目前に迫る2025年問題とは? 何が起き、どう備えるべきかを徹底解説

事業継続(BCP) 経営者・役員

超高齢社会を迎えることによる「2025年問題」は、雇用や医療、福祉といったさまざまな分野へ多大な影響を及ぼすことが予想されています。2025年問題とは具体的にどういったものか、社会や企業に及ぼす影響と、迫り来る危機にどう備えるべきかを解説します。

コロナ以降の人事戦略2021最新動向レポート

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目次

そもそも2025年問題とは?

2025年、いわゆる「団塊の世代」800万人全員が75歳以上、つまり後期高齢者となります。2025年問題とは、超高齢社会が訪れることで生じるさまざまな影響のことを言います。

団塊の世代は、第1次ベビーブームの時期に生まれ、さまざまな分野で日本の成長を牽引してきました。この世代が75歳以上を迎えることで、総人口1億2257万人のうち、後期高齢者の人口が2,180万人に達します。

高齢者人口及び割合の推移(1950~2040年)

【出典】総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1131.html

厚生労働省のレポートを見てみましょう。2025年の社会像を以下のように描いています。

超高齢化が進んだ2025年の社会像

  1. 高齢者人口の推移:高齢化の進展の「速さ」から、高齢化率の「高さ」が問題化。
  2. 認知症高齢者数:約320万人。今後、急速な増加が見込まれる。
  3. 高齢者世帯数:約1,840万世帯。約7割が1人暮らしか高齢夫婦のみ(うち約680万世帯・約37%が1人暮らし)。
  4. 年間死亡者数:約160万人(うち65歳以上約140万人)。
  5. 都道府県別高齢者人口:首都圏をはじめとする「都市部」。高齢者の「住まい」の問題等、従来と異なる問題が顕在化。

【出典】厚生労働省「今後の高齢化の進展 ~2025年の超高齢社会像」を要約

2025年問題が与える社会的影響とは?

2025年問題の社会的影響の一つが、医療費や介護費の増大。またそれに伴う現役世代の負担の増大です。

後期高齢者の一人当たりの年間医療費は、75歳未満では平均22万2000円ですが、75歳以上は93万9000円とおよそ4倍※1、介護費も後期高齢者は大きく膨れ上がります。これまで社会を支えてきた世代が今度は支えられる側に回ることによって、年金なども含めた社会保障給付費全体を予算ベースで見ると、2018年の約121兆円から2025年度には約140~141兆円になると推計されています※2

一方、医療・介護・年金を合わせたサラリーマンの保険料率は、2025年度には31%に増えると見込まれ※3、現役世代の負担をいかに軽減するかも大きな課題となります。

※1 厚生労働省「平成30年度 医療費の動向」
※2 財務省「将来の社会保障給付金の見通し」
※3 健康保険組合連合会「今、必要な医療保険の重点施策- 2022年危機に向けた健保連の提案-」(2019年9月9日)

2025年を前に社会保障全般の改革がスタート

2025年問題の対策として政府は「全世代型社会保障検討会議」を設置し、年金、労働、医療、介護など各分野における改革のため、議論を進めています。

年金については、一部法改正をし、厚生年金の加入条件緩和を検討。パートなどの短時間労働者が厚生年金に加入しやすくなるほか、「就職氷河期」世代の非正規雇用者の低年金対策になることも期待されています。

労働については高齢者の就労促進が議論されてきました。2021年4月1日から「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」(高年齢者雇用安定法)の一部が改正され、施行されます。これは70歳までの就業機会の確保について、多様な選択肢を法制度上整え、事業主としていずれかの措置を制度化する努力義務を設けるものです。

医療分野では、75歳以上の後期高齢者の病院などでの窓口負担を今の原則1割から一定の所得以上の人は2割に引き上げる方針で、具体的な線引きが探られています。

また、同会議の中間報告(2019年12月)では、「生涯現役(エイジフリー)で活躍できる社会」「個人の自由で多様な選択を支える社会保障」「現役世代の負担上昇の抑制」「全ての世代が公平に支える社会保障」「国民の不安への寄り添い」が、今後の改革の視点となっています。

2025年問題は、企業にどんな影響を与えるか?

企業に表れる2025年問題の深刻な影響は、大きく分けると「事業承継問題」と「人材不足」の二つです。
それぞれについて見ていきましょう。

会社の存廃を左右しかねない「事業承継」

2025年までに中小企業・小規模事業者の経営者約245万人が、平均引退年齢である70歳を超えます。しかし、約127万人の後継者がまだ決まっていません。

一般的に中小企業・小規模事業者では、企業運営の多くを経営者自身の経営能力や意欲に依存しており、後継者未定の半数に黒字廃業の可能性があります。その結果2025年までの累計で約650万人の雇用と、約22兆円のGDPが失われる可能性があるとも言われています※4

中小企業・小規模事業者が持つ技術やノウハウなどの貴重な経営資源を守るためにも、後継者の養成や資産・負債の引継ぎなどが喫緊の課題となっています。また、中小企業庁では、今後は第三者承継(事業承継型M&A)のニーズが一気に増大する可能性があるとしています。

ますます深刻化する「人材不足」

パーソル総合研究所の調査によると2025年に505万人、2030年には644万人の人材が不足すると予想されています。2030年の予測値になりますが、業種別に最も不足するのは「サービス」、次いで「医療・福祉」※5となっています。

産業別不足数

【出典】パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」

人材不足はすでに進行中で、2019年(1-12月)の人材不足による倒産は426件にものぼっています。過去最多だった前年より、さらに10%増えた数値です。最も多い理由が、代表者や幹部役員の死亡・病気入院・引退などによる「後継者難」で、その数は270件。事業承継の問題とも密接にリンクしています。

また、人材を確保できなかった「求人難」は78件(前年比32.2%増)、中核社員の独立・転職などが退職した「従業員退職」が44件(同83.3%増)※6。今後は、こうした人材不足倒産が、ますます増えると危惧されます。

※4 中小企業庁「中小企業・小規模事業者におけるM&Aの現状と課題」
※5 株式会社パーソル総合研究所(パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファーム)・中央大学「労働市場の未来推計2030」
※6 東京商工リサーチ「2019年「人手不足」関連倒産

企業が今すぐ備えておくべきこととは?

確実にやってくる2025年問題に対して、企業が対応すべきポイントについて、事業承継と人材不足それぞれの観点から解説します。

公的支援を活用して事業承継を進める

「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(経営承継円滑化法)の施行により、企業は事業承継の負担を減らすさまざまな公的支援が受けられます。

経営承継円滑化法の認定を受けることで得られる公的支援

  1. 税制支援(贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度)の前提となる認定
  2. 金融支援(中小企業信用保険法の特例、日本政策金融公庫法等の特例)の前提となる認定遺留分に関する民法の特例

【出典】中小企業庁「経営承継円滑化法による支援」より

事業承継にはスピード感が必要です。後継者の育成も含めると、事業承継には一般的に5~10年程度の準備期間が必要とされています。経営者の平均引退年齢が70歳前後であることを考えると、経営者が60歳になったころには準備を始める必要があります。

また、事業承継に向けた準備は、税理士などの専門家や、金融機関、商工会・商工会議所などのサポートを得ながら進めることを、中小企業庁では推奨しています。同庁では事業承継診断やよろず支援拠点で無料の専門家派遣を行っている他、後継者のいない場合に向けてM&Aのマッチングを支援する「事業引継ぎ支援センター」を各都道府県に設置しています。

人材不足を解決する三つの方法

人材不足への対策は、主に次の三つに分けられます。

  1. 人材確保
  2. 離職防止
  3. 生産性向上

それぞれ確認していきましょう。

1. 人材確保
女性、シニア、外国人の雇用を増やすことが、人材不足への対策としては急務です。それぞれのアプローチには、以下のようなものが挙げられます。

はたらく女性を増やす対策
・保育支援の充実
・男性育休などの制度の検討

女性の労働力率※7は、出産・育児による離職により30代で顕著に低下しています※8。2010~2014年の第1子出産前後の就業継続率は53.1%で、はたらく女性の半数が出産を機に離職していることがわかります。特に妊娠前の雇用形態がパートだった女性の出産後離職率は74.8%と高く※9、正社員に比べて保育支援が充実していないことが原因と考えられます。

また、昨今注目されている男性育休についても、2018年10月1日から2019年9月30日までの1年間で配偶者が出産した男性がいた事業所に占める男性の育児休業者は 10.5%となっています。これはまだまだ低い数値です※10。はたらく女性を増やすには、育児の負担を女性のみにかけないための支援も求められるでしょう。

※7 労働力率:就業者数と完全失業者数とを合わせた労働力人口が15歳以上の人口に占める割合
※8 「平成29年人口動態統計月報年計(概数)の概況」(厚生労働省)
※9 「第15回出生動向基本調査」(国立社会保障・人口問題研究所)
※10 「令和元年度雇用均等基本調査」(厚生労働省)

はたらくシニアを増やす対策
・多様な就労形態(ニーズに応じた雇用形態、柔軟なシフトなど)
・多様な労働条件(テレワーク、フレックスタイム、時短制度など)
・被就業者に意識改革を促す支援

はたらくシニアは年々増加傾向にあります。2018年では60~64歳の70.3%が、65~69歳の48.4%の男女がはたらいています※11

また、現在仕事をしている60歳以上の約4割が「働けるうちはいつまでも」はたらきたいと考え、「70歳くらいまで」と「それ以上」を合わせると約8割が高齢期を迎えても高い就業意欲を持っています※12

2021年4月には高年齢者雇用安定法が改正され、70歳までの就業機会の確保が努力義務となります。

※11 総務省統計局「労働力調査(基本集計)2019年(令和元年)平均(速報)結果の要約」(令和2年1月31日)
※12 内閣府「高齢者の日常生活に関する意識調査」(平成26年)

あなたは、何歳頃まで収入を伴う仕事をしたいですか

【出典】内閣府「高齢者の日常生活に関する意識調査」(平成26年)

一方、60歳以上で就業を希望しながら仕事に就けなかった人の主な理由は、「適当な仕事が見つからなかった(36.2%)」が最も多く、その理由としては「条件にこだわらないが、仕事がない(37.6%)」、「職種が希望と合わなかった(男性36.1%)」、「労働時間が希望と合わなかった(女性25.2%)」が挙げられています。

※13 独立行政法人労働政策研究・研修機構「60代の雇用・生活調査(2015)」

就業希望の不就業者が仕事に就けなかった主な理由(60歳以上)

【出典】内閣府「高齢者の日常生活に関する意識調査(2014)」

これらの調査から、就業意欲があるシニアには、はたらきやすい労働時間や条件、環境を整備することが重要になることがわかります。また、「就業を希望しないシニア」に対しても、就業を促す働きかけが必要になるでしょう。

はたらく外国人を増やす対策
・生活する場・はたらく場としての魅力を磨く
・受け入れ拡大ペースを維持

2018年の改正出入国管理法(入管法)で、介護や外食、農業、建設などの14業種で外国人労働者の受け入れが拡大しています。

ただし、高齢化による人材不足は、日本だけの問題ではありません。著しい経済成長で待遇改善が進む国も多く、そうした国々との労働力獲得競争は今後ますます激しくなることが予想されます。

2. 離職防止
病気や介護、モチベーション低下などによる離職を防ぎ、現在在籍している方々に長くはたらいてもらうことも重要です。

離職を防ぐ対策
・健康経営を行う
・ライフスタイルに合わせて就労を継続できる環境の整備
・就業者のキャリア形成支援
・労働環境の改善

まず長くはたらいてもらうために重要になるのが、従業員の健康です。そこで注目されているのが「健康経営」という概念です。経済産業省では、健康経営とは「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」と説明し、平成28年度には「健康経営優良法人認定制度」を創設しています。

さらに、年間約10万人が介護や看護を理由に離職や転職をしています。過半数が就業を「続けたかった」にも関わらず、職場理解や環境が整っていなかったために仕事を離れなければいけない事情があったようです。40歳代で約7割、50歳代で約6割、60歳代では約3割の人が就業を希望しています※14。今後ますます、両立支援のための施策が企業に求められます。

従業員のモチベーションの維持・向上も長くはたらいてもらううえで大切です。特に最近では60歳前後のシニア層の従業員に対してもキャリア形成研修等を用意し、「自分のやりたいこと」を見直してもらう機会を設ける企業も増えています。

もちろん、サービス残業の廃止や有給休暇の取得率アップ、パワハラやセクハラなどのハラスメント防止などによる労働環境改善は大前提です。

※14 内閣府「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2018 社会で支える継続就職 ~「働きやすさ」も「働きがい」も~」第3章IV 11

3. 生産性向上
生産性を向上させて省力化することも、人手不足への対応策です。

生産性を向上させる対策
・ICTやAI、RPA(Robotic process Automation:ロボットによる業務自動化)などのテクノロジーを活用

近年は改善されつつありますが、20年平均で見ると、中小企業は製造業、非製造業とも、労働生産性が低下しています※15。テクノロジーを活用し、業務を効率化することで、少ない人数で業務の遂行が可能になります。

※15 経済産業省「中小企業・小規模事業者の生産性向上について」(平成29年10月)

各々が備えて2025年を迎えよう

2025年問題は必ず訪れるもので、決して避けることはできません。しかし、適切に対応すれば、事業承継と人材不足という大きな問題のダメージを最小限に食い止めることは可能です。まず自社に起きうる事態をあらかじめ把握し、それぞれの実情に即して具体的な対応を検討することがよいでしょう。早急に対策を立て、できるかぎり迅速に行動することをおすすめします。

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