2022年11月15日
コンピテンシー評価とは、高業績者に共通して見られる思考や行動特性をもとに評価基準や評価項目を設定し、評価を行う手法です。日本企業に長く根付いていた職能資格制度に変わって、多くの企業で導入が進んでいますが、導入したものの見直しを行っていない企業も多いのではないでしょうか。
企業を取り巻く環境が急速に変化するVUCA時代においては、人材に求められるスキルも変化します。こうした変化に対応して評価制度も見直さなければ、評価と社員のパフォーマンスにズレが生じ、社員のモチベーションの低下や組織全体のパフォーマンス低下にもつながります。
本記事では、既にコンピテンシー評価を導入している企業に向けて、 コンピテンシー評価の現状とそこから見える問題点、見直す際のステップについて解説します。
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健全な人事評価制度は社員のモチベーションを維持し、組織を活性化させるために不可欠です。
パーソルの調査では、評価制度に不満を持つ人の割合は38.3%でした。約5人に2人が不満を持ちながらはたらいていると考えられます。不満を持ちながらはたらくことは社員のパフォーマンスに影響を及ぼすだけでなく、離職を招く原因になりえます。
時代やはたらき方の変化に合わせて、制度は改善していくべきですが、長く続けてきたシステムを変えることにはリスクもあります。
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そもそもコンピテンシー(competency)とは、直訳すると「能力・適性」であり、人事領域においては高業績者に共通して見られる思考や行動特性のことを指します。
高業績者に共通して見られる思考や行動特性をもとに評価基準や評価項目を策定し、評価を行う方法がコンピテンシー評価です。1970年代、アメリカの心理学者マクレランドの研究を起源に、1980年代~1990年代初頭にかけて普及し始めました。
日本では多くの企業が職能資格制度(能力評価)を導入し、長く根付いていました。職能資格制度では人材の持つ能力やスキル、知識を評価します。評価基準が「責任感」や「協調性」など抽象的なため、評価者の主観が入りやすいものでした。
1990年代後半にバブルが崩壊すると日本の経済は一気に低迷し、日本企業特有の年功的になりがちな昇給や抽象的な評価基準が露呈し、職能資格制度の限界がささやかれ始めました。そこで、評価の曖昧さを回避するため、評価基準が具体的なコンピテンシー評価の導入が広まりました。
職能資格制度は人材の「できるであろう」可能性を評価するのに対し、コンピテンシー評価では「実際に行っている」行動を評価するといった点で大きな違いがあります。
株式会社パーソル総合研究所「人事評価と目標管理に関する定量調査」によると、約4割の企業がコンピテンシー評価を取り入れており、従業員数5,000人以上の大企業に限ると約6割の企業が取り入れていることがわかりました。
多くの企業で導入されているコンピテンシー評価ですが、問題点も浮き彫りになってきています。
行動特性を元に評価項目を設定するコンピテンシー評価では、自社の事業環境や外部環境の変化に合わせて、評価基準そのものの見直しが求められています。
昨今、企業を取り巻く環境は急激に変化し続けており、先々の予測がつかないことからVUCA時代とも呼ばれています。多くの企業がコンピテンシー評価を導入しはじめた頃は問題解決型の評価項目が重視されてきましたが、VUCA時代で求められるのは、変化に柔軟に対応できる柔軟性やリーダーシップ、課題を先取りする力です。
導入時のままの評価項目では上位者と下位者が固定化されたり、本来は評価すべき人材が評価されなかったりすることで、社員のモチベーション低下や離職につながってしまいます。企業がその時々で求める人材像に合わせて、評価項目も見直す必要があります。同じ評価項目を継続することは、今後の企業成長を妨げてしまうかもしれません。
では、実際にコンピテンシー評価を見直す際に、どのようなステップで検討していけばよいか、ポイントとともに解説します。
まずはどのような問題が生じているのか把握するために、以下のような視点で現状を整理しましょう。
次は、現状起きている問題をどのように制度を見直すことで解決できるのかを考えていきます。このとき、3~5年後の経営計画を達成するために求められる人物像とずれていないかという観点でも見直すとよいでしょう。
2で定めたポイントを全社に導入する前に、全社的なトライアルが難しい場合は、まずは特定の部門だけパイロットで試行し、検証を行いましょう。検証結果から改善点が見つかれば見直しを行い、正式導入へと進みます。
このとき、設定した評価項目と基準については、全社で目線合わせをする機会を設けましょう。目線合わせについては事業部門長レベル、担当役員レベルなどで行います。ある部門だけ目線が上がっていないか・下がっていないか、評価項目や評価基準の粒度が食い違っていないか、といった部分を確認します。
定期的なメンテナンスを行うためにも、誰がいつどのように見直すのかを決めておきます。
また、評価の仕組みの見直しとあわせて、上司と部下間でのコミュニケーションの頻度を上げることも意識づけておきましょう。コンピテンシー評価は、従来型の能力評価と違い行動事実を見る必要があり、運用面での課題が多く挙げられます。日頃からコミュニケーションの量と質を高める意識を持つことで、仕組みと運用の双方向からコンピテンシー評価を整えていきましょう。
コンピテンシー評価について、現状と生じている課題、見直しのステップについて解説しました。
評価制度全般に言えることですが、定期的なアップデートを行うことが適切な評価に対する社員の納得感につながります。評価されるべき人材が評価される項目になっているか、評価の仕組みが環境の変化にあわせて柔軟に対応できているかといった側面から、見直しを行っていきましょう。
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健全な人事評価制度は社員のモチベーションを維持し、組織を活性化させるために不可欠です。
パーソルの調査では、評価制度に不満を持つ人の割合は38.3%でした。約5人に2人が不満を持ちながらはたらいていると考えられます。不満を持ちながらはたらくことは社員のパフォーマンスに影響を及ぼすだけでなく、離職を招く原因になりえます。
時代やはたらき方の変化に合わせて、制度は改善していくべきですが、長く続けてきたシステムを変えることにはリスクもあります。
本資料では、人事評価制度を見直すべきか判断するためのチェックリストと人事評価制度の見直し事例を紹介しています。 「人事評価制度を何から見直せば良いかわからない」とお悩みの方はぜひダウンロードいただき、ご活用ください。
株式会社パーソル総合研究所
コンサルティング事業本部 コンサルティング部 マネジャー
野沢 大輔
国内電機メーカーの人事部門にて人事制度企画・運用、人材育成企画・運用、労務管理等に従事した後、国内系コンサルティングファーム数社で人事・組織コンサルタントとして人事制度構築・改定支援を中心にコンサルティング活動を展開、現在に至る。
事業会社人事部門および人事・組織コンサルタントとしての双方の経験を活かし、経営課題や人材戦略への適合と現場での運用可能性、社員モチベーション向上との両立を図るコンサルティングに取り組む。
A1.コンピテンシー評価とは、高業績者に共通して見られる思考や行動特性をもとにモデル・評価項目を策定し、それを基準として評価する方法です。
従来の職能資格制度(潜在的な能力評価)とは違い、顕在的な行動を評価基準とするためより具体的であり、評価への納得感の高まりや人材マネジメントへの活用が期待できます。
>>コンピテンシー評価とは
A2.企業を取り巻く環境が急激に変化し続けるVUCA時代においては、変化に柔軟に対応できる柔軟性やリーダーシップ、課題を先取りする力が求められます。そのため、当初の評価項目のままで上位者と下位者が固定化されたり、本来は評価すべき人材が評価されなかったりと、社員のモチベーション低下や離職につながってしまいます。
自社の事業環境や外部環境の変化、その時々で求める人材像に合わせて、評価基準そのものの見直しが求められています。
>>コンピテンシー評価の問題点
A3.まずは現状把握のために、企業のビジョンや経営戦略とずれていないか、ハイパフォーマーの行動特性が項目にあらわれているか、といった観点から問題を切り分け、3〜5年後の経営計画を見据えて課題を把握します。
制度の見直しにおいては、特定の部門から試験的に実施し全社で目線合わせをすることが大切です。評価項目や粒度が食い違っていないかを確認し、仕組みと運用の双方向からコンピテンシー評価を見直します。
>>コンピテンシー評価を見直すステップ