2023年02月27日
デジタル化やコロナ禍で急速に進んだはたらき方の多様化など、企業を取り巻く環境は急速に変化し続けています。こうした変化に対応すべく、人事部門においてもさまざまな変革が求められています。
人事領域においてどのような変化が起きているのか把握したうえで、自社における課題を洗い出し、解決策を検討することが大切です。
本記事では、人事課題の現状から注目が高まっているキーワード、自社の課題を把握するステップや対策について詳しく解説します。
【最新】人的資本経営に関する人事施策調査レポート公開
パーソルグループでは、企業の経営層ならびに人事に携わる人を対象に、人的資本経営に関する企業の取り組み実態調査を行いました。調査結果の中から「人材ポートフォリオに関連する取り組み」についてまとめたレポートを公開中です。
人事体制や中核人材の充足度、従業員情報の管理・活用度についても傾向を記していますので、経営・人事の皆さまはぜひご活用ください。
人事課題を未然に防止するためには、多くの企業で起こりがちな課題とその解決策について把握しておくことが重要です。
人事部門が担う業務は多岐にわたっており、大きく以下の5つに分けられます。それぞれにおける課題と解決策を詳しく紹介します。
厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和4年12月分)について」によると、令和4年12月の有効求人倍率は1.35倍と、依然として売り手市場が続いていることがわかります。
人材獲得競争が激化する中、自社が求める人材を採用するためには、採用マーケティングを取り入れ、自社のファンを一人でも多く作り出す手法も考えられます。
自社にどのような人材が必要なのか、その人材とどのように接触し、どのように自社の魅力を理解してもらうのか、採用におけるターゲットを明確にし、適切なコミュニケーションを図ることが重要です。
採用のミスマッチなどによって、人材が定着しないことも課題です。
株式会社パーソル総合研究所の「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」によると、入社後に感じる何らかのイメージギャップ「リアリティ・ショック」を抱える社会人は76.6%にも及ぶことがわかりました。
さらに、リアリティ・ショックは離職にも大きな影響を与えていることがわかっています。
せっかく採用しても、すぐに離職になってしまっては採用・育成コストに大きな損失をもたらします。入社後にミスマッチが起きないよう、採用時に会社の良い面に加え、業務の厳しさも包み隠さず発信するなど、入社前後のギャップを軽減する工夫が必要です。
パーソルホールディングス株式会社の調査によると、今後2~3年で注力したい人材・組織のテーマとして、「次世代リーダーの育成」「新人・若手社員の育成/活用」など、人材育成に関わる項目が上位に挙げられています。
しかし、思うように人材育成ができていない企業が多いのが現状です。厚生労働省の調査をみると、育成にかける時間が不足していることや指導人材の育成スキル・指導意識の不足が要因であることがわかります。
日々の業務に追われ、人材育成に費やす時間が確保できないという企業が多いようです。また、人材育成の予算を確保していないという場合もあります。まずは人材育成を行う目的を明確にし、必要な制度の整備や教育指導の仕組みづくりを見直すことが大切です。
効果的な人材育成には、育成する側のスキルやマネジメント力は必須です。あらかじめ、管理職や将来人材育成を担う社員に対して教育・研修を行いましょう。
株式会社パーソル総合研究所の「人事評価と目標管理に関する定量調査」によると、約4割の従業員が自社の人事評価制度に不満を抱えていることがわかります。従業員の人事評価に対する納得感が低く、会社に認められている、評価してもらえていると感じられないと、人材流出や従業員のモチベーション低下につながります。
人事評価制度を導入しているものの、社内に定着しておらず、正しい運用がなされていないケースも多く見受けられます。
また、リモートワークなど新しいはたらき方を導入する企業が増えているため、評価基準・項目も見直しが必要です。しかし、対応できている企業はそう多くありません。評価基準が不明瞭だったり、評価にばらつきが生じたりすると、従業員の不満に繋がります。
改めて、人事評価の目的や基準を明確にしたうえで「いつ」「だれが」「どのように」評価するのか、具体的な運用方法まで見据えた制度の再構築が求められています。
人事評価においてフィードバックは重要です。行動や成果の振り返りを行い、成長を促す機会として有効に活用します。
適材適所の人員配置の実現は、組織の活性化や生産性の向上につながります。しかし、従業員のスキルや適性、キャリアプランや各部署の状況など、考慮すべき要素が複数あります。
適材適所を実現するためには、一人ひとりのスキルや適性、キャリア情報などの幅広い人材データの把握が欠かせません。しかし、実際に人員配置に人材データを活用できている企業はあまり多くありません。
人材データを人員配置に活用できていない理由として、人員配置に必要な情報が集約できていない点があげられます。まずはどのようなデータがあるかを確認し、不足しているデータについては組織全体で収集を進めることが重要です。データの集約・一元管理にはタレントマネジメントシステムなどを活用することも一つの方法です。
「自身のスキルと仕事内容が合わない」「今のポジションではキャリアアップが難しい」といった配置に対する不満から優秀な人材が流出してしまう可能性もあります。
転職サービスdodaの「転職理由ランキング」によると、転職理由として「キャリアアップが望めないこと」が給与の低さに次いで挙げられています。
キャリアアップを目指す志の高い人材を失うことは、会社にとって大きな損失です。本人の意向を考慮した配置を実現することは、優秀な人材の流出防止につながるでしょう。
労務管理においては、働き方改革や多様なはたらき方の広まり、法改正などに対応していくことが求められています。
2020年に改正された労働施策総合推進法により、企業へパワハラ防止措置が義務付けられました。
企業が講ずべき措置としては、ハラスメントの内容やハラスメント防止の方針を明確化し、社員に周知・啓発する、適切に対応できるよう相談窓口などの体制を整備することなどがあげられます。
加えて、職場のコミュニケーションの活性化など、ハラスメントの原因となる要素へもアプローチが必要です。
コロナ禍を機に、リモートワークが急速に普及しました。「場所を選ばずはたらくことができる」「通勤時間が不要になった」といったメリットがある一方で、課題も浮かび上がっています。
パーソル総合研究所の「テレワークへの影響に関する緊急調査」によると、テレワークでは「労働時間が長くなりがち」であることがわかりました。
リモートワーク環境下では勤務実態の把握が難しくなるため、勤怠管理や業務可視化などのツール導入がおすすめです。ツールを導入することで、従業員一人ひとりの勤務実態や作業内容が可視化され、誰がいつ何をしていたのか把握できるため、長時間労働の是正につながります。
人事部門の人材不足も課題です。パーソル総合研究所の調査によると、約6割の企業において人事部の人員不足を感じていることがわかりました。
人事課題の解決には、人事部門が主体となって施策を推進していくことが求められます。まずは施策を推進する実行体制が整っているかを確認しましょう。ITツールを活用したり、アウトソーシングを活用したりすることで、人事業務の効率化を図るのも一案です。
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すでに起きている課題だけでなく、経営・人事領域で起こっている変化を把握し、対応することも重要です。昨今注目が高まっている5つのテーマについて解説します。
人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です。
人的資本の重要性が高まっている背景の一つにESG投資への関心の高まりがあげられます。ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の観点から、起業の将来性や持続可能性を分析・評価した投資を指します。
環境汚染や不当労働問題などの社会課題を受け、財務情報や業績といった従来の情報だけでは企業価値の判断が難しくなり、ESG投資を評価する投資家や消費者が増えつつあります。そのため、社会(social)に該当する企業の人的資本についても開示の重要性が高まっています。
さらに、現在は第4次産業革命を迎えており、技術力のみで競合との差別化を図ることが困難になりつつあります。成熟した市場において、企業として生き残っていくために、イノベーションを生み出すことのできる人材が必要不可欠です。そのため、従業員が価値を発揮できる環境を整える「人的資本経営」が求められています。
ウェルビーイングとは、well(よい)とbeing(状態)が組み合わさった言葉です。「よく在る」「よく居る」状態、つまり心身ともに満たされた状態を表す概念です。
国際目標であるSDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」(Goal3:Good Health and Well-Being)にもWell-Beingが含まれており、SDGsの達成に必要とされています。さらに日本でも、2021年政府発表の「成長戦略実行計画」において「国民がWell-beingを実感できる社会の実現」と言及しており、国内でも加速度的に取り組みが進んでいます。
また、経済産業省によると、就活生が就職先を選ぶうえで「従業員の健康やはたらき方に配慮している」ことを最も重視していることが分かっています。
ウェルビーイングを取り入れることで、従業員がいきいきとはたらき続けることができ、人材難のなかでの採用においてもプラスの効果が期待できます。
パーパス(purpose)とは、一言で言うと企業としての存在意義です。「何のために自社は存在するのか」という問いに対し経営理念や企業のあり方として定めるもので、パーパス経営はその存在意義に基軸を置いた経営を指します。
ESGの広がりや2015年に国連サミットにてSDGsが採択されたことをきっかけに、パーパス経営も注目を集めています。
SDGsでは環境問題、人権や経済、テクノロジーといったさまざまなテーマが設定されており、いずれも社会課題と密接に関連し、企業として取り組むべき課題が多数存在しています。企業の存在意義が利益の創出から社会貢献へとシフトしていることも相まって、社会貢献が前提となるパーパス経営への注目が高まっているのです。
加えて、VUCAと呼ばれるように、外部環境の変化が激しい時代であることも、パーパス経営に取り組む要因の一つです。VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字から取った言葉で、将来の予測が困難な状況を示します。
VUCA時代においては、変化に迅速かつ柔軟に対応するべく、「何のために会社があるのか」「どのような戦略や施策を行うのか」を明確に示すことが必要です。そのためには、従業員と企業それぞれのパーパスを紐づけることで、組織全体で同じ方向を向くことが重要です。
「人生100年時代」と言われるように個人のはたらく期間が長くなっている中、ミドル・シニア人材の活性化に関心が高まっています。ミドル・シニアとは40~60代を指すことが多く、組織の中で最もボリュームのある層です。
ミドル・シニア人材は経験やスキルが豊富なため、即戦力としての活躍が期待できることがメリットですが、「変化を嫌う」「キャリアに固執する」といった傾向に課題を抱える企業も少なくありません。キャリア形成支援等のミドル・シニア活性化施策に着手することは、今後企業の持続的な成長の鍵となります。
リスキリングとは、現在とは異なる職務や新たな分野のスキルを獲得する/させることを言います。経済産業省の「人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート2.0~」でも経営戦略と人材戦略に必要な共通要素の一つにリスキリングが挙げられており、技術や価値観の進歩、時代の変化に合わせて、必要なスキルを得る重要性の高まりが伺えます。
2022年9月にパーソルホールディングスが行った調査によると、今後必要なリスキリング施策として「全体底上げのためのデジタルスキル」(32.4%)、「全体底上げのための高度・専門スキル」(31.9%)があげられています。
外部環境の急激な変化やDXの進展などに対応していく力を企業として高めていくために、今後もリスキリングの重要性が高まっていくことが予想されます。
自社の人事課題を解決するには、目標設定、ギャップの把握、課題の設定、施策の実行といった4つのステップで進めていきましょう。
まずは上位概念である企業理念(パーパス)や経営計画を確認し、自社が目指すべき方向性や人事部に必要な人材ポートフォリオを定めます。
人材ポートフォリオとは自社の人材がどのように構成されているかを表したもので、これらを明確にすることで現状把握や課題分析、また、経営目標達成に向けた採用計画や人材育成、配置、評価などの目標設計が可能になります。
定義した人材ポートフォリオに対して、現状の人員配置の見直しを行います。経営目標達成に必要なスキルを持つ人材は不足していないか、どのようなスキルを持つ人材が多いのか、といった視点で見直すと、現状とのギャップが見えてくるでしょう。
このとき、多くの企業に起こりうる採用・育成・評価・配置・労務管理の各項目に基づきギャップを洗い出すと効率的です。施策の実行に十分なリソースが確保できているか、行なっている施策が適切か、その効果測定ができているか、さまざまな視点で目標とのギャップを可視化させていきます。
目標とのギャップが洗い出せたら、注力すべき優先度の高い課題を設定します。
ギャップを洗い出していくと、比較的すばやく解決できるものから難易度が高いものまでさまざまな問題が見えてきます。ギャップが大きいものほど解決には労力を要しますが、人事目標の達成に向けて最もインパクトが大きいギャップを人事課題として設定しましょう。
その際、取り組むべき課題の内容だけでなく、解決に向けて実行する体制が構築できているか、解決の進捗を測る指標が設定できているか、どのようなスケジュールで実行していくのか、具体的な行動計画を策定しましょう。
解決すべき課題と行動計画が策定できたら、あとは実行あるのみです。優先度の高い課題から施策を実行し、課題解決に向けて効果が生まれているか、定めた指標と共に振り返りを行いましょう。
効率的にPDCAを回していくためには、人事業務のデジタル化やシステムの活用が有効です。人事部門においても、採用管理システムやタレントマネジメントシステムといったITツールやテクノロジーの活用が進んでおり、人事におけるDXの推進は戦略的な業務推進や業務の効率化にもつながります。人事課題の解決に向け、人事DXの考えも視野に入れてみましょう。
企業を取り巻く環境は大きく変化しており、人事部門においてもさまざまな変革が求められています。
経営・人事領域においてどのような変化が起きているのか把握したうえで、自社における課題を洗い出し、解決策を検討することが大切です。
改めて自社の現状を把握し、潜在的な課題がないか確認してみませんか。
【最新】人的資本経営に関する人事施策調査レポート公開
パーソルグループでは、企業の経営層ならびに人事に携わる人を対象に、人的資本経営に関する企業の取り組み実態調査を行いました。調査結果の中から「人材ポートフォリオに関連する取り組み」についてまとめたレポートを公開中です。
人事体制や中核人材の充足度、従業員情報の管理・活用度についても傾向を記していますので、経営・人事の皆さまはぜひご活用ください。
A1.人事に関する業務は幅広く、それぞれの業務で人事課題は起こります。主に以下の5つに分類することができ、未然に防止するためにはそれぞれにおける課題と解決策を把握することが重要です。
A2.すでに起きている課題だけでなく、今後起こりうる課題に備えることも大切です。2023年時点のトレンドとして、以下5つのテーマが挙げられます。
A3.人事課題を解決していくには、自社の掲げる目標に対して起きている問題を把握し、解決するための課題を設定することが大切です。