部下育成に必要なこと|大切な考え方や指導方法・よくある課題

上司の役割として部下育成の重要性を理解していても、現場での育成に課題を抱える方は多いのではないでしょうか。部下の育成手法はコーチングや1on1などさまざまなものがありますが、手法を実践するだけの表面的な関わりでは、本当の育成にはなりません。

本記事では、部下育成の基本をおさえたうえで、部下が育つ上司の特徴やよくある失敗例、育成効果を高めるポイントや具体的な育成ステップまで解説します。

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部下の育成は上司にとって不可欠な役割です。
部下を大きく成長させるためには、多様な育成施策を正しく理解することが必要です。

・部下の育成施策を学びたい
・自身の育成を振り返りたい

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目次

部下育成が重要な理由

部下育成の本質は「部下の成長を支援すること」です。部下育成は上司に与えられた重要な役割の一つであり、上司には、自身の役割を理解して育成に取り組むことが求められます。

部下の育成にあたっては、「信頼関係(心理的安全性)」の構築と「部下の話に耳を傾ける」ことが鍵を握ります。本章では、部下育成が重要な理由と育成の基本を解説します。

部下育成が重要な理由

部下の育成は企業の将来に直結します。優秀な人材の台頭は、生産性の向上や業績アップにつながるだけでなく組織の活性化にも寄与します。

現代の日本企業において、管理職に与えられる役割は増加傾向にあります。育成した部下が成果を上げて組織に利益をもたらす状態をつくりあげ、ときに自らもプレイヤーとなり成果を上げるというように、部下の育成と自らの業績といった多角的な役割が求められています。

部下が育つことは組織の業績面でプラスになるだけでなく、上司にとっても自身の評価につながったり人材教育のノウハウが蓄積されたりと、非常に重要な意味を持っているのです。

部下育成の基本は歩み寄り

このように、部下の育成は上司の重要な役割の一つであるため、上司は組織内での自身の役割を理解して、育成に取り組むことが大切です。

「育成」というと「指導する」ことに目がいきがちですが、育成の本質は「部下の成長を支援する」ことにあります。そのためには、「信頼関係(心理的安全性)」の構築が重要な第一歩です。部下に対しては「耳を傾ける」「サポートする」姿勢で接しましょう。 具体的なサポート方法については、後述します。

部下育成によくある4つの失敗

言われた通りにしかやらない部下ばかりで悩んでいる、という上司は少なくありません。しかし、このような部下の態度は、上司の行動に起因していることもあります。

本章では、部下育成に課題を抱える上司がやりがちな失敗を紹介します。自身の現状と比較して、必要があれば改善しましょう。

1.簡単な仕事しか任せない

部下に仕事を振る際に、簡単な仕事や責任の軽い仕事しか任せないようでは、部下は成長しません。

「自分は期待されていない」と勘違いし、部下の成長意欲を削いでしまうこともあります。すでに経験したことのある業務だけでは育成にはつながりません。上司側にも部下に「任せる」「挑戦させる」という覚悟が必要です。

2. 感情的・高圧的な態度を取る

感情的な態度や高圧的な接し方は、部下に恐怖感を与えます。恐怖感が根底にあると、部下は怒られないように上司に言われたことしかやらなくなり、主体性が失われる要因にもなります。このような悪循環は組織にとってもマイナスです。育成において感情的・高圧的な態度を取ることは避けるべきです。

2022年4月に、労働施策総合推進法の改正によりパワーハラスメント対策が全企業で義務化されました。上司の高圧的な態度は「パワハラ」とみなされ、社会的にも厳しい目が向けられています。

上司の感情的な態度を「マネジメント能力がない」とみなす部下もいます。上司も人間ですから、苛立ちやストレスを感じることもあります。しかし、部下への影響を考えずにそのまま感情を露わにすることは避けるべきです。アンガーマネジメントなど、感情をコントロールする術を身につけ対応しましょう。

また、管理職が無意識のうちにとった言動が、部下にとっては高圧的な態度として受け取られてしまうことも決してないとはいえません。もし、こうしたことを他者から指摘されたならば、落ち着いて過去の言動を振り返り、以降の言動を改めるようにしましょう。むしろ、自分は無意識で言動しているため、自分では気がつかないことを、勇気を出して指摘してくれた方に対して感謝するくらいの器量の大きさを身につけたいところです。

3.育成ではなく「指示」になっている

部下の業務に対して逐一指示し、その通りに仕事を進めるように促す上司もいます。仕事の方法を指示する教え方は「ティーチング」と呼ばれています。ティーチングは、部下が知らないことを教え、できないことをできるようにするために効果的な育成方法です。しかし、ティーチングだけで育成を行ってしまうと、部下は「教えられたとおりにやればよい」「できなければ聞けばよい」など、自分で物事を考えなくなってしまい、指示待ちの部下が増える原因になります。

自発的に行動する社員を育てるには、部下に仕事のやり方を自分で考えさせたり、主体的に動く機会を与えたりする必要があります。そのためには「ティーチング」に加え、問いかけて考えてもらう「コーチング」を組み合わせて育成していくことが重要です。

4.育成に計画性がない

組織の人材育成に計画性がないと、育成は場当たり的になってしまいます。これでは部下は思った通りには育ちません。育成の目標や計画を立てないまま「部下が育たない…」と悩んでいるケースは意外と多いものです。部下の育成計画を立てる方法は、後の章で解説します。

部下が育つ上司の特徴5選

部下の育成には上司の関わり方が鍵となります。この章では、効果的な部下育成を行う上司が実践していることを5つ紹介します。

    1. プロセスを評価する
    2. 約束を守る
    3. 感謝と謝罪ができる
    4. 相手の話を聴く
    5. 部下を理解し受容する

どれも一見難しいことではありません。しかし、上司は一般的に管理職の立場であることが多く、常に多忙な状態です。そのため、当たり前にできるような傾聴姿勢や評価がおざなりになってしまう場合があります。

部下の育成に悩まれている方は、今一度自身の言動を見直し、実践できているかを確認しましょう。

1. プロセスを評価する

部下の行動に対して、成果だけでなくプロセスも評価する姿勢を持ちましょう。組織や上司として、成果に目が行くのは当然です。しかし、部下の成長のためには、プロセスに着目して継続すべき点や改善すべき部分を確認することが大切です。

なぜなら、プロセスが正しくても外的要因によって成果が上がらない場合や、その逆に、恵まれた環境でたまたま成果が出てしまうケースもあるためです。プロセスに着目し、振り返りを促すようにしましょう。良くない思考・言動は改めることにつながりますし、良い思考・言動を認め、評価し、承認することは、成果につながる思考・言動の再現性を高めます。

2. 約束を守る

部下との信頼関係構築には「約束を守る」スタンスも大切です。口先だけ、言行不一致の上司には、部下も従いたくありません。約束を守ることは誠実さにつながります。

とはいえ、部下との約束の時間に、後から決まった重要度・緊急度の高い仕事をかぶせせざるを得ないことも少なからずあることでしょう。しかしそんなときも部下に誠実に向き合い、事情を説明し、次は約束を守れるようにしましょう。約束を守る誠実さは、社外に対してだけでなく、社内でのあり方も今一度振り返りましょう。

3. 感謝と謝罪ができる

感謝と謝罪は人間関係の基本です。上司である前に、ひとりの社会人として役職や立場に関係なく感謝と謝罪ができる人は、コミュニケーションも円滑に進められます。感謝や謝罪は、すること以上に、伝わることが大切です。気持ちが意図通り伝わっているか、部下や周りからどのようにみられているかという客観的視点を意識しましょう。

ときおり自身の言動について周囲や同僚の管理職に確認したり、ときにアドバイスを求めたりしつつ、必要があれば改善しましょう。

4. 相手の話を聴く

相手の話を聴く姿勢も、信頼関係を築く上で必須です。仕事の話だけでなく、雑談でも構いません。部下から「この人なら話を聴いてくれる」と思ってもらうことは、心理的安全性にもつながります。部下の成長には、上司とのコミュニケーションを通じた学び・気づきが大切です。相手の話を聴くことは、次に挙げる「部下を理解し受容する」においても重要です。

5. 部下を理解し受容する

上司に理解され受け入れられた部下は心理的な安全性が担保され、仕事への意欲が高まり、高いパフォーマンスを発揮します。また、上司にとっても部下を理解し受容することで適切な評価や指導につながり、結果として部下が育ちやすい環境となるのです。

そのためにも発言や行動の背景にある感情や思考にも関心をもって接することが重要です。

部下育成の効果を高めるポイント

本章では部下育成の効果を高めるポイントを具体的に紹介します。自身の言動と比較して、取り入れられるものがあれば参考にしてみてください。

1. 部下とコミュニケーションを図り、対等な関係を築く

普段から部下と積極的にコミュニケーションを図り、話し合いや意見交換ができる対等な関係を築きましょう。信頼関係の土台ができていると、上司と部下相互の意思疎通が活発になり、組織全体の活性化にも寄与します。

部下と対等な関係が築けているかを測る目安として「部下の本音を引き出せているかどうか」があります。そのためには、例えば呼び水として上司自らが失敗談を語り、部下に「失敗してもよい」という安心感を感じてもらうことも効果的です。自身の失敗談のあとに部下に「最近どう?」などと話を向けることで、部下に本音で話しやすい場を提供できます。

2. 部下に関心を持ち、傾聴する

上司が部下を育成するときには、部下の一人ひとりに関心を持ち、相手を理解する姿勢を持つことが重要です。上司が部下を理解しようという姿勢は、部下から上司への信頼感につながり、育成効果をさらに高めます。

「上司が自分に関心をもって話を聴いてくれている」と感じている部下は、心を開いて本音で話そうとします。そして自ら話したことに責任をもって主体的に取り組むようになります。

このように部下の意見を尊重し、対等な関係を築けるよう努めることで、育成を効果的に進めることができます。

具体的な傾聴のポイントとして、以下の3つを実践することをおすすめします。

    • 相手が言おうとしていることに関心を示す(聴)
    • 相手の話を明瞭化、確認、コントロールするために質問する(問)
    • 理解の仕方を伝え、正しいかどうか確認する(聞)

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3. 部下一人ひとりに合わせたサポートを行う

上司のサポートの必要性は、部下一人一人の状況によって異なります。上司は部下の状況、スキルの習得度などを把握し、一人ひとりに合ったサポートを行いましょう

一例として、相手の状況に応じて自分の振る舞いを変える「SL理論」を紹介します。SL理論はハーシィ(P.Hersey)とブランチャード(K.H.Blanchard) が提唱したものです。SLはSituational Leadershipの略であり、相手の状況に応じて自らのリーダーシップ行動を合わせるという意味合いです。

SL理論ではリーダーシップを「説明型」「説得型」「参加型」「委託型」の4つの型に分類しています。以下の図では、メンバーは習熟度の低い方から順に右下→右上→左上→左下へと成長していきます。

このように、メンバーの習熟度に応じてコミュニケーション量や業務指示の方法を変えていくことで、効果的なサポートを実践していきましょう。

4. 自分の考えや価値観を押し付けない

上司は、部下に自分の考えや価値観を押し付けないようにしましょう。部下は個性やスキル、キャリア志向など、それぞれ異なる属性を持っています。上司の仕事は、部下を説き伏せることではありません。上司が良かれと思って育成、指導する内容が、その部下にとってふさわしいかどうか、その部下の意向に沿うかどうか、相手とその状況を省察しながら接するようにしましょう。

もし部下の考えや価値観が間違っていると感じたとしても、いきなり否定するのではなく、まずは部下の意見を聴き、共感することが大切です。。共感は必ずしも合意を意味しません。共感を示すことで多様な考えを受け入れる姿勢を示します。そのうえで、違いを明らかにしつつ、合意に向けて話し合うようにしましょう。

5. 怒るのではなく「叱る」

部下へミスや間違いを指摘する際は、感情的に怒るのではなく、具体的な言動について叱るようにしましょう。その際、部下の人格や人間性まで否定してはいけません。部下の成長を阻害する原因になります。部下を叱る際は、改善してほしい言動にフォーカスしましょう。

部下に成長を促すための叱り方について、3つのポイントを紹介します。

部下が取った「行動」に対して指摘する

部下の行動を対象にして指摘を行います。その際、行動と人格や人間性を結びつけないように注意します。「あなたは〇〇だからダメだった」という部下の人間性を否定するような伝え方は、やる気や自信を失わせかねません。

状況をセットで語る

その行動は常に悪いのか、というと、状況に応じて評価や判断が異なることもあるものです。行動そのものは悪いとは言い切れない場合もあるため、状況をセットで語ることが重要です。状況の説明がないと「どんな状況であってもNGなのだ」と勘違いしてしまう部下もいるためです。

「Aの状況での、Bの行動はよくなかった」というように、状況と行動をセットで指摘を行います。

行動の影響について問いかける

その行動を続けた場合、ビジネスにおいてどのような影響が起こり得るかについて、上司が部下に質問します。まずは問いかけからはじめ、自分自身で考える機会を与えます。

上司が問いかけても部下が考えが浮かばない場合などは、上司側から示唆を含む問いかけをするようにします。例えば、「私はこう思うけど、あなたはどう思う?」などです。いきなり示唆したりティーチングしたりせず、問いかけから始めましょう。その上で段階的に情報を伝えましょう。

6. 目標を明確にする

育成の目標を明確にすることで、部下は自身が到達すべきレベルを理解できます。この目標について、話し合いを通じて合意することで、部下は自律的に努力をしはじめます。

目標を設定する際に注意することが二つあります。一つは部下に対する期待を語ることです。「私はあなたにこうなってほしい」と期待を語るのです。その際、会社や所属部門の今後の方針や組織として求める人材像などの情報をあわせて共有しながら期待を語ると良いでしょう。部下とともに話し合いながら目標を決め、合意することで、部下のやる気を高めることができます。「こういう人材を求めている」「あなたはなれると期待している」「だからこそ取り組んでほしい」という流れです。

もう一つは、一方的に期待を語るだけにせず、部下の希望を聴くことです。「自分はどうなりたいか」を自律的に考えさせることです。本人から希望を聴くとはいえ、実力から乖離しすぎた目標はかえってやる気を損なうため、部下の業務内容や状況・習熟度を加味して目標を決めましょう。

7. 振り返りを行う

部下の育成において、定期的な振り返りは極めて重要です。目標設定後は、都度進捗に関わりながら、目標達成までの距離感、業務の改善点などをフィードバックすると良いでしょう。

育成計画を立てる際、どの時期に振り返りを行うかまで決めておきましょう。

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部下育成の具体的な手法

部下を育成する際に用いる具体的な手法を6つ紹介します。コーチングや1on1などさまざまなものがありますが、手法を実践するだけの表面的な関わりでは、本当の育成にはなりません。それぞれの特長を理解し、自身の環境に適した手法を展開しましょう。

MBO(目標管理制度)

MBO(Management by Objectives)とは、社員一人ひとりに目標を設定し、達成までのプロセスを管理することを指します。部下は、組織の方針と自身の方向性を擦り合わせながら、上司とともに目標を設定します。社員自らが目標達成までを管理することで、主体的な取り組みにつながりやすく、業務効率の向上も期待できるとされています。

関連記事「MBO(目標管理制度)とは?概要、メリット、注意点を解説」を見る

OJT

OJTとはOn-the-Job Training(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)の略で、日本で多くの企業が取り入れている育成手法の一つです。実際の現場に存在する知識・スキルを、実務を通じて身につけます。

OJT担当者となる先輩社員がマンツーマンまたはそれに近い体制で指導を進める手法で、多くの場合は新入社員や未経験者、未熟練者に対して行われます。

Off-JT

Off-the-Job Training(オフ・ザ・ジョブ・トレーニング)の略で、研修やセミナーといった活動を通し、職場を離れたところで知識やスキルを学ぶ手法です。職場には存在しない知識・スキルを習得する、もしくは職場外で習得したほうが効果的、効率的である場合に用いられる手法です。

例を3つ挙げます。

1つ目は職場にない知識・スキルを学ぶ事例です。例えば、DX推進の一環で、事務系社員がAI・IOT・RPAなどを学び、職場の実務に適応するケースなどが該当します。

2つ目はOff-JTのほうが効果的・効率的なケースです。例えば、階層別教育があります。新入社員研修で学ぶ一般的な社会人としてのビジネスマナーの基礎などが該当します。

3つ目は昇格時に行なわれる階層別研修です。昇格に伴い、組織が社員に期待する役割は変化します。忙しい日常の職場を離れ、普段とは異なる環境で、新たな役割において期待されていることを確認し、その役割に必要とされる新たな知識・スキルを学びます。

こうした内容は、職場内において教育の機会を設けるよりも、外部の研修を利用したほうが、リソースや効果の面で効果的・効率的といえるでしょう。

Off-JTでは、事業部門の課題と、その解決のために必要な知識・スキルを学ぶ機会を提供することが重要です。そのためには事業部門から人事担当者に対して、実施してほしいOff-JTを提案するとよいでしょう。人事などの管理部門ではなかなか気がつかない現場の課題や求められるスキルを提案することで、より有意義なOff-JTが実現できるようになります。

コーチング

コーチングとは、主体性を引き出し、自発的な成長を促す育成手法です。部下のありたい姿と現状について、関心をもって傾聴し、これからの行動について引き出していきます。コーチは対象者の考え方や自主性を引き出すのに効果的な質問を投げかけていきます。

コーチングには一定の知識やスキルが必要です。部下の自主的な行動を導くため育成には時間がかかります。しかし、コーチングを受けている部下はモチベーションを触発され、自ら考えて動くようになるなど、本質的な成長が望めます。

コーチングを行う際に基本となるスキルや原則、コーチング力を身につける方法については「コーチングとは?ビジネスへの活用効果やメリット・やり方を簡単に解説」をご覧ください。

1on1

上司と部下がマンツーマンでミーティングを行い、部下の成長を促す育成手法です。対話を通して、部下の考えを整理したり気づきを与えたりします。

上司は部下の課題や目標を共有することで、部下が主体的に仕事に取り組めるようサポートします。定期的な1on1の実施により、部下は自身の成長に気づくことができます。また上司にも認められることでエンゲージメントが向上し、次の課題に挑戦するという好循環が生まれるのです。

関連記事「効果的な1on1とは?目的やメリット、テーマ例や進め方を解説」を見る

自己研鑽

上司から部下にテーマを与え、学習を促していくことも有効な育成手法の一つです。はじめは上司からの要請など、周囲からの外発的動機であったとしても、学習を続けるうちに「これは役に立ちそうだ」「これならできそうだ」「もっと学びたい」など内発的動機づけへと変わっていくことがあります。部下自らが「学びたい」と主体的に取り組んでいくことで、習熟する速度が上がります。

また、上司は外発的動機を与えて放任するのではなく、学習の途中で進捗の確認をするなど、プロセスにおけるフォローをすることが重要です。

部下育成のステップ

部下の育成における具体的なステップを紹介します。育成という言葉が抽象的で、何をすべきか迷っている際は、以下に沿って実践してみてください。

1.目標の設定

まず、育成対象となる部下の育成における目標を設定します。企業や組織に必要な人材像を目標におき、部下にいつまでにどの状態までを目指してもらうのか、将来像を具体化します。自社がどのような人材を必要としているかの確認は、人事制度の職能等級や職務記述に基づいて検討するのがよいでしょう。

上司として部下に目指してもらいたい目標を仮決めできたならば、部下と面談し一緒に育成の目標を定めましょう。

2. 現状の把握

部下との面談を通じて、部下自身が今の自分にできることと、できないことや課題などを深く掘り下げて考える機会を設けます。ポイントは、目標達成のために何が障壁となっているかに着目することです。スキルの問題や心理的要因といった現状を把握し、次に行うステップで、より具体的な計画へと落とし込みます。

3.育成計画の立案

目標と現状を確認したら、育成計画を作成します。具体的には、「いつまでに」「何を」「どのレベルまで」できるようになるかを決定します。ここでも上司が一方的に計画するのではなく、部下の意向も汲み取りましょう。育成計画に部下自身の考えも盛り込むことで、納得感や主体的な取り組みへとつながっていきます。

4.育成手法の検討

育成計画をもとに、手法の検討に取りかかります。人材育成には、前述したOJT、Off-JT、ティーチング、振り返りとフィードバック、コーチングなどさまざまな手法があります。育成の対象者と目的に合った手法を選びましょう。

5. 実施・改善

実務を通じた育成を行います。部下に仕事を割り振ったあとも、任せきりではなく、仕事を進めやすいよう適宜フォローを行うなどしてコミュニケーションを図りましょう。今の実力より少し上の挑戦しがいのある業務を課するのも有効です。成果が出れば、大きな自信につながります。振り返りによる改善も欠かさず行いましょう。

最後は実施した内容に対して、フィードバックを行います。フィードバックをもとに改善点を洗い出し、次のPDCAサイクルへとつなげることで、持続的に成長できます。

まとめ|企業に必要とされる人材を育成し組織の活性化へとつなげる

部下の育成と一口に言っても、その手法やおさえるべきポイントは多岐にわたり、実践には難しさが伴います。部下育成の成果は、上司の関わり方で決まると言っても過言ではありません。

パーソルグループでは、上司のマネジメント力や人材育成に関する研修プログラムを幅広く用意しています。実践や運用にあたってお困りごとがあれば、ご相談ください。

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部下の育成は上司にとって不可欠な役割です。
部下を大きく成長させるためには、多様な育成施策を正しく理解することが必要です。

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監修・インタビュー

株式会社パーソル総合研究所 ラーニング事業本部
トレーニングパフォーマンスコンサルタント

渡邉 規和

大手人材サービス業にて営業管理職(東京・仙台・大阪)、BPO事業のプロジェクトマネジメントに従事。9つの新規受託案件の立ち上げ~運用に関わる。その後、合弁会社の人事(採用・研修)を経て、2018年 富士ゼロックス総合教育研究所(現パーソル総合研究所)入社。

トレーニングパフォーマンスコンサルタントとして、営業力強化・コミュニケーション力強化を中心に組織人材開発に従事。 対面集合・オンライン合わせて年間約140日のトレーニング・ワークショップをファシリテーション。

自身のリカレントのために、専門職大学院である社会構想大学院大学 実務教育研究科に在籍。研究テーマは「『越境学習としての集合研修』を起点とした組織外知識の組織内転移」

資格等:・PMP®
    ・Points of You® Expert
    ・DiSC®認定ファシリテーター
                  ・ブレンディッドラーニングデザイナー (一般社団法人 日本フューチャーラーナーズ協会)
    ・認定ワークショップデザイナー (一般社団法人 ワークショップデザイナー開発機構)
    ・国家資格キャリアコンサルタント (登録番号17060950)
    ・アクションラーニングコーチ (NPO法人日本アクションラーニング協会)

よくあるご質問

Q1.部下が育つ上司の特徴は?

A1.本記事では部下が育つ上司の特徴として、以下の5つがあります。どれも難しいことではありませんが、実際の現場では、育成担当者の多忙により、傾聴姿勢や評価がおざなりになる場合があります。今一度、実践できているか確認しましょう。


1.プロセスを評価する
2.約束を守る
3.感謝と謝罪ができる
4.相手の話を聴く
5.部下を理解し受容する

>>部下が育つ上司の特徴5選

Q2.部下育成のよくある失敗は?

A2.部下育成の際にやりがちな失敗として、以下の4つがあります。自身の現状と比較し、必要があれば改善しましょう。


1.簡単な仕事しか任せない
2.感情的・高圧的な態度を取る
3.育成ではなく「指示」になっている
4.育成に計画性がない

>>部下育成によくある4つの失敗

Q3.部下を育成するにはどうすればいい?

A3.育成の効果を高めるポイントとして以下の7つが挙げられます。ポイントをおさえて実践に取り入れてみてください。


1.部下とコミュニケーションを図り、対等な関係を築く
2.部下に関心を持ち、傾聴する
3.部下一人ひとりに合わせたサポートを行う
4.自分の考えや価値観を押し付けない
5.怒るのではなく「叱る」
6.目標を明確にする
7.振り返りを行う

>>部下育成の効果を高めるポイント