コールセンターのアウトソーシングとは
コールセンターのアウトソーシングとは、顧客からの受電・顧客への発信といった電話対応業務を、外部に委託することを指します。
コールセンターの運営形態
コールセンターの運営方法は以下4つに大別されますが、すべて社内で行うインハウスは設備維持費・人件費ともに負担が大きくなります。
設備 | 管理者 | オペレーター | |
---|---|---|---|
インハウス | 自社準備 | 自社従業員 | 自社従業員 |
外部スタッフ活用 | 自社準備 | 自社従業員 | 外部スタッフ |
業務のみ委託 | 自社準備 | 外注 | 外注 |
アウトソーシング | 外注 | 外注 | 外注 |
すべてを外注するアウトソーシングは自社負担が最も少ないですが、対応の質は企業のイメージに影響するので、慎重に検討すべきです。
アウトソーシングの対象となるコールセンター業務
アウトソーシングの対象となるコールセンター業務は「インバウンド業務」と「アウトバウンド業務」の2つに大別されます。
インバウンド業務
インバウンド業務とは、お客様や取引先からの電話を受けて対応する業務を指します。問い合わせの内容は幅広いので、柔軟に対応する必要があります。具体的には、以下のような業務を含みます。
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- 商品やサービスの受注
- 予約や問い合わせへの対応
- カスタマーサポート
- ヘルプデスク
インバウンド業務は対応内容が定型化しやすいため、マニュアル・トークスクリプトを作り込めれば、完全アウトソーシングでも対応しやすい業務です。専門性の高い内容への対応が必要になる場合は、自社従業員を管理者として人材派遣など外部スタッフに対応してもらうのも有効でしょう。
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アウトバウンド業務
一方、アウトバウンド業務とは、お客様や見込み客に対してオペレーターが電話をかける業務を指します。新規顧客の獲得にむけて、より多く架電する必要があります。具体的には、以下の業務を含みます。
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- セールスアポイント(新規顧客の獲得)
- テレマーケティング(市場調査)
- 既存顧客へのサービス案内、フォロー説明
セールスアポイントはサービスへの十分な理解が必要になってくるため、商品によってはアウトソーシングに向かない場合もあります。また、アウトソーシング先企業が十分な営業スキルや情報共有のフローを持っているかを確認して判断する必要があります。
コールセンターアウトソーシングの費用形態
コールセンターをアウトソーシングする際の費用は、「イニシャルコスト」と「ランニングコスト」の二種類が発生します。
コールセンター開設初期にかかるイニシャルコストは、規模やシステムによって幅がありますが、電話代行のみの場合は20,000円から委託できるアウトソーシング企業もあります。
コールセンターの運用にかかるランニングコストは、「月額固定」と「従量課金」にわかれます。繁忙と閑散の差が大きい場合には、従量課金での対応が可能なアウトソーシング企業に任せることで、コスト削減ができるでしょう。
【お役立ち資料】アウトソーシングの成功事例と導入後の効果
人材不足の解消を図るべく、アウトソーシングを取り入れる企業も増えています。本資料では、総務・経理・営業など、業務ごとにアウトソーシングの成功事例を紹介しています。導入すべきか悩む方は、ぜひご覧ください。
コールセンターのアウトソーシングが広まっている背景
矢野経済研究所の調査によると、コールセンターサービスの市場規模は伸長しています。2023年度以降はコロナ禍で続いてきた大型案件の規模縮小に伴い前年度を割るものの、ほぼ横ばいで推移すると予測されています。
コールセンターサービス市場規模推移・予測
コールセンターサービスの市場規模が伸長している背景として、労働者派遣法の改正や生産年齢人口の減少による人材不足が考えられます。社内人材をコア業務に専念させるべく、コールセンター業務をアウトソーシングする流れが強まっています。
アウトソーシングは基本的に委託先が業務の進め方や人員配置、育成などを一括で管理・運用するため、自社の負担を最大限削減でき、人材不足に対する打ち手として有効です。
なお一般社団法人日本コールセンター協会の調査によると、主に通信販売業や流通・小売業、サービス業における需要が増加していることもわかっています。
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コールセンターをアウトソーシングするメリット
コールセンターをアウトソーシングする目的として、人材不足の解消を挙げる企業は多いでしょう。しかし、アウトソーシングのメリットはただ社内の負担を軽くできることだけではありません。
導入すると以下3つのメリットが期待できます。
1.運営コストの削減
自社で人材の採用や教育、機材の保有・維持をしなくてよいため、運営コストを削減できます。
一般的にコールセンターを自社で設置する場合、機材や事務所の確保や電話・ネット回線の費用などがかかります。業務環境を整えることはもちろんのこと、採用コストや従業員の教育コストも必要です。また、特定の時期に受発注が増えるなど、繁閑の差が大きい業務の場合は人員コントロールが難しく、内製化すると非効率になってしまうこともあります。
こうしたコストを抑制できるとともに、アウトソーシングを活用することで、コールセンターの業務フロー構築までの支援、運用構築にかかわるサポートも受けられるでしょう。
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2.応対品質の向上
オペレーターは専門的なスキルを要するため、育成に時間がかかります。また、クレーム対応など業務が過酷な場合は、定着率が低くなってしまうこともあります。
コールセンターをアウトソーシングすることで、電話応対スキルや豊富な経験を持った優秀なオペレーターを即戦力として確保できるほか、コールセンターの管理にたけた管理者に運用業務を任せることができるため、応対品質が安定します。
特に、自社にノウハウが少ない場合や、担当部署がない場合は、業務ノウハウを身近で学ぶことができるメリットは大きいでしょう。
3.生産性の向上
コールセンターに渡せる業務を切り出すことで、社員はコア業務に専念することができます。
営業職におけるアウトソーシングの一例をみると、アウトバウンド業務としてセールスアポイントを外部へ委託するなどのケースがあります。営業職の社員は、新規アポイント獲得業務を行う時間を獲得された新規顧客へのアポイントへの準備や既存顧客先への提案などに充てることができるようになり、一人当たりの営業生産性向上が図れます。
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コールセンターをアウトソーシングするデメリット
さまざまなメリットがある一方で、しっかりと自社に合った委託先を選定しないと、メリットが最大限享受できない可能性もあります。どのようなデメリットがあるのか、対策とともに見ていきましょう。
1.自社にノウハウが蓄積されない
委託先に業務を任せきりにしてしまうと、自社の従業員の対応ノウハウや自社にとって重要な顧客の声を蓄積しにくくなります。
例えば、ある特定の顧客属性(年代や性別)において、よく寄せられるお問い合わせがあったとします。自社の従業員がまったく関わっていないと、顧客のニーズやクレームの傾向に気づかず、サービスや商品品質向上の機会を損失してしまう可能性があるでしょう。
また、委託先の倒産や、サービスの撤退による社内ナレッジの断絶といったリスクも考えなければいけません。
対策
委託先との綿密な情報共有や、業務マニュアル・フローの標準化を行い、いざ自社で運用していく時にはすぐ移行できる体制を整えることが求められます。
2.情報漏洩のリスクが増加する
委託する業務によっては、外部スタッフが自社の顧客情報や機密情報を扱うことになり、情報流出のリスクが増加します。
多くのアウトソーシング企業では、個人情報の保護について厳しいルールを設けていますが、自社で取り扱う場合よりもセキュリティのレベルが低い可能性も考えられます。
対策
秘匿価値の高い情報・商材を取り扱う業務の場合は、アウトソーシングを導入すべきか慎重に検討すべきでしょう。アウトソーシングする際は、導入企業や創業年数などの実績やプライバシーマークの有無を確認し、信頼のおける企業であるか判断する必要があります。
3.対応や連携がスムーズにできないことがある
イレギュラーな事態やトラブルが起きた際に、素早い対応や連携ができないといった問題も考えられます。
顧客からの問い合わせへの回答に時間がかかったり、トラブルへの対応が遅れたりすることで、顧客満足度(CS)の低下を招いてしまうかもしれません。
対策
委託先を選定する際は柔軟かつ迅速な情報共有が可能か、考慮する必要もあります。