2025年02月13日
職場におけるセクシュアルハラスメント(セクハラ)は、被害者の尊厳を傷つけ、就業意欲を低下させるだけでなく、企業の生産性や社会的信頼にも大きな影響を与える重大な問題です。
本記事では、セクハラの定義や特徴、法的な位置づけ、企業に求められる防止策と対応策について詳しく解説します。
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コンプライアンス違反の中でも事例が多く、特に気を付けたいのが「ハラスメント」。セクハラをはじめとする職場のハラスメント問題は、企業の信頼を大きく損なう重大なリスクです。「知らなかった」「つい見逃していた」が企業リスクに直結する今、企業にはハラスメントの早期発見と予防に向けた仕組みづくりが求められています。
本資料では、「コンプライアンス違反」と「ハラスメント」に焦点を当て、企業が直面しがちな課題と予防法を、専門家監修のもとでわかりやすく解説しています。
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セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、「職場」において行われる、「労働者」の意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、「性的な言動」により就業環境が害されることです。
法的には、男女雇用機会均等法において、職場での性的な言動により就業環境が害されることといった内容で定義されています。
<男女雇用機会均等法第11条(抄)>
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。【出典】厚生労働省「男女雇用機会均等法のあらまし」
言葉や視覚、身体的接触などによる性的な嫌がらせが含まれます。
セクハラは1980年代後半から社会問題として認識されるようになりました。女性の社会進出が進む中で、職場における男女の力関係の不均衡から生じる問題として注目されるようになったのです。
しかし、被害を訴えにくい雰囲気や、加害者の意図が考慮されがちなことから、長らく表面化しにくい問題でしたが、2020年6月の男女雇用機会均等法改正により、ようやく職場でのセクハラ対策が強化され、事業主の管理義務が明確化されました。
セクハラには主に2つの種類があります。ひとつは対価型で、性的言動の拒否により降格や解雇などの不利益を与えるものです。もうひとつは環境型で、性的言動により就業意欲の低下など就業環境に支障が生じるものを指します。
セクハラは上司から部下へのケースが多いですが、同僚間や取引先、顧客からのセクハラもあります。被害は女性に多いものの、男性の被害も一定数報告されています。
セクハラは被害者の心身に大きな影響を与えます。ストレスや不安、うつ病などのメンタルヘルス不調を引き起こし、就業意欲の低下や離職にもつながります。職場の生産性低下や企業イメージの悪化など、組織にとっても大きな損失となるのです。
また、セクハラは人権侵害であり、職場の多様性を阻害する重大な問題です。企業は適切な防止策と対応策を講じ、誰もが安心してはたらける環境づくりに努める必要があります。
セクハラは世界共通の問題であり、各国で様々な取り組みが行われています。米国では、1980年代から積極的なセクハラ対策が進められ、連邦法や州法による規制が設けられました。また、EUでは、2006年に「雇用及び職業における男女均等待遇原則実施指令」が採択され、加盟国に対してセクハラ防止の法整備を義務付けています。
近年では、「#MeToo運動※1」が世界的に広がり、セクハラ問題に対する社会的関心が高まっています。日本企業も、グローバルな視点からセクハラ対策を進めていくことが求められているといえます。
※1 これまで沈黙してきた被害者がセクハラや性的暴力の経験を告白・共有し、声を上げる運動

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セクハラには、言葉や視覚、身体的接触など、様々なものがセクハラに該当します。ここでは、セクハラの主な種類と具体例を解説します。
言葉によるセクハラは、性的な内容の発言や質問、冗談などが該当します。例えば、容姿や体型についての不適切なコメント、性的な噂の流布、性的な関係を強要する発言などが挙げられます。
また、個人的な性的体験を尋ねたり、性的な言葉を使って相手を不快にさせたりすることも言葉によるセクハラに含まれます。こうした発言は、相手の尊厳を傷つけ、就業環境を悪化させる可能性があります。
視覚的なセクハラは、ポルノ画像やビデオの閲覧、性的な内容のメールやSNSでのメッセージの送信などが該当します。性的な画像を見せつける、卑猥な写真を送りつける、性的な内容の動画を共有するなどの行為は、相手に不快感を与え、威圧的な環境を生み出します。
また、必要以上に相手の身体を凝視したり、性的な意図を持ってジェスチャーをしたりすることも視覚的なセクハラに含まれます。これらの行為は、相手の尊厳を損ない、就業意欲を低下させる要因となります。
身体的なセクハラは、相手の意思に反した身体的接触が該当します。不必要な触れ方、キス、抱擁、性的な部位への接触などが具体例として挙げられます。これらの行為は、相手の身体的・精神的な安全を脅かし、就業環境を悪化させます。
また、性的な行為を強要したりすることも身体的なセクハラに含まれます。こうした行為は、相手の人格を無視し、尊厳を傷つける重大な問題です。
近年、テレワークの普及に伴い、オンライン上でのセクハラが増加しています。具体的には、ビデオ会議中の不適切な言動、性的な内容のメッセージの送信、SNS上での性的な投稿や画像の共有などが挙げられます。
オンライン上でのセクハラは、物理的な距離があるため、加害者が行為の重大性を認識しにくい傾向があります。しかし、被害者にとっては、実際の職場と同様に深刻な問題であり、精神的な苦痛となります。企業は、オンライン上でのコミュニケーションにおいても、セクハラ防止のための対策を講じる必要があります。

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セクハラは、職場における重大な人権侵害であり、法的規制の対象となっています。ここでは、セクハラに関連する主要な法律と判例について見ていきましょう。
男女雇用機会均等法は、職場におけるセクハラの防止と対策に関する主要な法律です。同法では、事業主に対してセクハラ防止のための措置を講じることを義務付けています。
具体的には、事業主は職場におけるセクハラを防止するため、方針の明確化や啓発活動、相談体制の整備など必要な措置を講じなければなりません。また、セクハラが発生した場合には、迅速な事実確認と被害者保護、再発防止策の実施が求められます。
セクハラの法的判定には、主に以下の3つの基準が用いられます。
これらの基準を満たす行為は、加害者の意図にかかわらず、被害者が傷つけられた場合にセクハラと判断されます。また、セクハラは性別にかかわらず、すべての労働者を対象とした人権問題として捉えられています。
民法上、セクハラは不法行為(民法第709条)に該当し、加害者は被害者に対して損害賠償責任を負います。また、使用者責任(民法第715条第1項)の規定により、事業主は従業員によるセクハラについて、一定の条件の下で損害賠償責任を負う場合があります。
したがって、事業主はセクハラ防止のための適切な措置を講じるとともに、発生時には迅速かつ適切な対応を取ることが求められます。
セクハラ行為は、状況によって刑法上の犯罪に該当する可能性があります。例えば、強制わいせつ罪(刑法第176条)、名誉棄損罪(刑法第230条)などが適用される場合があります。
刑事責任が問われる場合、加害者は懲役刑や罰金刑などの処罰を受けることになります。セクハラが犯罪として扱われるか否かは、行為の態様や被害の程度などを総合的に判断して決定されます。

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セクハラは職場環境を悪化させるだけでなく、企業の信頼を失墜させる重大な問題です。セクハラを防止し、安全で快適な職場環境を維持するために、企業は積極的な取り組みを行う必要があります。
企業はまず、セクハラ防止に関する明確な方針を策定し、全従業員に周知する必要があります。この方針には、セクハラの定義、禁止事項、違反した場合の処分などを具体的に記載します。
また、ポスターの掲示やパンフレットの配布、社内報での特集記事の掲載などを通じて、セクハラ防止に関する啓発活動を継続的に行うことが重要です。これにより、従業員のセクハラに対する意識を高め、未然防止につなげることができます。
セクハラ被害を受けた従業員が安心して相談できる窓口を設置することは、セクハラ防止対策の中核となります。相談窓口は、社内外の専門家を配置し、プライバシーを厳守できる体制を整える必要があります。
また、相談窓口の存在を全従業員に周知し、利用しやすい環境を整えることが大切です。相談者の心情に配慮しつつ、迅速かつ適切な対応ができるよう、担当者の教育・研修も欠かせません。
セクハラ防止には、管理職を含む全従業員への教育が不可欠です。セクハラの定義や判断基準、相談窓口の利用方法などについて、具体的な事例を交えながら分かりやすく説明する研修を定期的に実施します。特に管理職には、部下からの相談に適切に対応できるよう、より実践的な研修を行うことが重要です。e-ラーニングなども活用し、全従業員が確実に理解できる教育体制を整えましょう。
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万が一セクハラが発生した場合に備え、対応手順をあらかじめ確立しておく必要があります。被害者の安全確保を最優先とし、プライバシーに十分配慮しながら、事実関係を迅速に調査します。
職場でセクハラが発生した際には、迅速かつ適切な対応が求められます。被害者の立場に立った支援と、加害者に対する厳正な措置が不可欠です。
セクハラ事案が発生した際には、速やかに事実関係の調査を行います。公平かつ中立的な立場で、被害者と加害者双方から詳細な聞き取りを実施し、客観的な証拠の収集に努めます。
調査の過程では、プライバシーの保護に細心の注意を払い、関係者以外への情報漏洩を防止します。事実関係が確認された場合は、適切な処分と再発防止策を講じます。
セクハラ被害者は深刻な精神的ダメージを受けている可能性が高いため、まずは被害者の心身の状態を確認し、安全を確保することが重要です。被害者のプライバシーを守りつつ、話を傾聴し、必要に応じて専門家によるカウンセリングや医療機関の受診を勧めます。
また、被害者が希望する場合は、一時的な職場の異動や休暇の取得など、就業環境の調整を検討します。被害者の意向を尊重しながら、適切なサポートを提供することが肝心です。
セクハラ加害者に対しては、事案の重大性に応じた厳正な処分を行う必要があります。社内規定に基づき、懲戒処分や配置転換、降格、さらには解雇といった措置を検討します。加害者の反省と再発防止を促すとともに、企業としてセクハラを容認しない姿勢を明確に示すことが重要です。
加害者に対しては、セクハラの定義や影響について教育し、行動改善を求めます。必要に応じて、専門家による研修やカウンセリングを実施し、再発防止に努めます。
セクハラ事案の発生を受けて、職場環境の改善に取り組むことが重要です。社内におけるセクハラの防止に向けた方針を明確化し、全従業員に対して定期的な研修や啓発活動を実施します。
また、相談窓口の設置や外部機関との連携など、セクハラ被害者が安心して相談できる体制を整備します。風通しの良い職場環境を醸成し、セクハラを許さない企業文化の構築を目指します。
深刻なセクハラ事案が発生した場合や、社内での解決が困難な場合には、外部機関への相談を検討します。都道府県労働局の雇用環境・均等部や、弁護士会のセクハラ相談窓口などを活用し、専門家のアドバイスを求めます。
外部機関との連携により、適切な対応策の立案や法的な問題の解決を図ります。セクハラ問題の解決に向けて、社内外の資源を効果的に活用することが重要です。
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セクハラ防止のためには、以下のような取り組みが重要となります。
企業は、セクハラ問題に真摯に向き合い、適切な対策を講じることで、すべての従業員が安心してはたらける職場環境を実現していく必要があります。社会全体でセクハラ防止の意識を高め、セクハラのない健全な職場文化を醸成していきましょう。