2023年02月02日
2023年09月29日
近年、企業や組織を取り巻く環境が目まぐるしく変化しており、企業には時代の変化をいち早く捉え、内側から変容する力が求められています。一方、仕事にやりがいを見いだせない社員も増えている中、仕事にやりがいを見出す手法である「ジョブ・クラフティング」が注目を集めています。
ジョブ・クラフティングを通して、自分ならではの仕事の取り組み方を身につけ、自身や組織に変化をもたらすことは、企業の直面する問題解決にも有効です。本記事では、ジョブ・クラフティングについて解説するとともに、実践における具体的な手順やポイントを紹介します。
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社員の価値観の多様化により、ジョブ・クラフティングに注目が集まっています。
・ジョブ・クラフティングについて知識を深めたい
・ジョブ・クラフティングの効果をもっと知りたい
そのような方に向けて、考え方や注目される背景・効果について簡単にまとめた
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ジョブ・クラフティングに関する知識を深めたい方はぜひご活用ください。
目次
ジョブ・クラフティングとは、社員一人ひとりが自分なりの工夫を施し、仕事への捉え方や強みを見直すことで、仕事にやりがいを見いだすマネジメント手法の一つです。本章では、ジョブ・クラフティングの意味と、混同されやすいジョブ・デザインとの違いについて述べていきます。
ジョブ・クラフティングは自分に与えられた仕事を主体的に捉え直すことで、やりがいのあるものに仕事を創り変えていく取り組みを指しています。
日本のジョブ・クラフティング研究の第一人者である、東京都立大学教授の高尾義明氏によると「はたらく人たち一人ひとりが、主体的に仕事や職場の人間関係に変化を加えることで与えられた職務から自らの仕事の経験を創り上げていくこと」と、より具体的に述べられています。
仕事を主体的に捉え直すということは、自分本位で仕事を創りあげるということではありません。常に顧客や同僚など仕事に関連する相手目線で考え、自分なりの価値提供をしていくという意味です。ジョブ・クラフティングは社員一人ひとりの主体性が鍵となるため、仕事にやりがいを持たせ、社員の満足度を上げる役割も持っています。
ジョブ・クラフティングと混同されるものにジョブ・デザインが挙げられます。両者はよく似た言葉ではありますが、下図のような違いがあります。
ジョブ・デザイン | ジョブ・クラフティング | |
基本的 アイデア |
マネジャーが、従業員の内発的動機づけや職務満足が高まるように、従業員の職務を変更する | 従業員自らが能動的に仕事や人間関係を変更し、自分の仕事の経験を創り上げることができる |
変更する主体 | マネジャー(組織) | 従業員自身 |
従業員の捉え方 | 画一的/受動的存在 | 個別的/能動的存在 |
注目点 | 客観的側面に注目 | 主観的側面にも注目 |
このように、ジョブ・クラフティングは社員一人ひとりの主体性を軸に進めていくのに対し、ジョブ・デザインを実施するのはあくまでも企業側(組織)であり、個々の価値観を重視せず仕事を客観的に設計していくという点に両者の違いがあります。
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2000年代に提唱されたジョブ・クラフティングの考え方は、2023年現在、日本でも勢いを持って浸透が広がっています。近年多くの企業で導入が進んでいる主な理由は、以下の2つです。
現代は変化の激しい「VUCAの時代」です。世界的な感染症の拡大やグローバリゼーション、新興国の成長、技術革新などにより、企業や組織を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。先の見えないVUCA時代を生き抜くため、企業には急激な変化に対応できる人材が求められています。
また、昨今では従来のトップダウン方式に限界が生じてきているようです。業務の複雑化や多様化、顧客の求める価値観の変化などに伴い、単に言われたことを正確にこなす取り組み方では、仕事の成果は出しづらくなっています。社員が組織の歯車として業務を回していくだけでは、自ら考え行動できる人材が育たず、組織の活性化にもならないでしょう。
こうした問題の解決に役立つのが、ジョブ・クラフティングです。ジョブ・クラフティングでは、従業員が主体的に業務に取り組み、会社や顧客に価値を提供できるように支援します。その過程で、従業員が時代の変化に即した人材に向かって成長をしていきます。従業員の成長は、ひいては企業の持続的な発展にもつながるでしょう。
本章ではジョブ・クラフティングを実施する際の期待される効果についてご紹介します。自社で狙いとする効果と照らし合わせて参考にしてみてください。
ジョブ・クラフティングによって自分に合うように仕事をクラフティングするため、やらされ感やミスマッチ感が減少し、前向きな姿勢で仕事に取り組めるようになります。
自分が会社や組織に提供できる価値を見いだすことや、仕事の意義を理解した取り組みは、やりがいや成長感を醸成します。これらはワーク・エンゲイジメントの高まりと連動しており、社員満足度の向上に直結するものです。
パーソル総合研究所の「はたらく人の幸福学プロジェクト」によると、自己成長、役割認識、自己裁量、他者貢献といった要素が、はたらく人に幸せをもたらす7つの因子として挙げられており、はたらく幸せ実感が高いほど継続就業意向は高まり、転職意向は低下するという調査結果も出ています。
つまり、ジョブ・クラフティングの活用により仕事に対する社員の満足度が上がるだけでなく、人材流出の抑止といった波及効果も見込めるのです。
ジョブ・クラフティングが正しく実践されると、社員は主体的に仕事に取り組めるようになります。能動的な姿勢に変わることで、業務の効率化や生産性の向上が期待できます。また、組織における自らの立ち位置を理解し、周囲を巻き込みながら率先して組織に関わるようになるため、組織に好影響を与えます。
このように、ジョブ・クラフティングを実践することは社員個人のみならず、組織全体にもメリットをもたらします。
ジョブ・クラフティングによって自己成長感ややりがいを見出した社員は、継続的に仕事の質や自分の強みをブラッシュアップしていくようになります。新たな目標設定や強みを活かした創意工夫は、自発的なスキルアップの土台となるものです。また、社員が自分の役割を認識し、企業へ提供できる価値を追求していくことは、次世代の優秀な人材の台頭にもつながります。
人材育成に課題を抱える企業にとっては、ジョブ・クラフティングの推進が問題の解決策となり得るかもしれません。
ジョブ・クラフティングは以下の4つのステップで実施していきます。自社で運用をイメージする際の参考にしてください。
最初に、現在携わっているすべての業務を抽出します。ここでは業務内容のほかに、業務で関わる人物も挙げておきます。
すべての業務の洗い出しを行った上で、ジョブ・クラフティングの対象業務を選定します。ジョブ・クラフティングの本質は、自分に合うようにクラフティングしミスマッチ感を解消することなので、やりたくない仕事や苦手だと感じている業務も選定することがポイントです。
また別の視点からは、組織から期待されている業務を対象にすることも一案です。小さなものでも良いので、まずはジョブ・クラフティングの一歩を踏み出してみましょう。
ジョブ・クラフティングでは、自分らしさを一さじ加えるのがポイントです。そこで、自分がやってきたことの棚卸しをして、今までの業務の中で自分らしさが発揮できたことや得意なこと、自分の強みや価値観を洗い出します。
客観的な視点で自己分析を行うのが理想ですが、自分自身を客観視するのは難しいため、ジョブ・クラフティングを実践する社員同士でインタビューし合い、お互いに相手の印象を伝え合うのもおすすめです。
自分の対象業務に対し、仕事を主体的に捉え直していきます。3つのアプローチから、具体度をあげて再考していきます。3つのアプローチについては後述の章で詳しく説明します。
行動計画をもとに実践を行い、一定期間を経て振り返ることでジョブ・クラフティングの成果を検証します。例えば、1カ月間実践した上で、計画通りに実行できたか、気持ちの変化はどうであったか、業務は改善されたかなどを振り返りましょう。
その際、周囲からの意見やフィードバックも取り入れ、チーム内や上司との間で情報を共有する機会を設けます。達成されたことやさらなる改善点などを洗い出し、次のジョブ・クラフティングへとつなげていくことが大切です。
ジョブ・クラフティングを実践するうえで必要となる3つの視点をおさえます。これらは、自分の仕事を主体的に見直すためのアプローチです。
自分なりの創意工夫をもとに仕事内容の充実化を図ります。根本的なやり方すべてを変えるのではなく、普段の業務や自分の能力から実現できる小さな工夫を考えます。
例)
周囲との関わり方を見直し、関係性の質や量に変化を加えて、仕事の満足感を高めます。
自分にとってのはたらきやすさだけを求めて関わり方を変えるのではなく、組織における自分の立場や役割を意識して相互に変化をもたらすようなはたらきかけをすることが重要です。
例)
仕事の目的や意味を考え直したり、新たな意義を見いだしたりすることで、仕事を前向きに捉え、やりがいを持って関われるようにします。
捉え方を変えることで「やらされ感」から脱却し、主体的に関わる姿勢を身につけます。
例)
上記3つに分類されたアプローチによる自分なりの工夫や改善をもとに、ジョブ・クラフティングを行うと、クラフティングが進めやすくなります。
企業がジョブ・クラフティングを実践する上で、注意すべきポイントを解説します。ジョブ・クラフティングの効果を高めるためにも押さえておきましょう。
ジョブ・クラフティングの本質は、社員自らが主体的にやりがいを見いだすことです。企業がジョブ・クラフティングを推進するあまり、取り組みそのものが「強制的」「やらされ感」にならないように、社員が自主的にクラフティングできる環境を整えて見守る姿勢が求められます。
部下は上司の態度や反応に敏感です。上司が部下の仕事一つひとつを細かく見すぎないよう注意しましょう。また、ジョブ・クラフティングをテーマにした研修やワークショップの導入も効果的です。
主体性や個人のやりがいにこだわりすぎると仕事が属人化する可能性があります。仕事が属人化した状況では組織やチームの生産性向上につながりません。
ジョブ・クラフティングを社員に任せきりにするのではなく、適宜上司との振り返りの時間を設けたり、社内のチームと情報共有したりすることで、必要に応じて軌道修正を促し属人化の予防を行います。
社内にジョブ・クラフティングの風土を根付かせることが、社員や組織の持続的な成長につながります。一度きりの試みや誰か一人だけの実践では意味がありません。
組織全員でジョブ・クラフティングを実践し、企業文化にすることが根本的な組織力の底上げにつながると言えるでしょう。
本章では組織を運営するうえで、ジョブ・クラフティングの他に社員のパフォーマンス向上に役立つ施策を紹介します。
一般的に人材のパフォーマンスを高める施策は、目に見える「ハードアプローチ」と目に見えない「ソフトアプローチ」に大別されます。
ハードアプローチ | 人事評価制度・就業規則・福利厚生・罰則規定など、目に見える施策 |
ソフトアプローチ | 従業員の心理や意識・職場の雰囲気などに働きかける、目に見えない施策 |
ハードアプローチとは、評価や各種制度など目に見えるものに変更を加えることでワーク・モチベーションを改善する施策です。
ソフトアプローチとは、上司や同僚との関係性や職場の雰囲気など、目に見えないものを改善していく施策です。
企業が打ち手を考える際、改善策や効果が分かりやすいハードアプローチの施策ばかりに意識が向きがちですが、ハードのみの施策では限界があります。給与を高くしただけでは離職防止にはつながらないというのが良い例です。
社員のモチベーションに影響を与えるためには、ハードアプローチに加えてソフトアプローチを組み合わせることが重要です。
単一の施策をその場その場で打ち出すのではなく、ソフトとハードの両面から総合的かつ中長期的な視点で施策を実施する姿勢が求められます。
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社員の価値観の多様化により、ジョブ・クラフティングに注目が集まっています。
・ジョブ・クラフティングについて知識を深めたい
・ジョブ・クラフティングの効果をもっと知りたい
そのような方に向けて、考え方や注目される背景・効果について簡単にまとめた
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ジョブ・クラフティングに関する知識を深めたい方はぜひご活用ください。
ジョブ・クラフティングは、仕事の捉え方を見直し社員に主体的な仕事への取り組みを促すプロセスです。社員の満足度や仕事に対するモチベーションに課題を抱える企業にとっては、導入する価値があると言えます。一過性のブームにせず、ジョブ・クラフティングを企業の風土として根付かせることができれば、社員や組織の中長期的な成長につながります。
パーソルグループでは、ジョブ・クラフティングを実践して終わりにならないよう事後のフォローも含めた研修プログラムも用意しています。実践や運用にあたってお困りごとがあれば、ご相談ください。
株式会社パーソル総合研究所
ラーニング事業本部 キャリア開発支援グループ マネジャー
小室 銘子
大学卒業後、証券会社の営業、商社での企画職を経て、人材派遣会社にて広告宣伝、営業、コーディネーター、スタッフ教育、企業研修等すべての分野を経験。多くの女性部下をマネジメントしてきた経験を活かして、「職場で活躍する」社員育成のプログラム開発・D&IE・キャリア開発支援を得意とする。社会人大学院に通い、アカデミック領域と実務を繋げる研究に従事。2020年4月から企業向けキャリア開発支援を担当。
A.企業が、社員に対し自主的にクラフティングできる環境を整えることです。社員の理解を促すために、ジョブ・クラフティングをテーマにした研修やワークショップの導入も効果的です。
ジョブ・クラフティングをはじめ、パーソルグループでは課題別・階層別に様々な研修やワークショップを用意しています。詳細は、以下リンクよりどなたでも無料でダウンロードいただけます。
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A.ジョブ・クラフティングのメリットは次の3点です。自社の狙いとする効果と照らし合わせて、ジョブ・クラフティング導入を検討する際の参考にしてみてください。
A.ジョブ・クラフティングは4つのステップで実施します。