フィードバックとは?意味や実施時のポイント、注意点を徹底解説

人材育成・人事評価の手法として広く知られる「フィードバック」ですが、ビジネスシーンで、「部下の成長を願い、フィードバックしたのに、ダメ出しとしか認識されていなかった…」など、思うような効果を実感できていない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、ビジネスシーンにおいてフィードバックを行う目的や具体的な技法、実施効果を高めるポイントを解説 します。

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マネージャーの必須スキルである「フィードバック」ですが、正しく行えているか自信が無い方も多いのではないでしょうか。

・フィードバックついて知識を深めたい
・正しいフィードバックのやり方を知りたい

そのような方に向けて、フィードバックの進め方や実践方法を簡単にまとめた
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目次

フィードバックとは

フィードバックとは、「過去」を軸に成長の道筋を考えることです。ビジネスシーンでは、「問題の解決や成長促進を目的とし、実際に取った行動やパフォーマンスの評価を行動した本人に伝えること」を指します。 

既に起きた出来事から見えてきた課題や問題、対処を客観的に見つめ、以後の行動変容につなげる、というのがフィードバックの基本アクションです。

フィードバックをする側には、

    • 課題や問題、褒められるべきポイントを見抜く力
    • 「得られた教訓を今後にどう生かすのか」をフィードバックされる側にわかりやすく伝える力

など、さまざまなスキルが求められます。

フィードバックの種類

フィードバックには「ポジティブフィードバック」と「ネガティブフィードバック」があります。

ポジティブフィードバック

ポジティブフィードバックとは、望ましかった行動とその結果を共有するフィードバックです。前向きな内容なので、褒められた相手の自己肯定感を高め、モチベーションの向上も期待できます。

ネガティブフィードバック

ネガティブフィードバックとは、今後の課題を明らかにし、改善策を共有するフィードバックです。現状維持ではなく、さらにパフォーマンスを高めてほしいときに、相手を正しく指摘することで成長を促す目的で実施されます。相手によっては過度なストレスを与える可能性もあるため、伝え方には十分な配慮が必要です。

フィードバックを行う時は、なるべく「出来ているところ」「良い影響を与えているところ」に目を向け、ポジティブフィードバックを多めに伝えます。

時にはネガティブなフィードバックを行うことも求められますが、「こうすればもっと良くなる」とポジティブフィードバックもあわせて伝えると良いでしょう。 

フィードバックが注目される背景

フィードバックが注目される背景には、主にマネジメント対象の多様化やリモートワークによるコミュニケーション機会の減少などがあげられます。

マネジメント対象の多様化

近年、組織における人材の多様化が進んでおり、年上部下や外国人、シニア人材などマネジメント対象も多様化しています。また、個人の仕事に対する意識や価値観の多様化も進み、従来の画一的なマネジメントが難しくなっています。

従業員のパフォーマンスを最大限に発揮できるようにするためには、適切なフィードバックを行い、一人ひとりにあったマネジメントが求められています。

リモートワークによるコミュニケーション機会の減少

新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、テレワークが急速に普及しました。場所・時間にとらわれないはたらき方が広がった結果、コミュニケーション機会が減少し、上司と部下の信頼関係が構築しづらくなっています。

上司と部下の信頼関係が薄れると、フィードバックによって部下のモチベーションが低下したり、ハラスメントと受け取られたりするリスクがあります。同時に上司側も、「指摘によって部下が傷つくかもしれない」「踏み込んだことを伝えてハラスメントにならないか」などを懸念し、伝えるべきことが伝えられない状態に陥ってしまいます。

マネジメントの難易度が高まる中で、部下の成長につなげるべく、フィードバックが注目されています。

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フィードバックがもたらす効果

フィードバックは、問題の解決や従業員の成長を促すだけではなく、人事評価に対する不満や不公平感の解消につなげることができます。ここでは、フィードバックで得られるメリットについて解説します。

上司と部下の信頼関係構築

フィードバックで部下の自己認識や、上司が気づいていなかった悩みなどに触れる貴重な機会となるため、相互理解が進んで信頼構築につながります。

フィードバックは、上司と部下の間で起こりがちな3つのギャップを解消できます。

フィードバックの目的は3つのギャップをなくすこと

1.「MUST」のギャップ
 上司の考える「やるべきこと」と、部下の考える「やるべきこと」がずれている

2.「CAN」のギャップ
 上司の「このくらいはできてほしい」という期待と、部下の「自分のできること」の自己認識に開きがある

3.「WILL」のギャップ
 上司が「やってもらいたいこと」と、部下が「やりたいこと」が異なっている

いずれも「知っているであろう」「わかってくれているであろう」という思い込みから生まれてくるギャップといえます。3つのギャップは、上司と部下が互いの思いや考え、認識を明らかにし、共有することで小さくしていくことができます。

従業員のモチベーション向上

部下は上司からのフィードバックを通して、意識していなかった自分の姿や課題への気づきを得ます。フィードバックで見えてきた課題に対してどのように対処し解決していくかを明らかにすることで、目標達成にむけた行動がとりやすくなるでしょう。

日々の行動や成果、次にとるべきアクションについて適切にフィードバックすることで、評価に対する公平感・納得感が得やすくなり、従業員のモチベーションの向上につながります。

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部下の成長促進

フィードバックでは、部下の行動に対する上司の考えを一対一で伝えます。経験やスキルが豊富な上司からのフィードバックは、部下自身の新たな気づきを生み出し、成長を促すことができるでしょう。

また、適切なフィードバックでは、「こうしたほうがいい」と上司が答えを示すのではなく「どう行動すればよいだろうか」と自主的に考えるような問いかけを行います。部下自らが解決策を考える姿勢を培うことで、自分の中でPDCAを回そうとする成長サイクルの育成も期待できます。

フィードバックの手順

適切なフィードバックの実施は、部下の成長促進やモチベーションアップ、信頼関係の構築など組織の成長にプラスの影響をおよぼします。ここからは、フィードバックの流れを紹介します。

1.事前準備

話す側の頭の中が整理されていなければ、聞き手も混乱してしまいます。伝えたいことは事前に紙などに書き出して整理しておきましょう。ポイントは、以下の3つです。

・期待する人材像を明確化しておく
担ってほしい役割や立場、周りに与えてほしい影響など、できるだけ具体的に決めておくと、聞き手も同じイメージを持ちやすくなります。

・話す事項についての「事実」を積み重ねる
業績目標であれば成果およびプロセス、期待行動であればビジョンの実践状況、プロフェッショナリティの向上度に注目して、客観的な事実を集めましょう。

・振り返りを具体化しゴールを設定する
伝えるべきことを徹底的に具体化しましょう。数量や分量、時間軸など、「何をどう変えていけばいいのか」を容易に想像できる具体情報を入れると客観性が増します。

2.フィードバックの実施

まずは、フィードバックの目的を確認します。フィードバックは部下の成長を願うためのものであることを改めて伝えましょう。また、聞く側に安心してもらうために、フィードバックの場での情報はほかに漏らさないことも約束します。

たいていの場合、フィードバックをされる側は緊張しています。また、フィードバックの趣旨を誤解し、警戒している場合もあります。相手をリラックスさせ、話を受け入れる体勢とするためにも、丁寧に伝えることが肝心です。

目的の確認ができたら、フィードバックの内容について共有しましょう。目標と結果についてのフィードバックであれば、目標設定時からその後の取り組み、実際の成果、感じた反省点、見えている課題などを一つずつ共有していきます。

3.クロージング

今後の方向性が見えたら、上司の期待とのすり合わせ、実現のために必要な指導や自己啓発の方法について話し合い、要点をまとめます。一方的に切り上げるのではなく、必ず質問を受け、それらに答えてから終わらせましょう。

効果的なフィードバックのポイント

フィードバックは、部下が大きく成長するきっかけにもなります。効果的なフィードバックを行うためにも、以下のポイントを意識して実施しましょう。

どのように成長してほしいのか、目標を明確にする

フィードバックは、従業員の成長を目的に実施しますが、組織としてどのように成長してほしいのか、成長目標を定めておくことが大切です。

目標が明確に定まっていれば、達成の度合いや行動基準もはっきりするため、次なる行動に直結する具体的なフィードバックを実施できるからです。

また、目標を設定する際は、組織の求める人材像と照らし合わせつつ、部下のスキルや思いを加味するようにしましょう。現状から遠すぎる目標や一方的な目標設定は、モチベーションの低下にもつながります。

部下の「行動」を指摘する

フィードバックでは、「いつ」「どんな行動に対して」「どんな状況」など、具体的な行動を指摘しましょう。

例えば「今日のプレゼンテーションでは、過去の数値データを根拠にして自分の考えを説明できていたね」といった指摘だと、受け手も理解しやすくなります。

日頃から部下の行動をよく見て、具体的な行動にフォーカスした助言を心がけましょう。

上司の主観を入れない

上司の主観が入ってしまうと状況理解も曖昧になるほか、「一方的に指摘されている」と感じてしまうこともあります。なぜその行動が良い(悪い)のか、根拠とあわせて伝えるようにしましょう。

また、「~だったと思う」「~だったと感じた」と断定するのではなく、「~のように見えるが、どうか」「~と言われたが、どうか」というような投げかけで、鏡のような存在となることを意識してみましょう。

例)
×「今のままじゃダメ。もっと顧客のことを考えて、相手が喜ぶような提案の工夫を」
〇「先日の提案は、先方のニーズには合っていたが、提案のタイミングが適切ではなかったように見える。繁忙期の3月以外の時期であれば結果は違っただろう。相手の状況を考え、タイミングを見て再提案していこう」

できる限り部下の「行動」直後に実施する

フィードバックはなるべくタイムリーかつ細やかに行いましょう。

一番良い実施タイミングは、行動した直後です。時間が経つと記憶も曖昧になり、効果が薄れてしまいます。

また、厚生労働省の調査「令和元年版 労働経済の分析ー人手不足の下での「働き方」をめぐる課題についてー」では、フィードバックを毎日行う企業は「はたらきやすい」と感じている人の割合が大きくなることもわかっています。

部下の緊張をほぐす

フィードバック実施時は、いきなり本題から入るのではなく、雑談などで緊張をほぐしましょう。

雑談に使える「木戸に立ちかけせし衣食住」
キ …… 気候、季節  ド ……道楽(趣味)  ニ ……ニュース
タ ……旅  チ ……知人、友人  カ ……家庭、家族
ケ ……健康  セ ……世間話  シ ……新聞記事  衣、食、住

また、真向かいではなく、隣り合うポジションに座ることは、相手の心理的負担を減らす効果があります。

カウンセリング・ポジション

アクティブ・リスニングを取り入れる

アクティブ・リスニングとは、相手の言葉を「解読して伝え返す」聞き方の技法です。

アクティブ・リスニングの例

    • 発した言葉の繰り返し(オウム返し)
    • 重要部分やポイントの要約
    • 言葉の中に潜んでいた気持ちの言語化(感情のフィードバック)

聞き手が話し手への理解を深められる、また、話し手が自身の考えを客観視できるという効果があります。

オープンクエスチョンを活用する

オープンクエスチョンは相手の中にある「答え」を引き出し、自発的な行動を引き出す「コーチング」の技法の一つです。視点が変わるような質問は、相手が無意識化にあった答えに気づくきっかけとなります。

・オープンクエスチョン:具体的な回答が求められる質問
・クローズドクエスチョン:YesまたはNoで回答できる質問

オープンクエスチョンは、5W2H(だれが、いつ、どこで、なにを、なぜ、どのように、いくらで)を意識すると、生み出しやすくなります。また、相手が回答に時間を要するという特徴があります。そのため、沈黙が続いても、急かさず、傾聴を心がけることが大切です。

パッシブ・リスニングを取り入れる

パッシブ・リスニングとは、「うなずく」「相槌を打つ」「じっくり聞く」などのアクションで、相手を受け止めているサインを発しながら聞く技法です。

ボディランゲージもコミュニケーションの重要な要素です。フィードバックを受ける側が「自身を理解しようとしてくれている」と感じることができれば、より活発なコミュニケーションが生まれ、フィードバックの効果も高まるでしょう。

日頃からコミュニケーションを大切にする

フィードバックを通しても信頼関係の構築を図ることはできますが、日頃の関係性も重要です。信頼できる上司からのフィードバックであればあるほど、「自分のために伝えてくれている」と思えるからです。

リモートワークが進み、コミュニケーションが希薄化しやすい現代ですが、なるべくコミュニケーションを取る機会を作り、信頼関係を築きましょう。

フィードバック実施時の注意点

フィードバックは、時に部下にとっては自らのマイナス面を直視する機会ともなるため、かえって意欲を低下させたり、反抗心を持つ原因になってしまったりすることもあります。

適切なフィードバックで部下の成長促進を図るためにも、上司は以下の2点に注意しましょう。

感情的、威圧的な態度をとらない

感情的、威圧的な態度は、相手に恐怖感を与えてしまいます。

恐怖感が根底にあると、部下は萎縮してしまい、怒られないことを目的とした言動しか取れなくなってしまいます。心理的な安全が担保されていないと、フィードバックの意味がありません。

部下の行動が正しくないと感じたとしても、まずは相手の考えを聞くようにし、自身の感情をコントロールした対応を心がけましょう。

能力や人格、人間性を否定しない

フィードバックでは、個人の人格や能力に言及したり、他人と比較したりするようなフィードバックは絶対に避けましょう。「フィードバック=苦痛」となり、部下の成長を阻害してしまうほか、ハラスメントと受け取られてしまう可能性もあります。

前述のとおり、フィードバックで重要なのは、「行動」にフォーカスすることです。もしネガティブな行動を指摘する場合には、改善点にフォーカスし、能力や人間性と切り離して伝えることを意識しましょう。

フィードバック以外にも実践したい、部下育成のポイント

人材育成の手法は、フィードバック以外にもコーチングや1on1、OJTなどさまざまです。しかし、単に手法を取り入れるだけでは本来の目的を達成することはできません。

「育成=指導する」と捉えがちですが、人材育成の本来の目的は「部下の成長を支援すること」です。どの手法を取り入れて人材育成を進めるかは組織やチームによって異なりますが、自社に適した人材育成方法を組み合わせつつ、上司として以下の5つを重視して関わっていくことが、部下育成のポイントです。

    1. 過程を評価する
    2. 約束を守る
    3. 感謝と謝罪ができる
    4. 相手の話を聞く
    5. 部下を理解し受容する

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マネージャーの必須スキルである「フィードバック」ですが、正しく行えているか自信が無い方も多いのではないでしょうか。

・フィードバックついて知識を深めたい
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そのような方に向けて、フィードバックの進め方や実践方法を簡単にまとめた
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まとめ|効果的なフィードバックで部下は大きく育つ

フィードバックは、不快で苦痛なものではなく、より良い未来を生み出すための通過点です。大切なのは、上司が「どうすればもっと成長できるか」という視点を持つことにあります。

部下の存在そのもの、また現状の努力を肯定し、良き聞き手、良きメンターとなることが、フィードバックの効果を最大化するカギといえます。

よくあるご質問

Q.フィードバックの効果を高めるには?

A.フィードバックの効果を高めるには、部下とのコミュニケーションを大切にすることが重要です。コミュニケーションが希薄化しやすい現代ですが、日頃から会話を心がけ、信頼関係を築きましょう。

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Q.フィードバックとは?

A.ビジネスシーンでのフィードバックとは、「問題の解決や成長促進を目的に、取った行動やパフォーマンスの評価を行動した本人に伝えること」です。

>>フィードバックとは

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