感じている割合が40%と職場全体の不安感が高まっていることがうかがえます。
このように、残業や休日出勤が増えて過労やストレスの原因となり、モチベーション低下を引き起こします。これがさらなる離職を生むという悪循環に陥る可能性もあります。
従業員が離職すると、新たな人の採用や教育にコストがかかります。採用にあたっては求人広告の掲載費用や面接の工数、育成にあたっては研修や教育にリソースが必要です。離職が繰り返されることで、これらのコストが増え、企業にとって大きな負担となります。
離職の兆候は、日々の行動や態度にあらわれることがあります。
たとえば、これまで積極的だった社員のモチベーションが明らかに低下している場合は注意が必要です。また、同僚や上司とのコミュニケーションが減り、会話や相談の機会が少なくなると、職場への帰属意識が薄れている可能性があります。さらに、定時ぴったりで帰ることが増えたり、これまでと比べて仕事を早めに切り上げるようなはたらき方の変化も、離職のサインと考えられます。
こうした変化に早期に気づき、個別の状況を丁寧に把握することが、離職防止の第一歩となります。
従業員の離職にはさまざまな要因が考えられます。パーソル総合研究所の調査によると、転職者の約8割が「会社への不満」を要因に転職していることがわかっています。
ここでは、代表的な要因について解説します。
長時間労働や休日出勤の多さ、柔軟なはたらき方ができないといった労働条件に対する不満や、給与や賞与、昇給制度、福利厚生といった待遇に対する不満は、離職に至る大きな要因です。
具体的には以下のような不満を抱えていることが想定されます。
社内の雰囲気が悪い、はたらきにくいと感じることも離職の要因です。
例えば「上司や同僚に意見を言いにくい」「自分の意見が尊重されていない」などと感じている場合は、不満が蓄積し、離職を検討する可能性があります。加えて、上司や同僚とのコミュニケーションが不足している場合やパワハラやセクハラなどのハラスメントが発生している場合、精神的な苦痛が原因で離職に至ることもあります。

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上司や同僚との人間関係がうまくいかないことも、離職の要因です。
例えば、上司の指示が曖昧だったり、理不尽な要求が多かったりすると、大きなストレスを感じ、離職につながることがあります。また、同僚との協力体制が築けない場合や疎外感を感じることも、仕事へのモチベーション低下を招き、離職につながるでしょう。
仕事内容に対する不満も、離職を招く要因の一つです。単調な作業やルーティンワークが続くと、やりがいを感じられず、モチベーションが低下します。また、自分のスキルや経験を生かせない仕事ばかりだと不満を感じ、離職を検討するでしょう。
将来のキャリアパスが見えず、キャリアアップの機会がないと感じることも、離職の要因となります。
例えば、昇進の機会が少なく基準が曖昧だと、将来に対する不安が高まり、離職を検討する可能性があります。また、上司や人事にキャリアプランを相談できる機会がない場合や、相談しても十分なサポートが得られないと感じると、不安が募り、離職につながるかもしれません。
従業員の離職を防ぎ、定着率を高めるためには、企業が積極的に対策を講じることが重要です。ここでは、具体的な施策をご紹介します。
前述の通り、労働条件や職場環境は、従業員のモチベーションや離職率に大きく影響します。労働条件・職場環境の見直しについて、以下が具体的な施策です。
社内コミュニケーションを活性化することで、従業員同士の相互理解を深め、良好な人間関係を築けます。以下が具体的な施策です。
退職する従業員には必ず退職理由のヒアリングをし、離職原因を特定します。退職理由を分析することで、今後の離職防止対策にも生かせます。ヒアリングは、本音を引き出せるよう、一通りの退職手続きを終えた後に実施することが推奨されます。形式は面談やアンケートが一般的です。
従業員が長くはたらき続けるためには、自身の将来像を具体的に描けることが重要です。キャリアの方向性が不透明なままだと、モチベーションの低下や早期離職につながりかねません。
そのため、定期的なキャリア面談や目標設定のサポートを通じて、一人ひとりのキャリア志向に応じた成長機会を提供することが効果的です。ジョブローテーションや社内公募制度などを活用し、将来の選択肢を可視化することも有効です。
キャリア支援を通じて「ここで成長できる」と感じてもらうことが、離職防止の第一歩になります。
従業員の成長意欲を引き出し、定着につなげるには、目的に応じた研修制度の整備が不可欠です。職種別・階層別のスキル研修はもちろん、将来のキャリアを見据えた自己啓発支援やeラーニングなど、選択肢の幅を広げることで多様なニーズに応えられます。
あわせて重要なのが、上司層へのマネジメント研修です。部下との信頼関係構築や、1on1、フィードバックの質を高めるスキルを育てることで、日常の関わりの中で離職を防ぐ力が高まります。個人と組織の成長を支える研修を実務と連動させ、成果に結びつける仕組みが求められます。

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従業員の満足度を高めるために、従業員にアンケートやヒアリングを行い、福利厚生のニーズを確認した上で福利厚生を導入すると良いでしょう。以下のような福利厚生が挙げられます。
採用段階で企業と求職者のミスマッチを減らすことで、入社後の早期離職を防げます。採用時に以下の点に注意しましょう。
また、面接では求職者のスキルや経験だけではなく、価値観やはたらく上で重視していることをヒアリングし、自社の雰囲気に合うかどうかも確認しましょう。
新しく入社した従業員が早期に活躍し、組織に定着するためには、オンボーディングの仕組みが非常に重要です。初期の不安や戸惑いを放置すると、孤立感やミスマッチを感じやすくなり、早期離職のリスクが高まります。
配属後にメンターや育成担当をつける、定期的なフォロー面談を実施する、チームで歓迎・支援する文化を醸成するなど、受け入れ体制を整えることがカギです。また、入社1ヶ月後・3ヶ月後といった節目での振り返りや成長支援も効果的です。オンボーディングの質を高めることは、離職防止の土台づくりにつながります。
【関連記事】オンボーディングとは?具体的な施策や事例、ポイントを解説
離職防止のために、従業員の状態を把握できるツールを導入するのも効果的です。以下のようなツールが挙げられます。
最後に、離職率を改善した企業の事例を紹介します。企業により抱えている課題や離職率改善のためのアプローチは異なるため、事例の中から自社の課題に近しい企業の改善方法を参考に、離職防止の施策を検討してみてください。
ソフトウェアの開発・販売を手掛けるサイボウズ株式会社は、離職率を28%から4%へ大幅に改善しました。同社の離職率改善施策は、従業員のニーズに合わせた柔軟な制度の導入と、従業員が人事制度に参画できる環境作りがポイントです。
同社が進めた施策は主に以下の2点です。
2018年に導入された「新・働き方宣言制度」は、従業員が自身に合ったはたらき方を提案し、上司の許可を得れば実現できる制度です。例えば、平日はフルタイム勤務、特定の曜日・時間はテレワーク、出社時は時短勤務といったことが可能です。
はたらき方の選択肢を広げたことで、従業員のモチベーションが向上し、離職率の低下につながったと考えられます。
練り製品や総菜の製造販売を行うカネテツデリカフーズ株式会社は、設立当初は新入社員の離職率が高かったため、約半年間にわたり指導員がスキルとメンタル両面を支援する「新入社員指導員訓練制度」を導入しました。また、育児のための短時間勤務制度の対象を小学校3年生までとし、有給休暇を最大70日まで積み立てて病気療養や介護に活用できる独自の支援制度を制定するなど、従業員がはたらきやすい制度を整備しています。その結果、離職率は10%以下まで低下しました。
また、「性別に関係なく育児休業を取得する」「産後は職場復帰する」という考え方が定着しつつあります。時代の変化や従業員の声に柔軟に対応し、よりはたらきがいのある環境を目指しているのが特徴です。
熱技術を活用した製品の製造・販売を担う株式会社河合電器製作所は、2008年から2020年までの入社3年以内の離職率ゼロを実現しました。
その要因として、以下の取り組みが挙げられます。
これらの施策により、従業員がさまざまな価値観に触れる機会が増え、互いの感情を共有しやすくなり、安心して自分らしくはたらける職場が実現したと考えられます。また、若手からは「手を挙げればチャレンジさせてもらえる」「発言がしやすい」といった声が聞かれており、活気のある職場になっています。
半導体の製造販売や電子応用機器の開発を手掛けるコーデンシTK株式会社は、介護奨励金を活用した取り組みにより、従業員の離職率を改善しました。
同社は以前より仕事と育児の両立支援を進めていましたが、仕事と介護の両立支援については十分に対応できていませんでした。そこで、2015年東京都の介護奨励金(助成金)の募集をきっかけに、制度の見直しや研修を実施しました。当時、介護休業・休暇に関する就業規則は法定通りとなっていたものの、社内アンケートでは、「将来の介護に不安がある」と回答した従業員が半数近くに上りました。
そこで、不安解消のために社内に相談窓口を設置しました。また、研修を通じて、社内の制度を活用すれば介護をしながらでも工夫次第で仕事を継続できることや、相談窓口が社内外にあることを周知しました。
これにより、従業員の介護への理解が進み、介護を担う従業員へのフォロー体制が整いました。介護休業に入る際には、周囲の従業員と業務を分担したり、業務の引き継ぎをスムーズに行ったりすることができるようになっています。その結果、介護を理由とした離職を防ぐことができ、従業員全体の「仕事と介護との両立」に対する意識も高まりました。
株式会社サイバーエージェントは、2000年頃に約30%だった離職率を、2024年9月時点で約9.8%まで改善しました。
同社が特に重視したのは採用です。2000年当時は、20代後半で業界未経験の人材を幹部候補として中途採用していました。しかし、入社1~2年目の若手からの不満が募り、結果として上司か部下のどちらかが退職するケースが見られていました。そこで、業績が好調で雰囲気の良いチームを分析した結果、「素直で良い人」が共通の要素であることが分かり、これをキーワードに採用方針を見直したことで、離職率の改善につなげました。
現在は従業員が安心してはたらける環境を整えるため、以下の制度・施策を導入しています。
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離職が多い組織に所属している方は、ぜひ一度ご覧ください。
離職を防ぐためには、労働条件の見直しや職場環境の改善、キャリアパスの明確化など、従業員のニーズに応じた柔軟な対応が求められます。離職の背景にはさまざまな要因があるため、一つの施策だけで解決しようとせず、複合的なアプローチを行うことが重要です。従業員が安心して長くはたらける環境を整えることで、企業の成長につながるでしょう。