ウェルビーイング(Well-being)とは?意味や企業が取り組むべきことを解説

若い世代を中心に「ウェルビーイング(Well-being)」がはたらきやすさの新たな基準となりつつあり、人材確保のために企業も重視すべき概念と考えられています。

本記事では、ビジネスにおけるウェルビーイングとは何か、ビジネスにどう取り入れられるのかを解説します

ウェルビーイングを高める健康経営のお役立ち資料をご覧いただけます

企業経営におけるウェルビーイングへの注目は高まり、ウェルビーイングははたらきやすさの新たな基準となりつつあります。

パーソル総合研究所では「はたらく人の幸福学プロジェクト」にて研究を続け、ウェルビーイングを高める経営の実現に向けたガイドブック『健康経営/ウェルビーイング経営がもたらす効果と推進時のポイント』を提供しています。

健康経営やウェルビーイング推進の基礎情報、経営や職場マネジメントにおける具体的な施策について解説しています。ウェルビーイングの推進をお考えの企業担当者の方は、ぜひご活用ください。

資料をダウンロードする(無料)

目次

ウェルビーイング(Well-being)とは

ウェルビーイング(Well-being)とは、Well(よい)とBeing(状態)が組み合わさった言葉で「よくある」状態、心身共に満たされた状態を表す概念です。

世界保健機関(WHO)憲章の前文では、「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」とあり、ウェルビーイングを「身体的、精神的、社会的にすべて満たされた状態」と定義しています。

また、米国の心理学者マーティン・セリグマンは、ウェルビーイングには5つの要素があると唱えています。

主観的幸福感(Well-being)の5領域

 

【参考】金沢工業大学 心理科学研究所 PERMAモデル(Seligman,2011)

5要素の頭文字を取って「PERMA理論」と呼ばれます。この理論でのウェルビーイングとは、「持続的幸福感のある、健やかな心の状態」とされています。瞬間的な幸せではなく持続的な幸せという点が、ウェルビーイングを理解するポイントです。

また、ウェルビーイングは企業経営においても注目されており、従業員の多様なはたらく目的と組織の成長を整合させる「ウェルビーイング経営」をとりいれる企業も増えています。はたらく幸せを感じることは従業員の創造性や生産性を高め、離職率や欠勤率を下げることが定量的にも示されています。

日本におけるウェルビーイングの現状

日本では「持続的な幸福感」を得られている人が少ないというデータがあります。

国連のThe Sustainable Development Solutions Network (SDSN)が米国ギャラップ社のデータを基にまとめた「世界幸福度リポート2020(World Happiness Report 2020)」によれば、日本の幸福度は153カ国・地域中62位。2018年の54位、2019年の58位からさらに後退しています。なお、上位は北欧諸国が占めています。

世界幸福度ランキング2017-2019

 

【参考】The Sustainable Development Solutions Network「World Happiness Report 2020」p24-25を加工

この調査は、各国・地域での世論調査を基に、自分の幸福度を10段階で自己評価した平均値です。さらにそれを

 ・1人当たりGDP
 ・平均的な健康寿命
 ・困ったときに社会的な助けがあると感じているか
 ・人生で選択の自由があると感じているか
 ・GDPに対しての寄付実施者数の度合い
 ・政治への信頼度

などによって分析しています。

日本の平均寿命は世界1位で、1人当たりGDPは経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国中19位。数字的な豊かさと実際の幸福度を比較すると、日本人の自己肯定感は低く、ウェルビーイングを感じにくいことがうかがえます。

ウェルビーイングの機運がさらなる高まりを見せる中、企業にとっては難しい舵取りが求められています。

企業がウェルビーイングを取り入れるメリット

企業がウェルビーイングに取り組むことで以下のメリットが期待できます。

個人・組織のパフォーマンス向上

従業員が幸せにはたらくことは、個人・組織のパフォーマンス向上につながります。

パーソル総合研究所の調査によると、はたらく幸せを実感している従業員ほど、個人のパフォーマンスが高く、また所属組織のパフォーマンスも高いことがわかりました。反対に、はたらく幸せを感じられていない従業員ほど、個人パフォーマンス、組織パフォーマンスともに低下しています。

【出典】パーソル総合研究所「はたらく人の幸福学プロジェクト

さらに、同調査では企業業績にもプラスの影響を与えることも示唆されています。

離職率の低下

従業員が幸せにはたらくことは、離職率の低下につながります。

同調査によると、はたらく幸せを感じている人ほど、自組織において継続してはたらきたいとの意向が強く、転職意向は低いことがわかりました。

【出典】パーソル総合研究所「はたらく人の幸福学プロジェクト

優秀な人材の流出を防ぐというリテンションの観点においても、従業員がはたらく幸せを感じられているかどうかに着目することが重要だといえるでしょう。

従業員のウェルビーイングを高める具体的な方法

大手コンサルティング会社の米国ギャロップ社の分析では、はたらき方におけるウェルビーイングには、下記が関連していると考えられています。

    • 良好な人間関係
    • 充実したキャリア
    • 経済的な幸福
    • 日々の業務へのポジティブな状態
    • 会社との関係性 など

これらの視点から、従業員のウェルビーイングを高めるための具体的な方法を紹介します。

コミュニケーションの活性化

従業員のはたらく幸せは、チームワークが良好で開放的な組織であるほど高まり、権威主義的や競争的であるほど低下する傾向にあります。

「一致団結して目標に向かっていく雰囲気がある」「何でも意見が言える」といった状態が望ましい組織文化の一例です。ここでは、コミュニケーションを発生させるための施策を紹介します。

交流を生む制度

米国では「第3の給与」と呼ばれる「ピアボーナス制度」が充実しています。業務成果や日頃の行動に対して、従業員同士で感謝の気持ちを伝え、報酬を送り合う制度です。互いを称賛できる文化を育て、コミュニケーションを活性化させる効果が期待されます。

心理的安全性の構築

米国の大手IT企業では、「心理的安全性」に着目した生産力向上計画を推進。対人関係で意見や反論をしたり、リスクのある行動を取ったりしても、それが受容される環境を構築しています。

職場環境の改善

リフレッシュコーナーやオープンスペースの設置・改良など、コミュニケーション促進のためのスペースをつくる企業も増えています。

はたらきやすい環境の整備

多様なニーズを持つ従業員一人ひとりが快適にはたらくことができるような環境の整備が必要です。ここでは、長時間労働の是正や育児・介護を支援する施策を紹介します。

有給取得によるインセンティブ制度

ある国内情報通信会社では、残業を前年より20%削減して有給休暇を完全取得した従業員には、本来は残業代として支給予定だったお金をインセンティブとして支給する仕組みを創設。その結果、月間平均残業時間は約半分になり、有給休暇の取得率も向上しました。

残業に関するモニタリング

ある大手コンサルタント会社では、ITシステムによる就労管理で長時間労働の解消を徹底すると共に、在宅勤務やテレワークといった場所にとらわれないはたらき方を導入しました。

また、別のコンサルタント会社では、年間残業と有給休暇の計画シート作成や週ごとの残業モニタリングを実施するなどして、ワークライフバランス実現の実効性を高めています。

男性従業員の育児休暇啓発

ある国内大手化学メーカーでは、男性従業員の育児休暇の啓蒙活動を実施したところ、育児休暇取得率が対象者の4割を占めるまでに増加しました。

託児所の設置

多様なはたらき方に寄り添ってウェルビーイングの向上を目指すために、企業内保育所など託児施設を設置する企業も増えています。

また、保育所や託児所不足のほかに「地域の保育所や学童に子どもが行きたがらない」など、さまざまなケースで子どもを預けられないことを想定し、「子連れ出勤制度」を導入している企業もあります。

親孝行支援制度

あるハウスメーカーでは、要介護の家族を持つ従業員が、無期限で介護休業を取れる制度を導入しています。さらに帰省時には補助金を支給。経済的、精神的な負担を減らす効果がありそうです。

従業員のはたらきがいの向上

ウェルビーイングでは「はたらきがい」も大切な要素です。

従業員のはたらきがいを高めるためには、企業理念の再確認と再周知が必要です。

多くの企業では、企業理念やビジョンは言語化され、組織としての目的が語られていますが、従業員にしっかり共有され、自分事として受け止められているでしょうか。従業員が企業理念に共感し、理解していれば、自分が与えられている仕事の役割や必要性を感じることができます。しかし、理念が伝わっていない状態では、従業員のはたらきがいが失われ、離職につながる可能性もあります。

こうした事態を避けるには、企業理念を見直し、従業員に丁寧に伝えることが重要です。見直した結果元の理念のままということもありますが、このプロセスを踏むことで社内共有の機会も増え、さらに従業員も意見できる仕組みを設ければ自分事化も進みます。

従業員の健康増進

従業員が自己の心身の状態を知ることは、ウェルビーイングの出発点ともいえます。企業としては、定期健診だけでなく、人間ドックや歯科健診など法定健診以外の補助制度、予防接種補助などの制度を充実させるのも一つの方法です。

セルフ・ケアのサポート

ある大手食品会社では全従業員を対象にして、個別の健康面談を毎年行い、従業員一人ひとりに合わせたセルフ・ケア指導や、セルフ・ケア度の可視化を推進。結果、総実労働時間を削減しています。自身の健康を意識してはたらくことで、業務効率もアップした例です。

健康づくりの活動促進

ある大手化学メーカーでは、「健康マイレージ」というプログラムを導入しています。これは、会社が企画した健康づくりに関するイベントに参加すれば「健康マイル」がたまり、健康グッズと交換できるというプログラムです。こうした施策の実施は、企業姿勢が従業員に伝わりやすくなります。

まとめ|ますます高まるウェルビーイングの機運

従業員がはたらくことに幸せを感じ、期待が持てたり、熱中できたりする会社であれば、業務成果の向上や企業業績の改善につながるでしょう。

日本は世界の中でも長寿企業が多い国といわれています。企業が長く存続しているということは、日本の職場がはたらきやすかったことの裏付けかもしれません。制度を整え、企業理念を共有して自分事化を図る以外にも、従業員のウェルビーイングを高める方法はあります。

会社の現状を、ウェルビーイングの視点から一度見つめ直してみてはいかがでしょうか。

ウェルビーイングを高める健康経営のお役立ち資料をご覧いただけます

企業経営におけるウェルビーイングへの注目は高まり、ウェルビーイングははたらきやすさの新たな基準となりつつあります。

パーソル総合研究所では「はたらく人の幸福学プロジェクト」にて研究を続け、ウェルビーイングを高める経営の実現に向けたガイドブック『健康経営/ウェルビーイング経営がもたらす効果と推進時のポイント』を提供しています。

健康経営やウェルビーイング推進の基礎情報、経営や職場マネジメントにおける具体的な施策について解説しています。ウェルビーイングの推進をお考えの企業担当者の方は、ぜひご活用ください。

資料をダウンロードする(無料)

よくあるご質問

Q1.ウェルビーイングとは?

A1.ウェルビーイングとは、「身体的、精神的、社会的にすべて満たされた状態」のことです。

瞬間的な幸せではなく持続的な幸せという点がポイントで、経営においても従業員のウェルビーイングを高める「ウェルビーイング経営」が注目されています。

>>ウェルビーイング(Well-being)とは

Q2.企業がウェルビーイングを取り入れるメリットは?

A2.企業がウェルビーイングを取り入れることで、以下のメリットが期待できます。

    • 個人と組織のパフォーマンス向上
    • 離職率の低下

>>企業がウェルビーイングを取れ入れるメリット

Q3.従業員のウェルビーイングを高めるには?

A3.従業員のウェルビーイングを高めるためには、以下のポイントを意識しましょう。

    • コミュニケーションの活性化
    • はたらきやすい環境の整備
    • 従業員のはたらきがいの向上
    • 健康づくりの活動促進

>>従業員のウェルビーイングを高める具体的な方法

健康経営/ウェルビーイング経営がもたらす効果と推進時のポイント

資料をダウンロード(無料)

健康経営/ウェルビーイング経営がもたらす効果と推進時のポイント

資料をダウンロード(無料)