タレントマネジメントとは?導入するメリットや手順、成功事例を解説

人材不足が慢性化する中、限られた人員で企業の目的を達成するための人材マネジメントとして注目されているのが「タレントマネジメント」です。従業員が持つスキルや能力、経験を把握し、採用や育成・配置を戦略的に行うことで企業の成長につなげます。

本記事では、タレントマネジメントの概要や企業にもたらすメリット、実施の手順、成功事例などを詳しく解説します。 

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タレントマネジメントという言葉や考え方は、ここ10年で急速に普及・理解が進んでいます。一方で、多くのお客様から「タレントマネジメントに関する取り組みの重要性は認識しつつも、具体的に施策へ落とし込み、推進する段階になると躓いてしまう」というお声も耳にしています。

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目次

タレントマネジメントとは?

タレントマネジメントとは、「従業員一人ひとりが持つ能力やスキル、経験といった情報を、採用や育成、配置に活用することで企業の成長につなげていく人材マネジメント」です。タレントマネジメントの対象は、社員に限らず、パート・アルバイトを含む、組織における全従業員が含まれます。

もともとタレントマネジメントという概念は、1990年代に米国の大手コンサルティング会社のマッキンゼー&カンパニー社が「War for talent(人材育成競争)」というキーワードを発信したことから生まれ、2000年以降「優秀な人材の早期発掘、適正配置、育成支援に至る一連のプロセスを統合的に捉える人材マネジメント」として欧米企業を中心に広まりました。日本企業に本格的に普及し始めたのは2010年前後 です。 

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タレントマネジメントを行う目的

タレントマネジメントを行う主な目的は、企業の経営目標を達成させるための戦略的な人員配置の検討や、個々の能力を発揮するための人事戦略の実行です。

採用、配置、目標設定・評価、業績賞与といったさまざまな機能に対して、個別の施策として実施されているものを統合し、経営目標達成に向けて人材をマネジメントしていくというのが基本的な考え方です。

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タレントマネジメントが注目される背景 

日本でタレントマネジメントが広まった背景には、以下の3つがあげられます。

    1. 少子高齢化に伴う慢性的な人材不足
    2. 人材の多様化
    3. 急速な市場変化

1.少子高齢化に伴う慢性的な人材不足

少子高齢化に伴い人材不足が慢性化しており、人材獲得競争が激化しています。そのため、企業は限られた人的資源でどのように生産力を維持・向上させていくかという視点が重要です。

パーソル総合研究所の調査によると、2030年には644万人の人材が不足すると言われています。

労働市場の未来推計 2030
【出典】株式会社パーソル総合研究所「労働市場の未来推計2030

今後も人材不足が続く中、自社の人材により高いパフォーマンスを発揮してもらうための人材マネジメントである、タレントマネジメントが注目を集めています。

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2.人材の多様化

時代とともにはたらき方や仕事に対する価値観は多様化しています。そのため、従来の画一的な人材マネジメントではなく、多様な人材のパフォーマンスを最大限に発揮できる仕組みが企業に求められています。タレントマネジメントがその一助となるのではと関心を集めています。

3.急速な市場変化

テクノロジーの急速な発達や新型コロナウイルス流行など、私たちの生活様式は急速かつ、大きく変化しました。企業を取り巻く市場・環境は大きく変化し、それに伴い、従業員にはより高度な能力が求められるようになっています。

今後も企業が求める人材の専門分化が進む中、一人ひとりの持つポテンシャルを最大限に活用するタレントマネジメントが注目されています。

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タレントマネジメントのメリット

タレントマネジメントの導入によるメリットは大きく分けて以下の4つです。

1.適材適所の人員配置の実現

従業員一人ひとりのスキルや特性を踏まえた人材マネジメントにより、適正な人員配置が可能になります。 

例えば、営業部では力を発揮できなかった人材でも、人事部が求めているスキルを潜在的に持っている、ということがあるかもしれません。また、将来的に経営を担えるような人材は、早くから経営の中枢に置いて経験を積ませる、という配置もできるでしょう。

2.中長期的な人材育成

タレントマネジメントは人材育成の観点でも有益です。

タレントマネジメントにより、従業員それぞれが思い描くキャリアビジョンを可視化することで、目指したいビジョンに向けた研修を実施するなど、キャリア支援につながる人材育成が可能になります。

【関連記事】人材育成とは?基本の考え方や育成方法・具体例を解説

3.エンゲージメントの向上

タレントマネジメントを導入すると、職務能力に限らない汎用性のある能力や、将来身につくスキルにも目を向けられます。

一人ひとりの適性を見極めた人材配置が実現されることで、個人の成長や企業への貢献を実感しやすくなります。その結果、エンゲージメントが向上し、定着や採用への好影響が期待できます

【関連記事】エンゲージメントサーベイとは?目的や効果、実施のポイントを解説

4.組織の生産性向上

一人ひとりのスキルや経験に合った部署や業務への配置を行うことで社員の能力を最大限引き出すことができます。それにより、従業員のパフォーマンスを最大化し、組織全体の生産性向上が期待できます

タレントマネジメントの導入手順

ここからは、タレントマネジメントをどのように進めるかを解説します。ただし、タレントマネジメント導入には決まった手順があるわけではなく、企業によって進め方はさまざまです。参考として、基本的なサイクルと留意点を合わせてご紹介します。

タレントマネジメントの基本的なサイクル

    1. 導入目的の設定
    2. 適材の発掘
    3. 適正な活用
    4. 部署連携による育成・評価
    5. リテンション
タレントマネジメントの基本的なサイクル

1.導入目的の設定

まず、企業のビジョンや経営戦略を基に「なぜ自分たちがタレントマネジメントを行うのか」を明確にすることから始めます。目的によって「どのような人材が必要か」の基準が大きく変わるからです。

また、目的に合わせてタレントの活用方法を考え部署ごとに必要なタレントを設定し、タレントマネジメント全体の設計をします。 

2.適材の発掘

設定した目的をもとに行うべき次のステップは、目的に適した人材の発掘です。

目的設定の段階で「この部署にはこんな人材がほしい」という具体的な人材像が判明しています。その人材を探すためには、全従業員情報をデータ化・セグメント化し、整理することが有効です。個人のプロフィールや経験、保有資格、キャリアプランなどを網羅的に把握するには、ICTを活用するとスムーズです。

3.適正な活用

タレントを発掘した後、目的達成に向けて個人のプロフィールや保有資格など整理されたデータを使い、最適な人材を最適なポジションに配置します。このとき、従業員個人のキャリアプランを踏まえ、会社として中長期の視点を持ち、人材を活用することがポイントです。

4.部署連携による育成・評価

配置後は、現場のマネジャーが重要な役割を担います。従業員個々の状態は変化するため、マネジャーはその状況を把握する必要があります。把握した最新情報は人事部門と共有し、データ化された情報を更新することが望ましいです。

また、目的に沿って従業員を育成・評価できるような仕組みを整えることや、新しいタレントの開発機会を積極的につくることも重要です。

このように、現場と経営陣が連携してタレントの育成・評価に取り組んでいる状態を目指しましょう。

5.リテンション

人事用語としてのリテンションとは、人材を自社に確保し継続的な活躍を促すための様々な施策のことを指します。例えば、体調やモチベーションといった個人のコンディションにかかわる情報を集積することで、適切なサポートを適切なタイミングで提供できるようにするといった取り組みがあげられます。

従業員のモチベーションや悩みといった定性データを活用してモチベーションやエンゲージメントの向上を図りつつ、より精度の高いタレントマネジメントの運用に役立てることができるでしょう

【関連記事】リテンションとは?人材流出防止の具体的な施策とポイントを解説

タレントマネジメントの成功事例

実際にタレントマネジメントを導入した企業の成功事例を紹介します。

全国展開するフランチャイズ型チェーンA社の事例

業種:メディア事業、アミューズメント事業
従業員数:5,000名以上(グループ全体)
資本金:50~100億円

A社では、店長のパフォーマンスによって店舗売り上げが大きく左右されるので、店長候補となる人材をいかに確保するかを重要視していました。以前よりパート・アルバイトから店長候補者の社員登用を積極的に取り組んでいた同社では、タレントマネジメントを実践できるICTを導入し、次のような施策を行いました。

    • パフォーマンスの高い店長の特性をデータ解析
    • 社員候補のパート・アルバイトについても一人ひとりの事業適性、意欲、スキル情報、商品知識などの情報を月次でデータ収集・更新

これにより、店長候補をすぐ検索できる仕組みを構築しました。また、各地のスタッフからの相談をデータで集める仕組みを整え、対応の緊急度が高いスタッフを定期的に検索し、相談内容に応じてサポートするというリテンションの仕組みを構築しました。

自社の目的に合った人材の発掘・確保と、多拠点型事業でありながらきめ細かなリテンション対応を行うことに成功した事例です

総合商社B社の事例

業種:総合商社
従業員数:2,000名以上(単体)
資本金:1,500億円以上

B社ではグループ内に多数ある事業会社の経営領域に若手社員をアサインする方針を取っていたため、若手社員の早期成長が重要テーマとなっていました。しかし、縦割りの組織運営がベースにあるなど、既存の人材マネジメントでは解決できない問題を抱えていたため、タレントマネジメントを次のように導入しました。

    • データベースを構築し、全社横断的に人と組織を「見える化」
    • 人事評価にメリハリを付けることで、人材の積極的な登用をスタート
    • 複数のシステムに分散して蓄積していた人事情報、評価情報、目標設定などさまざまな社員情報を一元化
    • 本人が希望するキャリアプランを上司と共有する場の設定
    • 経歴やスキルなどの情報だけでなく、性格や行動特性、上司や仲間との相性など定性的な情報も蓄積
    • 年次や職種を超えて全社員が活躍できる環境整備

これにより、若手社員の活躍機会が広がるとともに、社員の成長に対する会社のサポートをより手厚くすることに成功しました。また、人事に関わる業務効率も格段に向上しました。

まとめ|タレントマネジメントは目的の明確化から

タレントマネジメントは、従業員一人ひとりが持つ能力やスキル、経験といった情報を、採用や育成、配置に活用することで企業の成長につなげていく人材マネジメントです。

まずは、導入目的を明確にすることが大切です。中長期的な経営戦略のもと、どのような目的で人材マネジメントを行うか整理をすることから、タレントマネジメントを始めてはいかがでしょうか。 

タレントマネジメントを成功させる3つのカギとは?ノウハウ資料公開中

タレントマネジメントという言葉や考え方は、ここ10年で急速に普及・理解が進んでいます。一方で、多くのお客様から「タレントマネジメントに関する取り組みの重要性は認識しつつも、具体的に施策へ落とし込み、推進する段階になると躓いてしまう」というお声も耳にしています。

パーソルグループでは、タレントマネジメントを推進するにあたって重要となる要素をまとめた資料【タレントマネジメント成功の3つのカギとは?導入ステップとデータ活用のヒント】を公開しています。

これから導入を検討する方も、既に運用中で課題を感じている方も、ぜひご活用ください。

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よくあるご質問

Q1.タレントマネジメントとは?

A1.タレントマネジメントとは、従業員一人ひとりが持つ能力やスキル、経験といった情報を、採用や育成、配置に活用することで企業の成長につなげていく人材マネジメントです。


>>タレントマネジメントとは?

Q2.タレントマネジメントはどんなメリットがある?

A2.タレントマネジメントを導入することで得られるメリットは以下の4点です。

・適材適所の人員配置の実現
・中長期的な人材育成
・エンゲージメントの向上
・組織の生産性向上

>>タレントマネジメントのメリット

Q3.タレントマネジメントを実践するには何から始めれば良いのか?

A3.タレントマネジメントには決まった手順があるわけでなく、企業によって進め方はさまざまです。基本的なサイクルは以下の5ステップです。

1.導入目的の設定
2.適材の発掘
3.適正な活用
4.部署連携による育成・評価
5.リテンション

>>タレントマネジメントの導入手順