2021年06月02日
2024年12月18日
採用や育成、人事評価など、人事部門の多様な業務を効率化する手段として「HRテック」が注目されています。HRテックとはテクノロジーを用いて人事が抱える課題を解決に導くサービスや技術のことです。
本記事では、HRテックに関心をお持ちの方、導入を検討している方に向けて、HRテック活用のメリットや導入のステップ、注意すべきポイントを解説します。
人事DXを成功に導く、HRテック活用ガイド公開中
テクノロジーの進化によって、人事部門では採用・評価・育成まで、あらゆる業務においてHRテックの導入が進んでいます。
「人事業務をデジタル化したい」「人事部門の生産性を高めたい」「従業員データを可視化したい」といったお悩みをお持ちの方に向けて、パーソルグループでは、HRテックが普及した背景からHRテックの種類、導入のメリットと注意点についてまとめた【人事DXを推進するHRテックガイド】を公開しています。
人事の生産性向上や業務改革に課題をお持ちの方は、ぜひご活用ください。
目次
HRテックとは、「Human Resources」と「テクノロジー」をかけ合わせた言葉で、ビッグデータやクラウド、IoTやAI(人工知能)などのテクノロジーを用いて、人事が抱える課題を解決に導くサービスや技術のことです。
例えば、人事管理システムや採用管理システムといった、人事領域のサービスやツールのことを指します。
その市場規模は近年急速に成長しており、株式会社Lifeplayが運営するWebメディア「HR Techガイド」が公開した「HRテックカオスマップ2023年最新版」のHRテック一覧の数からもその傾向が見てとれます。
HRテックが普及した背景には以下の3点があげられます。
日本では多くの企業が、自社のサーバーを用いた「オンプレミス型」のシステムを使用するのが一般的でしたが、テクノロジーの発展により、クラウド型のサービスが急速に普及しています。オンプレミス型のシステムは、下記のメリットがあります。
しかし、近年クラウド型サービスでも、継続的にアップデートされていたり、暗号化通信やIPアドレス制限といった機能を備えていたり、セキュリティレベルの高い製品がリリースされるようになってきました。
クラウド型サービスは導入費用や維持費用が安いものが多くあります。コストや社内のシステム部門の負担を軽減できるため、十分な機能・安全性を持つクラウド型サービスの登場により、切り替える企業が増えています。
少子高齢化の影響で今後も労働人口は減少していくと予想されています。限られた人的資本で企業の競争力を維持・向上させていくためには、十分な戦略に基づいた人材配置や育成計画の立案が必要です。
そのために活用できるのがHRテックです。HRテックの活用により、人事業務が効率化されたり、スキル・経験といった人材データが見える化されることで、データを基づく、戦略的な人材配置や育成計画の立案に役立ちます。
【関連記事】人事戦略とは|戦略人事との違い、目的、策定フローを解説
コロナ禍を機にテレワークが浸透し、社内システムに外部からアクセスする機会が増えています。オンプレミス型のシステムは外部からのアクセスを前提としていないものも多くあり、システムを改修しなければいけないこともあります。
一方、クラウド型サービスは外部アクセスの設定が容易なものが多いため、はたらき方の変化に、柔軟に対応できるよう、クラウド型サービスを導入する企業が増えています。
【お役立ち資料】人事DXを推進するHRテックガイド
テクノロジーの発展によって、急速にHRテックの普及が進んでいます。 パーソルグループでは、HRテックが普及した背景、種類、導入のメリットと注意点についてまとめた資料を公開しています。HRテックの導入を検討されている方はぜひご活用ください。
現在、HRテックのクラウドアプリケーションは数百以上にもなるといわれています。その種類は、採用から育成、社員の健康管理までさまざまです。HRテックは大きく7つの領域に分類できると考えられています。
ここでは、各領域でHRテックを導入するとどのようなメリットがあるのか見てみましょう。
市場の大きい採用領域では、多様なサービスが登場しています。
代表的なものとして、採用のオペレーション業務を自動化することで採用そのものに向き合う時間を増やす人材管理システムや、AIやデータベースを活用して、優秀な転職潜在層にアプローチするダイレクトリクルーティングツールなどがあります。
【関連記事】ダイレクトリクルーティングとは?4つの手法やメリット・デメリットを解説
企業規模が50名以上になると、人事評価や人材配置は大変な作業です。そこで重要になるのが、社員のスキルや能力を把握し、戦略的な人材配置・育成を実現するタレントマネジメントです。
タレントマネジメントシステムの導入により、データベース上で社員の能力や特性を可視化することができます。また、組織・人材の情報が一元化し、個々の能力を活かした適材適所への配置転換を行えるようになります。
【関連記事】タレントマネジメントとは?導入手順、目的を解説
エンゲージメントとは、会社や仕事に対する社員の愛着心や思い入れを指します。
社員の意識調査をデータベースとして可視化し、それを基に企業が目指す方向性の明確化やKPI達成のための具体策の策定、組織的な人事施策を行うことで、エンゲージメントの向上を図ることができます。
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社内におけるIDカードによる打刻だけでなく、テレワークによる社外からの打刻もあります。また、フレックスや裁量労働制など勤務体系も多様化が進んでいます。
勤怠管理ツールを活用することで、社員一人ひとりの情報が複雑化しても、一元的に管理することができます。また、給与計算にも紐づけることができるので、作業の効率化を図ることもできます。
勤怠管理は人事・労務業務の中でもHRテックが導入しやすい分野なので、まずはここから始める企業も多く見られます。
給与計算に必要な要素の一つが勤怠です。HRテックのクラウドソフトで勤怠管理ができている場合、そのデータを自動で連携すれば入力の手間もなく、精度も効率も上がります。
また、従来の給与計算ソフトは1台のパソコンで行われているため、給与計算を行う担当者に負担がかかる場合もありました。クラウドソフトでは、権限を与えられた人であれば、どこからでもアクセスすることが可能です。
手当や通勤費など各担当者は随時情報を更新することができ、給与計算の担当者はスムーズに仕事を進めることができるでしょう。
社員の健康管理についても、健康診断の結果や産業医の診断、面談の結果などHRテックで一元化することによって、煩雑な作業がなくなります。
また、社員一人ひとりがログインしてストレスチェックができるように整えてデータ化すれば、社員の健康状態を早めにチェックすることにもつながり、心理状態の悪化を未然に防ぐこともできるでしょう。
さらに、社員が産業医や保健師にクラウド上でいつでも相談や質問をできるようにしておけば、社員の安心感にもつながります。
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入退社の際の事務手続きも、人事・労務に関するクラウドソフトを活用することで、作業時間が短縮され、業務効率の改善につなげることができるでしょう。
例えば入社の場合、入社時に必要な情報について本人がソフトに直接入力します。そうすることで、人事担当者の作業が軽減され、管理情報は随時アップデートすることができるので、最新の人事データベースとして活用することができます。
【関連記事】バックオフィス業務を効率化する方法|よくある課題と4つの解決策
HRテックは機能もサービスも豊富な反面、導入目的をきちんと設定しないと十分に活用できないこともあります。HRテックの導入にあたっては、以下の4つのステップに整理して進めましょう。
1.導入目的を設定する
2.ロードマップを策定する
3.サービスやツールの検討・導入をする
4.効果検証と見直しの実施
まずは、なぜHRテックを導入するのか、導入目的を明確にすることが大切です。実現したいマネジメントや解決したい人事労務問題などを決め、それに対する社員の行動や体験も明確にしていきます。
【関連記事】人事業務の効率化は何から取り組むべき?ツールや事例も紹介
明確にした目的を実現するために、数年間のロードマップを作成します。
1年後や5年後にはどのような組織でどのような課題を解決しておきたいのか、またそのためにどういうプロセスを踏むのか、改革の必要性も年次ごとに考えておきます。
ロードマップの作成は、現場のマネジャーやバックオフィスの管理職が一緒に議論をしながら進めることが必須です。
ロードマップができたら、必要なツールやサービスを検討し、選定や導入を熟考します。
HRテックにはさまざまなツールが存在するので、課題解決のための目的や自社の環境を考えて適切なツールを組み合わせることが重要です。
ツールの導入に関しては、
・最初にデータの共通基盤を作った上で各ツールを紐づける
・導入の必要性が迫られている部門から早めに導入していき、他の部門にも導入を展開していく
という2つの方法があります。
HRテックを導入した後は、1年未満の短いスパンで効果実証や見直しを行っていきます。
使いづらい点や気になる点があれば、別のツールに変更する、あるいはカスタマイズするなどの改善を都度行うほうが良いでしょう。特に業務の効率化は、1サイクル終わってある程度効果が見えたところで早めに改善を図りましょう。そうすることで、さらに使いやすいツールとなり、作業効率もアップします。
【関連記事】業務改善とは?進め方と具体例・成功ポイントを解説
実際にHRテックにはどのようなサービスがあるのでしょうか。ここでは、パーソルグループがご提供している、採用管理・勤怠管理におけるHRテックを紹介します。
「HITO-Linkリクルーティング」は、中途・新卒採用におけるオペレーション業務を自動化し『採用そのものに向き合う時間』を生み出す、採用管理システムです。
応募者データの自動取り込みや、紹介会社との連携、エントリー数の推移など各種KPIの確認など、採用の成功に必要な各種機能を搭載しているため、それらの業務を自動化し、より多くの時間を採用活動に費やせるようにサポートします。
「MITERAS仕事可視化」は、スタッフ一人ひとりの勤務実態と 作業内容を見える化する、 マネジメント課題解決ツールです。「労働時間の乖離把握機能」と「仕事実態の可視化機能」の2つの機能によって、労務の見える化を実現できます。
勤怠管理を通して、「在宅勤務をしているが、勤務内容が把握できない」「サービス残業が当たり前になってしまっている」といった課題解決につながります。
自社に必要なサービスやツールを選定・導入し、人事や労務の業務を効率化できるHRテックですが、導入により、新たなリスクやデメリットが生じる可能性もあります。そのため、下記の注意点を導入前に確認しておきましょう。
自社で集積した膨大な情報をデータ化するためには、労力が必要とされます。また、活用する側のリテラシーがツールに追いつかないことも想定できるでしょう。
HRテックを業務に取り入れて活用するには、それなりの時間や労力、技術を要することを認識する必要があります。
人材育成や採用活動にHRテックを導入することは、個人データを収集・集積することになります。結果、社員のプライバシーに関わる内容など、法律上で収集が禁止されている情報を収集してしまう恐れもあるので注意しましょう。
HRテックを信頼しすぎて採用や人事考課における重要な判断を行うと、求職者や社員から不安や疑念を抱かれることもあります。AIを使ったサービスを利用した際は最終的には人が再度検討、公正な判断をすることが大切です。
例えば、ある社員の人事考課について学習型のAIを活用した場合、AIはさまざまなデータを用いて評価を行います。しかし、AIに頼りすぎるあまり、なぜその評価になったのか人事担当がその社員に細かい説明をできないということが起こり得ます。
また、前述の通り、個人のプライバシーに関わる情報をAIが収集し、評価の一部に取り入れてしまう恐れもあります。AIによる人事考課の評価は、ともすればブラックボックス化する懸念が生じることも考えられるでしょう。目標達成率や日頃の行動・勤務態度など、人事担当者や上司の公正な判断を加味することが重要です。
最後に、HRテックを導入することで、企業の抱える課題を解決に導いた2社の事例を解説します。
独立系SIerとして公共、民間、セキュリティ関連を中心に事業展開するフォーカスシステムズ様は、面接日程調整や面接官への連絡、紹介者会社への連絡などの業務負担が大きく、じっくり候補者に向き合う時間を確保できていないことが課題でした。
そこで、パーソルグループの採用管理システム「HITO-Linkリクルーティング」を導入。オペレーション業務の作業負担を軽減することで「候補者フォロー」や「選考リードタイムの短縮」を実現し、採用スピードが大幅に改善しました。さらに、レポート機能のデータをもとに通過率や決定率などの切り口から採用課題を発見することができるようになり、部門と人事で採用課題に向き合える体制を実現しています。
ITアウトソーシングサービスを展開しているトランスコスモス様は、リモートワーク環境で、従業員の労働状況把握に課題を抱えていました。また、以前から本部が把握しきれていない過重労働を問題視していました。
そこで、労働状況の把握やメンバーのはたらきすぎを抑止し健康を守るための検証ツールとしてパーソルグループの仕事可視化ツール「MITERAS仕事可視化」を導入。
メンバーの勤怠状況が可視化され、勤務時間とPC稼働時間の乖離が大きいメンバーには仕事内容を確認することで、メンバー各自の労働時間に対する意識が改善されました。さらにアプリケーション利用状況やキーボード打鍵数など、本人の主観が入りにくいデータから労働状況の客観的な判断も可能になっています。
自社にあった適切なHRテックを取り入れ、運用するまでには時間や労力がかかります。なるべく早く検討を始めましょう。
とはいえサービスやツールの選択を誤ると、十分に活用できずにかえって労力を要することにもつながります。導入にあたりまずは目的の明確化とそれを達成するためのロードマップを作成することが大切です。また早い段階で検証や見直しを行い、より自社にあったツールを利用することでさらなる作業効率化が図れます。
すでに勤怠管理や給与計算、事務手続きなどでHRテックを取り入れている企業も多く見られますが、昨今では採用やタレントマネジメント、エンゲージメントに活用する動きも活発化しています。
この機会にHRテックを活用して、人事や労務の業務改善を図り、組織や労働状況の改善、会社の活性化につなげていきましょう。
人事DXを成功に導く、HRテック活用ガイド公開中
テクノロジーの進化によって、人事部門では採用・評価・育成まで、あらゆる業務においてHRテックの導入が進んでいます。
「人事業務をデジタル化したい」「人事部門の生産性を高めたい」「従業員データを可視化したい」といったお悩みをお持ちの方に向けて、パーソルグループでは、HRテックが普及した背景からHRテックの種類、導入のメリットと注意点についてまとめた【人事DXを推進するHRテックガイド】を公開しています。
人事の生産性向上や業務改革に課題をお持ちの方は、ぜひご活用ください。