人事DXにおける課題と対応策
多くの企業で人事DXが推進されている一方、特に人事データの活用においては多くの課題があることがわかりました。
パーソル総合研究所の調査によると、41%の企業が人材データを分析しているものの、意思決定に活用している企業は16.9%にとどまり、分析しても意思決定に活かされていないことがわかります。
【参考】株式会社パーソル総合研究所「人材マネジメントにおけるデジタル活用に関する調査2020」
なぜ、このようなことが起こるのか、人事領域のDXにおける課題と対応策を紹介します。
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- データが部門をまたいで点在している
- システムやツールの導入が目的化している
- 経営部門を含む社内への周知が十分でない
- DX人材が不足している
1.データが部門をまたいで点在している
人事データが人事部に集約されておらず、書類として残っていたり、現場の教育担当者が保持していたり、部門をまたいで点在しているケースがあります。異動した従業員の過去の記録が前部署に保存されていることもあるでしょう。
まずは各部署に点在している人事データについて、優先度の高い情報から収集しましょう。そのうえで、全社的な情報管理ルールを徹底するといった仕組みの整備が必要です。ツールを導入しても、従業員が使い方に慣れないと入力や確認が形骸化してしまうため、導入した目的やマニュアルを周知しましょう。
2.システムやツールの導入が目的化している
近年、低コストで気軽に導入できるHRテックサービスが増えています。しかし、ツールの導入が目的となってしまっているケースも多いようです。
しかし、DXとはテクノロジーを活用した業務や組織の変革であるため、システムやツールはあくまでも手段の一つです。そのため、目的の明確化とDX達成へのロードマップを描いた上で、必要なところに必要なだけのツール・サービス導入を進めることが一番の近道です。
まずは既存業務を洗い出したうえで要件定義を行い、その後どのようなツールを活用してDXを実現していくのか、といった順で進めましょう。
3.経営部門を含む社内への周知が十分でない
人事部門だけで新たな試みを導入してしまうと、経営戦略とのズレが生じてしまったり、抜本的な変革に対して社内で反発が起きてしまったりすることもあります。特に、人材データの収集は十分な説明なしに行ってしまうと「評価が悪くなったらどうしよう」「何に使われるのだろう」といった従業員の不安を招きかねません。
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- なぜDXを推進するのか
- 新たな試みによって企業として何を目指していこうとしているのか
- どのようなメリットがあり、従業員に還元されるのか
DXを推進することで達成したい目的を十分に社内で共有しましょう。周知が十分でないと、推進が遅々として進まなかったり、実現できたとしてもその後制度が形骸化したり、意図しない形に改変されてしまったりする恐れがあります。
4.DX人材の不足
DXを推進する人材がいない課題を抱える企業も多いです。総務省「令和3年版 情報通信白書」によると、DXを進めるうえでの課題として、53.1%もの企業が人材不足を挙げています。
【出典】総務省「令和3年版情報通信白書|総務省」
今後もDX人材の獲得競争は激化することが予想されます。どのようにDX人材を育成すれば良いのか、どのような資質が必要なのかについては以下の記事で詳しく解説しています。