生産性向上にもつながる、ニューノーマル時代の勤怠管理とは?

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新型コロナウイルスの流行によって、企業は時間や場所の制約にとらわれないはたらき方への対応が求められています。多様なはたらき方の実現と業務の生産性向上を両立する上で、勤怠管理は今まで以上に重要なファクターになっているといえるでしょう。本記事では勤怠管理の基礎知識とともに、ニューノーマル時代に適した勤怠管理システムを紹介し、そこから得られるデータの種類と活用法について解説していきます。

目次

コロナ禍で増す「勤怠管理デジタル化」の需要

テレワークの導入が進み、これまでの勤怠管理システムを変えなくてはと考えている企業や事業者も多いでしょう。ニューノーマル時代にどのような勤怠管理が求められているのでしょうか。

厚生労働省「これからのテレワークでの働き方に関する検討会」で報告された調査によると、テレワークを行っている企業では、テレワーク未実施の企業に比べ、電子ファイルやWebシステム、PCの稼働状況を利用した勤怠管理が多いという結果になりました。コロナ禍以前より、外出や出張などの事情で、勤務開始・終了時間を社外で記録したいというニーズはありました。そこに新型コロナウイルスの感染拡大が起き、テレワークが広まったことで、出退勤時刻を出社せずとも記録できる勤怠管理システムの普及が進んだと考えられます。

企業における一般的な勤怠管理の方法

【出典】三菱UFJリサーチ&コンサルティング「テレワークの労務管理等に関する実態調査 (速報版)」より一部抜粋

一方、タイムカードやICカードによる勤怠管理を行っている企業もまだ多く、テレワークを実施していない企業では、紙の出勤簿への押印による勤怠管理が根強く残っています。

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なぜ勤怠管理は必要なのか

ここで、なぜ勤怠管理が必要なのかを確認しましょう。従業員の労働時間の適正な把握・管理は、労働基準法に加え、厚生労働省が策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」で定められています。また、労働時間を記録した書類は、労働者名簿、賃金台帳とともに5年間保存しなければなりません。

働き方改革の一環および長時間労働是正のための施策として法律が整備されている現在、適切な勤怠管理の必要性はますます高まっています。

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賃金台帳の適正な調製
使用者は、労働基準法第108条及び同法施行規則第54条により、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならないこと。 また、賃金台帳にこれらの事項を記入していない場合や、故意に賃金台帳に虚偽の労働時間数を記入した場合は、同法第120条に基づき、30万円以下の罰金に処されること。

勤怠管理は以下の点からも、企業にとって重要です。

1)透明性のある給与計算

労働時間は従業員の給与計算に欠かせない情報です。正しい給与や残業代を算出するためにも、日々の労働時間や有休取得を正確に把握しておくことが重要です。

2)過重労働の抑止とコンプライアンス遵守

日本では長らく、過酷な長時間労働の常態化や残業手当の未払いが社会問題となっています。コンプライアンス違反などにならないようにするためにも、従業員の労働状況をしっかり把握しておく必要があります。長時間労働を防ぎ、従業員の心身の健康を維持することは、健全な経営につながるといえます。

3)生産性向上

勤怠管理の記録をうまく活用すれば、生産性向上にもつながります。従業員がどんなタスクにどれだけの時間をかけているのかが分かれば、残業の多い従業員が抱えている負担が把握でき、改善のポイントも見えてくることでしょう。非効率な業務フローの見直しや、部署あるいは組織全体の業務の平準化を図ることにも役立ちます。

勤怠管理で記録すべき項目と記録の保存期間

勤怠管理では具体的に誰の、どのような情報を記録しなくてはいけないのでしょうか。また、その書類はいつまで保存しておけばいいのでしょうか。

対象

勤怠管理の対象は下記のように定められています。

・対象事業場
対象となる事業場は、労働基準法のうち労働時間に係る規定(労働基準法第4章)が適用されるすべての事業場です。

・対象労働者
対象となる労働者には、2つの考え方があります。

まずは安全配慮義務の観点から、企業は社員の労働時間を把握し、長時間労働とならないように勤怠管理をする必要があるという、全社員を対象とする考え方です。

もう1つは、時間外勤務手当の支給の観点において、労働基準法第41条に定める者(管理監督者など)及びみなし労働時間制が適用される労働者(事業場外労働を行う者にあっては、みなし労働時間制が適用される時間に限る)を除く労働者が対象とする考え方です。

上記の労働時間は、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」を指します。したがって、休憩時間は労働時間に含まれません。また、労働基準法では、労働時間は原則「18時間、140時間以内」とされており、これを超える場合には「労働基準法第36条に基づく労使協定の締結(通称:36〈サブロク〉協定)」および「所轄労働基準監督署長への届出」を行う必要があると定めています。なお、労働基準法では勤怠管理の対象は、雇用関係におかれた労働者のみとされています。成果により報酬を得るフリーランスは個人事業主であり、勤怠管理の対象外です。

管理項目

厚生労働省のガイドラインでは「使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること」と定めています。また、使用者は以下の項目についても適正に把握する責務があると記されています。

・出勤日、欠勤日、休日出勤日
給与計算を正しく行うため、勤務状況をはじめ休日出勤・代休の取得の有無などを1カ月単位で把握します。

・始業・終業時刻、労働時間、休憩時間
労働時間は、原則として1分単位で管理します。これは、厚生労働省から労働基準監督署へ提示された行政通達と、労働基準法の第24条をはじめとした条文に記された、労働時間分の賃金の「全額払い」の原則に基づいています。

・時間外労働時間、深夜労働時間、休日労働時間
時間外労働や深夜勤務、休日出勤を行った従業員に対し、企業は割増賃金の支払いの義務があります。

・有休取得日数・残日数
2019年4月の労働基準法の改正により、年次有給休暇の取得(年5日)が義務化されています。

【出典】厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」

労働時間を記録した書類の保存期間

2020年41日、労働基準法の一部が改正され、法定三帳簿(労働者名簿、賃金台帳、出勤簿)などの重要書類の保存期間は5年間(賃金台帳が源泉徴収簿を兼ねている場合は7年間)に延長されました。ただし、過年度分については当面の間、経過措置として3年間となっています。

ニューノーマル時代に求められる勤怠管理とは?

厚生労働省のガイドラインでは「始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法」について、下記のように示しています。

(ア)使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること
(イ)タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること

これらに対応し、従業員それぞれのはたらき方を支援することや人事労務担当者にかかる負担、手作業による人的ミス、不正打刻といったリスクを減らすという観点において、勤怠管理システムの利用はますます増えていくと考えられますが、勤怠管理システムの導入には費用がかかるため、二の足を踏む企業も少なくありません。しかし、近年の勤怠管理システムは打刻機能以外にもさまざまな機能を備えており、活用方法が広がっています。総務省の調査でも、業務効率化につながるツールとして勤怠管理システムが一番に挙げられています。

業務効率向上につながる労務・庶務管理のためのシステム/ツール

【出典】総務省 情報流通業政局 情報通信政策課 情報通信経済室「平成30年度 デジタル化による生活・働き方への影響に関する調査研究成果報告書」より一部抜粋

勤怠管理システムで、はたらき方も課題も「可視化」する

勤怠管理システムは、具体的に以下のような機能を備えています。

従業員のタスク・作業時間の管理
工数や作業時間を割り出すことで、どの作業にどのくらいの時間がかかっているのかを把握できます。業務を遅滞させているボトルネックの発見につながります。

PCの稼働状況と勤怠の情報の管理・比較
作業デバイスやソフトウェアの使用時間と従業員の申告した労働時間を可視化できます。それらを比較し、申告に齟齬がないか、サービス残業がされていないかなどを確認することができます。

従業員のコンディションの可視化
日報の提出などを通じて従業員自身のフィードバックやコンディションを共有できます。適切な業務の振り分けやフォローアップを効率的に行うことができます。

テレワークや多様なはたらき方が日常となるニューノーマル時代においては、これらの機能から得たデータをリソースとして活用していくことが重要です。従業員の業務進捗や実際の労働時間、コンディションなどのデータをもとにコミュニケーションの強化、信頼関係の構築、成果をしっかり評価し共有するなどの対策を講じていくことで、「部下の生産性が下がっているのではないか」「隠れて残業していないか」といった不安要素を解消し、業務の効率化を図ることができます。

勤怠管理システムの魅力は、勤務や業務状況をデータで素早く客観視できるという点にあります。一人ひとりの日々のはたらきを確認、評価していくことで、「きちんと仕事ぶりを見てくれている」「公正な評価をしてもらっている」という実感がはたらく側に生まれるでしょう。また、管理する側にとっても、業務改善のツールとしてはもちろん、労力をかけずに正確なデータを集め、課題の発見や改善策を考案・検証していく、というポジティブな経営のサイクルを展開するきっかけとなるのではないでしょうか。勤怠管理システムの導入はさまざまな業務を効率化させていくとともに、企業全体の生産性向上につながっていくと考えられます。

勤怠管理で得られる情報の有効活用を

新型コロナウイルス感染症の拡大によって、はたらき方が大きく変わりました。多様なはたらき方への対応と勤怠管理システムの導入は、両輪で進めるべきことです。また、勤怠管理システムを勤怠管理だけに終わらせず、得られたデータを財産として活用すれば、システムの導入効果はさらに大きくなります。勤怠管理のあり方そのものを見直すことは、生産性向上のきっかけになるのかもしれません。

インタビュー・監修

中村社会保険労務パートナーズ代表、特定社会保険労務士・人事コンサルタント

中村 俊之

人事労務畑の仕事に40年の経験、会社の実態に沿ったベストソリューション(問題点の解決)を得意とし、企業研修は年50回程度行う。人事制度・賃金制度等処遇制度の構築、人事考課制度の構築・考課者研修、労働相談、就業規則その他規程の作成・見直し、目標管理制の構築・研修、階層別(部長級・課長級・係長級・新入社員)教育訓練ほかに対応。主著に『やさしくわかる労働基準法』(監修、ナツメ社刊)ほか

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