業務設計とは
業務設計とは、業務プロセスを細かく分け、業務の手順を最適化することにより、企業のパフォーマンスを向上させるための計画を立てることです。作業をただ効率化するだけではなく、エラーやイレギュラーを想定し、その影響を最小限に抑えられるよう設計をします。
業務設計をしておくことで、それぞれの業務のつながりがスムーズになり、作業効率が上がるだけではなく、トラブルが起きた際の影響を最小限にして対処できるでしょう。
業務設計の重要性
業務設計が重要な理由は、組織のムリ・ムダ・ムラをなくし、より重要な業務に集中することで、競合優位性を確保し続けるためです。
日本企業の業務の中にはどの企業でも、属人化した業務が発生しているなど、業務設計ができておらず、ムダな作業が少なからず発生しています。しかし、VUCAの時代と呼ばれる現代では、複雑で予測が困難な状況に対応できなければいけません。実際にここ数年で、AIの登場やIoT、DXなど技術は目まぐるしく変化しています。また、新型コロナウイルスへの対応など、今後起きる事象の予測は困難なことが多々あるでしょう。
VUCAの時代に対応するための土台として、一気通貫した業務設計を行い、変化に対応できる体制を作る必要があります。
業務設計を見直すポイント
業務設計をどこから見直すべきなのか検討している方は、まず以下2つのポイントを徹底しましょう。
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- 属人的した非効率な業務プロセスを可視化・改善する
- エラーやイレギュラーに対するリスクマネジメントを行う
1.属人的した非効率な業務プロセスを可視化・改善する
非効率な業務プロセスにより、業務の属人化とマニュアルの形骸化が発生します。
業務が属人化すると、対応できる人材が限られてしまうため、業務フローが不透明になってしまいます。また、もしその業務の担当者が退職してしまうと、対象業務の知識やノウハウが失われ、会社全体に影響を与えかねません。
属人化の原因は、「業務の専門性の高さ」や「従業員の多忙さによるマニュアル化の遅れ」などが要因として考えられます。そのため、属人化した業務は業務フローを可視化し、設計することも大切です。加えて、再び属人化しないために、マニュアルの作成や業務設計の簡素化を行い、仕組みを整える必要があります。
実際に、業務見直しの具体的な取り組みとして、多くの企業が「業務の標準化・マニュアル化」や「不要業務・重複業務の見直し・業務の簡素化」に取り組んでいることがわかっています。
2.エラーやイレギュラーに対するリスクマネジメントを行う
エラーやイレギュラーが発生するポイントにも着目します。業務プロセスの中で、特に関係者への連携齟齬や業務スケジュールの遅れといったエラーが多く発生している点は見直しが必要です。
エラーに対するリスクマネジメントは、エラーの原因を取り除くだけではなく、エラーが起きた場合でも対応できる体制作りが重要となります。なぜならエラーを減らすことはできても、0にすることは決して容易ではないからです。
たとえば、納期がタイトで延長も難しい場合であれば、他の行程に影響が出てしまうなどの問題が起こりえます。このような場合、エラーを想定して、少し余裕がある納期を設定する、事前にエラーがないか確認できるようにするなど、対応策を整えることで、エラーに対処しやすくなります。
業務設計を見直すステップ
業務設計を見直す際には、以下の手順で行うのが効果的です。ここでは、それぞれの行程の具体的な作業について解説します。なお、このステップは業務効率化や長時間労働の是正といった課題解決をすすめる上でも活用できます。
STEP1.各所からのヒアリング、業務の可視化
業務設計を進めるときには、その業務に関係している各所の業務を細かく可視化させましょう。現在、誰がどのような作業をどの手順で行っているかを確認します。
ヒアリングでは、現場でどのようなムリ・ムダ・ムラがあるのか、業務の細部まで確認し、ちょっとした問題まで具体的に確認できることが大切です。
STEP2.課題の整理、方針策定
STEP1で業務を洗い出した後は、課題を整理していきましょう。ヒアリングにより、複数の課題が出てくるため、課題に優先順位をつけなければいけません。
優先順位をつけるときのポイントは「課題の本質」かどうかを見極めることです。課題があった場合には、目の前の課題だけではなく、根本の原因を分析して対処することが大切です。
なお、業務設計の全てを改善するまでには時間がかかるため、「簡単に取り組めること」「成果がすぐに見えやすいもの」から取り組めるとなおよいでしょう。成果が出ることで次の課題解決へ取りかかりやすくなるため、継続して見直しを進めることができるでしょう。
STEP3.実行計画策定
改善策を具体的にどのような手順で行うか、スケジュールに落とし込んでいきましょう。
具体的なイメージがなければ、実施時の問題が見えてこず、途中で計画が頓挫するなど、大きなトラブルになりかねません。
具体的にイメージすべき部分
・計画実施のスケジュール
・どの部署(または人)が実施するのか
・事前準備として行っておくべきこと
・従業員へ周知すべき情報
・成果の評価方法
・トラブル想定 など
STEP4.計画実行
STEP3で作成した計画に基づいて、計画を実施しましょう。実施する際には、PDCAを回すため、導入前と後でどのような変化があるか、具体的に把握できる体制を整える必要があります。
STEP5.振り返り
業務設計では振り返りが大切です。実際にどのような変化が起きたか把握し、問題が起きた場合は、必要に応じてSTEP2や3に戻りましょう。
業務設計は一度実施すると、別の課題が出てくることが多々あり、柔軟な対応ができる体制づくりが大切です。また、業務設計は組織や時代の変化によって形骸化していくものでもあり、いずれは再設計が必要になります。長期的な目線で、繰り返し改善できる体制を整えましょう。
業務設計の見直しに役立つフレームワーク5選
業務設計上の課題を見つけるためには、フレームワークを活用すると、効率的かつ網羅的に、課題を整理できます。ここでは代表する5つのフレームワークの概要や実施の手順を簡単に紹介します。
・ECRS(イクルス)
・PDCAサイクル
・ロジックツリー(決定木分析)
・KPT
・バリューチェーン分析
ECRS(イクルス)
ECRS(イクルス)とは、「Eliminate(排除する)」「Combine(結合する)」「Rearrange(交換する)」「Simplify(簡素化する)」の頭文字を取ったもので、効果的な業務改善を目的に考えられたフレームワークです。それぞれの視点から改善点を洗い出します。
また、「E>C>R>S」の順番で業務改善の効果が高い傾向があるため、優先順位をつける上で効果的です。
PDCAサイクル
PDCAサイクルとは、「Plan(計画する)」「Do(実行する)」「Check(評価する)」「Action(改善する)」の頭文字をとったもので、継続的に業務改善を行うためのフレームワークです。業務設計時や業務設計を見直した後の振り返り時に活用します。
ロジックツリー(決定木分析)
ロジックツリーとは、さまざまな課題をツリーのように枝分かれさせ、分解して考えるフレームワークです。ある課題に対して、原因を網羅的に把握するために活用します。
使い方はシンプルですが、ただツリーを枝分かれさせるだけでは十分な効果を発揮しません。使うときには、漏れなくダブりなくを意識し、ツリーの根っこにある部分を的確に設定することが大切です。業務設計の際には、ある業務上の課題を分析するときに使います。
KPT
KPTは「Keep(続けるべきこと)」「Problem(辞めるべきこと)」「Try(新しく挑戦すること)」の頭文字をとったもので、これら3つの要素に分けて現状分析を行うためのフレームワークです。現状の課題分析や振り返り時に活用します。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析とは、開発・製造からアフターサービスまでの一連の業務プロセスを機能ごとに分類し、どの工程でどのような価値が生まれるのかに着目して、自社の強みと課題を可視化するフレームワークです。自社の強みが明確になることで、伸ばすべきポイントが明確になります。業務設計で、各工程の業務の価値を見直し、優先順位を決める際に役立ちます。
業務設計を効率的に行うためにアウトソーシングも活用できる
業務設計を効率的に行いたい場合には、BPOを活用する方法もあります。BPOとは、企業の業務プロセスの一部をアウトソーシングする方法です。対象となる業務のプロが業務を行うため、業務品質の向上とコスト削減効果が期待できます。
企業全体の業務を俯瞰できる人材が自社にいないといった課題を抱える企業はアウトソーシングを活用することで、自社に適した業務設計が構築できるでしょう。
まとめ
業務設計は企業の業務効率を高め、競合優位性を確保する上でも、重要な役割を果たします。また、業務設計を適切に行うと、業務のムリ・ムダ・ムラを減らし、リスクの影響も最小限にできるでしょう。見直すポイントや進め方、フレームワークを取り入れつつ、環境の変化に適応できる業務設計を進めましょう。
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