コンピテンシー評価とは?項目例や導入するメリット、注意点を解説

コンピテンシー評価とは、高業績者に共通する思考や行動特性をもとに評価基準や評価項目を設定し、評価を行う手法です。日本企業に長く採用されていた職能資格制度に代わり、多くの企業がこの評価方法に注目しており、社員の能力をより正確に把握し、組織全体のパフォーマンス向上を目指すための手段として導入が進んでいます。

従来の職能資格制度では評価基準が曖昧で、社員の潜在能力を十分に引き出せない側面がありました。一方で、コンピテンシー評価は、企業成果につながる実際の行動をもとにした具体的な基準を設けることで、公平かつ客観的な評価を可能にします。 企業を取り巻く環境が急速に変化するVUCA時代において、適切な評価制度の導入が、企業の持続的な成長を支える鍵となります。

本記事では、コンピテンシー評価の概要、導入によるメリット、そして導入のステップについて解説します。

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目次

コンピテンシー評価とは

コンピテンシー(competency)とは、直訳すると「能力・適性」であり、人事領域においては高業績者に共通して見られる思考や行動特性のことを指します。1970年代、アメリカの心理学者マクレランドの研究を起源に、1980年代から1990年代初頭にかけて普及し始めました。

こうした思考や行動特性をもとに評価基準や評価項目を策定し、評価を行う方法がコンピテンシー評価です。仕事における行動や思考を明確な基準をもとに評価するため、業務遂行上のプロセスを公平に評価できます。また、従業員にどのような能力が不足しているかも判明するため、人材育成の効率化も見込めます。

コアコンピタンスとの違い

コアコンピタンス(core competence)とは、企業が競合に対して優位性を維持するための中核となる能力や強みを指します。一方、コンピテンシーは個々の社員が持ち鼓動特性や能力を評価するための概念です。以下のように、コアコンピタンスとコンピテンシーは適用される対象と目的が異なります。

コンピテンシー コアコンピタンス
対象 個々の社員の思考や行動 企業全体の能力
目的 人材育成や評価の基準 競争力を高める戦略的目的

例えば、ある製造業の企業におけるコアコンピタンスが「高品質な製品を効率的に生産する能力」である場合、その達成のために必要な社員個々のコンピテンシーとしては、「品質管理能力」や「効率的に作業を実行する能力」などが挙げられます。コアコンピタンスとコンピテンシーは互いに補完し合い、組織の成長や目標達成に寄与します。

【関連記事】コアコンピタンスとは?意味や戦略策定の手順をわかりやすく解説

コンピテンシー評価と職能資格制度の違い

コンピテンシー評価と職能資格制度の違い

職能資格制度は、人材の「できるであろう」可能性や能力、スキル、知識などを評価するものです。長期的な視点で社員を育成する際に活用されるため、日本では多くの企業が職能資格制度(能力評価)を導入し、長く定着していました。しかし、能力評価は年功序列に陥りやすく、評価基準が「責任感」や「協調性」など抽象的で曖昧というデメリットがあります。そのため、評価者の主観が入りやすく、公正な評価が難しい側面があります。

一方、コンピテンシー評価は、「実際に行っている」行動を評価するものです。「どんな行動が成果に結びついているか」「なぜその行動をとったのか」とい行動や思考を評価するため、職能資格制度より具体的な評価項目を設定するという違いがあります。評価のしやすさや評価への納得感も向上し、効率的かつ戦略的な人材マネジメントを実施できる点が特徴です。

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コンピテンシー評価の項目例

コンピテンシー評価では、社員の行動特性や能力を評価基準に設定します。以下に、具体的な評価項目例を挙げ、それぞれの概要を説明します。

自己認知能力

自己認知能力は、自己の強みや弱み、感情、思考パターンなどを正確に理解する能力です。自己認知能力が高い社員は、自分の行動や意思決定を客観的に分析し、課題に対する適切な対応策を見いだせます。具体的なコンピテンシー項目としては、「自己評価の正確性」「改善意欲の強さ」などを設定すると良いでしょう。

提案力

課題や改善点に対して、新しいアイデアを生み出し適切な解決策を提案する能力です。提案力は、業務の効率化や問題解決の推進に寄与します。とくに、変化の激しい業界・環境において重要視されるスキルです。提案力が高い人材は、課題や悩みを理解しつつ、周囲の声を傾聴し、問題を解決するための提案ができます。主な評価項目としては「課題解決の創造性」や「論理的な提案の明確さ」などが挙げられます。

チャレンジ精神

チャレンジ精神は、現状に満足せず、新しい課題に積極的に取り組む意欲を指します。未知の課題や高い目標に向けて積極的な挑戦を行い、企業や組織の成長に寄与する要素として評価されます。具体的なコンピテンシー項目には、「困難に対する積極的な取り組み」「新しい挑戦への柔軟性」などが含まれます。

組織力

チームワークや協調性を発揮し、他者との円滑なコミュニケーションを通じて、目標を達成する能力です。組織力を備えた人材は、組織全体の目標に対して自らの役割を理解し、積極的に貢献します。

業務遂行にあたっては、組織として行動する力やチームワークが重要になるため、コンピテンシー評価に加えると良いでしょう。具体的には、「他者との連携能力」や「課題解決に対するリーダーシップの発揮度合い」などが挙げられます。

戦略思考

戦略思考は、状況を広い視野で捉え、長期的な視点で計画を立案する能力です。意思決定の質を向上させ、業務効率を最大化するために欠かせません。戦略思考は、「目標に向けた計画性」や「リスクの見極め能力」が主なコンピテンシー項目となります。

情報収集力

情報収集力は、必要な情報を効率的かつ正確に収集する能力です。とくに、市場変化の激しい環境で、適切な情報を取捨選択することで、業務や意思決定に役立てられます。

業務においては、情報を収集する力だけでなく、整理して適切に活用する力も欠かせません。そのため、コンピテンシー評価においては「情報収集の迅速性」や「情報の活用力」が具体的な項目に挙げられます。

業務遂行力

業務遂行力は、与えられたタスクを期限内に遂行し、成果を出す能力です。計画的かつ効率的に業務を進める力が重視されます。組織において、迅速かつ適切に業務を遂行できる人材は重宝されるでしょう。

そのため、業務遂行力は主に管理職に求められます。行動特性や思考を評価する際の項目として「目標達成への責任感」「タスク管理能力」が具体的な項目となります。

コンピテンシー評価を導入するメリット

コンピテンシー評価を導入することで、企業はさまざまなメリットを享受できます。ここでは、代表的なメリットを4つ挙げて解説します。

1.被評価者の納得度が高まる

コンピテンシー評価は、具体的な行動特性に基づいて評価を行うため、評価基準が明確になります。これにより、被評価者は、自身の評価結果に納得しやすくなるメリットがあります。また、どのスキルや行動、能力が足りていないかが明らかになるため、改善につなげやすいのも利点と言えます。

2.戦略的な人材マネジメント

コンピテンシー評価を活用することで、企業は従業員一人ひとりの能力や行動特性を把握しやすくなります。これにより、適材適所の配置が可能となり、組織全体の効率性を向上させることができます。また、経営戦略に基づいた人材育成計画を策定する際にも役立ちます。企業の中長期的な成長を支えるために、コンピテンシー評価は重要な役割を果たします。

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3.人材育成の効率化

コンピテンシー評価を導入することで、従業員がどのようなスキルや行動特性を伸ばすべきかが明確になります。成果につながる具体的な行動が分かれば、従業員一人ひとりが今後の課題を見つけやすくなり、モチベーションも高まります。また、管理職による、個別のトレーニングプログラムやキャリアプランを設計する際に無駄が省かれ、効率的な人材育成が可能になります。とくに、限られたリソースの中で最大の効果を得るためには、コンピテンシー評価を基盤とした育成計画が有効です。

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4.評価者の負担軽減

職能資格制度のような曖昧な評価基準では、評価者が主観的な判断を強いられることが多く、負担が大きい傾向がありました。一方、コンピテンシー評価では具体的な行動基準が設定されているため、評価者はその基準に基づいて客観的に評価を行うことができます。評価プロセスがスムーズになるため、評価者の負担軽減にもつながります。

コンピテンシー評価の注意点

コンピテンシー評価は、企業が従業員の能力を適切に把握し、効果的な人材マネジメントを行うための強力なシステムです。しかし、導入・運用においては慎重な計画と実施が求められます。ここでは、コンピテンシー評価を導入する際に注意すべきポイントを解説します。

事業や外部環境の変化に合わせて評価基準を見直す

コンピテンシー評価の基準は、業界動向などの外部環境や企業の目指す方向性によって大きく変わります。例えば、事業戦略が変化した場合や市場のニーズが大きく変動した場合に、従来設定していた評価基準が実態に合わなくなる可能性があります。

そのため、定期的に評価基準を見直し、その都度成果を創出できる思考や行動基準を設定し直す柔軟性を持つことが重要です。見直しを怠ると、評価が形骸化し、高い成果につなげるという本来の目的を達成できなくなるリスクがあります。

完璧な成果を求めない

コンピテンシー評価は、従業員の行動やスキルを評価する指標として有効ですが、その評価結果だけですべてを判断するのは避けるべきです。個人の成長や貢献度を評価する際は、数値化できない側面や短期的な成果に現れない要素があります。また、従業員に「完璧さ」を過度に求めすぎると、逆にプレッシャーとなり、意欲や創造性を損なう可能性があるでしょう。評価結果はあくまで参考材料とし、柔軟な視点を持つことが大切です。

目的を見失わない

コンピテンシー評価を導入する目的は、企業の成長を支える人材を育成し、適切に評価することです。しかし、評価プロセスや結果の運用に過剰にこだわりすぎると、本来の目的を見失う可能性があります。評価制度が自己目的化すると、従業員のモチベーション低下や管理負担の増加を招く恐れがあります。そのため、導入前に目的を明確にし、運用の中でその目的を定期的に確認する仕組みを取り入れることが重要です。

コンピテンシー評価のモデル

コンピテンシー評価を効果的に運用するためには、基準となるモデルを明確にする必要があります。このモデルは、評価対象となる社員の行動特性や能力をどのように設定するかに大きく影響します。以下で、一般的に用いられる3つのモデルについて解説します。

実在型

実在型モデルは、実際に高い成果を上げている従業員の思考や行動特性を分析し、それをもとに評価基準を設定する方法です。このモデルでは、具体的な行動例や成功事例を参考にするため、現場で実際に役立つ評価基準を構築しやすいというメリットがあります。

例えば、営業職で実績を上げている社員の「顧客のニーズを深掘りする力」や「迅速な対応力」などを基準として設定することで、他の社員の業務改善やスキル向上を促進します。ただし、過去の事例に基づくため、将来的なニーズの変化に対応しにくい場合があります。

理想型

理想型モデルは、企業が目指すべき理想像や目標に基づき、評価基準を設定する方法です。このモデルは、まだ実現されていない理想の行動やスキルを基準にするため、未来志向の評価が可能です。

例えば、新規市場への進出を目指す企業では、「異文化への適応能力」や「革新的な提案力」を基準として設定することがあります。このアプローチは、企業の成長戦略に沿った人材育成に役立ちますが、実際の行動に基づく裏付けがないため、社員の納得感を得るのが難しい場合もあります。

ハイブリッド型(実在型+理想型)

ハイブリッド型は、実在型と理想型の双方を組み合わせた評価モデルです。このモデルでは、実在型の現実的な基準と、理想型の将来的な目標を統合することで、現場での実効性と未来志向のバランスを取ります。

例えば、現在成果を上げている社員の行動を基にしつつ、将来的に必要とされるスキルや能力(戦略思考、リーダーシップ力など)を追加で評価基準に含める方法が考えられます。このアプローチは、社員の納得感を得やすいだけでなく、企業の成長に必要なスキルの明確化にも寄与します。

コンピテンシー評価を見直すステップ

コンピテンシー評価は導入後も、企業の成長や外部環境の変化に応じて継続的な見直しが求められます。適切なタイミングで評価基準を改定することで、評価制度を現場に合った形で運用し、社員の納得感やモチベーションを維持することが可能です。ここでは、コンピテンシー評価を見直す際に押さえておくべき具体的なステップを紹介します。

1.現状把握

まずは、自社の評価制度にどのような問題が生じているのか把握するために、以下のような視点で現状を整理しましょう。

    • 企業のビジョンや経営戦略とずれていないか
    • 高業績者(ハイパフォーマー)の行動特性が項目にあらわれているか(今後必要となるハイパフォーマーの視点から)
    • 評価のレベルや基準は明確か
    • 客観的な評価が可能か

2.見直すべきポイントの改善

次は、どのように制度を見直せば現状起きている問題を解決できるかを考えていきます。このとき、3~5年後の経営計画を達成するために求められる人物像とずれていないかという観点でも見直すと良いでしょう。

3.改善したポイントの確認、調整

2で定めたポイントを全社に導入する前に、全社的なトライアルが難しい場合は、まずは特定の部門でパイロット試行を実施し、効果を検証しましょう。検証の結果、改善が必要な点が見つかれば適宜修正を行い、正式導入へと進みます。

このとき、設定した評価項目と基準については、全社的に認識を統一する場を設けることが重要です。その際、事業部門長や担当役員レベルの関係者が参加し、評価の目線が部門間で大きく異なっていないか、また評価項目や基準の粒度にばらつきがないかを確認します。これにより公平で一貫性のある評価体制を整えることができます。

4.評価のメンテナンスの設定

コンピテンシー評価を効果的に運用するためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。誰が、いつ、どのように評価基準を見直すのかをあらかじめ明確に決めておきましょう。

さらに、評価制度の見直しに加え、上司と部下間のコミュニケーション頻度を高める取り組みも欠かせません。コンピテンシー評価は、従来型の能力評価と異なり、実際の行動や事実ベースの成果を重視するため、運用面での課題が生じやすい傾向があります。日頃からコミュニケーションの量と質を向上させる意識を持つことで、評価基準の仕組みと運用面の両方を改善し、効果的なコンピテンシー評価を実現しましょう。

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まとめ|定期的な見直しで、適切な評価を

コンピテンシー評価について、概要やメリット、導入時の注意点、見直しのステップについて解説しました。

評価制度全般に通じますが、定期的なアップデートを行うことが適切な評価に対する社員の納得感につながります。評価されるべき人材が評価される項目になっているか、評価の仕組みが環境の変化にあわせて柔軟に対応できているかといった側面から、見直しを行っていきましょう。

インタビュー・監修

株式会社パーソル総合研究所
コンサルティング事業本部 コンサルティング部 マネジャー

野沢 大輔

国内電機メーカーの人事部門にて人事制度企画・運用、人材育成企画・運用、労務管理等に従事した後、国内系コンサルティングファーム数社で人事・組織コンサルタントとして人事制度構築・改定支援を中心にコンサルティング活動を展開、現在に至る。
事業会社人事部門および人事・組織コンサルタントとしての双方の経験を活かし、経営課題や人材戦略への適合と現場での運用可能性、社員モチベーション向上との両立を図るコンサルティングに取り組む。

よくあるご質問

Q1.コンピテンシー評価とは?

A1.コンピテンシー評価とは、高業績者に共通して見られる思考や行動特性をもとにモデル・評価項目を策定し、それを基準として評価する方法です。

従来の職能資格制度(潜在的な能力評価)とは違い、顕在的な行動を評価基準とするためより具体的であり、評価への納得感の高まりや人材マネジメントへの活用が期待できます。

>>コンピテンシー評価とは

Q2.コンピテンシー評価の問題点とは?

A2.企業を取り巻く環境が急激に変化し続けるVUCA時代においては、変化に柔軟に対応できる柔軟性やリーダーシップ、課題を先取りする力が求められます。そのため、当初の評価項目のままで上位者と下位者が固定化されたり、本来は評価すべき人材が評価されなかったりと、社員のモチベーション低下や離職につながりかねません。

自社の事業環境や外部環境の変化、その時々で求める人材像に合わせて、評価基準そのものの見直しが求められています。

>>コンピテンシー評価の注意点

Q3.コンピテンシー評価はどのように見直すべきか?

A3.まずは現状把握のために、企業のビジョンや経営戦略とずれていないか、高業績者(ハイパフォーマー)の行動特性が項目にあらわれているか、といった観点から問題を切り分け、3〜5年後の経営計画を見据えて課題を把握します。

制度の見直しにおいては、特定の部門から試験的に実施し全社で目線合わせをすることが大切です。評価項目や粒度が食い違っていないかを確認し、仕組みと運用の双方向からコンピテンシー評価を見直します。

>>コンピテンシー評価を見直すステップ